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縮まる距離
2-10.これ以上の幸せは※
しおりを挟む「あ、あー……っひん、ぅあ、はっ……あぁ、っあ」
自分の口から落ちる声が不思議と遠く聞こえる。
いやらしい水音や、ベッドが微かに軋む音。そんな音ばかりが耳に入り、その度にまた一段と気持ち良いのが増す気がした。
舐めて吸われて潰されて、散々苛められた陰核は、もう快楽を拾うだけのいやらしい器官だ。二回イカされた辺りからは、自分が何をされているのかさえ、もう分からなくなっていた。
こんなにも気持ち良いのに、まだ慣らされているだけだというのが恐ろしい。
一体、ダニスはいつになったら挿れるつもりなんだろうか。自分から挿れて欲しいと告げる勇気はなく、何度目になるのか分からない悲鳴のような声だけがリーシャの口から落ちる。
「んんっ、んっ、あ、やっ、ナカ……っそこ、きもち、やぁ、おかしっ……あっ、アッ、ンンッ……はっ」
びくりと震えてまた絶頂に達すると、零れた体液がお尻まで伝っていき、真っ白なシーツとダニスの手を汚した。
時間をかけて慣らされて、ナカにはもう三本の指が入っている。いろんな方向に曲げられて内側からお腹を刺激されると、気持ち良くて堪らない。
「も……わたし、あ、いっぱいイッて……」
「うん、いっぱい濡らしてくれたし、そろそろ挿れようかな。リーシャ、いい?」
「っん、はい……も、平気……して。してください……」
体勢が変わり、脚の間にダニスの身体が入る。
大きさや形を見ることはなく、ぐずぐずに溶けたそこに硬いものが擦り付けられる感触がした。
そこからゆっくりと沈んでいく熱が、リーシャのナカで広がっていき形を変える。
初めての感覚に身体が強張り、緊張で呼吸が止まりそうになった。
「ほら、ちゃんと息して」
「あ……っひ、ぅあ……っ」
「はっ……ん、これで半分くらい。……痛い?」
ゆっくりと腹の中になにかが沈んでいき、感じたことのない質量に小さく悲鳴が上がる。
思っていたより距離が近い。ぐちゅ、とか、ぐぷっと響いた音が、なんだかとても生々しく感じる。
今なにをしているのかを改めて意識すると、あまりにも淫猥でぐらりと目眩がした。
(でも、ちゃんと訊かれたこと、答えないと……)
頭の中がぐちゃぐちゃで、うまく言葉を作れない。しかしそんな理由で相手の言葉を無視するのは駄目だと、どうにか伸ばした手でダニスの腕に触れる。
「……い、いたくはない……です」
「そう?」
「へいき、だから……もっと深いの、っんぁ」
言った瞬間に口を塞がれ、呼吸ごとダニスに食べられてしまう。
腰が強く押し付けられ、その瞬間に凄い圧迫感は感じたけれど、十分に濡れたそこは大した痛みを感じなかった。ただ満たされていく感覚に、ゾクゾクとリーシャの腹の奥が震える。
「あ、あ……っん、ぁ」
「っは、よかった。入らないから今日はやめようとか、絶対に言われたくなかったんだよね」
「あっ、ん……ひっう、あっ」
「あー……可愛い。すごく可愛い」
「あっ、あ……んっ、んぁ」
「ねぇ、お願い。好きって言って」
深い場所まで侵入されて、そこで一度ダニスの動きが止まる。ただ入っているだけでもこんなに気持ち良いのに、ナカで動かされたらどうなってしまうのだろう。
少しずつ沈んで、馴染んで、広げられていく感覚。触れているところ全部が気持ち良くて理性が溶ける。
狭い場所を無理に抉じ開けられていくようで苦しいはずなのに、不思議と、止めて欲しいとは思わなかった。
「リーシャ?」
「あ……すき、です。ダニス様が好きで、だから、もっといっぱい……」
「は……」
「っんあ、もっと、ダニス様も気持ち良いの、奥まで欲しっ、あ、やっ……!」
きっと語順は正しくないし、冷静になったら恥ずかしい言葉ばかりだ。頭の中がぐちゃぐちゃで、思ったことがそのまま口から出る。
しかし、正しい文法でなくとも、ダニスの理性を崩すにはその一言で十分だった。
は、と短く息を吐いたダニスが、より深いところに届くように腰を押し付ける。頭の中が真っ白に染まって、悲鳴のような嬌声がリーシャの口から漏れた。
「ぅあ、あっ……っん、ちょっと、だけ……それ、くるし、んっ、……っひあ、やっ」
「ごめん、少しだけ我慢して。リーシャが好きだって思ってくれてるうちに全部欲しい」
熱くて苦しくて、じんわりと広がっていく熱に浮かされそうになる。苦しさや痛みすらも何故だか嬉しくて、繋がっている部分がじわりと熱くなった。
深い場所に挿れられたまま、いやらしい方のキスをされて舌が絡む。どこがどう気持ち良いのか分からないまま揺らされて、頭の中がダニスのことでいっぱいになる。
「……まだ、ちゃんと返事聞けてなかった」
「へ……?」
「ね、俺と結婚してくれる?」
「っん……あ、あぁっ」
「して?」
こんな状態で言わないで欲しいと、そんなことを考えている余裕さえない。
気持ち良いところ全部を触られて、頭の中が真っ白になる。
「あっ、あ……まって、っん」
「返事欲しい。ちょうだい」
「んっ……あ、頭の中、ふわふわしてるときに、やっ、そういう話、っん……ぁ、や、だめ、です」
「こういう時にだから話したい。返事して。俺はずっとリーシャのことが好きだった」
こんな状態だというのに、「好き」という言葉だけは甘く響いて脳に届く。
金色の瞳に見下ろされ、一瞬だけ時間が止まったようにも感じた。
「……ここまで許してくれてるのに、断られるなんて思ってないけど」
「あ……」
リーシャだって、もう断るつもりなんかない。
ダニス以外に触られるのも、ダニスが自分以外と結婚するかもしれない可能性も嫌だ。それだけの想いを持って、この行為に至った。
「し、ます……結婚、してください。あの、本当に好き、です」
「……うん、ありがとう。俺も愛してる」
「あっ……あ、……ぃンッ」
最奥に押しつけられ、ダニスを掴んでいた指先にぎゅっと力が入る。達した瞬間に一瞬呼吸が止まり、そのあと一気に全身から力が抜けた。
「はっ……ぐ」
ぶるりと震えたダニスが短く息を吐き出し、ナカに入っていたものが引き抜かれる。その表情があまりにも色っぽくて、ダニスの顔からリーシャは視線が逸せなかった。
「うっ、はぁ……」
ダニスが達した時の表情なのだと、そう気付いた時にはもう全てが終わったあとだ。勢いよく放たれた精液は、リーシャの太腿とお腹を汚している。
「は、あー……ごめん、ほんと、我慢できなかった」
「ダニス様、あ、えっと……」
「……ほんと、よかった。嬉しい。今のリーシャが俺のこと好きになってくれて」
どろりと溶けた金色の瞳に映され、その瞬間にぶわりとリーシャの胸が沸く。
心臓がぎゅっと締め付けられたような、直接掴まれたような、そんな感覚。
やっぱりすごく好きだなぁと、そんなことを改めて思った。
「あの……どうぞ、これからもよろしくお願いします……」
「……うん。一生かけて大事にするから。こちらこそ、末永くよろしくお願いします」
キスを交わして笑い合う。その瞬間があまりにも幸せで、ここで再会できてよかったと心の中で呟いた。
汚れた身体を拭き、軽く後処理をしてもらったあと、ダニスに抱き締められる形で二人でベッドに横になる。
今日が終わってしまうのが勿体無い。心がふわふわして、幸せで、不思議と疲れなんて感じなかった。
それでも肌を伝う体温が心地良くて、瞼はどんどん重くなっていく。
「ほら、おやすみ。また明日」
「ん、はい……」
目尻にキスを落とされ、目を閉じると数秒で意識が落ちる。
好きな人の腕の中でつく眠りがあまりにも気持ち良くて、これ以上に幸せな瞬間はないかもしれないとリーシャは思った。
すーすーと寝息を立て始めたリーシャを抱きしめ、その体温にダニスはほっと息を吐く。
「……余計なこと、思い出さないままでよかった」
安堵の色が交ざった独り言が、リーシャの耳に届くことはない。広い室内に飲み込まれ、そのまま夜の中に消えてしまった。
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