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第18話 バハムーさんに乗って運動場予定地へ
しおりを挟む「おはよう、じゃ。それは何なのじゃ? マリーもするじゃ!」
「あ、マリーちゃん。……そう言えば、一緒に寝たんだったわね」
キスをしている俺達を、観察していたマリーちゃんが興味深そうに言う事で、ようやく気付いたカリナさん。
「マリーちゃん? さっきのは、夫婦でする事なの。だから、娘であるマリーちゃんはしなくて良いのよ?」
「そうなのじゃ? わかったじゃ!」
意外と素直に、カリナさんの言う事を聞いてくれたマリーちゃん。
家族だけど、カリナさんとマリーちゃんはともかく、さすがに俺と……というのは問題だしな。
マリーちゃんがすんなり納得してくれて良かった。
「それじゃ、今日も料理を作るわよー。マリーちゃんが娘になったから、腕によりをかけて美味しい物を作るわね?」
「やったー、カリナさんの手料理だー!」
「あの不思議と美味しい料理じゃ……楽しみではあるのじゃが、やはり何故あれで美味しいのか不思議じゃ……」
「……私のも、忘れずに用意してくれますかね……?」
朝起きれば朝食。
それは、カリナお母さんが決めた絶対の規則。
これに反対しようものなら……考えたくない。
以前、時間がないため朝飯抜きで仕事に行こうとして、カリナさんにこっぴどく叱られて遅刻した記憶がある。
あの時、何を言っても聞いてくれなかったからなぁ……、
だから、どれだけ時間が無くても、仕事に行く途中でコンビニおにぎりを食べる事になっても、朝を抜かないようにしてる。
今は時間に追われる事も無く、余裕もあるから、美味しいカリナさんの手料理を頂く事に、もろ手を挙げて喜ぶだけだな。
「相変わらず、何故あの調理の仕方でこうなるのか不思議じゃが……美味しかったのじゃ、カリナママ!」
「良い子ねー。マリーちゃんが喜んでくれて、私も嬉しいわ」
「良かった……私の分もあった」
相変わらず、色々な物をまき散らして料理をするカリナさん。
それで美味しい物を食べられるんだから、文句を言う事はない。
カリナさんに頭を撫でられ、くすぐったそうに微笑むマリーちゃんを朗らかに眺めて、朝食後の満足感を味わうひと時。
なんだが……クラリッサさん、少しづつ根暗キャラになって来てない?
元々、こっちが素なのかな?
「今日は何かあるの、マリーちゃん?」
「今日は運動会の準備じゃ。そろそろ運動場を用意しないと、準備が進まないのじゃ」
何でも、運動会の会場になる場所は、城下町から出た場所にあるらしい。
まだ用意が進んでなくて、場所が決まってるだけ、という事らしい。
だから、準備を進めるための、運動場の準備をするようだ。
「へー、城下町の外か……どんなところなんだ?」
「基本的に荒野なのじゃ。作物を作っている場所以外、魔界はそんな場所ばかりだからじゃ」
「そうなのか」
まぁ、日の光が当たらない世界だからな……木が育って森になったり、草花が生えて草原になる事もほぼないのかもしれない。
「そういえば、この世界には、お日様が差すことは無いの?」
ふと、カリナさんが思いついたように言う。
確かに、それは今まで聞いた事がなかったな……実際、朝だろうと昼だろうと、明るくなる事が無いから、日が差して来る事は無いのかもしれないが、そう言う場所がどこかにあってもおかしくはない。
そうしないと、作物も育ちそうにないしな。
「お日様なんて、人間界にあるだけじゃ。魔界には存在しないじゃ」
「へー、そうなの」
いや、カリナさん、そうなのじゃなくて、もっと聞くべき事があるんじゃないかな?
生き物にだって、日の光が必要な事もあるかもしれないし……いや、魔物ばかりだから、必要ないのかもしれないが……。
「えっと……それで植物とかは育つのか? 作物を作っている場所はあるみたいだけど……」
「大丈夫じゃ。何もしなければ育たないじゃが、こうすれば良いじゃ。……サンライト」
「お?」
「ん?」
「魔法ですねー」
植物が日の光を必要としない、というわけではないらしい。
軽く魔法を唱えて、頭上に10センチ程度の丸い光の球を浮かべるマリーちゃん。
直接見るには少し眩しい光だけど、その光を使う事で、作物を始めとした植物を育てているんだろうな。
公園にあった植物も、こうやって管理していたのだと思う。
「これは軽く作った物じゃ。作物を育てる時は、この数倍はある光を浮かべるのじゃ」
今浮かんでる光は、10センチ程。
その数倍ある物を魔法で作って浮かべるのだから、太陽の光の代わりができるんだろう。
蛍光灯とかよりは断然明るいから、光を必要とする植物はこれで事足りているのかもな。
「黒い物が浮かんでるわねぇ……?」
「カリナママ? ……うぉ! 眩しいのじゃ!」
「どうしたんだ?」
カリナさんが首を傾げながら、浮かんでる光に手を伸ばした途端、マリーちゃんが目を塞いで悶えた。
直後に光は消えたけど……一体どうしたんだ?
「カリナママ……魔法全反射なのじゃ……。マリーに光が跳ね返って来たじゃ」
「そうなの? ごめんなさい。ただ黒い物が浮かんでたから、何かと思って……」
「そういえば、カリナさんは魔法を全て跳ね返すんだったっけ……」
カリナさんがこの世界に来る時、神様の声に授けられたのは、全魔法反射の能力。
常時発動だから、俺の身体強化(極限)と違って、魔法に触れるだけで全て反射してしまう。
「もしかして、マリーちゃんが魔法を使ったから、その使用者に全て跳ね返ったのか?」
「そのようじゃ。いきなり見ていた光が、目を焼くのかと思う程強くなったじゃ。驚いたのじゃ……」
「ごめんなさいね、マリーちゃん」
「仕方ないのじゃ。カリナママは、魔法に対して絶対的な防御を持っているのじゃ!」
ようやく眩んだ目が元に戻って、閉じていた目を開くマリーちゃん。
謝りながら、頭を撫でていたカリナさんを、許してくれるマリーちゃんだった。
結構、器が大きいよな、マリーちゃんって……体は小さいけど。
「それじゃあ、運動場まで行くのじゃ。バハムー!」
「はっ、ここに!」
城から外に出て、広場のような場所で、マリーちゃんが空に向かって叫ぶ。
一瞬のうちに飛来した大きな影が、マリーちゃんの前に降り立つ。
それは大きなドラゴン、バハムーさんだ。
運動場は城下町の外で、距離があるので、そこまでバハムーさんに乗って行くという事らしい。
「さぁ、カリナママ、ユウヤパパ。バハムーの背中に乗るのじゃ!」
「わかった」
「おじゃまするわね」
「……私は呼ばれなかった……」
マリーちゃんの号令で、背を向け伏せているバハムーさんの背中に、よじ登るようにして乗る。
ドラゴンに乗って空を飛ぶ、というのは不安だったけど、座ってウロコっぽい物を掴むと、安定感があって安心した。
クラリッサさんの名前が呼ばれなかったが……まぁ、マリーちゃんが、全員乗り込んだ事を確認して頷いてるから、忘れ去られてるわけじゃないと思うぞ? ……多分。
「マリー様……マリー様や他の方々はよろしいのですか……ユウヤを乗せるのは……」
「なんじゃ、嫌なのじゃ?」
「嫌というわけでは……しかし、これでは私がユウヤに屈服したようで……」
「嫌でないなら良しじゃ。さぁ、さっさと行くのじゃ!」
「……畏まりました」
俺を乗せる事を渋ったバハムーさん。
マリーちゃんの言葉で、渋々立ち上がる。
俺を好敵手として見てるらしい、という事だから、屈服させたように見られる事を躊躇したんだろうが……俺はそんなつもりないからね?
ドラゴンを屈服とか、意味がわからない。
しかし……婆やさんが言ってたのはこれかな?
はっきりとマリーちゃんが指示をすると、反対する事も無く、一応渋々ではあるが従う……もしかすると、どれだけ嫌がっても、マリーちゃんが命令すれば魔物達は本当に従うのかもなぁ、と感じた。
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