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お風呂で真剣なお話
しおりを挟むシュットラウルさんと話しているうちに、ザバッと仕上げのお湯をかけてエルサを洗い終える。
綺麗になったエルサは、濡れて体に毛を張り付けたままふわふわと浮かび、ゆっくりと石造りの浴槽へと入った。
大きなお風呂で、ぷかぷか浮かびながらお湯に浸かるのも、エルサのお気に入りだ。
お湯に浮かんで気持ち良さそうにしている姿を見たら、本当にドラゴンなのかよくわからなくなるけど……まぁ、慣れたよね。
「ほぉ、エルサ様はお湯にも浸かるのか。どれ、私ももう一度入って来よう。リク殿にはつれなくされたからな」
「つれなくって、背中を流すのを断っただけですけど……まぁ、体が冷えちゃいけないので、ゆっくり浸かっていて下さい。俺も、すぐに体を洗って入りますから」
「うむ。まっておるぞ」
俺と一緒にお風呂に入るのが楽しいのか、軽い足取りで浴槽に向かうシュットラウルさん。
裸の付き合いとかって言うけど、俺には男同士で入って楽しいと思える趣味はないんだけどなぁ。
別に嫌でもないんだけどね。
「ふわぁ~……少し熱めだけど、こういうのもいいなぁ」
「だろう? 熱い湯が、体に染みわたるようだ」
体をお洗い終わり、エルサが浮かぶ浴槽に入る。
お湯に浸かりながら体内の空気を吐き出し、熱めのお湯を堪能。
「あぁ、窓から外が見えますね。センテの街並みかぁ……」
「趣深いな……」
「あぶぶぶ……だばぁ……」
最初の案内にあった通り、大浴場には窓があって開け放たれている。
夜空が広がる窓の外、視線を少し下げると街の灯りが見えて綺麗だ……街を見渡せるっていいものだね。
エルサは、外の景色には興味ないのか、顔をお湯の中に潜らせたりして遊んでいるけど。
「人々の営み、か。リク殿……」
「はい?」
しみじみと呟いたシュットラウルさんが、先程までの楽しそうな声よりもトーンを落として、俺を呼んだ。
急にどうしたんだろう?
「……王都からの連絡も来ているし、リク殿の勲章授与式からの流れもその場にいたから知っている。ヘルサルでの事だけでなく、最近の国内での事件などもな。リク殿……やはり戦争は起こると思うか?」
「……それは、わかりません。俺は冒険者なので、それを決められる立場にはありませんし。けど、ここ最近俺が拘わってきた事を考えると、避けられないような気がします。この国が、戦争を回避しようとしても……」
「そうか。そうなのだろうな。我が国が戦争を起こさずとも、向こうから事を起こせばこちらも対処せねばなるまい。何もせず、国全体が蹂躙されるのを見ている事はできないし、明け渡す事もできないからな」
「はい……」
はっきりと口にはしていないけど、シュットラウルさんは帝国との戦争を考えているんだろう。
どうするのかは、俺に決定権はないしあっても困るけど……最近の出来事を考えると、避けられないように思う。
向こうが何を考えているのかはわからないけど、破壊神とかも拘わっているみたいだからね。
こちらから仕掛けるかどうかはともかくとして、何もせず降伏するというのは論外だろう。
魔物を使って街を襲わせている事から考えても、アテトリア王国内で平穏に暮らしている人達が無事で済むとは思えない。
帝国が攻め込んでくるのであれば、当然こちらも抵抗するし、武力衝突するのは当然だろうね。
「軍備増強を掲げて、兵士達の数や質を上げようとはしているが、私は戦争をしたいとは思っていない。負けないための強化だ。……戦争は、何もできない民への被害が多過ぎるからな。どういった状況になろうともだ」
「そうですね……こちらから仕掛ければ、向こうの人達。仕掛けられればこちらの人達。戦争に参加する兵士さん達もそうですし、影響の大小はあっても全くない事はないですから」
「うむ。幸い、と言うのもは憚られるが、もしもの際の主戦場に私の領地や王国の北側は含まれていない。それでも、多少なりとも影響はするものだ……」
真面目な雰囲気で、お湯に浸かりながらシュットラウルさんと話す。
帝国側が仕掛けて来て、アテトリア王国全土に対して殲滅を……なんて無茶な事をしない限りは、ヘルサルなどの東側、ルジナウムがある北東側への影響は大きくはない。
それでも、戦争で消費される食糧や兵士さんとかがあって、影響がないわけじゃない。
負ければさらにだ。
シュットラウルさんは、軍備増強を掲げ、兵士さん達の質や数を向上させてる事を理念にしているらしいけど、だからといって兵士以外の人達をないがしろにしているわけではないらしい。
センテ周辺の農地を拡大し、センテを作物の集積場にして各地へ運んだりなど、そういった事にも精力的に取り組んでいるとか。
結局、戦力を上げる一番の理由は、それらの作物や農地、人々を守るために繋がるという考えからだそうだ。
姉さんが国内で掲げている、専守防衛……日本での知識がある姉さんらしい考えだけど、それを実行するために、攻撃されても守りきるために必要だからって事だろう。
まぁ、帝国に色んな工作をされて、破壊神だのなんだのの話が出てきたせいで、こちらから仕掛ける可能性も出てきたり、姉さん自身もそういう事を考えているみたいだけど。
「戦力を揃え、来る戦争に備え、いざと言うと時に役立てば、それは陛下への貢献にも繋がる。だが、他の全てをないがしろにするのはいただけないのだ」
「まぁ、そうですよね。俺は領地運営をした事はないですけど、それだけってわけには行きません」
「陛下のお役に立てるのであれば、私は喜んで命を投げ出す覚悟をしているし、国民は全て陛下の臣下。だが、全ての者に強要するわけにもいくまい」
「はい……って、シュットラウルさんがそこまでねぇ……陛下に傾倒する理由ってなんなんでしょうか?」
話していてふと、シュットラウルさんが姉さんに対して命を投げ出す覚悟までしている、その理由が気になった。
国から貴族の地位を渡されていて、領地を持たされている者だから当然……みたいな事を言われたら、それまでかもしれないけど。
「ふむ、リク殿は陛下と近いのだったな。話しておいてもいいだろう。あれは数年……いやもう十年前になるか。現陛下がまだ即位されていない頃に、国内の視察をする際、同行したのだ。とは言っても、一部のみだが。その頃すでに侯爵家を継いでいたから、領地を離れ続けるわけにもいかんからな」
「ね……陛下の視察ですか」
そういえば、以前姉さんが国内を見て回っていたというのを、聞いた事がある。
確かあれは、スイカをヘルサルで見つけた時だったか。
国中の全てかはわからないけど、広く見て回ったおかげで、スイカを作っている村があると発見できたんだっけか。
「現女王陛下は、幼少の折から聡明だと国内に知れ渡っていたのだよ。何度か王都へ参った際に、話をする機会はあったが、確かにと唸らせる事もあった。王族であるため、高等教育はされていたのだろうが……それでも大人を納得させる知識や見識の広さが窺えたな」
「そ、そうなんですね……さすが陛下」
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