イケメンエリート、愛に跪く〜エピソード タロウの憂鬱〜

便葉

文字の大きさ
1 / 3

しおりを挟む



「タロウさん、どっちがいいと思う?」


昨日の愛さんと舟さんの結婚式の後から、俺の心と頭は異常なほどに混乱している。
天真爛漫でたぶん十歳から精神的に成長のない美弥に、いろいろな意味で振り回されているのはちゃんと把握しているが、でも、いつでも俺の方が舵を握っていた。

ところが…
昨日の結婚式であのブーケをキャッチしてから、俺の中に新しい感情が芽生えてしまったみたいで、何だかずっと胸が苦しい。
美弥のタロウさん好き好きビームは、ウザいくらいにしつこくて、でも、何だか妙に可愛らしくて、あいさつ程度のキスを条件に、俺は美弥とたまにデートをしたりした。

恋愛とか結婚とか、全く興味が持てない。
毎回、それを美弥に言い続けた。
それでも俺を好きだって言うんなら、たまに付き合ってもいいよなんて、絶対的に自分を優位に立たせて美弥の心を弄んだ。

でも、今の状況は、完全に何かが違う。
愛さんから美弥に結婚式の招待状が届いて、一日遅れて俺にも舟さんから同じ物が届いた。

仕事上、EOCの人達との関わりは大事にしておきたかったし、特に、凪さんの友達の誘いは断りたくなかった。
それが、たとえ、美弥と一緒の旅行になろうとも。

いや、たぶん、俺はこの時点で、美弥への想いは膨らんでいたのかもしれない。
今までのクールで人と深い関わりを持ちたくない俺の性格ならば、舟さんに上手に丁寧に断っていたはずだから。


「タロウさんはどっちが好き?
私、海で泳ぐなんて、子供の時以来だから、水着の良し悪しなんて全然分からないよ」


そう、今、俺は水着の買い物に付き合わされている。
それも、女性専用のビキニショップで。


「愛さんが、ハワイの海の素晴らしさを美弥ちゃんに教えたいから、絶対に一緒に泳ごうって誘ってくれたのは嬉しいけど…」


「全然、私、泳げないんです~だろ?」


美弥は俺を見て、肩をすくめて笑った。
そんな何でもない美弥の笑顔にさえ、胸がキュンとする俺はやっぱりどこか壊れている。
あの、昨夜のキスがまずかった。
俺の元へ飛んできたブーケは、きっと、愛さんの念が込められていたに違いない。
……あなたは、必ず、美弥ちゃんを好きになる、と。

俺は立ち尽くしている美弥が可哀そうで、何だかすごく愛おしくて、無意識のうちにあんな濃厚なキスをしてしまった。
でも、いつも受け身で子どもっぽい美弥が、あんな大衆の面前で俺にそのキスを返した。
それも、俺以上に濃厚で、しびれるようなキスを。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

さようなら、初恋

芙月みひろ
恋愛
彼が選んだのは姉だった *表紙写真はガーリードロップ様からお借りしています

イケメンエリート軍団の籠の中~エピローグ・空港編・凪、壊れてます~

便葉
恋愛
アメリカへ旅立とうとしている二人の空港でのわちゃわちゃストーリー 本編からの続きとなっています

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...