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アルケニーの足で料理道具が充実
しおりを挟む「さてと……それじゃ随分と遅くなっちゃったけど、出発しよう!」
「了解したのだわー!」
全ての作業を終え、少しだけ狭くなったエルサの背中に改めて乗って、皆の準備がそれぞれで終わったのを確認して、再び王都へと出発。
アルケニーとの戦闘、身綺麗にする、倒したアルケニーの処理などで、考えていたよりかなり時間が経ってしまっているから、少し急がないといけないかな。
「到着は完全に日が沈んでから、とかかなぁ。まぁ王都の空を飛ぶと騒がしてしまうかもだし、暗い方が城下町の人達に見られる事が少なくていいのかもしれない、かな?」
なんて一人で呟く。
予定では、日が沈む前には到着するようにと考えていたんだけど……ちょっと難しそうだ。
一緒に飛んでいるワイバーンを無視して、エルサが速度を出せば可能だろうけど、それはさすがにね。
そんな事を考えている俺に、布に包まれているアルケニーの足の刃をツンツンしていたカーリンさんが、四つん這いで移動してこちらに来た……何か言いたい事があるようだ。
「リク様……その、あちらにあるアルケニーの足ですか? あれの事なんですけど」
「アルケニーの足が、どうかしたんですか?」
「いえその、私が知っているのはアラクネの足なのですけど、多分同じ物……上位の素材だと考えたら、もしかすると上質な料理道具が作れるのではないかと思いまして」
「料理道具?」
アルケニーの足が、料理道具になる……?
「はい。その、私の父がやっているお店での事なんですけど……」
カーリンさんが話すには、故郷で父親が営んでいる飲食店ではアラクネの足を素材にした鍋などの金物を使っていたんだとか。
偶然、冒険者によってアラクネが倒され、その素材が出回ったから手に入れられたのだとも。
まぁ刃物には使えないらしいから、包丁などは違うみたいだけど。
「成る程……それで、あのアルケニーの足ならもしかして? って事ですか?」
「はい。父の使っていた料理道具、特にアラクネの素材を使った物は素晴らしくて……」
なんでも、フライパンみたいなのだと食材への火の通りがいいだとか美味しさを引き出す事、それに火力の調節すら気を使う難易度が下がるらしい。
他にも寸動や圧力鍋みたいな物でも、他の一般的な物とは違って使いやすく、美味しい物が作りやすいとか。
料理は獅子亭を手伝っている時に少し覚えたくらいで、詳しいと言う程じゃないからわからなかったけど……料理人にとっては凄く重宝する道具が作れるみたいだ。
美味しい物が作れる可能性が広がるのなら、それに使うのも悪くないし、そのためにカーリンさんに来てもらっているんだから、断る理由はないよね。
「わかりました。それじゃ、全てはさすがに皆への分配がありますから無理ですが、一部は料理道具に使うようにしますね」
「本当ですか! ありがとうございます!」
「これで、野営の時に使う調理道具も充実するわね!」
と、俺が頷いた事に対して、手を取り合って喜ぶカーリンさんとモニカさん。
話しているうちに、いつの間にかモニカさんも参加していた。
まぁモニカさんは料理人じゃないけど、野営する時など外で簡単にでも料理をする時は、モニカさんがやってくれることが多いからね……いつも美味しい食事を、ありがとうございますってところだ。
ちなみに、分配とカーリンさんに言ったが、これは討伐報酬や素材を冒険者ギルドで買い取ってもらった分を、戦闘に参加した人たちに分けるという事だね。
まぁ兵士さん達は冒険者と同じように、ギルドからそのまま報酬を受け取るわけにはいかないようだけど、そこは色々と方法があるらしい。
国に証明と共に収めて、それを国が兵士さん達に還元とか……多少目減りしてしまうけど、アテトリア王国では大体八から九割くらいは還元されるみたいで、推奨はされていないけど兵士さん達も魔物を倒すのに意欲的だったり、冒険者との協力体制を築いていたりとかするらしい。
ともあれそんなわけで俺もアルケニーを倒しているし、カーリンさんが使う料理道具というのはクランで使われる事になる。
だから、俺達の冒険者ギルドで買い取ってもらう素材の一部を、料理道具への加工に使えばいいだろう……加工する職人さんとかへのお願いはしないといけないけども。
その辺りは、カーリンさんが探すか冒険者ギルドに仲介してもらうか、それか知り合いに頼むかで、王都に着いてから考えればいいかな。
「そういえばリクさん、ララさんにお願いできないかしら? ほら、エルサちゃんやユノちゃんが使ってる鞄を買ったお店の……」
「あぁ、ゲオル……じゃなかった、ララさんならお願いすると作ってくれるかもしれないね」
鞄屋の主人であるララさん……本名はゲオルグらしいけど。
ワイバーンの皮を鞄に加工できる人だし、俺達が客としてお店に行っている時に偶然だけど、鍛冶をしている職人さんからヘルプを頼まれていたっけ。
鍛冶職人としても優秀なら、金物……鍋とかもお願いすれば作ってくれるかもしれない。
珍しい魔物由来の素材とか好きそうだし。
「多分断られないと思うけど……ちょっとだけ、会うのは勇気がいるというかなんというか。いや、悪い人ではもちろんないし、そういう意味じゃないんだけどね?」
「あー、リクさんはそうかもしれないわね……」
俺の言葉に、モニカさんが苦笑する。
会いたくないというわけではないんだけど、ちょっとだけ俺を見る目が怪しいというか……。
「リク様が躊躇する人、そのララさん? という方は一体……」
「そうねぇ……リクさんを可愛いがりたそうな、筋骨隆々な女性らしき人……かしら?」
「らしきって、どういう事なのでしょうか……?」
カーリンさんの疑問に、モニカさんがララさんの事を説明するけど、むしろもっとカーリンさんの疑問を深めてしまったみたいだ。
一言でわかりやすく説明できなくもないけど、ある意味複雑でなんて言ったらいいのか困る人ではあるからね。
「まぁ、人によって色々な考えがあると言えばいいんですかね? えっと……」
簡単に、見た目……というか体は男性だけど、心は別という事も含めてララさんの事を説明する。
一応、本名のゲオルグという名も一緒に伝えておいたけど、本人はララさんと呼ぶように注意も含めて。
もし本当にララさんに鍋などを作ってもらうなら、カーリンさんも会う事になるだろうからね。
俺はどんな料理道具を作ってもらえばいいのかわからないし、カーリンさんが直接話した方がララさんもわかりやすいだろうし。
もちろん、会うのに勇気がいるからと言ってカーリンさんに任せっきりにはせず、俺からもお願いするつもりだけどね。
ただ、鍛冶の仕事はあまり受けたくないようでもあったし、あくまで断られないだろうというのは俺の考えなだけで、嫌がられないといいなぁと思う。
そうだ、センテでカイツさんがワイバーンの皮を採取したのも持ってきているし、新しく採取するのはワイバーン達も喜ぶから、それを持って行けば引き受けてくれる確率も上がるかな。
鍛冶的な加工はともかく、鞄として使ってもらえばいいだろうし――。
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