イケメンエリート軍団の籠の中

便葉

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これ以上可愛くならないでよ…

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 舞衣は嬉しかった。このドレスを本当に気に入っていたから。
 舞衣はいつものソファの定位置に座ると、正面に見える美しい夜景をぼんやりと眺めた。


「私はやっぱりこの夜景が一番好き…」


 いつの間にか凪は舞衣の隣に座り、舞衣を身体ごと包み込んでいる。


「凪さんを息がかかるほど近くで感じられて、凪さんの匂いに包まれて見るこの夜景が一番好き」


 凪は後ろから舞衣の柔らかい頬に自分の頬をこすりつけた。


「舞衣、俺は自分の都合でしか生きれない人間で、人に合わせるなんて絶対できない人間だと思ってた。でも、舞衣との出会いで、俺が、一番、俺自身の変化に驚いてる。

 死ぬほど舞衣が欲しい……
 でも、舞衣を傷つけたくない……

 俺は、欲しいものは、どんな手段を使ってでも何があっても手に入れる。それは今までの俺であって、これからも変わらない。

 でも、舞衣だけは違うんだ……
 嫌なら手を出さない、傷つけたくない、傷つく顔を見たくない…」


 舞衣はいつもと様子が違う凪を見て、少し心配になった。

 私はもう処女ではない……
 そんな事、凪さんはちゃんと分かってるはず。


「凪さん……
どうしたの…?」


 凪は体をずらし舞衣の横に座り直した。そして、注いであるワインを一気に飲み干す。


「神様は本当に意地悪だと思うよ…
 俺がやっと手に入れた宝物をまた箱の中に戻そうとしている」


 舞衣は意味が分からずに、その先の凪の言葉を待った。


「今日、ソフィアから連絡があった。
 向こうで俺の技術が早急に必要なんだと。
 二週間後の異動の予定が、もっと早まった……」


 舞衣はあまりの驚きで言葉も出ない。


「火曜日に発つ……

 今日は土曜日だろ? 一緒に居れるのは後二日…

 一週間前の俺なら、欲しいものは奪ってでも手に入れてた。
 でも、今の俺は違う……

 たったの数日で、俺は舞衣に本気で惚れた。
 ニューヨークにも東京にも人間なんて星の数ほどいて、そんな中で俺はお前を見つけた。
 今考えれば、初めて舞衣を見た時から、俺は舞衣の魅力にひれ伏してた。
 それだけ、舞衣が持っているパワーは、俺を簡単に惹きつけたんだ。

 俺が初めて手にした宝物は舞衣いう名の本物の愛で、大切に思い過ぎるから、簡単にアメリカに一緒に行こうなんて言えない。急過ぎるし、舞衣に考える時間をちゃんと与えたい…」


 凪が横を向くと、舞衣はまた大粒の涙をこぼしている。


「俺は舞衣を離したくない、何があってもね。
 でも、俺の中に芽生えた不思議な感情が、それは舞衣が決めることだって…

 それに、もし、今、俺達が一つに結ばれたら、それが舞衣を縛り付けそうで怖いんだ」


 舞衣は様々な想いが溢れ出て、自覚がないまま凪の首元に抱きついた。


「凪さん…… 私……」


 舞衣の中で凪の言葉が大きな重しとなり、上手い言葉が見つからない。でも、それでも、本能は凪を求めている。


「凪さん、私……
 先の事は、まだ急過ぎて何も考えられないけど……

 でも、今の自分の気持ちは、はっきりと分かる……

 凪さんが好き……
 地球がひっくり返るくらい、凪さんが大好き……

 凪さんの事、愛してる…

 だから……」


 凪は舞衣の腰を持ち上げ、自分の膝の上に座らせた。


「だから?」


 凪は舞衣の流れ落ちる涙を指で拭いながら、いつもの悪戯っ子のような目をして舞衣にそう聞いた。


「……だから」


 舞衣は凪の意地悪な質問に、大粒の涙を目に溜めたまま凪を睨んだ。


「言ってくれなきゃ俺、一晩中、舞衣の耳元でささやくぞ、だから?って」


 降参した舞衣はまた凪の首元に腕を回し、凪の耳元で恥ずかしそうにつぶやいた。


「だから………
 私を抱いてください……」


 舞衣のラブラブビームは、凪の頭からつま先をかけ抜け、最後は凪の心臓を一撃した。


「舞衣、俺と一緒に奈落の底に堕ちようか…?」


 もうその先に言葉は必要ない。お互いを求める本能は、止まることなく二人の体を結びつける。
 凪は自分のしるしをつけるように、舞衣は自分の匂いを忘れさせないように、激しく深く愛し合った。


「先の事なんて考えなくていい、今だけを楽しもう…」


 凪は、舞衣の耳元で、何度もそうつぶやいた。


 そして、日曜日は一日中、二人は凪の部屋から一歩も出なかった。食事は全てこのビルにあるレストランから調達し、お互いの色々な話をして抱き合って、また話をしてまた愛し合って、そんな風に愛に満ち溢れた時間を過ごした。
 昨夜、二人が結ばれた後に、凪は複雑な笑みを浮かべこう言った。


「火曜日の朝、俺は日本を発つ。

 舞衣に考える時間をって言ったけど、どう考えても、俺の中では一週間が限界な気がする。
 何週間も何か月もなんて、俺自身が気がおかしくなりそうだからさ。

 舞衣には悪いけど、その間によく考えて。
 それで、俺のいる場所に行きたいって思ったら、メッセージで連絡してほしい。
 その時は、一週間後の朝に、タロウを舞衣の元へ送るから。

 もし、そうじゃないって思ったら、連絡も何も要らない。
 その時は、もう、そのままで終わりにしよう……」


 また泣きそうになっている舞衣の顔を、凪はいつものようにぷにゅぷにゅする。


「よし、じゃ、この話はこれでおしまい。
 後二日、何も考えずに二人の時間を満喫する。
 分かった?」


 切れ長の細い目から何かの拍子に大きな二重の線が出てくる凪の目元を、舞衣はジッと見ていた。

 私だって、凪さんと初めて会った時から、凪さんのこの目元に釘付けだった…
 一番怖いはずの人なのに、その瞳が気になって気になって眠れなかった。
 きっと、あの時から私は凪さんを求めていた…

 舞衣は頭の中の思考回路のスイッチをオフにした。くよくよ考え過ぎる自分を、この二日間は封印する。
 この二日間は、凪さんの事だけを感じていたいから……


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