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誰かの意図を感じる
しおりを挟む「リク様、あれらはおそらく侯爵領の兵士達です。道の整備は魔物と遭遇する危険があるので、安全のため兵士達が混ざるのです。もしかしたら、リク様と訓練をした兵士達もいるのかもしれません」
「成る程……」
公共事業だからだろう、公務員……じゃなかった、国や領主の兵士さんも道の整備を手伝って、安全を確保しているってわけだ。
訓練には参加したけど、五百人もいる兵士さんの顔は覚えていないので、さすがに見覚えがある人はいないが、兵士さん達を訓練のみで集めて待機させておくよりは、実用的なのかもしれない。
あ、一応大隊長さんと中隊長さんの一部は、覚えているよ? それと、アマリーラさんによって精神的に撃沈した小隊長さんとか……あれは印象深かったからね。
「兵士さん達がいるのなら、余計にワイバーンが見つかっていないのもおかしい気がするね……」
「まぁ、周辺の警戒はしているようだからな」
「でも、空を飛ぶのだから、空を見なきゃ見つけられないし……道の上空を通らなくても、やりようはいくらでもありそうだわ」
「確かに……そういえば、以前エルサに乗って移動する時も、街を大きく迂回して移動した事もあるから、そんな感じで移動すれば、見つかりにくいか」
道の整備は、当然ながら地面を見る事が多い……空を見上げる回数が減れば、それだけ発見する確率は減るのだろうし、そもそもモニカさんの言う通り、迂回などをすれば見つかる可能性は低い。
俺だって、エルサに頼んで街の人達が見て驚かないように、迂回したりもするから……速度はともかく、空を飛んでいればその辺りは自由だからね。
移動する姿を見つからないようにするくらいはできるか。
でも、それって……。
「でも、魔物が自分から人の目を避ける判断をするのかどうかだよね。ワイバーン自体が気にしないのであれば、それはつまり誰かの考えで動いているって事にならないかな?」
「……そうだな。空を飛ぶワイバーンが、地上にいる人間達の目を気にするとは思えない」
「むしろ、見つけたら襲い掛かって来てもおかしくありません。襲い掛かられれば、当然ながらその情報が広まりますが、それがないって事は……」
ワイバーンに襲われれば、周囲の人間もそれに気付く。
結構な人数が道の整備をしているようだから、ワイバーンが複数いたとしても絶対に逃げ延びる事ができる人もいるはずで、そこから情報が広まるのは間違いない。
だけど、それがないという事は、目撃されないよう襲わずに移動の指示を出している、何者かがいるという事。
ようやくと言えるのか、作為的、人為的だと断定できそうな情報が得られた……本当にワイバーンがいるのなら、だけど。
「誰かが指示をして見つからないように、そして不用意に人間を襲わないようにしている……って事かしら。でも、ワイバーンにそんな指示を出せるのかしら?」
「モニカさん、組織が研究していた内容を思い出して。地下の研究施設でもそうだったし、ブハギムノングでもそうだったけど……奴らは、自分達に魔物が襲い掛からないような何かを施していた。だったら、もしかすると指示に従うようにできる事だって、あるのかもしれない」
「言われてみれば、確かにそうね」
「本当に、その研究が完成して、魔物に指示を出してちゃんと言う事を聞くのかはわからないけど……これまでアテトリア王国内のどこかで実験をしていたのを考えれば……」
「「「……」」」
俺の言葉に、皆が神妙な表情で唾を飲み下す。
確定したわけじゃないけど、これまでの組織のやり方を思い出してみれば、想像は簡単にできる。
新しい研究の成果を試す、もしくは研究を進めるためにアテトリア王国内にある、どこかの街付近で実験をする。
その結果もたらされるのは、多くの魔物か、強力な魔物、爆発する特殊な魔物との戦闘……放っておけば大きな人為的な被害がもたらされる。
それらを考えたのだろう、俺を含めた皆の緊張感が膨れ上がるのを感じる。
俺の頭にくっ付いて寝ているエルサや、手をブンブン振りながら鼻歌交じりに先頭を歩いているユノを除けば……だけど。
「今回の事が繋がっているのであれば、絶対に阻止しないといけないわね……」
「そうだな、ヘルサルに続いてセンテにも魔物が押し寄せる……という事態にはしたくない」
「センテの人々も、すぐ近くのヘルサルで起きた事、そしてその影響で避難や支援の協力などをしたでしょうから、記憶に新しいです。また似たような事が起これば、不安は増すばかりでしょう」
「何を考えているのか、どうしようとしているのかを調べる必要はあるし、本当にセンテに被害が及ぶかはわからないけど、もし何か被害が及ぶ事があるのなら防がないとね」
まだどうなるかははっきりしていないけど、これまでの事を考えれば組織が関与して、良からぬ事を計画しているのであれば、近くのセンテに何かしらの被害が生じる可能性が高い。
今まで見てきた組織の活動は、魔物の利用とそのための方法の研究が主だけど、その研究のためにはアテトリア王国の人達が犠牲になっても構わない。
むしろ、国力を削ぐために被害を出すのは歓迎されているようだし、そもそもそのためにわざわざ国外で実験しているとも言える。
戦争になり、兵士同士が衝突して犠牲が出る事は、ある程度仕方ないと思えるようにはなってきたけど……さすがに平穏に街で暮らしている人達が犠牲になるのは、看過できない。
整備されかけの道を進みながら、改めて今回の不自然な魔物の発生や、放置されている死骸に関連した調査を進める決意を固める。
俺だけでなく、センテに近いヘルサルで生まれ育ったモニカさん、センテで冒険者として活動していたソフィーはもちろん事、騎士でもあるフィネさんも、決心するように頷いていた。
しばらく北東へ進み、完全に日が沈んで周囲が真っ暗になった頃、道の整備をしている人達もほとんど引き上げていた。
外灯の代わりに篝火くらいはあるけど、くらいと作業の効率が落ちるから、続けないようだ。
よっぽど急いで工事しなければいけない時でなければ、夜通しの作業なんてやらないか……夜の方が活動的になる魔物もいるし、夜目が夜目が利きにくい人だと不利だからね。
「……この辺りでいいかな? 随分移動したから、ワイバーンが付近に降りていたらわかると思う」
探知魔法で周辺を探るために立ち止まり、見渡しながら皆に告げる。
魔力を広げてその反応を窺う関係上、移動しながらだと情報が増え過ぎるし、距離感がわからなくなるから、遠くを探る時は止まってからの方がいい。
数メートルの移動くらいなら大丈夫だけど、目に見えない場所の事を探るなら、止まっている方が精度が高い。
「そうね。ここからなら……どこまで調べられるのかしら?」
「んー、そうだね……センテの東側半分くらいまではわかるかな。それくらいの距離が俺を中心に、円形に広がる感じだね。でも遠くなればなるほど、魔力反応が薄く感じるし、そもそもの魔力量が少ない木なんかはわからなくなるけどね」
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