ブレインダイブ

ユア教 教祖ユア

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弐章・選ばれし勇者編

2-18 50 智花視点 勝てる気のしない相手

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(困るのは…相手が黒煙を使った時…!)

「電光石火(小)……」

「月桂(中)…!」

相手の反応速度が物凄く早い。

しかし、相手は攻撃を受けているフリをしている。

(本当に演技が上手…!これも鶴に教えて貰ったお陰だね……!)

油断はしてはいけない。確実な手応えを感じなければ意味が無い。

(鶴が言った通り…空気を読んで…!香露音先輩が言った通り…相手を見て…!)

「隼(小)…」

相手は戦い慣れていない。先に攻撃すればする程、カウンターされる。

……そして、そう思わせる演技をしている。

物凄く戦い慣れている。対人戦はこの人達の専売特許だ。

隼の攻撃を避ける。

…一太刀で、相手を倒せる。

態々…能力の撃ち合いをする必要は無い。

「鎌鼬(小)…!」

狙うは首。……という演技。

一人の暗殺者は慣れた手つきで避けていく。

「朧月(大)………」

朧月の攻撃は気配察知が何一つ効かない。

一瞬消えて攻撃する。

まるで、一瞬だけ雲がかかった月の様に。

そして後ろから攻撃する。

相手はまた反応して後ろに振り向く。

しかし、そこには智花は居ない。

消えただけでそこから一歩も動いていなかった。

暗殺者が、反応する前に首を跳ねた。

「よし…!相手も消えた………!」

あと二人…を見渡すが、一人しかいない。

もしかしたら、光か奏恵が倒したのだろうか。

3人で固まる。

「鶴が言ってたよね…?」

「そうそう。」

「敵が…少なくなればなるほど固まらないといけないってどういう事だろう…?」

すると、一人が攻撃してきた。

「黒の一閃(小)…」

(この人…暗殺者だと……!)

2人も殺されそうせざる負えなかったのだろうか。

それでも何故か引っかかる。

「雷球(中)…!」

光が攻撃するのと同時に奏恵の悲鳴が聞こえる。

「うう…!」

刺されて貫通している。

(2人…!?いや…違う!まだ誰も死んでないんだ…!!)

言ってしまえば死んだふり。

やられたフリをした瞬間、気配隠蔽を使ったのだ。

「この…!」

奏恵は暗殺者の腕を掴んだ。

「アタックアップ…!」

奏恵は自分の武器を暗殺者の心臓に向ける。

相手は心臓に唐傘を使う。

聖なる光ホーリーバースト(大)…!」

しかし、何も出ない。

智花は既に暗殺者の後ろにいる。

「月桂(中)。」

今度は斬り落とした手応えがある。

「奏恵…?」

「大丈夫。…じゃないけど、まだ戦える。」

智花は暗殺者の持っている能力の一つである気配察知・妨害をぶち抜かないといけない。

「私は、ずっと気配察知使う。」

「しんどいけど、大丈夫?」

「棚見君からみっちりとやらされたからね。舐めないでってこと。」

「なんと…安心できる言葉で。」

今までの特訓には、外の世界で戦える程の実力をつけさせられた。

その為には、気配察知、アナライズ、気配隠蔽は必須だ。

それでも、この短期間では使い物になる程のレベルには3つとも達する事は出来ない。

だから、皆で分割した。

智花は気配察知を。

奏恵はアナライズを。

光は気配隠蔽を。

鶴だけを先には行かせない。皆で行こう。皆で戦おう。

その為に、前回一位に勝たなければ。

その先に行く為に。

気配察知を使っても妨害され、上手く発動しない。

しかし、一瞬だけ気配を見つけられる。敵の気配は2つだけ。

3人分の気配察知・妨害をくらえば流石に気配察知を使えなかった。

奏恵は自身にヒールを使う。

僧侶は確かに名前の通りに傷を癒せるが、完治は出来ない。

100%の状態に限りなく近くすることしか出来ない。

だから、奏恵はまだ戦えるだけで、ずっと戦える訳じゃない。

すると、世界が黒い煙に包まれた。

「っひ……!」

光は少し硬直した。暗所恐怖症はやはり駄目なようだ。

「………いや……大丈夫………………」

そう言い智花にもたれかかる。

「…………私、ずっと目を瞑っとくから。」

(全然大丈夫じゃないじゃん!)

暗所恐怖症を何とかするために、自分から暗くなるのはいかがなものかと思う。

すると、智花の剣が少し変わっていく。魔法剣を付与されたようだ。

「…っ…!閃律(小)………!」

奏恵は弱々しい声を発した。それでもちゃんと攻撃を防げている。

すると、空気が切れる音がする。

(次はこっちね…!)

あくまでも最小限に。

(斬鉄剣(小)…!)

暗殺者は綺麗に避けてくる。

一方的な状態で、辛々反撃しても防がれる。

流石に分が悪い。

(どうしよう…!目を瞑って何も見えない光と、負傷中の奏恵と私でどうやって戦う…!?)

「私…やってみて良い?」

光が言い始めた。

「………本気でするの…?」

奏恵も聞いている。

「まぁ…今のところ、私が何も出来ないし…やるしか無いかなって。」

「…じゃあ…お願い。」

「魔法式・瘴気…………」

持続型のブーストを発動した。

異常状態系の何かしららしいが、光本人にもよくわからないらしい。

「……あ………こうか…」

光が何やらブツブツ言っている。不安でしかないが大丈夫だろうか。

すると、暗殺者が襲ってきた。

「…ふっ……!」

何か動きが鈍い気がする。

もしかしたら、異常状態になっているかもしれない。

そしてもう一方向から来た。

「光!2時の方向……!」

拘束バインド(中)……!!!」

目を瞑った状態で暗殺者を拘束する。

聖なる光ホーリーバースト(大)………」

奏恵は暗殺者の首を掴み聖なる光を発動させた。

やってる事は全く神聖で上品とはかけ離れていることをしているが、何とかもう一人も倒せた。

「……はぅ………」

そろそろ奏恵が限界だ。

霧が晴れていく。

すると、気配察知に引っかかる。

(後ろ…!)

ずっと近くで何もせずに居たらしい。

しかし、智花よりも行動が早かった。

「輪廻(小)………」

(駄目だ…!全員やられる…!)

「雷球(大)…!」

暗殺者はふっ飛ばされた。

「光…!?」

「ずっと、目を瞑ってたから賭けだった。…奏恵も限界だし。ブーストも限界だったし。」

確かに、さっき終わっていた様だ。

「…なので、あとは智花に人頼みです!」

「えぇ…………」

急に頼まれた。

「縮地(中)…!」

「鎌鼬(中)…」

タイマンで勝てる気がしない。きっと相手の方が強い。

鶴とよく手合わせしていたが、勝った事が1つもない。

しかし、近距離に不向きな光と戦わせるつもりもない。

それに、2人とも限界だ。

慣れないブーストを発動させたり、負傷したり。

それに派手な成果を見せていない。

「黒の一閃(中)…!」

攻撃を避け、反撃する。

(この一太刀で、仕留める。)

「朧月(大)…」

世界が割れた。

「ほへぇ………」

「あぁ…しんど…」

2人が溜息をつく。

「勝ったんだし、喜びなよ。」

「ぅわーい…智花、すごぉーい…」

棒読みで光は言う。

確かに、めちゃくちゃ疲れた。

待機室に戻るが、この日はもう何も無かった。

先輩達が物凄く気がかりだが仕方無い。

それに、前回と違い人が少ないお陰で残りの10組に入っている。

資格が取れたのでノルマは達成した。

「………疲れたぁ……」

「そうだねぇ……………………………あれ?」

光は何かを見つけた。

「どうしたの?」

「……見間違いかな……?さっき、夏希先輩っぽい誰かを見た気がするんだけど………?」

「…行こう!…本当にそうかもしれないよ。」

3人は走り始める。

「でも、消えているんでしょ!?」

「大地の涙達が、あーだこーだやっている間に復活した可能性があるかもしれないじゃん?」

「そうだけど…!」

「取り敢えず、本当かどうかは見つけないと…!」

「そうだね。」

すると、突然、人間では無い何かと目があった。

「止まって!」

「え、急に何を………って…」

「何これ…?……まさか…!」

「多分、モンスターだ…!」

3人は直ぐに構える。

「智花、何体いる?」

「今のところこいつだけ。」

モンスターは襲ってきた。慣れなくても戦わなければ街に放ってしまう。

拘束バインド(中)…」

光はモンスターを拘束する。

するとモンスターの口から火の玉が放出した。

「唐傘(中)!智花!」

奏恵が火の玉を防いだ。

「オッケー!隼(中)」

智花がとどめを刺した。

「何でこんなモンスターが……?」

「勝てたから良かったけど……………」

すると、人が出てきた。

「皆強くなったんだね。流石、皆だね。」

「え……………!?」

今までで1番驚いた日になるだろう。
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