【R18】ハッピーエンドが欲しいだけ

堀川ぼり

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 現在十九歳であるベルハルト殿下は、二十歳の誕生日に王位を継承するのではないかと噂されている。
 現国王であるウルハイド陛下の一人息子は数年前に亡くなっており、正当な継承者は孫であるベルハルト殿下だけ。
 十九歳という若さではあるけれど、殿下は非常に優秀で人望も厚い方だ。今でも公務のほとんどをこなしていると聞くし、今日すぐに王位を継いでもきっと問題ないだろう。
 陛下ももうご高齢で隠居したいとお話ししているらしく、近いうちに殿下がその座を継ぐことは決定している。その時期として二十歳の節目はちょうどいいのではないかと、そんな話を聞くことが最近は多くなった。
 ベルハルト様が正式に国王陛下となったら、今よりずっと自由な時間がなくなって警備も強くなる。そうしたらこんな呼び出しもなくなるのだろうかと、翠の瞳に見下ろされながらそんなことを考えた。

「ミリヤ、顔をこちらに」
「ん……っはぁ」

 ベッドに押し倒された状態で唇が触れ、遠慮なく舌が差し込まれる。いつもはきっちりセットされている殿下の髪が私の額に触れ、これからのことを想像してしまって身体が硬くなった。
 前髪を下ろしていると少しだけ幼く見えるが、それでも目の前のこの人が男であることに変わりはない。押さえつけられると逃げられない力の差が怖くて、この瞬間はいつも泣きたくなる。

「っは……あ、んぅ」
「はぁ、んっ……」

 しつこいくらいに舌が絡み、その間にも衣服が乱されていく。ゆっくりと口内を撫でる舌によって体温が上がっていき、服を脱いでも寒さを感じない。
 恥ずかしくて緊張するし、大きくて硬いものを体内に入れるのだから痛みだって伴う。それでも人の体温が触れると不思議と安心するもので、頬や頭を撫でられると気持ち良いと思ってしまうのだから最悪だ。そういうところを見抜かれていたら、どれだけ嫌がっても説得力がなくなってしまう。

「んっ、んぁ……は……」

 キスに関しても撫でるような触れ方は同じで、勝手に漏れる息が甘くなってしまう。
 息が苦しくなるのも、緊張で心臓がうるさくなるのも嫌なのに、ゆっくりと口内が舌になぞられる感触は気持ちが良い。
 そしてそう感じるのは私だけでなく、殿下も同じなのだろう。こうやって舌を擦り合わせているだけなのに、直接触れていない場所がどんどん硬くなっているのが分かる。
 ぐりぐりと太腿に当てられると、嫌でも意識してしまうからやめて欲しい。口にできない苦言を頭の中で訴えていると、は、という熱っぽい呼吸音と共に触れていた唇が離れていった。

「ひっ……」
「ああ、すまない。痛いか?」

 指一本であろうと、そこに何かを入れられるのは痛い。小さく悲鳴を漏らしたら一度は止めてくれるものの、最終的にそこに殿下のモノを挿れなくてはいけない事実は変わらないのだ。
 だから痛みを訴えても無駄だろうと、小さく首を振って否定する。どうせ変わらないのなら早く終わった方が嬉しい。

「っいえ……平気なので、続けてください」
「素直に言ってくれた方が俺も助かるんだが? 別にお前の許しが欲しいわけではないんだ」

 そりゃあそうでしょうねと心の中で頷き、それならどうするべきなのかと数秒の間に必死で考える。素直に本音を伝えていいとも思えず、「でも、いつも最後まで入っているので……」と客観的事実を弱々しく口にした。

「あの、殿下……っふ」

 最後まで言葉を言わせてもらえず、口付けによって会話が止まる。殿下が何を考えているのか分からず、謝罪するように落ちてきたキスに少しだけ戸惑ってしまった。

「あ、あの……?」
「急いで挿れようとしなくとも、濡らせば痛みが少しはマシになるだろう」
「へ……」

 一体、どこで何を学んできたのだろうか。少し離れたかと思うと殿下の頭が私の下半身に近付き、今までになかった体勢に手の平に汗が噴き出す。
 まさかそんなと思いつつも、そこに顔が近付くにつれて疑惑が確信に変わっていき、失礼を承知で慌てて自分の腰を逃がした。

「動くな」
「えっ? あの……は、離れてくださ……」
「別に痛いことはしない」
「そうじゃなくて、やっ、あ……なんで……」

 殿下が誰かに奉仕に近い事をするような性教育なんて、絶対に行われていないはずだ。
 今までだってされた事がないし、今後もそんな予定はない。最後まで行為をしておいて今更かもしれないけれど、流石にこれは違うだろう。絶対にこんなことをさせては駄目だと私でも分かる。

「殿下にそんな汚いことさせるわけには……あっ、や……だめです。やめて、やめてください」
「行為の最中に堅苦しい呼び方はやめろと以前も言ったはずだが? 他の目がない時は愛称で構わない」
「だから、あ……ベルハルト様……あの、それ、だめです、ほんと……」
「俺がしたいと言っているんだ。何か問題があるのか?」

 殿下が使用人のそんな場所に舌を這わせようとしているなんて大問題だ。私が教育係だったら泡を吹いて倒れている。
 こんな行為、したいからなんて興味本位な理由で殿下がしていい行為ではない。

「き、汚い! だめです! も、聞いてください。殿下にそんなのさせられな……」
「名前」
「あ、だから……ベルハルト様にそんなの、だめで……」
「いつまで経ってもお前が痛がるから俺も色々と考えている。大人しくしていろ」
「ふっ……う、うぁ、ひ……」

 少し強めに脚を割り開かれ、濡れた感触がそこに触れた。どうして舐められているのか分からなくて、現実から目を背けたくなる。
 本当に信じられない。何をしているんだろうかこの人は。

「そういう声を出されると悪い気はしないな。楽しい」
「うっ、んん……」
「おい、それはどういう反応なんだ」

 痛いとか気持ち良い以前に、恐ろしいという感情が先に出る。自分の股の間に殿下の顔が埋まっている光景なんて、いったい誰が想像できただろうか。綺麗な銀色の髪が視界に入る度に、罪悪感で心臓が止まりそうになる。

「きたな、きたない……そんなの、もっ、舐めるところじゃないです……」
「ハァ、そればっかりだなお前は」
「っひ! く、ぅあ……」

 ちぅ、と音を立てて肉芽が吸われ、思わず上擦った声が漏れた。痛みよりも快感の方が大きくて、その刺激にびくりと腰が跳ねる。
 悪くない反応だと殿下も察したのだろう。同じ場所ばかりをしつこく舌で弄られ、その度にシーツを握る手に力が篭った。

「やっ、や……ぁ、だめ、そんなとこ、ッン……」

 割れ目をゆっくりと舌でなぞられ、やめて欲しいと懇願するよりも先に舌先が入り口を突いた。
 何をされているのか理解できないまま、ナカにまで濡れた感触が入ってくる。

「ひっ、あ、あっ、殿下、っも、殿下……」
「やり直せ。呼び方が戻ってる」
「べ、ベルハルトさま、もっ……だめです、や、そんなのだめって、んんっ……!」

 鼻先が肉芽を刺激し、膣内が舌で蹂躙される。
 ──なにかくる、きちゃう、おかしくなる。
 声にならない言葉は意味のない嬌声になって口から溢れ、指先にぐっと力が入った。どうにか逃げようと腰を浮かせるが、殿下に強く掴まれていて思うように動かせない。
 少しずつ深いところに落とされるような感覚が怖くて、自分が今どんな情けない声を出しているのかなんて気にする余裕さえなかった。

「あっ、あ、あ……っひ、ぅあ、ンッ……!」

 一瞬びくりと身体が震え、頭の中が真っ白に染まる。
 ようやく顔を離してくれた殿下がゆっくりと頭を起こし、こちらを見下ろす美しい翠色と再び視線が絡んだ。

「あ、ごめんなさ……っあの、ベルハルト様のベッド、汚して……」
「いい、ミリヤが謝る事じゃない。お前の反応が素直で俺も楽しかった。それより続きをしても?」

 銀色の髪の隙間から覗く瞳がじりじりと欲に濡れている。
 断るなんて選択肢は当然なくて、口から出していい言葉は「はい」という一言だけだ。

「……そうか。よかった」

 先程まで舌が触れていた場所に、今度は違うものが宛てがわれる。触れた熱と質量に一瞬息を呑むが、いつもよりずっと簡単にお腹の奥に沈んでいった。

「っひあ、あー……っあ、んっ」
「ぐっ、はぁ……ミリヤ……」

 色っぽく眉間に皺を寄せた殿下が、気持ち良さそうに息を吐く。動かれる度にいやらしい水の音が響いて、五感全部がおかしくなりそうだった。

「ひぅ、ッン……ぃあ、はっ……」
「ん、声がいつもより甘い。もっと聞かせて」
「あ、それふか、深いです……あ、あぁっ、んっ……」

 掴まれた腕が少し強引に引かれ、そのまま殿下の背中に回される形になる。
 私のような使用人が王太子殿下に自ら抱きつくような体勢、本当ならば許されないことだ。
 しかし部屋には二人きりで、こんな恥ずかしい姿を見ているのも殿下だけである。当の本人が嫌がらないのであれば、咎める者は誰もいない。

「あっ、そこもう……ぅあ、あぁ、っもう、またこれ……」
「分かってるから、そのままイけ」
「ひ、んぁ、あっ、やっ、きちゃ……ぅあ、あ……ッンン」

 何かにしがみついて熱を逃さないと、もう限界で色々と耐えられない。しかし思い切り何かにしがみつけば我慢できるというものでもなく、殿下に抱きついた数秒後に、私は呆気なく二度目の絶頂を迎えてしまった。
 その後すぐにお腹の中で熱いものが広がる感覚がしたから、殿下も挿れたまま達したのだろう。わずかに乱れた呼吸音が室内に響き、引き抜かれると同時にいやらしい水音が鼓膜を揺らした。
 今までで一番苦しくなくて、気持ち良いと思えた行為だったかもしれない。そんな余韻に浸っている時間もなく、殿下に名前を呼ばれた瞬間にハッと我に返る。

「あ、あの、すぐに拭くものをお持ちしますので」
「そこに用意してあるだろう。無駄に慌てるな」

 ベッドサイドにリネンが重ねて置かれていることに今更気付き、自分の準備の悪さを突きつけられた気がした。事前に殿下が他の人に用意させたのだろうか。その人に変なことを察されていないといいけど、と別のことを心配してしまう。
 殿下自らが色々とやろうとするのを必死で止め、後処理を済ませて服を着てもらった。自分も服を着直し軽く髪を整えてから、汚してしまったリネンを抱えて立ち上がる。

「戻るのか?」
「いつまでも殿下の寝室にいるわけにはいきませんから」
「少しくらいここで休んでいけばいいだろう」

 随分と簡単に言ってくれる。もし長居した事がバレたりしたら、噂をされてまた責められるのは私の方なのに。

「いえ、明日も早いので戻ります。殿下も早く休んでくださいね」

 まだ気怠さの残る身体で一礼し、それ以上なにかを言われる前に部屋を出た。
 人気の少ない裏の扉から出たけれど、誰にも見られていないだろうか。そんな不安を抱えながら廊下を進み、自室とは反対方向にあるランドリーへ向かう。
 今持っているものを今夜のうちに洗っておかないと、万が一誰かに見られたとき言い訳ができない。

「止まりなさい」
「え……?」

 殿下の部屋を出て、数歩進んだタイミングだった。ふと後ろから声をかけられ振り向くと、真っ白のネグリジェにショールを羽織った女性が怖い顔をして立っている。
 ウェーブのかかった美しい金髪が、夜の中でもキラキラと光って見えた。

「え、イヴァンナ様……?」
「ああもう信じられない! こんな時間にどうして殿下のお部屋の近くをアナタのような使用人がうろついているのかしら?」

 公爵家のご令嬢であるイヴァンナ様は、ベルハルト様の婚約者候補の一人だ。ベルハルト様を訪ねに日中よくいらっしゃるけれど、今夜お泊まりになるなんて話は聞いていない。

「あの、どうされたんですか? こんな時間に……」
「質問に答えなさい! こんな時間に何をしていたのか訊いているのよ」

 誤魔化すための嘘なんていくらでもあるのに、咄嗟に返事ができない事が答えになってしまった。
 一瞬考え込んでしまった私の顔を見て、イヴァンナ様の瞳に更に深い軽蔑の色が映る。

「ああ、そのお顔はそういうことなのね。やっぱり噂は本当だったの」
「え……」
「いつまでもベルハルト様からお返事がもらえないと思って調べさせたら、アナタに関する嫌な噂を聞いたの。執事に頼んで今夜泊まらせてもらったけれど、そしたら本当に夜這いに来ているメイドがいるんですもの」

 まるで私が望んでここに来ているような言い方だ。しかしどちらから仕掛けていようと、結果としてやっている行為は同じである。殿下のお部屋で使用人がいたしていると、その事実に変わりはない。
 どう説明しても迂闊な発言になってしまいそうで、何も言い返す事ができなかった。
 私が口を開くより先、飾られていた花瓶を手に取ったイヴァンナ様がそのままそれを私にぶつける。
 散らばった花と水が私を汚し、鈍い音を立てて花瓶が床に落ちた。割れなかったことだけが、まだ幸いかもしれない。

「体を使っていつまでもしがみついて、みっともないと思わないのかしら」
「あ……」
「いやらしいメイドがうろついているとお父様にも報告しておくわ。アナタのせいで汚れたんですから、ここも片しておきなさいよ」

 それだけ言って去っていく背中を見送り、汚れてしまった床を一瞥する。
 理不尽ではあるけれど、彼女が怒る気持ちも理解出来るのだ。
 彼に相応しい女性となるために教養を身につけ容姿に気を使い、我慢していることも多くあるだろう。それなのに殿下からは結婚の返事がなく、様子を見にきてみればただの使用人が寝室から出てきたのだ。
 殿下に直接ぶつけることができない怒りを、その原因である使用人にぶつけたくなるのも仕方がない。

「……片付けないと」

 床に膝をつき、散らばった花を花瓶の中に戻す。濡れてしまった服が肌に張り付き、少しだけ肌寒く感じた。
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