悪魔がくれた体じゃ恋愛は難しすぎる!

香月 咲乃

文字の大きさ
11 / 46

11 研究成果

しおりを挟む


 ケリーの再生計画が始まってから半年が過ぎた。

 整形の術後経過観察は終了し、専属医師は契約通り他国へ移住した。
 移住先の開業資金など、多額のお金を口止め料としてもらっていたので満足げに出て行ってくれた。
 ジョーゼルカ家を裏切ることは恐ろしいことだ、と医師は十分理解していたので情報漏洩の心配はないはずだ。
 今はそんなことを心配している暇はないほどにケリーの忙しさは激増していた。


 アリスは、ケリーがいる実験室の扉をノックした。

「入ってー」 
「はい、失礼します」

 ケリーは机の上のモニターに向かって文章を入力しているところだった。
 アリスは邪魔にならないよう、届いた薬品類を魔法で運び入れる。

「ありがとう、いつもごめんねー」
「いいえ。ケリーさんは研究に集中してください」

 アリスはそう言った後、試薬棚に運び入れた薬品類を並べる。

「そういえば……、アダム様が魔法学院の優秀教員賞をとったという記事が出ていましたよ」
「え!? 見たい!」

 ケリーはアリスの方へ慌てて体を向け、目を輝かせる。

「ふふふっ。もう端末機に送信しておきましたよ」
「さすが、アリス。本当に仕事が早いよね~! 愛してるよ~」
「まあ、ケリーさん。それは私に言うべき言葉ではありませんよ?」

 そう言いながらも、アリスは嬉しそうにしていた。

「きゃー! かっこいい……アリス、アダムが凛々しいよ。全てを浄化してくれそうな神々しいものを放っているよ……」

 画面に映るアダムは左胸に勲章をつけ、笑顔で花束を抱えていた。

「アダム様は優秀な方と伺っていましたが、本当にすごいですね。苦労が報われたのではないでしょうか」
「うん。本当に報われたと思う……」

 ケリーはうっすらと涙を浮かべて頷いた。

 ——アダムは魔法の才能が高い上に努力を惜しまないからね……。アダム、本当に良かったね。

「よし、ボクももっと頑張らないと!」
「はい! 頑張ってください!」

 ケリーとアリスは拳を上げた。



 

 1ヶ月後。

 ようやく研究が一段落したケリーは、アリスを連れて中心街へ出ていた。
 道にはうっすら地面を覆う程度の雪が積もっていた。

「アリス、今日は行きたいところへ連れて行ってあげるから」
「私は特に……」

 アリスは遠慮して首を振ったが、その途中で甘い香りにつられ、思わず視線をそちらへ向けてしまう。

「ふふっ。美味しそうな香りがするよね。そこのカフェに行って暖まろうよ」

 アリスのわかりやすい反応に、ケリーは隠れて吹き出していた。

「え!? はい!」

 アリスは目を輝かせて返事をした。

 店内に入ると、暖かい空気が一気に2人を包み込んだ。
 それに加えてパンや菓子の香ばしい香りが漂ってきたので、2人は顔を緩ませる。

「いらっしゃいませ。席はご自由にどうぞ」

 店員は忙しそうに他の客の相手をしながら、2人に声をかけてくれた。

「いい香りですね!」
「うん。ショーケースの近くの席に座ろうか」
「はい!」

 2人は席につくと、それぞれメニューを手にとる。
 アリスはショーケースとメニューを何ども見返し、何を注文しようか悩んでいた。

「迷ってるなら全部頼んでいいよ。食べきれないものは持って帰ればいいんだから」
「ですが……」
「遠慮しなくていいから。日頃のお礼だと思って」
「では……」

 アリスは嬉しそうに頷き、ケリーの後に続いて店内用にケーキと紅茶のセット、持ち帰り用に2種類の焼き菓子を注文した。

 しばらくすると、注文の品が運ばれてきた。

「わぁ!」

 真っ白のクリームケーキにアリスは目を輝かせる。

「手をつけるがもったいない美しさです! ケリーさんのチョコレートも細工が綺麗ですね」

 ケリーは一口サイズのチョコレート3種類、小さなパン、コーヒーを注文していた。
 チョコレートは花の形をしているもの、表面に複雑な模様が描かれているものがあり、見るだけでも楽しめるデザインだ。

「うん。すごく綺麗な模様だよね」

 アリスが喜んでいる顔が可愛くて、ケリーは目を細めていた。

「はぁ~。とても美味しいです!」

 一口食べたアリスは頬に手を当ててうっとりしている。

「よかった。街にわざわざ食べに来るのも大変だろうから、家で作ってみれば? せっかく街に来てるんだから、材料を買って帰ろうよ」
「え!? いいのですか?」

 料理好きなアリスは目を見開く。

「もちろん! 代わりに、私の買い物にも付き合ってね」
「はい! もちろんです!」

 2人はカフェを満喫した後、本屋、服屋、食料品店などを巡り、買い物を楽しんだ。





 2人は大きな荷物を抱え、家に戻ってきた。

「はぁ~。結構買い込んだね」
「そうですね。荷物は私が整理しておきますので、ケリーさんは論文の続きをどうぞ」
「ありがとう。あと2週間で論文を書き終えないといけないから、それまでは頼らせてもらうよ」
「2週間と言わず、その先も頼っていただいて構いませんよ?」
「だーめ! 次はアリスが忙しくなるんだから」
「ですが……」

 アリスは眉尻を下げていた。





 3週間後。

「アリス! アリス!」

 ケリーは血相を変えて2階から駆け下りてきた。
 アリスはキッチンで昼食の準備をしているところだった。

「どうされました? きゃあ!!!」

 ケリーはアリスを思いきり抱きしめた。

「アリス、やったよ! 採用されたよ! 魔法学院の研究員として!」
「ケリーさん、おめでとうございます!」

 アリスは嬉しさのあまり、ケリーの腕の中で涙ぐんでいた。

「アリスのおかげだよ。本当に今までありがとう」
「私は大したことはしていません。ケリーさんが一生懸命頑張ったからですよ」
「ありがとう……。これからもよろしくね」
「こちらこそ……」

 2人はしばらく抱き合ったまま喜びを分かち合った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

人見知りと悪役令嬢がフェードアウトしたら

渡里あずま
恋愛
転生先は、乙女ゲーの「悪役」ポジション!? このまま、謀殺とか絶対に嫌なので、絶望中のルームメイト(魂)連れて、修道院へ遁走!! 前世(現代)の智慧で、快適生活目指します♡ 「この娘は、私が幸せにしなくちゃ!!」 ※※※ 現代の知識を持つ主人公と、異世界の幼女がルームシェア状態で生きていく話です。ざまぁなし。 今年、ダウンロード販売を考えているのでタイトル変更しました!(旧題:人見知りな私が、悪役令嬢? しかも気づかずフェードアウトしたら、今度は聖女と呼ばれています!)そして、第三章開始しました! ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

処理中です...