雷撃の紋章

ユア教 教祖ユア

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8章 呪いは浸食する

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「どこかに呪術師が紛れてる!!!」

「探せ!絶対に確実に殺すんだ!!」

平和だった場所が、再び戦場になった。

「貴方は重傷者のいる方の救護室の避難の誘導を頼む!!」

防衛隊の人が二人に指示を出す。

「了解!」

橋本はその方向に向かった。

「君は軽症者の方に!」

「了解した!」

浅村もまたその方向に向かった。

警報が鳴り響く。

その音で、エレスト達は飛び起きた。

「…うるせえ…」

エレストは雑く髪を結って、二人と合流した。

「何が起きた…?」

「さあ、呪術師がーとか言ってる。もしかしたら、また来やがったのかもな。」

「連絡が無いせいで、周りの防衛隊も困惑してるっぽいわ。」

すると、奏道と閃撃が急ぎ足で来た。

「…カナミチ!」

「皆無事ね、良かった。今、団長から連絡が来たわ。呪術師が襲ってきたらしいの。ここから数分の場所で呪術師が来たってことはもしかしたら、此処も来るかもしれないわ。今、負傷者から呪術師を守るために二人は動いているらしいの。」

「って事は俺達も同じことをした方が良い。」

「ああ。」

エレスト達は直ぐに外に出る。

この薄暗い場所では簡単に見つけられる気がしない。

「あくまでも、第一優先は負傷者を守る事だ。怪我人を殺させるな。」

「そらそうだ。副団長、俺達は怪我人が一番多いここで守ろう。」

「ええ、そうね、場所を移動しましょう。呪術師がいそうな場所がいくらでも目途が立つ。」

防衛隊の仕切る人間が救護室にいない。

恐らくまだ情報共有がされてない。

全員がバラバラに守っているタイミングで、防衛隊の人が追加で来た。

「呪術師が襲撃に来た。戦える者を片っ端から集まってくれ。部隊が違う者同士でも構わない。」

エレストは暗い場所でさらに暗い影を見つけ、背後から首を絞めた。

「マジで、本当に呪術師が居やがる…!」

「この人数の呪術師を、一体どうやって集めたんだよ…!」

「これ結構まずいんじゃない…!?」

浅村だって、完治しているわけでは無い。

実際に浅村は避難の誘導しかできていなかった。

(戦えるっちゃあ戦えるけど…!)

暗い場所から、ナイフで刺そうとする黒フードに襲われた。

「っう…!」

咄嗟に腕を掴む。

「離れろ…!!」

足で蹴り、体を離す。

「凍てつけ。氷槍アイススピア!」

不得意な氷の魔法が呪術師の頭を突き刺した。

(これ行けるか…!?いつまであるんだ・・・!?)

すると、奏道から連絡が来た。

「大丈夫?」

「呪術師が一回来たけど、まあ大丈夫だよ。」

「そう、安心したわ。エレスト達も起きて、一緒に戦ってる。」

「そっちもなんとかなりそうで安心したよ。」

「愛ちゃんにも聞いてみるつもりでいる。何かあったら、直ぐに言って。」

「おっけ。」

橋本は負担が無い場所にはいるはずだ。

「グループ通話に切り替える?」

浅村は少し考える。

(魔力消費が若干激しくなるけど…魔法具に魔力は100%溜まってるちょっとならいけるかな。)

「構わないよ。」

「もしもし?大丈夫?」

「…療さん。」

橋本は冷静に言った。

「こっちに異常なしです。切りますね。」

「なんだ?秒で切りやがった。」

「結構疲れてそうだったね。」

奏道は急に言った。

「皆。愛ちゃんのとこ行きましょう。」

「え!?」

「あの子は本当に異常が無いなら、こっちの状況を聞くわ。暇だから。」

「一理あるね。」

浅村は橋本の場所に向かった。


少し前。

魔力に限りなく気を付けつつ、橋本は避難誘導していた。

呪術師を見つける方法で一番分かりやすいのは、探知魔法を使う事である。

しかし、今の橋本には少し厳しい

少しでも使い過ぎると、酷い眩暈が起きてしまう。

急性魔力枯渇症を短期間に何度も繰り返すと、慢性魔力枯渇症が起きる。

慢性になると、もう戦うことが出来ない。

少しでも使えば、眩暈と吐き気で動けなくなるからだ。
「お前はちゃんと呪術師だな!」

魔法具の魔力で幻影魔法を使い背後から呪術師の首を刺す。

すると、不思議な気配がした。

「…?」

ここでは有り得ない革靴の音。

この国にはあまり似合わない洋服。

(は?誰?)

この国の人間ではない。

橋本は一瞬で分かった。

「うーん?思ったのと違うな。」

橋本は冷静さを保ちながら、発言した。

「…貴殿は誰だ。」

戦っていないのにも関わらず、これは勝てないと察してしまった。

左手には紋章が見える。

「…?それは君にとって必要か?」

「少し語弊があった、単刀直入に聞こう。貴殿は呪術師の仲間か?」

「…なんだと?」

少し不愉快そうな顔をする。

(え?違うの?じゃあ此奴誰なん?)

「成程…少し来た時期を間違えたのか。」

すると、紋章が光り始めた。

「我が命ずる。『呪術師よ、全員集まれ。』」

すると、瞬く間に呪術師が男の後ろに全員集まった。

再び紋章が光ったかと思うと、金色の大剣が現れる。

「我が命ずる。『動くな。』」

(やっべ。私動けない…??)

その瞬間、男は呪術師たちの首を一瞬で撥ね飛ばした。

「これでよし。」

再び動けるようになり、橋本は口を押えた。

「う、うおぇ…」

えずきながら、咽る。

「これで、呪術師の仲間ではないと分かってくれたかな。」

「…そう、みたい。」

では、何のために来たのか、という疑問は聞かずとも答えてくれた。

「我よりも強い者を探している。お前は強者か?」

橋本は恐怖を殺しながら言う。

「戦ってみた方が分かるんじゃないですか?私で無理なら、和の国で探すのは諦めた方が良い。」

取り敢えず、この状況を打開するための方法を考えなければならない。

「その心意気買ってやろう。」

「ははっ…どうも!」

橋本は男の紋章の正体に薄々気付いている。

それが本当ならば、此処にいる誰も勝てない筈だ。

浅村でも、和の国最強でも。

自分が最悪死んでも、どっかに行ってくれるなら、和の国の英雄にでもなって囃し立てられるだろう。

(団長達に怒られやしないか?また命を自ら捨てに行くような真似をしているんじゃないか?いやでも仕方なくない?)

そうして自分のしていることを納得する。

挑戦者チャレンジャーとして、こちらからいこう。」

紋章が光り、男の背後から大量に黄金の剣が浮遊している。

(おっけ、投擲もできるのね。詰みだろ。死ぬわ、ボケ。)

全ての剣が橋本の方へ一斉に降り注いだ。

「へへっ…!ちょっと私可哀想かも!」

全力で避け、黄金の剣を弾こうとする。

(魔力が…乱れる…!?)

無理矢理弾き飛ばしたが、これを何回も出来ない。

「ほう?思ったより遊べそうだ。」

「それはどうも。」

剣は魔力を乱してくるし彼の命令通りの行動をしてしまう。

再び剣が現れ、数本ずつ橋本に少しずつ攻撃してくる。

(魔法は使えん!…なら…!)

橋本の紋章が光る。

片足だけに加速バフをかけ、体勢を崩しながらも避けた。

「ぐふぇ…!」

地面に転がりながら、再び剣を構える。

更に剣が降り注ぐ。

「…お…?」

眩暈で視界が歪む。

(ここで枯渇症の眩暈…!)

「…?」

男は攻撃を止めた。

「魔力枯渇症か?…ここは呪術師の襲撃後だったから、こんなにも退屈だったのか。」

すると、魔法具から連絡が来た。

「もしもし?大丈夫?」

その言葉を聞いて、男は静かに言う。

「助けを呼ぶなら今のうちだぞ。」

「…療さん。」

橋本は少し考え、静かに言った。

「こっちに異常なしです。切りますね。」

そして連絡を切った。

「良いのか?」

(良い訳無いだろ!マジで死ぬわ!)

「…手助けなんてなくても倒せる。」

橋本は笑いながら言う。

「何処からその自信があるのか、知りたいものだ。では、我を楽しませれるのか試してみるか?」

汗をぬぐい、橋本は武器を構える。

「我が命ずる。『動くな。』」

橋本は何も動かなくなった。

「ここから、抗って見せろ。神頼みでもしてみるか?」

剣が現れる。

「私の信じる神はこの世に存在しない。いるなら私は幸せになってる。」

少しずつ、剣が近付いて来る。

性格が悪い。

いっその事、速攻で腹を突き刺せばいいのに。

必死に動こうとする。

「頑張ってみろ。」

「…一回殺してやる…!!」

紋章の光が怒りに呼応して強く輝く。

を!ぶっ殺してやるよ!!!」

命令の言葉が橋本から消える。

剣を避け、男の元に向かう。

男は楽しそうに笑う。

「反逆者だったか…!」

橋本に剣を振り下ろす。

少しだけ橋本が揺れたかと思えば、幻影から本物の橋本が現れ、反撃する。

「〇ニ式『葉突き』!」

頭を確実に狙ったが、避けられて微かに頬を掠っていただけだった。

「いやあ、実に面白い。」

そう言いながら、橋本の首を掴む。

そのまま持ち上げられ、橋本は宙に浮いた。

(最後のチャンスをしくった…!こりゃあ私死んだー…やっぱ、浅村さんでも呼ぶべきだったかなあ…)

「最期に言い残すことは?」

その言葉を聞いて、橋本は笑った。

「王も意外と大したこと無いな。」
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