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“これ”が現実だったらいいのにな…

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『明日はお休みだし。久しぶりに“これを”じっくりできるかも…。』


平日の日の夜。
わたしはお風呂を終え、自分の部屋でくつろいでいた。

母にはすでに「おやすみ」の挨拶を済ませ、今日はもう下に降りる予定はない。

疲れた体を休めるようにベットの上へ座りながら、今日学校で見つめた“あの子”のことを思い出す。

そして、お風呂上がりの火照った身体を少し冷ますため、扇風機の風を浴びながら、目は一心に手元を見つめていた。


いま、わたしの手にはヘルメット型のディスプレイが握られている。

これは、最近購入したゲーム機の本体で、頭に被り操作をするものだ。

…と言っても、別に被りながら動き回るわけではなく、意識をゲームへ“ダイブ”させ、眠った状態でプレイするイメージである。

こうすることによって、よりリアルに、本当にその場にいるかのような感覚になることができる。

わたしはさっそく頭に被るとベッドに寝転び、“スタートボタン”を押した。



『こんばんは、すみれ様。今回はどのシチュエーションで“プレイ”しますか?』

スタートボタンを押した後に目を開ける。
するとあたりは白一面の世界が覆い尽くし、“ダイブ”に成功したのだと実感した。

そして、目の前にはいつものように、わたしと“同じ学校”の制服を着たNPCが姿勢よく立っていた。

“彼女”は、このゲームのナビゲーションを担当しており、人間の言ったことを理解できる“人工知能”が搭載されているらしい。

服装についてはわたしがチョイスしたもので、この方が親近感が湧くから、というのが理由だ。

「前回と同じでお願い。」

『かしこまりました。詳細設定も変更はございませんか?』

「うん。まったく同じで。」

『では、そのように致します。……準備が整いましたので奥の扉までお進みください。』

彼女の手が差す方にはそれまでなかった“オレンジ色の木扉”が出現していた。

あそこから中に入ると“プレイ開始”となる。

「ありがとう。」

『いえ。…では、いってらっしゃいませ。』

「…行ってきます。」

“ガチャッ、ギィィッ”

雰囲気のある音を鳴らしながら、扉が開く。
目の前には、“わたしが通う学校”の校門が顔を覗かせていた。

「……今日もよろしくね。」

自分だけに聞こえるよう小さな声で呟くと、わたしは扉の中へ一歩足を踏み入れた。



学校の玄関へ入り、自分の決まった位置に外履きを入れる。
そして、内履きへ履き替え、わたしのクラスへと向かう。

その途中にある廊下は、現実と区別がつかないほど精巧に作られ、壁に触った時の感覚でさえ、現実のものと同じ感じだった。

『いつか、こっちが“現実”になればいいのにな。』

そんなことを思いながら歩いていると自分のクラスへと辿り着く。

「…ふぅ。落ち着け、わたし。」

深呼吸をして気持ちを落ち着けると、その勢いで扉を開けた。

「おはよう。すみれちゃん。」

「お、おはよう。とうかちゃん。」

教室の中にはわたしのクラスメイトの“とうかちゃん”がいる。

彼女は現実でもわたしのクラスメイトで、普段はあまり話すことがない。

…だが、ここではわたしに明るく“笑顔”を見せてくれる。

その顔については、事前に“彼女の写真”を読み込んでおり、瓜二つの顔立ちでわたしを迎えてくれた。

そんな彼女へ密かに想いを寄せるわたしは、その迎え側の席に座るのだった。

「すみれちゃん、今日“日直”忘れてたでしょ?」

「ご、ごめん。…つい、寝坊しちゃって。忘れてたわけじゃないよ?」

ここでの会話は事前にわたしが設定したものだ。

“わたしは日直の仕事を忘れ、彼女に怒られる”というのが事前に設定したストーリーである。

「もうっ、ダメだよ。私が代わりに仕事やったんだからね?」

「…本当にごめんね。」

頰を膨らませながら怒る彼女の性格も、わたしが詳細に設定したものだ。
……まあ、現実の彼女ならば、こんな怒り方はしないだろうが。

「そんな悪い子のすみれちゃんには、“おしおき”が必要かな?」

「そ、そんなぁ…。」

この“シチュエーション”にわたしは頰が赤くなり、つい、目を逸らしてしまう。

“ポンッ、ポンッ”

「ほら、自分からお膝にくれば少しは優しくしてあげるよ?」

「うぅ…。わかったよぉ…。」

わたしは“しぶしぶ”席を立ち、彼女の膝へ腹ばいとなる。

もちろん、この感覚もリアルに伝わり、わたしの恥ずかしさはさらに増していくのだった。

「さあ、お尻出すよ?」

「ちょ、ちょっと待ってっ!」

「待たない。」

“ペロンッ♫”

制服のスカートがめくられ、わたしの下着があらわになる。

「ま、まだ心の準備ができてないからっ!」

「そう。じゃあ、今してね。」

“スルンッ”

「きゃあっ!?」

その下着も膝下まで下され、わたしのお尻が教室の中に晒された。

それと同時に“スースー”する感覚が押し寄せ、わたしはつい手でお尻を隠してしまう。

「こらっ。お尻を隠すこの手は何かな?」

「だ、だってぇ…。は、恥ずかしいよ…。誰かきちゃうかも…。」

「だったらその前に早く終わらせないとね?」

「そ、そんなぁ…。」

…もともと“誰も来ない設定”にしているため、人が来ないことはわかっている。

だが、このやりとりがしたかったため、わざと誘ってみたのだった。

「はぁ…。しばらく隠すのは“おあずけ”だよ?」

“クイッ”

「いっ。」

右手をひねられ背中の上に固定されてしまう。

すると彼女はわたしのお尻を“ペンペンッ”っと叩き、自分の手に息を吹きかけた。

「じゃあ、今からお尻ペンペンの“おしおき”を始めるよ。…しっかり反省してね。」

「…はい。」



バヂンッ!

「いたぁっ!」

お仕置きが始まり、お尻の真ん中に“痛み”を感じる。


このゲームは、“痛感”も共有しているため、実感と同じ痛みを体験することができるのだ。

もし、痛みが苦手な人には、実際よりも“弱い”痛みとなるよう設定もできる。

だが、わたしはよりリアル感を出すため、本物と同じ痛みを設定し、現在に至るのだった。


パァンッ!バシッ!

「い゛っ!ごめんなさい…。」

続いて連続で右側のお尻を叩かれる。

わたしは普段、家で母からお仕置きをされているが、好きな人からされるお仕置きは、“それとは違った”感情を芽生えさせてくれた。

「ほらっ、聞こえないよっ!」

バッヂィィンッ!!

「あ゛あんっ!?ご、ごめんなざいぃっ!!」

たった数発でわたしのお尻は真っ赤に腫れ上がるように、“じんじん”とした痛みが押し寄せてくる。

『や、やっぱり“厳しく”設定しすぎたかも…。』

「すみれちゃん。聞いてるのっ!」

バッヂィンッ!

「いだいっ!?…き、聞いてるよぉ。」

「はぁ…。本当に反省してるのかな?」

バッヂィィンッ!!

「きゃぁぁぁっ!!」

“余計なこと”を考えていたせいで、彼女はそのことを察知してしまったみたいだ。

事前に“厳しい設定”にしてしまった自分を恨みながら、お説教のこもった平手を甘んじて受けるのだった。



バヂンッ!

「あんっ!」

バヂッ!

「んんっ!」

教室にある時計の長い針が半周する今。
相変わらずお仕置きは続いていた。

「すみれちゃん…。私、知ってるよ。」

バヂンッ!

「んっ!…な、なにを?」

「すみれちゃんが、……毎日私のことをこっそり見てくること。」

「っ!?……な、なんでっ!!」

そんな“設定”は事前にしていないはずなのに…。
なぜ、そのことを知っているのだろう。

「そっか。気づかないんだ。……悪い子のすみれちゃんには教えてあげないよ。」

「そ、それってどういう…。」

バッヂィィンッ!!

「いっだぁぁいっ!!」

「ほら、おしおきの続きするよ?」

話を遮るように、彼女からより強い平手打ちをもらう。

バッヂィィンッ!!バッヂィィィンッ!!!

「だぁぁぁいっ!?もうゆるしてぇっ!!」

その後もさらに強さの増した痛みがわたしへ与えられる。

何故か、彼女から“怒り”の感情が伝わった気がしたが、…きっと、気のせいなのだろう。



「…すみれちゃん。反省した?」

「……グスッ…。反省じましたぁ。」

時計の長い針が一周するころ、ようやくとうかちゃんの手が止まる。

散々泣き腫らしたわたしの瞳は“すがる”ようにとうかちゃんを見つめていた。

「じゃあ、仕方ないから許してあげる。…ほら、こっちおいで。」

「…うん。」

お許しが出て、わたしの右手が開放される。

そしてわたしはとうかちゃんのお膝にまたがり、その身体を“ぎゅっと”抱きしめた。

「…グスッ……。痛かったよぉ…。」

「よしよし、よくがんばったね。」

とうかちゃんもわたしを抱きしめ、頭を優しく撫でてくれる。

その感覚にわたしは安心し、“トロトロ”と意識が薄くなっていくのだった。

「次、来るまでに…気づいてね。」

「えっ…?」

完全に意識が落ちる前にそんなことを囁かれた気がする。

だが、わたしはその言葉の意味を理解する前に頭の中が真っ暗となった。



『んー…。この感じ、“戻って”きたんだ。』

頭の中が少しづつ整理され、“現実”に戻ってきたのだと実感する。

だが、ヘルメットをしているせいであたりは暗く、何も見えない状態だった。

「ふぅ…。……ひぃっ!?」

少し気怠げにヘルメットを取り、部屋を見回す。
…すると、いつの間にか部屋に入ってきた母に、笑顔で見おろされていた。

「…すみれ、今日朝ごはんの当番忘れてたでしょ?」

「あ…。」

気がつくと、カーテンは開けられ、外は明るく太陽の光が差し込んでいた。

きっと、予想よりも長く“プレイ”してしまい、朝の時間帯になってしまったのだろう。

「やっぱり忘れてたのね。…もう、ママがお腹を空かせながら用意したのよ?……はぁ、じゃあご飯の前に“お仕置き”を済ませましょうか?」

母は、手に持った“おしゃもじ”を見せつけながら近づいてくる。

「ま、まってっ!お母さん、もうお尻痛い…。」

「なんで痛いの?」

「そ、それは…。」

「下手な言い訳をしないで、素直にお尻出しなさい?」

わたしの主張は通らず、膝の上に連行されてしまう。

さっき散々“ペンペン”されたのに、わたしのお仕置きはまだまだ終わりそうになかった……。


「完」
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