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エルフもいろいろな考えがある
しおりを挟む「まさか、アルセイス様からのお告げがあるとは思っていませんでしたが……ともあれ、我々エルフが関係しているとの事。交流を始めた人間やこの国にも迷惑をかけているので、なんと謝罪すれば良いのか……」
エヴァルトさんが俺と話すために来た一番の理由は、アルセイス様からエルフが恐らく帝国と関係して、アテトリア王国になにがしかの事を計画したり、仕掛けてきている事に関して、同じエルフとして謝りたいからだったようだ。
でも、アルネから聞いた限りでは、住んでいる場所が違えばエルフも考え方ややり方が違うみたいだし、エヴァルトさん達が直接拘わっているわけではないからね。
「エヴァルトさんが申し訳なく思う必要はないと思いますよ?」
「しかし……エルフが他国の人間に対して、その研究成果を使用するなど……それに、ツヴァイという者の事も聞きました……」
「あー……そういえばツヴァイは、エルフだったっけ」
モニカさん達には、エヴァルトさんにアルセイス様から伝えられた事を教えるのと、正しく状況を把握してもらうために、アテトリア王国内でされていた魔物の研究についても話す事にしていた。
けど、その際にツヴァイの事も聞いたらしく、同じエルフとして思うところがあったんだろう。
こうなるなら、ツヴァイの事は報せない方が良かったかな? とも思うけど、それはそれで説明するモニカさん達が苦慮するかもしれないから、仕方ないか。
フィリーナもツヴァイには怒っていたけど……エルフは同族意識が強いのかもね。
帝国とアテトリア王国は人間の国なので、どちらかというと人間同士の諍いと言えなくもないけど……だからといって同じ人間が、とはならないのが人間とエルフでの大きな違いか。
ともあれ、エヴァルトさんには人間もそれぞれ考え方の違いがあるんだし、エルフも同様だとしてちょっと無理に納得してもらった。
エルフだって、エヴァルトさんのように最初から人間と交流しようと考えていたり、長老達のように人間を見下していたのもいたわけだからね……今は違うようだけど。
アルネも一緒に、アルセイス様もエルフ全体の罪としては考えられていない、とのフォローもあって、ようやく落ち着いてくれた。
「……しかし、リクさんはアルセイス様にも呼ばれるような人物……いえ、リク様とお呼びした方が?」
「呼び方は、今までと同じでお願いします。……本当は、呼び捨てでもいいんだけどなぁ」
「畏まりました。――アルネ、我々はもっとアルセイス様をお祀りした方が良いのか?」
「いや、そういう事は言われなかったから、大丈夫だろう。そもそも、アルセイス様と会ってそういうお方ではないと思わされたからな」
俺の呼び方はともかく、アルセイス様ってユノと話す際一時的に畏まった話し方になりはしたけど、基本的に軽い話し方だったからね。
フレンドリーと言えばいいのか、大らかな感じにも見えたから、もっと私を祀りなさい! なんて言うような神様じゃないだろう。
どちらかというと、自分の事よりもエルフ達がどう過ごしていくかを、干渉せずに楽しく見ているような感じかな。
「アルセイス様が顕現されたとあっては、長老達が黙ってはいないだろう。モニカさん達からも聞いたが、この話は俺以外にしていないんだな?」
「あぁ、エヴァルト。アルセイス様と会った事なんて、他のエルフには言えんよ。それこそ騒ぎになるか、信用されないかのどちらかだ。まぁ、こちらにリクがいるので、騒ぎになる可能性の方が高いか」
「えっと、長老達に教えたら、何かあるの? 騒ぎにはなって欲しくないから、話そうとは思っていないけど……」
「長老達は、元々人間を見下し、交流を拒否してきました。それには、アルセイス様からの教えというのがあったんです」
「アルセイス様の教え……?」
エルフを創り、そのエルフが祀っている神様なんだから、騒ぎになるのはわかるけど……そこで長老達が出てくる理由がわからない。
そう思って聞いたら、エヴァルトさんからアルセイス様の教えという言葉が出てきた。
なんだろう、教義みたいなものなのかな? あのアルセイス様が、厳しく教えを説くようには思えない……。
さすがに無責任じゃないだろうけど、「好きに生きてねー」とか言いそうな印象だ……というのは神様に対して失礼過ぎるかもしれないけど。
「我々エルフを創られたアルセイス様は、森の中で生きる術も授けてくれた……と言われている。数百年どころか、数千年も昔の事なので、正しくは誰も知らないんだがな」
「まぁ、作っただけで放っておいたりはしないよね」
神様がエルフを創った頃の話なので、アルネどころかエヴァルトさんすらいない時代なのはわかるけど、数千年かぁ……おそらくまだエルサすらいない頃だろう、というのはわかるけど、その頃の事を考えようにも遠すぎて、うまく想像できない。
とりあえず、何も知らない数人のエルフを集めてこうやって生活するといい、と教えたって考えておこう。
「はい。そして、森と共に生きる事でアルセイス様の加護を受け、安寧に暮らせると教えられたとも」
「俺達エルフは、アルセイス様を創造主として祀り、森からの恵みを享受する事で、アルセイス様から加護を受け取っていると考えているんだ」
「ふむふむ」
最初の言いつけを守って、森と一緒にいればアルセイス様から手厚く保護されているようなもの、ってところかな……ちょっと違うかもだけど。
「長い年月を森の中で過ごすうちに、アルセイス様の教えから外れた考えの者も出て来る。そうして、森から出る者、森の中に引きこもる者と、意見が衝突するようになったんだが……」
「それでも森の恵みのおかげで、エルフが営みを続けていられるのは間違いなく、多少は外に行く者もいましたが、大多数は森の中に留まりました」
「だが、数が増えて来ると森の中にいるだけというのも限界がある。森には魔物もいるし、獣だっている。森全体をエルフが支配するよりも、森の外に広げた方が多くのエルフが生活できるだろうと考えたのだ」
「それで、今は半分が森の外に家を建てて生活しているんだね」
「はい。ですが長老達は森の中で暮らす事に固執し、アルセイス様の正しい教えは森の中でこそ……と曲解しているのです。いえ、私も生まれてしばらくは、そうなのだと考えていましたが……」
「森の中にいる事でアルセイス様の加護を受けられる。そして、神様からの加護を絶えず受けている自分達は特別だ、と考えていくわけだな。曲解という言い方は、まさしく正しい」
「最初は、知恵もたぬ魔物に対してのみだったのですが、そのうち森の外にいる人間すらも、自分達とは違うと考え初めまして……」
「そうして、人間を見下し、森の中にいるエルフのみが特別だと勘違いしてしまったってわけですね……」
アルネとエヴァルトさんが、代わる代わる教えてくれるエルフの歴史。
まぁ、この集落での歴史なんだろうけど、他の国にあるエルフ達も大まかには違わないようだ。
それぞれ森で生活する事で、森の恵みをアルセイス様からの加護だと信じられているとか――。
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