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宰相さんからの相談
しおりを挟む「さ、さすがに強度を上げるって言っても、ユノとロジーナを同時にはさすがに……」
「何を甘えとるんじゃ。訓練を受ける者に合わせた最上級のものでなければ、強度を上げた事にはならん。ま、まぁワシも少々、やり過ぎと言うかリクをとユノ達を合わせるとあぁなるのは、今知ったがの」
「全部計画通り、みたいな事を言っていても実は予想外だったんじゃないですかぁ!」
「き、気のせいじゃ……ともかく、今日の訓練はこれで終いじゃ。すぐに魔物討伐に行くのじゃから、今のうちに休んでおけ」
「はぁ……わかりましたよ……」
強度を上げられた俺の訓練。
それはユノとロジーナを同時に相手する模擬戦だった。
訓練という意味ではこれ以上ない物なのは間違いないと思うけど、俺はユノとロジーナを狙う事はできず、持っている木剣を叩き落すのを目指せと言われた事。
さらにユノとロジーナは遠慮なく、俺を木剣で打ち付けるのを許可されているというものだった。
ただでさえ、技術面ではユノもロジーナも両方とも俺より比べるべくもなく圧倒的に上なのに、そんな条件が付けられたら俺は一方的に木剣で打ち据えられるだけだ。
結局、一度もユノやロジーナの木剣に俺の持っている木剣を合わせる事すらできず、ただひたすらやられ続けた模擬戦だった。
というか模擬戦って、大抵はどちらかが有効打を当てるなりすれば終わるはずなのに、俺がどこをやられても終わらなかったんだけど……まさか強度を上げるって、俺の打たれ強さを試したり痛みを与える要素を増やすって事じゃないだろうか?
ちなみにモニカさん達も、内容は違うけど大体は俺と同じようにアマリーラさん達と、かなり全力での模擬戦をしていたようだ。
怪我をしないような配慮はアマリーラさん達の側がしていたようではあるけど、俺と同じように三人とも全身を何度も打ち付けられていたみたいだった。
俺は痛いくらいですむ程度だったけど、あっちは打ち身とか大丈夫かなぁ?
「いつつ……はぁ。こっちに来てからほとんどないか、痛みに強いわけじゃないけどちょっと懐かしいかも」
訓練後、湯船には浸からないようにして大浴場で汗を流して出て来たばかり。
体のあちこちに赤く腫れた打ち身ができているのは、ユノとロジーナに散々木剣で打たれたからだろう。
でも、こちらの世界に来て魔力だなんだで怪我をしないわけじゃないけど、こういった打ち身自体ほぼないと言っていいくらいだったし、なんとなく懐かしく感じて痛みを感じながらもちょっと顔が綻ぶ。
ちなみにモニカさん達も同様に、汗を流すために大浴場へ行っている……当然女湯だけど、あっちも体のあちこちが痛むようだったから、やっぱり打ち身はできていて湯船には疲れないだろうなぁ。
「……リクは、痛みを喜ぶのだわ? ワイバーンと同じなのだわ?」
「いや、さすがにそこまでは。なんて言うのかな、こちらに来てからほとんど感じなかったから、なんとなく生きている感覚というか……俺も人間なんだなぁって実感というか……」
あれ? 自分で言っていてワイバーンとそう大差ないような気がしてきたよ?
……気のせいって事にしておこう。
「小さい頃は、転んだりとかでよく擦り傷や打ち身ができていたからね。それで姉さんを困らせていたけど……」
「ふーん、だわ」
「自分で聞いておいて、興味なそうな返事を……」
子供の頃……小学生低学年とかそこらだけど、まだ姉さんといた頃の事を少し思い出した。
特にやんちゃってわけでもなかったと思うけど、年齢相応に外を走り回っていたから、転んでひざを擦りむくなどのちょっとした怪我をする事はあった。
そのたびに、姉さんに苦笑されたり溜め息を吐かれたりしながらも、手当てをしてもらったりはしていたんだけど。
経緯は全然違うけど、久々に体に残る痛みを感じてってだけの話だ。
そんな風に、怪我をして懐かしむってのも変な話だけどエルサと話しながら、部屋に戻ろうと王城内を歩いていると………。
「おぉリク様。こちらにおられましたか」
「あれ、宰相さん? どうしたんですか?」
何やら、俺を見つけて安心したように声をかけて来る宰相さん。
宰相さんは、エアラハールさん程ではないけど老人……初老よりは少し年齢がいっている感というか、五十代から六十代といった風貌で、腰は曲がっておらず真っ直ぐな背筋から風格が漂って入るけど穏やかな雰囲気も感じる。
なんというか、品のある穏やかなお爺ちゃんのような人ってところかな。
まぁ、俺なんかが長年この国の宰相をしている人をお爺ちゃんだなんて、失礼にもほどがあるかもしれないけど。
「ティアラティア獣王国について、少々相談事がありましてな?」
「獣王国……ですか?」
ティアラティア獣王国というのは、アマリーラさんの出身国で獣人の国、さらに言えばアマリーラさんの父親が治めている国の事だね。
その事で俺に相談って、なんだろう? 向こうと連絡を取るという話は聞いていたけど、それは姉さんとアマリーラさんの間の話だったと思うけど。
「問題があるわけではございませんが……少々こちらをリク様に確認していただきたく思いまして……」
「えっと……?」
何やら言い辛そうにしつつも、俺に差し出してくる数枚の紙。
それを受け取って見てみると、獣王国の王様……アマリーラさんが父親である獣王様に充てた手紙の用だった。
時候の挨拶から始まり、こちらの国の状況などが書かれている。
獣王陛下に向けて出すものというよりは、娘が父親に充てた手紙という雰囲気も漂っていて、なんとなくアマリーラさんらしいと思って顔が綻んだ。
「これ、俺が読んでももいいのでしょうか?」
人の手紙を勝手に呼んでいる感じがして、宰相さんに聞いてみる。
「問題ありません。そちらは、アマリエーレ様……アマリーラ殿が書かれた物ですが、陛下を始め我々で確認する物ですので」
「あぁ成る程。だから、この国の内情とかも書かれているんですね」
「はい」
いくらアマリーラさんが獣王様の娘だとしても、この国の内情……帝国との戦争だのなんだのや、各地で起こった魔物の大量発生と襲撃に関しても書かれているのは、下手をしたらスパイの嫌疑がかかる可能性があるからね。
疑われないためにも、姉さんや宰相さんに提出して前もって確認してもらっているというわけなんだろう。
だからって、それを俺が見ていいとなる理由になるかは微妙だけど……まぁアマリーラさんなら、恥ずかしそうにしながらも許してくれそうではある。
いや、胸を張って恥ずべき事はないと言うかな?
「……相談するような内容には思えないんですけど」
全部読んだわけじゃないけど、多少この国に関する事が多くていいのかな? と思う部分があるくらいだ。
そのあたりは、姉さん達も確認するんだから俺があれこれ言う必要はないと思うし、それで相談されても困るくらいだ。
というか、そう言った相談ではなさそうな気がする。
宰相さんに切羽詰まったような雰囲気が感じられないし、なんとなく困っているというだけの様子だから。
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