雷撃の紋章

ユア教 教祖ユア

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9章 彼女の存在を証明する為に

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「こんなんじゃいつまで経っても出来ないぞ、エレスト。」

「出来ないものは出来ないんだって…!」

エレストは頭を抱えていた。

才能があるとかないとかの話ではない。

もっと根本的に、それが分かるまでの境地すら至っていない。

こんな短期間に、二人と同じことが出来る訳がない。

「もっと、考えろ、もっと感じろ。」

「そんなこと言われたってなあ…」

トーラスは頭を掻いて、溜息を吐いた。

「ま、一旦休憩にするか。」

「そうやって視界が狭くなったら、出来ることも出来なくなるわよ~エレスト。」

「…」

「エウル、ちょっといいか?」

「ええ、良いわよ。どうしたの?」

「あー、大したもんじゃねえよ。着いて来てくれ。」

「分かったわ。」

そうして、エレストはポツンと一人になった。

「…はあ。」

エレストは液体化した猫の様にだらけきった。

頭のキャパが既に超えている。

(…疲れたな。)

ここまで疲れたのは久しぶりというか、初めての気もする。

アクアの時より難しいものを取り扱っているのだから当たり前か。

あの二人はどこに行ったんだろうか。

自分の不器用さに疲れてしまっただろうか。

そう漠然と考えながら、目を瞑る。

その頃、エウルとトーラスは…

「俺はな。疲れた。というか、暇。」

「ちょっと、分かる。」

「という事で、エレストを放っといて、周りの魔物を駆逐してこう。」

「…?????…え?」

エレストは極力魔物を倒さずに移動する。

その理由は無駄に体力を消費したくないからだ。

たまに妖精の気分で妖精の落とし物宝箱が見つかる場合があるが、子供のお小遣い程度にしかならないので、探しまわる冒険者などいない。

「俺はちょっと血が騒いでいる。」

「…馬鹿なの?」

トーラスは本を開き、そこから剣を取り出した。

「さあ、ぶっ飛ばそうぜ。」

「何を倒す気なのよ…」

「ギルドにあった、張り紙を見てたんだが…そこに上級魔物の討伐依頼があったんだよ。」

「エレストがいないのに上級魔物倒すって、正気?」

「そうじゃないと、俺の血は収まらねえ。」

トーラスは金稼ぎに、魔法具を売ったり、悪徳業者に詐欺を働いていたらしいが、そう言った仕事が特にない時は、魔物を狩っていた。

そうなると、トーラスはお金を持っていると思われるかもしれないが、平民の身分を買うために殆どの金をそこに費やしたために、今はあまり持ち合わせていない。

トーラスは色んな身分を持っているが、身分の詐称はどこの国でも重罪なので、本物の身分を買うしかない。

故に、金が大量に必要なのだ。

そして、トーラスは意外とお金を持っていない。

「俺は金が欲しいけど、そんなことより戦いたい。」

「ええ…」

「一匹だけだし、複数よりマシだろ。」

「別にいいけど…はあ、さっさと行きましょ。そしてさっさと帰るわよ。」

少し歩くと山が見える。

そこに魔物がいるらしい。

「今から登山とか意味が分からないわ…」

エウルは呆れながら、魔導でそこらにいる魔物を倒していった。

「普通の道は魔物が狩りつくされているから、いないけど、誰も通らないような場所には馬鹿みたいにいるのよね。」

「まあ、たまにはこういう日もあって良いだろ。これもまた冒険者の醍醐味だぜ。」

「一応旅人ではあるけど、冒険者では無いわよ…?」

「何でも良いよ、つべこべ言わずに行くぞ。」

「えー?」

「あの気持ち悪い男共のせいで、商人が泊まるような宿屋になっちまったし、金を稼ぐのにも都合が良いんだよ。エレストも、エウルのポケットマネーから引き出すより、旅で得た資金で賄いたいだろうからな。」

三人は空き時間で良く魔物を討伐し、素材を売り捌いている。

トーラスが商売事に強いので、エレストはよくトーラスに丸投げしている。

「…絡繰の国は治安が悪いもの。」

エウルは苦し紛れにこう言った。

「後ろから援護頼むぜー…」

そろそろ魔物がいる場所に辿り着く。

「エレストの休憩時間に何やってんだか…」

その先には、魔物がいた。

恐らく目標の魔物だろう。

「取り敢えずやることは、余裕がある時に最大火力を撃つことだな。」

「エレストが心配しない程度に早く終わらせるわよ。」

トーラスは笑いながら言う。

「そうだな。開け、『幾星霜』。」

魔法具が開く。

紙が本から舞い上がり、その紙は剣へと姿を変えた。

魔物に大量に突き刺さる。

突き刺さった魔物は咆哮した。

「以外と硬えな。」

「羽毛が邪魔してるんだわ…!燃えろ。『魔導・火球ファイアボール』!」

羽毛が燃え、更に魔物は絶叫する。

「魔物が飛ぶぞ!」

エウルに魔物が突っ込んでくる。

「エウル!クソ、座標に導け。『瞬間移動テレポート』!」

トーラスはエウルを担ぎ呪文を唱えた。

「ひゃ!?」

瞬間移動直後、バランスを崩し、二人は倒れる。

「悪い、大丈夫か?」

「えっ…ええ…」

「男が無理なのに、よく俺らと旅できるよ、全く。立てるな?」

「当たり前よ。私は別に弱くないもの。」

「…貴族サマは違うねえ。」

エウルは魔導を限界まで貯める。

トーラスは魔物をけん制しつつ、魔法を撃った。

「いけるか!」

「ええ、いくわよ!命令す。『命令発動しろ』!

全ての魔導陣が発動する。

鎖で攻撃し、電撃で麻痺させた。

「貫き穿て。『光線ブラスター』!」

トーラスが至近距離で放った。

魔物の頭は黒焦げだ。

「よし、帰るか。」

「はあ。平民サンに着いて行くのは中々大変だったわ。」

「嫌味が言える余裕があるくらいなら、元気だな。さっさと帰るぞ。」

「帰りたいんだから言われなくてもそうするわ。」

街に戻り、討伐報酬を獲得し戻ってきた。

「そういえば、エレストの身分って下民だろ。」

「ええ、そうね。」

「平民の身分買わないのか?」

「確かにそうね。エレストがどう思ってるのかも知らないし。まあでも、流石にエレストと言えども、下民のままが良いとは思ってないと思うけれど。出来るなら平民の方が便利だし。」

「そもそも、今の今まで特に何事もなく移動できたのがおかしいんだよ。」

「亜人国に行ったときはお姉様の力を借りたし、魔法国行くために吸血鬼の国経由したし、和の国は普通に行けたし、まあ上手く行ってたのね。私達。」

「お姉様の力を借りたって…ほぼズルじゃねえか。」

「過ぎた話よ。それよりも、どれ位貰ったの?」

「あ?これ?まあ、魔獣じゃないから大した金額では無いけど、数日は寝泊まりできる。」

「そこそこね。いい小遣い稼ぎになったわ。」

「流石にエレストも待ちくたびれてるだろうし、早く行こうぜ。」

二人はエレストの元に向かうと、背中が丸くなって座っているエレストを見つけた。

粗末な紙に大量に何かを書きながら、ガラクタに魔力を付与させようとしていた。

「………おかえり。」

少し詰まった言い方で、エレストはまたガラクタに集中した。

「エレスト…これどうしたんだ…」

「ん?…ああ、二人ともどっか行っちゃったから、手あたり次第人に聞きまくったんだよ。まあ、一部はふざけたことを言ってたけどな。」

エレストは紙に書いている呪文を、空いている左手で軽く指した。

トーラスとエウルが見ると、そこにはただのダジャレが書かれてあった。

「ブハッ…!なんだこれ、寒ぃ!!」

「フフ…よくもまあ、こんな下らない…フフッ!」

「いやあ、でも、すげえ、呪文ぽいのに、冷静に見たらちゃんとダジャレになってる。多分そいつちゃんとした技術者だぜ。」

「…普通に騙されたよ。そしたら爆笑された。お詫びにって言われて、ちょっとだけ教えてもらった。」

「へえ、良かったじゃねえか。」

「どういう人なのかしら。」

「名前は…なんだっけ。ドルトって…」

二人は固まった。

「えっ…」

「知ってるのか?」

「いや、知ってるも何も…」

「その人、教授よ…」

「え?」

どうやら、かなり有名な教授らしく、世界で初めての、付与が難しい魔法が付与された魔法具を作ったことが3つもあるとても素晴らしい人らしい。
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