雷撃の紋章

ユア教 教祖ユア

文字の大きさ
79 / 79
10章 ~呪いを虐殺★楽しい一人旅~

79

しおりを挟む
「ごめん、迷惑かけた。」

全てを吐き終わって、漸く顔色に桃色が宿った。

「あー口の中気持ち悪い…」

アカツキよりも顔色が悪い兵士に話しかける。

「おい、生きてるー?」

「…呪術師殺しカースキラー…」

アカツキはハッとした。

「あー…直ぐに村を出てくよ。呪術師が私に寄ってくる前に。まあ、呪術師も呪術師殺しもほぼ一緒だもんな。そっちからしたらさ。」

「…」

「すまんな。この建物ちょっと壊しちゃったよ。」

アカツキは武器をしまい、建物から出るために歩き出した。

「死にかけが歩くな!」

トーラスが叫び、エレスト達はアカツキを追いかけた。

「心配し過ぎだよ。こんなのは、いつもの事さ。ま、呪術師の悪知恵はクッソ腹立つけど。」

アカツキはぶつぶつと文句を言い始める。

「竜を呪術師如きじゃあの程度にしか作れない…私なら普通に殺せる。それを逆手にとって、あれを見させて…あいつらの本命は私を魔力暴走爆弾させるつもりだった…ほんまタチ悪いわ死ね!…そういえばもう殺したわ。」

「本当に大丈夫?」

エウルはアカツキの顔を除くようにして見た。

アカツキの目はどんな穴よりも暗い目をしていた。

「ん?え、あ、おん。」

「全然大丈夫そうに見えない返事だったわね。」

「えー?あーでもほら、生きてるやん?つまり生きてるやん?」

「つまり使う意味無いぞ。」

「てへぺろ★…ゴフッ…」

「吐血した!?」

「ほら見ろ!」

宿でトーラスの治療を受け、元気になった。

「いやあ、スマソ★スマソ★」

さっきまで吐血した人間だとは思えないくらい元気になっていた。

「死にかけるのは日常茶飯事だから、気にせんでもろて!」

「自分の命を何だと思って…」

「あははっ、もう在って無いようなものだよ。…呪術師に恋人を殺されたんだ。数年前に。私は、魔力暴走をして、呪術師もろとも吹き飛ばした。恋人の『魔蔵の紋章』が私の左手に継承し、暴走しても、私は助かった。でも、猫も彼も、何にも残せず…学園は同情で単位をくれて、卒業できたけど…何にも残ってないんだよ。この命の使い方を、私は何も思いつかない。」

「だから復讐か?」

「呪術師を殺しても、意味が無いのは知ってる。でも、殺さなければ…殺さなければ、悲劇が増える。呪術師の策は愚者しか引っ掛からない。しかし呪術師はその愚者を好んでる。私のような馬鹿を…増やしてはいけないんだ。」

アカツキは悲しそうに、左手を撫でる。

「力を持つために、魔法を会得し、遺物を手に入れ、その他諸々神聖魔法をとっ捕まえて…」

「神聖魔法を…?アカツキは使えるのか?」

「いいや、使えんよ。それを無理矢理使えるようにした…正確に言えば失敗なんですけどね~」

アカツキは憐れむように鼻で笑った。

「彼が死んでから、呪術師を殺す為に頑張ってきた訳です。今更、他に頑張れることなんて無いよ。」

「…そっか。アカツキはそういえば、何で自分の名前を非公開なんだ?」

「…うーん、ま、正直に言うと君達のような、素敵な出会いをした旅人達に、を覚えさせない為かな。私は決して、光の世界では相容れない。本来なら、君達とは、ただの冒険者として、会うべきだった。自称呪術師殺しカースキラーのままでいるべきだ。そこに事実はさほど要らん。」

「言いたいことは…分かるけど…」

もしかしたらあの子が名前を言わなかった理由って…とふとエレストは思ったが、直ぐに考えないようにした。

「治療ありがとう。トーラス君…じゃなくて片眼鏡イケメン君。」

「名前覚えてるなら、トーラスでいいだろ。」

「少し、君と話すことがある。」

「ああ、ちょっと、俺も説教したい気分だからな。」

「ええええええええええ!?」

「ちょっと席を外してくれ。」

「ずっと席を外されてばっか―」

「まあまあ。」

エレスト達は部屋を出ていった。

「さて…君はきっと聞きたいことがあるはずだ。私は君の本当の姿を察しているし、君もなんとなくそれを理解している。」

「ああ。神聖魔法は特有の魔力が無いと、使えない。使えるようにするには…」

「神の国にある神聖魔法のスクロール(呪文の使い切り魔法具)を貰うこと。」

「…行ったのか?実際に?魔王国を経由しないといけないんだぞ?」

「寧ろ、君がこの大陸に死なずに、辿り着いている方がおかしいんだって。私は何とかして辿り着いたとき、国を抜け出した者は数年間いないと聞いてた。でも君が此処にいるという事は、まだ子供の頃に抜けてきたって事。…マジでどうやって来たん?」

アカツキはトーラスを引きながら見ていた。

「まあ、死体を掻い潜ってったんだよ。」

「オウ…そっか。まあ、そんなことはさておき、君は何を聞きたい。」

「王は生きてたか?スローン・セラフィムだ。」

「…うん。ふっつーに。」

「あ…そ。」

「何でそんなつまんなそうなん。」

「じゃあ、ラファエルは?」

「…いや、知らん。少なくともそこにはおらんかった。」

「そうか…」

「ま、王族でずっと昏睡状態な者がいるとは聞いた。」

「…!死んでないのか!」

「…ス―――――――、アンタ、マジか。うわ―――――――…マジか――――――」

アカツキは全てを悟った。

「生きてるよ。間違いなく。まあ、私は会ってないんだけどね。」

トーラスが聞きたいことはそれだけのようだった。

「…神の国の目的は蘇生魔法が欲しかった。」

「恋人を生き返らせるためにか。」

「うん。ま、王様曰く使っても無理って言われたけどね。折角言う通りに魔人殺したのに。」

「魔人を殺したのか…!?」

「人間必死過ぎると意外といけるもんよ。…もし、だけど、君が…仮に戻りたいのなら、私に言いな。もう、同じ手では出来ないし。」

アカツキは古い魔導具を出した。

「知り合いが作った魔導具なんだ。一分間お互いの居場所が特定される。使ったら壊れるけど…ある意味約束としての品だと思ってくれ。」

アカツキは立ち上がった。

「さ、君達との同行は終わり。元々、君の介護の為に着いて行っただけだからね。」

そういえばそうだったと、トーラスは気付いた。

アカツキは扉を開け進み始める。

エレスト達は華々しく部屋を出たアカツキを不思議そうに見た。

「呪いを虐殺する楽しい一人旅の再開だ。」

エレストはトーラスに聞いた。

「何であんな楽しそうなんだ?」

「元からだろ。」

「…確かに。」

「皆ありがとう、さらばだサラダバー」

「お、おう…」

誰よりも楽しそうな彼女はふらりと旅立っていった。










「さっさと街を出れたのは良かったけど…」

早くエレスト達から離れるべきだ。

呪術師が寄ってくる絶好の餌だから。

神の紋章と普通の紋章、そして、彼。

呪術師の目的の為に紋章を欲しがっている。

左手を切り取って、奪おうとしているのだ。

そして、呪術師はを持っている。

もう、これからは呪術師は組織になっていくのだ。

この世界の民は、呪術師を手段としてみても、組織として見ていない。

呪術師殺し《カースキラー》もすら、呪術師をただ殺す事しか考えていない。

本当に殲滅するにはあいつらには無いもので戦うしかないんだ。

「頭脳と、民の善意…」

自分だけではどうしようもできないから。

色んな国に呼び掛ける。

その為の冒険者。

アカツキは帝国に向かった。

王国の証を見つめながら。








「さあ、行こうぜ。十分休んだし。」

「休んだ感じはあんまりしないけどな。」

「ここも色々あったもんね。」

エレスト達は再び歩き始めた。

今度こそ、大きな市場に向かう。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。

亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。 しかし皆は知らないのだ ティファが、ロードサファルの王女だとは。 そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...