ブレインダイブ

ユア教 教祖ユア

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参章・昇りし太陽編

3-13 70 奏恵視点 大捜索

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「なぁ、奏恵。…お目当ての人とちゃんと喋れたか?」

「うん。ありがとう。お姉ちゃん。」

「…で?また誰か探すのか?」

流石にバレたか。お姉ちゃんは勘が鋭い。

「うん。でも、大丈夫。…私だけでも探せるよ。」

緋色先輩には言ったけど実際はするつもりはない。

重症の人にそんな負担なんてさせたくない。

思い出せそうな人を考えると、真っ先に思いつくのは鶴だ。

でも、わざわざ私が探す必要は無い。

最終的には緋色先輩と合流するから。

香露音先輩、夏希先輩、智花、光…この中で一番思い出せそうな人は………

「…なあ、奏恵。」

「?」

「奏恵…外の世界に行くつもりか?」

「………どうして、そう思うの?」

「勘だよ。ただの不良としての、姉としての勘さ。…ま、好きにしなよ。死ぬ以外なら何でもいいさ。」

「…お姉ちゃん………ありがとう。」

お姉ちゃんを何時までも心配させる訳にはいかないから…できるだけ早く、全員で帰ろう。

私はそう決めて、人を探す準備をし始めた。

(…一番、何とかなるのは光かな。…むしろ、同じ様に探してるかも。)

光の小学園は確か淦小学園だった気がする。

取り敢えず、姉と別れ一人で行動する。

流石に家まで囲まれて移動は恥ずかしい。

それに……

さっき、緋色先輩が言っていたけど…

「…で……………さっきから誰か見てない?」

「……ああ…そうだな。」

どうやら気配察知に引っかかっているようだった。

でも、私は見つけれなかった。

「…………今、来る事も無いだろうし…気を付けてね。」

「俺達や君のお姉さんが居るのに喧嘩ふっかける真似はしないだろうしな。絶対に勝てないのもあっちは分かってるだろう。ま、多分だけど君一人でも倒せるんだろ?」

との事だけど、今は私一人な訳だから…

あからさまについてくる。目視出来るし、私の拙い気配察知でも確認出来る。

私は立ち止まる。やはり、後ろの人達も立ち止まった。確定だ。

後ろを振り向き睨み付ける。

ここで怖がってはいけない。

しかし、如何したらいいか分からない。お姉ちゃんなら圧で退けれるけど。

「…お前…血喋団のトップの妹だな。」

「……だから何ですか。」

「恨むなら、お前のねぇちゃん恨むんだな。」

どうやら、お姉ちゃんの逆恨みのようだ。

お姉ちゃんの事だからこういう悪い人は私に寄せ付けないようにしているようだけど…

無理な時は無理だ。

確かに、前回までの世界は誰かと行動を共にしていた。

やっと、一人で行動してくれたチャンスだと彼らは思っている事だろう。

「……どうするつもりですか。」

「ちょっと、君のお姉さんに痛い目にあってもらうだけだ。大丈夫、痛くしないから。」

「お断りします。ストーカー行為良くないと思いますので…止めたほうが良いと思います。」

ここまで言わせたのだから帰って欲しい。

「…君は、お姉さんが何をしたか分からないだろう?だからそんな事言えるんだよ。」

「それとも…清楚ぶってるだけで…実は夜では活発なのかな?」

失礼極まりない。

「貴方達の場合は不良では無く、半グレですね。」

「ああ?」

「…本当に不良と自称するなら…喧嘩を売る相手は間違えたら駄目ですよ。………するなら、もっと賢く煽ってください。」

これでも、体術は粗方やっている。

ペン一本でも戦えるし、素人が武器を持っていても素手で戦える。

だから、私の見た目や性格からは想像できないような荒い戦い方が出来る。

勿論、極力戦いたくはない。

「決闘します?それとも物理的な殴り合いをします?そうしないと自分達がいかに愚行を働いているか分かりませんか?…私を…守られるだけのか弱い妹だと見下してます?」

「この野郎…!喧嘩を売る相手を間違えてるのはてめぇの方だ!」

「ボコボコにしてからたっぷり美味しく頂いてやるぜ!」

「行くぞ野郎共!」

一番近くにある物で武器になる物は……無いか。

相手はパイプやらバットを振り回しているので、そこから拝借しよう。

「オラッ!」

「す…!」

重心を手で突いて相手を崩す。

「この!」

バットを振り下ろしてきたが、その腕を掴みバットを飛ばした。

「おっとっと。」

高く飛んだバットを掴む。我ながら様になっていない。

「どうしますか。私を使って何かするのは止めたほうが良いと思いますよ。」

すると、さっきよりも人数が多くなっている。

「…確かにそうかもしれないが、数を揃えばこっちのもんさ。」

流石に大人気無い…と思ってしまった。

「何故そこまで…お姉ちゃんが何をしたって言うんですか!」

「あぁ?夜露死苦団の団長の仇に決まってるだろ!あいつを倒して、もう一度再建するんだ!」

…はぁ…この人達はお馬鹿さんだ。

「…このご時世ずっと変化し続ける……貴方達の集団は、その流れに則りあるべき姿に変化しただけ。」

言ってしまえば、弱肉強食。強者に喰われただけのこと。

「一度やられたのに…復活したところで、またやられますよ?一度でもやられてしまえば…また何処かで躓く。」

「何だと?コラァ!」

「…それなのに、貴方達の実力を上げずコソコソと姑息な方法で潰そうとするなんて…本当に再建するつもりですか?それに…」

私は見下すような目で嗤う。

「私の姉は…子供騙しのお遊びに付き合ってあげる程、暇じゃありませんよ?」

「……な…!!!!」

さぁ、どう出る。

明らかな年下に見下されどう動く。

逃げるか、更に攻撃してくるか。

相手はプルプルと怒りで震えが止まらないご様子だ。

姉はあまり喧嘩した事がない。

良く言えば威勢。悪く言えばハッタリでのし上がっている。

だからといって弱い訳ではない。

本当に戦わざる負えないときは全勝している。

だから、皆がお姉ちゃんの背中を追いかける。

「……せ…!!!」

やっぱり。…お馬鹿さんたちだから…そうなるよね。

「お前ら!こいつをぶっ殺せ!」

「しゃあ!!!!」

流石に数を揃えされると、相手を無傷で終わらせる事は出来ない。

すると、数人の顔が水に埋まった。

「水球(大)。」

まさかの光だった。

「…光!?」

「…初対面だけど。」

「あっ…そうだよね。」

「嘘。未来で会ってる。」

「思い出してたの…?」

「うん。最近の事だけどね。」

不良がブクブク言わせている。水球が弾け飛ぶ。

「ガハッ、ゲホッ!ゴノヤロウ……」

「なんだ?お友達か?…誰に喧嘩を売ってるのか分かってないのか?」

光は鼻で笑う。

「半グレ集団。まさか、奏恵が不良集団の中で有名なトップの妹だって吃驚だよ。…皆個性が強いね。先輩達もだけど。」

「…てめぇも喧嘩売るつもりか?」

「売ってもいいけど…今は売らないし買わない。周りを見たら?か弱い女の子二人を虐めようとしてる絵面そのものでしょ。」

徐々に人が集まってきている。

「どうしてもって言うなら決闘でどうぞ。…本気で殺しにいく方が楽でしょ。」

この態度は何処で培ってきたのだろうか。私よりも堂々としている。

光は自ら戦いにいく様な真似はしない。面倒事が嫌いだからだ。

それでも、面倒事を自ら突っ込む時は理由がある。

その理由の為に躊躇いは無い。

「決闘をしないで…現実で殴り合い…そんなに痛い目に逢いたい?」

「っく…」

「誰かこの中で賢い人か、冷静な人居ないの?…今の状況…分からないの?」

「退くぞ。」

「え…!?」

「クソが!」

そう言い去っていった。

「………あああああああああああ………死ぬかと思った。」

完全に去っていった後、光はため息をついた。

「流石に、モンスターとは違う怖さがあるからしんど…」

「ありがと。光。」

「どういたしまして。」

久し振りの再開で感動に浸りたいけど…

私も光も、それは後回しって事が分かってる。

「…緋色先輩とは会えたんだね。だったら、大抵の事は何とかなる。」

「そうだね。…英雄君の名前を言う為に、やっぱり必要不可欠だから。」

「そうそう。それに、鶴にも確定で会える事になるから。」

「じゃあ、後は…」

「智花、香露音先輩、夏希先輩。智花は何とかなるとして…先輩達は見つからない。」

「う~ん…」

「…2人は前の事を思い出すか如何かの問題もある気がする。…先に智花の事を探そ。」

「分かった。そうしよう。」

「奏恵。」

「…?」

「今度も、誰も死なないように頑張ろうね。」

「うん。」

私達の決意は揺るがない。
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