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研究から生まれたフィリーナ特有の魔法
しおりを挟む「まぁ、あの時の状況考えれば、場合によってはリク殿を狙った魔法を放ったという見方もできるだろうからな。リク殿とフィリーナ殿の事を知っていれば、邪推しないだろうが……人から人へ伝わる際におかしな装飾が加えられる可能性もある。どうしてああなったのか、という解明は必要だろうな」
「……まぁ、エルフである私が、英雄のリクを攻撃したって思われるのは、種族的に危ないわよね」
「そこまでの事にはならんとは思うし、連れて来た者達にも徹底はするがな? それでも、どこからどう伝わるかわからないからな。原因を掴んで、正しく説明しておく方が心配は少なくて済むだろう」
ヴェンツェルさんは大袈裟に言っているだけだとは思うけど、まぁ変な風に伝わったら立場が危うくなったりするのかもしれない……ただでさえ、まだ王都には珍しいエルフで、奇異の目で見られる事もあるみたいだからね。
俺自身はそんなつもりはないんだけど、勲章をもらったりもしているから、俺を狙って攻撃したと思われるのはまずいんだろう。
姉さんとか、王城内にいる人達やフィリーナと接している人達は、人となりを知っているから大丈夫だろうけど、全体の人口で言うと少数になるから。
「よく見ていると、魔法の軌道が途中で不自然に変わったのはわかったけどね。でも、なんでリクさんの方に飛んで行ったのかしら?」
「何か、フィリーナが魔法に仕込んでいたのかもしれないな。そういえば、初めて使う魔法だとか言っていたか?」
モニカさんとソフィーも、あの時魔法の矢がどうして俺へ向かったのかわからず、首を傾げてフィリーナを見ている。
二人共、フィリーナが最初から俺を狙ったとかではなく、何かの要因でそうなったんだと考えているようだ……俺もそうだけどね。
この場にいるのは、俺とモニカさん、ソフィーとフィリーナ、それにヴェンツェルさんとフィネさんで、他の兵士さん達やマルクスさんは建物の方で色々やってくれている。
一部、突入に参加した兵士さん達は早めに休ませるらしいけど、それ以外は疲れる要素が少なかったとの事で、夕食を交代で食べながら動くとの事だ……マルクスさん含め、兵士の皆さんにはお疲れ様と言ってあげたい。
ともあれ、今はフィリーナの魔法の話で、ちょっと気になる事もあったので、詳しく話を聞いておきたい。
……場合によっては、ヴェンツェルさんに追加の仕事をお願いしないといけないかもしれないから。
「とにかくフィリーナ、魔法の事を教えてくれるかい?」
「まぁ、別に隠す事じゃないから構わないわよ。元々、リク達には話す予定だったからね。……えっと、以前、リクと魔法と魔力について話したわよね? エルサ様も一緒に」
「あー、うん。そうだね、魔力の使い方についてとか話したっけ」
人間の魔法と俺の魔法で、魔力の使い方が違うとかなんとか……。
アルネが書庫にこもっているのも、それを研究するためでもあったはず。
「そう。その研究の一環でね、少し面白い事ができるようになったの。まぁ、まだ私達エルフや人間が使う魔法とは大きく変わらないんだけどね」
「面白い事?」
「えぇ。本来、エルフや人間が使う魔法は、一つの種類で一つの事しかできないわ。一部大量に魔力を使う魔法で、複数の現象を可能にするのもあるけど……大体それは自身の魔力を多く使うせいで、自然の魔力を集める量が少なくて使えても一度程度なのよ」
そういえば、俺はともかく本来人間やエルフが使う魔法って、周囲から自然の魔力を集めて使うんだったっけ。
あと、複数の現象というのは、ツヴァイも使っていた魔法もそうだろう……本来なら氷の槍を飛ばしたり、熱線を放つだけの魔法なのに、その後に炸裂の効果を持たせていた。
使用者の魔力を多く使ってしまう理由はわからないが、可視化できる程の魔力をにじませる事ができたのに、数度使っただけで魔力が少なくなっていたのには、そんな原因があったんだろう。
「もしかして、少ない魔力で複数の現象を一つの魔法で……という事?」
「そうよ。まぁ、簡単な効果しか付けられないけど……今回使った魔法がそれになるわね。ウィンドファイル……早い話が、リクから聞いた魔力を練って固めるという操作をして、貫通力を高めた矢を放つ魔法なんだけど、そこに標的への誘導をさせるようにしたの。これで、相手が避けようとしても追尾して追いかけるから、必中の魔法ができるってわけ。私にはこの目があるからね」
「あー、エルフの中でも、特別な目って言われていたっけ」
相手の魔力を見る事ができるとか言っていた気がする。
魔力が多く、濃くなると可視化されるのはツヴァイに限らず、自分で体験しているからよくわかる事だけど、それとは別に、フィリーナは相手が魔力を可視化させるほどでなくとも、なんとなく見る事ができるらしい。
「そ。それで、標的の魔力を見て、そこに向かって追尾する魔法を考えたのよ。魔力は種族によって大きく違う上に、個人差があるからね。それがまさか、あれほどの急な軌道で曲がるなんて思っていなかったのだけど……」
「まさに、必中の魔法となるわけか……だが、それでなぜリクの方へ向かって行ったんだ?」
「それなのよね、ソフィー。私は、オーガの魔力をこの目で捉えて、それを標的としたはずなの。なのに放ってオーガまで飛んで行くと思ったら、途中でリクの方へ向かったのよ。私は確かに、オーガの魔力へ向かうようにしていたはずなのに……ね」
「使った本人のフィリーナも、わからないの?」
「えぇ……困った事にわからないわ。もう! せっかく新しい魔法だと思ったのに、これじゃ失敗作じゃない! 城に帰ったら、アルネとまた研究のやり直しね!」
「……オーガの魔力、俺の方向……かぁ」
魔法が失敗したものだと考えて、憤慨するフィリーナ……まぁ、苦労して考えたのに初めて使ったら味方へ向かって飛んだんだから、使える魔法とは言えないだろうから、仕方ない。
当然、俺はフィリーナの目に関しては疑っていない。
あの目があったからこそ、人間やオーガの魔力の流れを見て、地下へ突入した後に的確な指示を出せたんだろうから。
それがなかったら、もっとこちら側に怪我人が出ていてもおかしくなかっただろう……俺やヴェンツェルさんも、敵が来る方向を教えてもらったりして助かったからね。
ただ……本当に魔法の方が悪かったんだと思うんだけど……ちょっと引っかかる事があるんだよね。
「フィリーナ、一つ聞くけど……オーガの魔力は、本当にその目で捉えていた?」
「何よ、リクは私の目を疑うの?」
「そういうわけじゃないんだけど、一応確かめておきたくて」
「はぁ……実際にリクの方へ向かって行ったのだから、言い訳になるかもしれないけど、確かにオーガの魔力を見ていたわ。地下施設全体に、薄っすらと膜が張られたような魔力もあったけど、オーガはそれと同じような魔力をしていたから、間違いようがないわ」
「施設に張られた薄い魔力……ね……ふむ……」
「リクさん、何か気になる事でもあるの?」
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