小粋な地球観察者の日常

よしろー

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歩の章

歩、セカンドコンタクト

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 2回目のコンタクトは初回から半年も過ぎた頃だった。歩の受験は終わり、無事に合格してホッとしていた頃。
"やあ、久しぶり。"と。進学前束の間の春休みの早朝、突然あの声が頭の中に話しかけてきた。歩は、軽いぃ!待たせ過ぎぃ!と思いながらも歩は冷静になって返事をする、、、
「あんたどんな時間軸で生きてるんだ。またね、で半年かよ!」つもりだったが、待たされ過ぎて不満が爆発したようだ。

"あらあら、ご機嫌斜めだね。何かあったのかい?"とは答えた。面白くて仕方ないといった感じだろうか。歩はまずはについて一通り不満をぶつけた。一体何匹の犬猫の世話をさせる気かと。
"あらまぁ、そんな事になっていたんだねぇ。でも、なんで対象を'人間限定'に変えなかったのさ?"と、彼は不思議がった。歩は何のことだか直ぐには理解出来なかったが、少し間を置き、気づいた。
「そうか。僕は勝手な思い込みをしてたってことか。」の説明は無かった。だから、最初に能力らしきものが発現した時の状況で、歩は自分でその枠を決めつけてしまっていた。まあ、仕方ないことでもある。
"もう、おっちょこちょいだなぁ~。"この声に軽くイラつきながらも、自分の可能性が突然弾けたように広がったことに歩は少し興奮していた。

 対象は自分で設定できる、、、それは便利だ。これで里親はしばらく中止だ。後はどれだけ細かく設定出来るのか、条件付けは、もしかしたら追跡も可能かもしれない。サーチ範囲は、状況に寄って発揮出来る力は変わるかも、、、思考はめぐる、止まらない。凄い、直ぐに試してみたい。
"ふふふ、じっくり試すといいよ。実は僕自身君の能力の詳細は分からないんだ。似たようなケースを知っているから、そこから想像出来る範囲でならアドバイスは出来るよ。そうそう、時間制限や回数制限は成長するに連れて緩和されるからね。"
「うん、じゃあ二つ程教えてほしいことがあるんだ。」当たっているかも分からない内容を聞かされるより、自分で色々試してみたかった。自分で一度してしまった反省もあり、色眼鏡無しで実験、分析することにした。しかし、それでも前提条件として確認したいことがあった。

"いいよ、どんなことかな?全てに答える約束は出来ないけど"
「まず一つ目、この能力に期間とかでの限定はあるの? 例えば、ある違反をしたら強制的に取り上げられるとかさ。」どんなに凄い力であっても限定されることで自由度の幅は大きく変わる。そもそも実験とかしている暇すら無いのかもしれなかった。それだけに重要な質問だった。
"無いよ。君は完全に自由だ。"意外な答えだった。望ましいものであるが、非常に怪しさが増した。誰もが思うであろう、では一体何の目的があるのか?彼はその思いを察して続けた。

" 多分続けて聞きたいと思われる点について。目的は特にない。君が面白いと感じたからきっかけを与えたに過ぎない。単なる気まぐれ。そもそも90%くらいの人々には何も起こらないんだよ。まあ、あの時僕は君に何か起こることは確信していたのだけどね。"そう彼は答えた。歩は一応、「暇な宇宙人だね。」と受け入れる素振りを見せた。内心では、彼は何かを隠していると根拠もないが確信していた。ただ、少なくとも僕に危害を与えることが目的では無さそうだった。

 それからしばらくの間、二人はの会話を楽しんだ。宇宙人と日本人で。
にとっても歩は貴重な話し相手のようで、退屈な日常業務の中で見つけた宝物だった。ただ、任務に縛られてもおり、接触は最小限に留めていたのだった。それがこの頼りない関係を維持するための手段であった。そして、これからもこの関係を維持する目的で、二人の間でいくつかのルールが設けられた。

1、について、出来るだけ人には話さない。
2、コミュニケーションはどちらからでも可能。ただし、一回10分程度。次回まで1ヶ月以上空けること。

一つ目は歩のためのルール、他人に説明できないためだ。社会の中でうまく生きていくには、わざわざ説明しない方がよいことが多々ある。
二つ目はの都合による。何故そうなるのかはあえて質問しなかった。そうする必要があったからなのだろうと理解した。それでも、歩は自分からも話しかけられることが嬉しかった。なんとなく認められた気がしたのだ。のことはまだほとんど知らないというのが正解だと思う。ただ、歩にとってはすでには友人のような存在になってきていた。これからもっと知っていきたい。こちらのことも知ってほしいと、自然に感じていた。
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