950 / 1,955
まずはお試しの練習
しおりを挟む「戦闘が長引くようなら、あれくらいの事ができる程の魔力を使うのは、厳しいかぁ。でも、フィネさんはさっきまで新兵さん達と模擬戦をしていましたよね?」
「はい。先程までのは、途中から魔力をほとんど使っていません。余裕があれば、多少使う程度でしょうか……。あそこにあるワイバーンの鎧に対して、魔力を使い過ぎて一気に力が抜ける感覚があったので、それ以降は少しだけしか使っていません」
「成る程……つまりペース配分というか、使う状況によって魔力量を変える必要があるわけですね?」
「そうなります。私は魔力の扱いに慣れておらず、どれだけ使えるかまだわからなかったので、温存しました」
魔力だって、当然だけど無限じゃないし、その一瞬で使い切らなければすぐに回復するというものじゃない。
感覚的にだけど、丸一日で全体量の半分近くが回復するとかだろうか……?
しかも、回復に関しても動いている時よりも、休んでいる時の方が早く回復するような気がする……その辺りは、アルネ達に詳しく聞くか、調べてもらう必要がありそうだ。
なんにせよ、一度魔力を武器に這わせたらある程度持続はすると思うけど、打ち付けたり何かと当たれば魔力は分散すると思われる。
一撃や二撃に全力で魔力を込めて、それ以降は次善の一手が使えなくなるよりは、少量の魔力で継戦能力を考えた方がいいのかもしれない……状況によるだろうけどね。
戦争だと、長時間戦う事も考えられるから、最初に全力で使うわけにもいかないはず。
マラソン的にペース配分をするか、短距離走で全力を込めるか……って感じかな。
「まぁ、考える事は色々あるだろうが、とにかく試してみよう」
「そうよね、やってみないと……というか、まずは使えるようになる事を考えないとね」
そう言って、二人は監督していた兵士さん……ヴェンツェルさんと一緒にいるところを何度か見た事のある人……の所へ行って許可を取り、木剣や刃引きした槍がある場所へ。
試しに自分の武器以外でやってみるんだろう。
「木剣とかだと、斬れ味はわからなくても感覚くらいはわかるのかな?」
「魔力を這わせる、というのはわかると思うの。材質によって魔力が通りにくいとかはあるかもしれないけどなの。でも、這わせるだけだからほとんどの物でできるはずなの」
「魔力が通りにくいか……クォンツァイタとかは、通りやすいのかな?」
「あれは多分、蓄積する性質が強いから通すとは違うの。だから、通りにくい材質になると思うの」
モニカさん達が準備している間、少しだけユノと話す……フィネさんは座って休憩だね。
実際に使う武器とは違うから、次善の一手の練習になるのかちょっと心配だったけど、大丈夫のようだ。
魔力を通すのと這わせるのでは、内部と外部で違うんだろうとは想像できるけど、多くの魔力を蓄積できるクォンツァイタは通りやすい部類なのかなと考える。
すぐにユノから否定された……蓄積して放出する過程があるため、通すという意味では適していないかららしい。
まぁ、流れる川の途中にため池があると、その先に流れ出す道筋があっても一旦池に水が流れ込むわけだから、すんなり水が通るわけじゃない。
……と考えればいいのかな? 違うかもしれないけど。
「フィネさん、ユノちゃん。準備できたわ」
「はい、わかりました。それじゃ……私はソフィーさんに教えます。まだ完全とは言えませんけど、同じく魔法が使えない者として助言できるかと」
「助かる」
「私はモニカなの。魔法を使えて魔力の扱いに慣れているから、多分すぐわかるの」
「そうだといいんだけど……お願いするわ、ユノちゃん」
「……俺は……まぁ、見守っておくよ」
それぞれに木剣と刃引きされた槍を持って来る、ソフィーとモニカさん。
同じ魔法が使えないから、感覚を伝えるのに適しているだろうと、ソフィーにはフィネさんが。
槍だから難しいだろうけど、魔法が使えるので魔力の扱いは慣れているだろうと、モニカさんにはユノが教える事になった。
俺は、特にやる事もないから皆が練習するのを見守ろう――。
――三十分くらい経っただろうか、二人が徐々に次善の一手の感覚を掴み始めている様子。
「魔力は形が決まっていないので、剣を撫でるような感覚で……」
「こう、か……? うぅむ、単純に魔力を魔法具に注ぎ込むのとは随分違うんだな」
フィネさんが教えているソフィーは、魔力探査で調べていると少しずつだけど剣に魔力が這っているというか……覆い始めているのがわかる。
まぁ、放出する魔力が少し多かったり、不定形の魔力だから戸惑っているようではあるけど、もう少し慣れれば完成しそうだ。
あとは、それを攻撃する時などの戦闘中に自分自身や剣を動かしても維持したり、魔力を這わせる事に集中し過ぎなくなればってところかな。
「スッと行って、モヤァッとなったらピシッと止めるの」
「……成る程……えぇと、こうかしら?」
ユノが教えるモニカさんは、長い槍の穂先まで魔力を這わせるのに苦労している。
柄が長いから、離れた場所までというのが不慣れなんだろう……ユノの教え方も抽象的なせいもある気がする。
こちらは、ソフィーとは違って魔力が不定形な事にも慣れているようで、覆う程ではなく最低限の魔力を放出しているようなので、後は先まで這わせられればってとこかな。
もう少し、ユノがわかりやすい教え方だったら良かったんだろうけど……こういう事を教えるのは初めてだろうから仕方ないか。
「しかし、見ているだけってのは暇だなぁ」
「おやつにするのだわ?」
「起きてたのかエルサ。でもそれ、キューを食べたいからだろ?」
「キューはいつ食べても究極の食べ物なのだわー」
「はぁ……まぁ夕食までもう少しだろうし、おやつは我慢な」
モニカさん達の様子を見ている俺は、魔力探知で様子を見ているだけで、手持ち無沙汰だ。
暇だと呟くと、ずっと頭にくっ付いて寝ていたエルサが、いつの間にか起きていた。
俺におやつを食べて暇潰しをするよう進めているようだけど、自分がキューを食べたいからの提案なのは間違いない。
とりあえず夕食前なので、エルサなら問題ないだろうけどおやつはお預けしておいた……抗議するように俺の頭をペシペシ叩いているけど、気にしない。
「うーん……とりあえず、素振りでもしておくか。疲れすぎる程ならまだしも、鍛錬はやっておいて損はないからね」
「……離れておくのだわー」
新兵さん達は、休憩が終わってそれぞれに鍛錬を開始しているし、モニカさん達は次善の一手を練習するのに夢中。
俺も何かしておきたいと思ったので、一人でできる鍛錬の素振りをする事にした。
邪魔という程ではないけど、素振りをする時はエルサが落ち着かないらしく、頭から離れる。
「素振りだから、木剣じゃなくてもいいよね。それじゃ……」
エアラハールさんに言われて、最近はいつも携帯しているボロボロの剣。
木剣よりは重く、間違いなく真剣でもあるので、こちらで素振りをしようと鞘から抜いた――。
8
あなたにおすすめの小説
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!
胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。
主に5大国家から成り立つ大陸である。
この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。
この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。
かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。
※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!)
※1話当たり、1200~2000文字前後です。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる
暁刀魚
ファンタジー
社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。
なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。
食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。
そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」
コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。
かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。
もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。
なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。
カクヨム様にも投稿しています。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・
Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・
転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。
そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。
<script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる