雷撃の紋章

ユア教 教祖ユア

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7章 演劇の旅団

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「皆!朝だよ!おはよう!」

アリスの大きい声にエレスト達は起こされた。

「あと五分…」

「そんなことを言っていたら、いつまで経っても起きれないよ!トーラス!」

「ああ、クソ…」

「トーラスが簡単に起こされるなんて…」

寝起きの悪いトーラスが強制的に起こされる。

「昼に演奏するから、皆で練習するよ!」

「俺が一番大変なんだよなあ…」

エレストは悲しそうに溜息を吐いた。

「俺達が手伝ってやる。きっと吹けるようになるさ。」

マルオはエレストの肩を叩く。

そこから演奏の練習が始まった。

「これ、結構楽しいわね。」

「意外と簡単で助かった。」

エウルとトーラスは比較的余裕そうに喋っている。

「プスー…」

「もう直ぐですよ!エレストさん!」

演劇の旅団総出でエレストを助けている。

練習を開始して、一時間経ってようやく音を出すことが出来た。

「やっとできた…」

「エレスト、ここから演奏するんだぞ。」

エレストは固まった。

「エレストが今まで見たこと無いくらい死んだ顔してる…」

「ヴァンと戦ったよりも死んでるぞ。」

一番強い吸血鬼神の紋章よりも死んでる顔って、余程よね…」

更に二時間練習した。

「…これくらいなら、合格だな。」

とうとう、エレストは演奏できるようになった。

「うんうん、皆準備は出来たみたいね!」

「まだ自信ないけど…」

「エレスト、音楽は音を楽しむためにあるんだ。自信の有無は関係無い!皆で楽しもうじゃないか!」

アリスは全員を引き連れる。

村人は興味ありげに二階の窓から顔を出して見ていた。

アリスは深呼吸をする。

そのあと華やかな笑顔で言った。

「お待たせしました!我ら演劇の旅団の演奏をお聞きください!臨時の団員と共に奏でるは『王様の休日』。皆さんで楽しんでいきましょう!」

アリスの小太鼓のリズムに合わせて団員が音を奏で始める。

最初は寝ている王様を起こさないような、ゆったりとしたメロディから始まる。

そこから徐々にテンポが速くなる。

王様が寝坊であたふたしているみたいだ。

ここから、騒がしいパレードのメロディが流れる。

「今日は休もう」という掛け声に合わせて作られたと言われている。

それぞれの楽器に違うメロディが流れているのにもかかわらず、それらはバラバラにならず、見事に調和し素晴らしい音楽を奏でている。

国民が誰でも簡単にこのメロディを奏でられるように、比較的簡単に作られている。

だから、民が簡単に、かつ楽しく騒ぐことが出来るのだ。

王も民も関係なく騒いだ後、皆は疲れて寝てしまう。

徐々にメロディが静かになり、やがて音は消えた。

演奏が終了し、歓声が湧きたった。

「…いかがでしょうか!お楽しみいただけたのなら光栄です!我らが演劇の旅団!また、お会いすることを楽しみに待っております!」

無事にアリスたちは演奏を終了した。

「楽しかった!」

アリスは満足したような顔で、そう言った。

「君たちは楽しめたかな!?」

「…まあそうだな。難しかったけど…」

「ええ、楽しかったわ。」

「…意外と。」

「うんうん、それは良かった。」

「最初にあった時と違って、ずいぶん明るい顔になったな。」

マルオは優しく言う。

「良い顔をしている。」

「そうか?…ありがとう。」

「皆さん、お元気で!」

キルスも言う。

「ああ。お前達もな。」

「次会うときは、貴族としてかもしれませんが、この思い出は決して忘れません!」

クロスはエウルにそう言った。

「うふふ。ええ。私もよ。」

アリスは輝かしい笑顔で言った。

「君達とこれからも演奏したいけど、君達は君達の物語がある。だからここでお別れだ。君達はこの経験を得て、困難を超えることのできる何かを得ることが出来たなら、僥倖だ。また会おう。私たちがだれ一人、欠けることなく。」

「ああ。…またな。」

演劇の旅団とエレスト達は反対方向に歩き出した。

これから、エレスト達は和の国に向かう。

…筈だった。

「え、遠くない?」

あと一つの村を経由したら、和の国に到達できるのだが、そもそも、その一つの村が一向に着かない。

「野宿確定だな。」

「嘘お…」

「諦めろ。貴族サマ。」

エレスト達は野宿の用意をする。

「そういえば、エレスト。お前、魔法国で魔法が使えるようになっただろ。」

「あ、ああ。すっかり忘れてたけど。」

「火を起こして見ろよ。魔法で。こういう経験も必要だろ?」

エレストは言われるがまま、魔法を使い火を起こした。

「…下手糞だな。こんな火を起こすのに時間かかるとは。」

「魔法なんて基本使わないし…」

「ま、要練習だな。」

そうトーラスは嫌な笑みを浮かべながら言った。

顔の良さと性格の良さは比例しないみたいだ。

「今日の晩御飯は、なんとか干し肉じゃないのね。」

「今日だけだけどな。匂いの強いものは魔物が寄ってくる。」

「食えるなら何でもいいさ。貴族サマはさっさと慣れてくださいませー」

「ほんと、厭味ったらしいんだから。」

パンを食べながら、エレスト達は会話をする。

「そういえば、トーラスって魔法具何個持ってるのよ?」

「程々だよ。俺は魔法具を自作できるからな。暇なときに作ってた。」

「貴方、何でもできるのね。本当に器用だと思うわ。」

「まあ、お勉強はしてきてるからな。」

「エウルも器用だろ。それこそ楽器とかさ。」

「まあ、一応貴族の中でも大貴族の一員だし、人並み以上に勉強してきたのは間違いないわ。」

「エレスト、お前って平民どころか下民だろ?」

「ああ。」

「それにしては教養あるよな。」

「そうかもな。文字も読み書きできるし。」

「誰かに教わったのか?」

「俺の知り合いに教養のある人がいたんだ。それに、その人がいなくなった後は、平民の鍛冶屋のオッサンが良くしてくれた。」

「ふーん。恵まれてる…いや、下民に言えることじゃないか。」

「いや、恵まれてるよ。俺はまだ…恵まれてる。俺がまともになれてるのはその二人のお陰だからさ。」

「良い人に会えたのね。」

「…鍛冶屋のオッサン、今元気にしてるかな…?してるか。絶対に死なないようなおっさんだし。」

「じゃあ、その義手も鍛冶屋のオッサンか?」

「ああ。剣もそうだ。」

「剣もそこそこいいやつだけど、義手の方がガチのやつだよな。…貴族どころか、王族にも提供できるぞ、それ。」

「そうなのか?まあ、確かに傷なんて付いてないしな…」

「何者だよ…あ、話は戻るけどさ。トーラスの方眼鏡って、何の魔法具だよ。」

「いや、これが一番大したことないぞ。寧ろ他の人が付けたら、何も見えなくなる。」

「え、逆なの?」

「ああ。まあ、本も魔法具だけど、これは本を使いながら魔法を使ってたら、魔法具化しただけだし。」

「魔女の箒とか、そうって聞くものね。」

「俺がまともに魔法具作るときなんて、ほぼほぼないぞ。」

「一番要らない魔法具とかは?」

「投げたら雑草が生える、草爆弾かな。砂漠に投げても普通に枯れるし。」

「攻撃に使えないしな。」

「あれはゴミだった。」

「じゃあ、戦闘に使える魔法具とかは本くらい?」

「いや、本の中に仕込んでるナイフとかだな。実質、詠唱時間なしの魔法みたいな攻撃が出来る。」

「魔導具は質量攻撃できないのよね。制作コストが高いから…その分羨ましいわ。」

「メリットはゴミが作られないことだけどな。」

そうして、エレスト達はそのあとも話をした。

もう、時間も遅くなったので、寝ることにした。

そうして朝が来て、出発した。

「zzz…」

「また?」

「寝すぎだろ…」

エレスト達はトーラスの奇怪さに引きながら進んでいった。
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