1,597 / 1,955
熱烈歓迎は魔力補充のため
しおりを挟む「そう言えばそうだったな」
「リク様なら魔法が使えなくても、やってしまいそうなのですよね」
「本当にやっていないからね? まぁ一部で広場みたいなのはできたけど……あと、かなり大きな穴というか荒野も……」
否定しつつも、そういえばと思い出し、ラミアウネと戦った結果の広場や、レムレースが原因の荒野を思い出して小さく呟く。
ただそれは、ソフィーとフィネさんに聞こえていたようで。
「やっぱりか……」
「リク様ですから」
なんて、呆れ混じりの息を吐いていた。
「広場は……まぁ俺が原因と言えなくもないけど、最終的にはリーバーとか……そもそもラミアウネと戦うためだからね? あと、荒野はほとんどレムレースがやった事だし」
「広場や荒野ができるくらいの戦闘を、単独でやって平気な顔をしているのが、リクらしいって事だ」
「そうですね。単独に限らず、冒険者のパーティ単位でも絶対耐えられませんし、できません」
「そ、そうかな?」
「この分なら、リクの軌跡を追うだけで何かしらの目印ができそうだ」
「確かに。リク様の歩みですね」
「いや……」
「そのうち、地名にリクの名がついて呼ばれるだろうな」
「リク様の森、リク様の丘、とかでしょうか?」
「からかってるよね、二人共?」
「そんな事はないぞ」
「えぇ、そうですとも」
なんて、ソフィーもフィネさんも首を振って否定するけど、顔が笑っているんだよなぁ。
「リクの名を地名に付けて、ここはどういう事が起こったのか、なども伝承されそうだな」
「では私は語り部になりましょう。リク様の偉業を伝えつつ、危険も同時に伝えるんです」
「危険を伝えるのは重要だな。リクの名が付く程の場所だ、深い穴でも開いて、落ちたら助からない場所とかもありそうだ」
「さすがにそんな、落ちたら危険な穴を作った事はないんだけど……多分」
俺が知らないだけで、もしかしたらそういった穴もできていたのかもしれない……ヒュドラー戦前の、先に迫っていた魔物を殲滅するために放った魔力弾とか。
ともあれソフィー達は、俺の否定などに聞く耳を持たず、こちらを笑って見ながらいろいろ話している。
これまでやってしまった事もあるため、強く否定できないせいだろうけど……こういう時、相手が女性だからってのもあるかもしれないけど、あまり言い返せない俺は無力だ……。
そんなこんなありつつ、二人にからかわれたけど料理が美味しかったので気分良く食事を終え、交代で別の人が休憩に来るまで談笑した……ほとんど俺をからかうのに終始していたけど。
くそう、いつかソフィーとフィネさんの事を、逆にこちらからからかってやる。
なんて、おそらくできそうにない事を考えながら、マックスさんや獅子亭の人達に挨拶して、外へ出る。
料理のお金は、最初マックスさんは遠慮していたけど、ちょっと強引に払っておいた。
ちなみに、ソフィー達が話していた通り払ったお金は本当に安かった……あの美味しいステーキが、銅貨十枚で食べられるって、安すぎる。
ステーキ以外にも、スープやパン、サラダとかもあったし、肉だけでもかなり量が多かった。
大食漢でも満足できるくらいの量で、俺はちょっと食べ過ぎなくらいだし……美味しいから全部食べられたけどね。
そんな事を考えながら、リーバーと合流してセンテへ向かう。
アイシクルアイネウムを哨戒していた兵士さん達の言っていた、俺の魔力弾が隔離結界まで届いて薄くなっていたというのを確認しようかな、と思ったけど、暗くて多分ほとんど見えないだろうからやめておく。
兵士さん達は、ちゃんとレムレースの事も含めて回収班や王軍に連絡をしてくれていたのも確認した。
回収班の人達は、俺とレムレースが戦っている時、とんでもない音が響いていたのでおそらく俺が何かしているんだろうと、近付かなかったらしい。
来ていたらほぼ間違いなくレムレースの魔法に巻き込まれていただろうから、被害がなくて良かったと安心した。
「ふぅ、ただい――」
「リクが帰ってきたのだわー!」
「おっと!」
センテに入り、宿の庭に行くリーバーにお礼を言って別れ、中に入ると飛び込んで来るモフモフ……というかエルサ。
ポスッという音を立てて俺の腕に収まった。
「あ、間違えたのだわ……ふわぁ、だわ」
「目的はそっちか……」
熱烈歓迎されて嬉しい限り、と思う暇もなく、エルサが俺の腕から抜け出し、いつものように頭にドッキング。
魔力補充を始めてまるでお風呂に入った時のような息を漏らしていた。
せっかくモフモフが腕に収まったから堪能しようと思ったのに、ちょっと残念。
「ん、いつもよりお漏らし魔力が少ないのだわ。何かあったのだわ?」
「そんな、俺の魔力がいつも粗相しているみたいに……まぁ、色々あってね」
意識していない事とはいえ、俺の魔力はおしっこじゃない。
漏れ出ているのは間違いないだろうけど、それで迷惑を掛けたり汚したりなんてこれまで……きっとない。
レムレースとの戦いとかで、かなり魔力を消費しているせいで総量が減り、漏れ出す魔力が少なくなっているのは本当だろうけど。
「そうなのだわ? まぁいいのだわ。それより疲れたのだわ、こうしてしばらく充電しておくのだわ」
「一瞬で興味をなくしたね……はぁ、まぁいいか」
エルサにそっけなく言われて、ちょっとショック。
宿に入ったばかりで、森に入ってからの事とかを話すのはあれだし、まぁいいか。
というか、充電って電気じゃないんだから……。
「おかえりなさいませ、リク様」
「ただいま帰りました。モニカさん達は……」
「リクさん!」
宿の人に迎えられ、挨拶を返すとともにモニカさん達がどうしているか聞こうとすると、階段の上から俺を呼ぶ声。
モニカさんの声だな。
「ただいま、モニカさん」
「えぇ、おかえりなさいリクさん」
……ちょっとだけ、ジーンと心に来る物があった。
飛び込んで来る程の歓迎をしてくれたけど、すぐにそっけなくなったエルサと違い、俺階段を降りて笑顔を見せてくれるモニカさん。
おかえりなさいと言われるのも、嬉しい。
色々と自覚できたから、感じる事ができているんだろうね。
「森で魔物と戦ったんでしょうけど、どうしてそんなに……?」
「あ、そういえば……」
笑顔から心配そうな面持ちになったモニカさんが見ているのは、俺の全身というか服。
気にしていなかったというか、頭からすっぽり抜けていたけど、そういえばレムレースとの戦いで来ていた服がかなりボロボロになっていたんだった。
だから、厚着していたのに、氷の大地を離れて暑いと感じなかったのか。
というかよく考えたら、所々破れたり、部分によっては滲んだ血が付いているような服で、ヘルサルやセンテを歩いていたのか。
道理で、すれ違う人達が目を逸らすわけだ……なんて、戻ってくるまでの事をようやく気にして思い出した。
そういえば、ヤンさんとかマックスさんはともかく、エレノールさんやソフィー、それにフィネさんも何やら俺を見る時にチラチラと視線が下がり気味だったような?
おへそが見えるくらい、お腹部分が破れているからかな? というか、男のへそ出しはどこ需要だ……やっているのは俺だけど――。
0
あなたにおすすめの小説
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!
胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。
主に5大国家から成り立つ大陸である。
この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。
この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。
かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。
※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!)
※1話当たり、1200~2000文字前後です。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる
暁刀魚
ファンタジー
社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。
なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。
食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。
そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」
コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。
かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。
もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。
なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。
カクヨム様にも投稿しています。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・
Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・
転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。
そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。
<script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる