選ばれたのはケモナーでした

竹端景

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第二章 事件だらけのケモナー

助けよう

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 俺がケルンから抜け出せたら、一発は殴っている。
 蛇って生き物は毒があるからと嫌われているが、よく見て欲しい。あのつぶらな瞳に、モフモフはないけど、煌びやかな皮膚は宝石のよう…クール系アイドルだろ! 

 これは、どう助けるべきか。思考の加速をしていても、良い案が浮かばない。良くない案ならあるが。

「なにかないの?」
 あるにはあるが、どれも確実とは言えない。それに危険もある。

 一番、良い案が、街にきているはずのカルドを見つけて、状況を説明して蛇を購入する。そして、父様に治してもらう。いざとなったら、医者のザクス先生なら、何とかなるかもだし。ただ、カルドを探している間に、蛇が無事かわからない。だから、この案は通らない。
 カルドが来ていても、お説教が待っているだろうから、ここに戻ってこれるかわからないしな。
 
 人を呼んでも、意味がないだろう。あんな酷いことをしていても、この国は捕獲した者に所有権がある。所有者が、あの男達であるなら、どう扱おうと構わないのだ。蛇ならなおさらだ。
 薬や食用目的だといわれたら、あいつらは罪には問えない。例えば、街に放して被害が出るなら別だが。

 良くない案は、ケルンだけで、商談をすすめて、蛇を購入する。

 これは、かなり良くない。
 まず、何よりもあの仮面男がいるから、近づきたくない。みるたびに、知識でしかない俺がぞわぞわとした変な気分になるのだ。
 
 それに、金で解決といっても…クレエル大金貨一枚…そんな大金は持ってない。
 財布の中は、くすんだ色のクレエル銅貨が、一枚増えて、四枚。銀貨は一番使うから、減りが早い…六枚。金貨は、この前、司祭様から頼まれた棒神様の絵を描いた代金で五枚。

 値切るか…値切りのスキルがあれば…値切りが上手くいくが、ケルンには今のところ、二つしかスキルがない。
 『造物』は意味がないし『身体強化』も、この場では意味がないスキルだ。

「どうしよう…近くに行く?」
 いや、待て。どうしようか…とりあえず、近づきたくないんだよ。

 首の後ろを刺激するチリチリとした感じが、弱くなった。
 視線を仮面男に向ける。

「何でぇ、起きたのか。お前の分の取り分はちゃーんと、用意してある。なにせ、捕まえたのお前だからな。助かったぜ」

 セーラーおっさんが、かなり重そうな…たぶん、金だろうな。小袋を渡している。
 仮面男は薄汚れた袋を、興味がないようなそぶりで中身を確認せず懐にしまう。
 興味がないと思ったのは、すぐに懐にしまったからだ。男たちのよそよそしい態度をみて、長い付き合いの仲間ではなく、この場の付き合いなのだろうと読めたが、だというのに、袋の中身を確認しようとすらしなかったのだ。

 おかしいな…その疑問はすぐに解決した。

「本当に、これでいいのか?もう少し待てば、金も追加するぜ?」

 セーラーおっさんが、そういって、引き留めようとするが、仮面男は、ケルンが隠れているのとは、反対の奥の路地へ足をむける。

「えーえー。私は、この鱗と…この蛇の親の胆で充分です…えーえー、なにぶん、私じゃ剥げないので…金はそちらで、分けてください。えーえー私はもう充分なんで」

 甲高い男の声だった。どうも欲しかったのは金ではないようだ。
 蛇の親の胆…つまり、捕まっているのは、子蛇なのか。しかも…親は殺されているのか…そうか。

 壁に触れている指先に力が入る。

 蛇は、薬になる。だから、欲しがる人はいるだろう。
 生きる為には、仕方ないから。それを止めろ!とは、いえない。誰にも資格はないことだ。生きる為に生きている物を殺す。それをしてこなかった人は、いないだろう。動物も植物も、生きていることに変わりはない。

「ああ、それから、また仕事がありましたら、声をかけますよ、えーえー。仕事は早くが一番ですからねー。」

 そういって、立ち去った。嫌な気配が完全に遠退いたのを見計らい、どうするか…たぶん、このままじゃ…冷静に対応せねば。
 深呼吸して考えよう。

「ん?とうとう死んだか」

 冷静に。

「じゃぁ、皮を剥ぐか。起きろ、仕事だぞ」

 冷静…冷静…うん。

「すいませーんー!その蛇を、僕に売ってください!」

 ケルンが駆け出すと、眠っていた男も目が覚めたようだが、全員注目して、動きがとまった。

 冷静に対応する。
 冷静に考えて、今行動しないと、後悔するのがわかったからだ。

 我が家の家訓にもある。「後悔は、行動してからすればいい!」を、実践したのだ。
 家訓は、カルドとティルカが、よく口に出しているからな。覚えている。あの二人、親子だよなー。似てないようで、似てる。

「何でぇ…小僧…」

 セーラーおっさんが、睨んでくるが、本気で怒ったエセニアの方がもっと怖いんだぞ!
 絶対、屋敷に戻ったら、隠れんぼから、鬼ごっこになっていることは間違いないからな!

 うわ…帰りたくない…いまはそれどころじゃなかった。

「僕は、そこの蛇さんが欲しいです!売ってください!」

 大きな声ではっきりと。六歳になったんだから、ちゃんと伝えることはできる。さて、どんな反応するか…相手の様子をみてみようか。

「へへ…小僧…じゃなく、若様は貴族なんですかぃ?」

 歯抜けが、手を揉みながら近寄ってくる。本当に、そんなことする奴いるのか。あと、悪いが近寄るな。酒の匂いと…なんだろう…変な匂いがする。
 どっかで嗅いだことがあるんだけど、とにかく臭い。

「そうだよー!たぶん…」
 貴族ではあるけど、ぴんきりだからな。

 たぶん、貴族なんだけど、爵位とか聞いたことないんだよな…領地少なすぎるから…男爵?子爵?…名誉貴族…ではないよな。家に紋章あるから。名誉貴族は紋章を持てないって話だし。

「何でぇ、若様だったのか。お供はいねぇようだが、一人か…?」

 セーラーおっさんが、悪い顔をしているな。

 さて、ここからが、俺の活躍するとこだな。ただの六歳児だと思うなよ!
 こっちとら、色んな知識を積み重ねてきた、俺って存在がいるんだからな!ちょっと、知識と思考領域に検索かければ、こんな風に対応できるんだぞ!

「一人じゃないよー、うちの執事がちゃんと街にいるもん。それに、見えてないだろうけど、僕は一人じゃないもん!今はね…お買い物の練習中なの」

 カルドは、街に絶対にいる。もし、屋敷に戻っていても、必ず、ケルンを探し出す。うちの執事長は、何でもできるんだ。

 そして、ケルンは、一人じゃない。俺がいる。俺達は、離れることはない。
 つまり、嘘はいってないから溢れる自信だ!

「監視が…いるのかもな…」

 ハサミ男が、ぽつりというと、セーラーおっさんと、歯抜け男の雰囲気がガラリと変わった。先程までの、良からぬ気配が、今度は下手にでるようだ。

「若様!うちの商品は、かなり珍しいのですよ!ご覧くださいませ!」

 歯抜け男が、言葉を吐く度に、笛みたいにピーピーなるので、聞き取りづらいが、ようやく、蛇と対面することができるな。怪我の具合を早くみてみよう。応急措置程度なら、なんとかできるはずだ。布なら、服を脱げばどうにかなるしな。

 そそいてあんないされた先で見た蛇はなんとも美しかった。

「うわぁぁ…」

 思わず声が出た。
 銀色の鱗。そして、翡翠のような綺麗な瞳。チロチロと舌を出しているのは、怯えているのか、不安なのか。

 ただ、鱗の半分近くが剥がされ、赤い斑を作っている。一部は膿んでいるのか、痛々しい。

「かわいそう…」
「若様!子供とはいえ、ミズヴェルドを生きたまま捕まえるのは、至難の技!ですが、今ならこの様に簡単に手に入りますぜ!」

 ケルンの呟きは聞こえていないのか、聞く気がないのか、歯抜けが説明してくる。ミズヴェルドという蛇は聞いたことがないが、珍しいのは間違いないだろう。子供といったが、これほど大きな…馬車の三分の二ぐらいの大きさで、子供ということは…親はどれだけ大きかったんだろうか。

「そうですぜ、若様。今なら、この蛇が金貨十枚で、手に入りますぜ?」

 セーラーおっさんがそういった。かなり値下がりしているが、予算が…かなり厳しい。

「僕ね、これだけしか持ってないの…お願い!これで買わせて!」

 そういって、財布をセーラーおっさんに、渡す。全財産だ。欲しかった図鑑と、新しい筆は今度の絵とか本の収入という名目のお小遣いまで、我慢することにしよう。

「おっと!貴族様が直接お支払いとは縁起がいい。へへ。構わないですぜ…どれどれ…結構ある…ん?」

 セーラーおっさんが、勘定している間に、歯抜けが、檻の鍵をあけた。

「今回特別に手に入った隷属の魔石を飲ませてるんで、人は、襲わないんでさぁ。よーくみて」
「おい、こっちきて確認手伝え」
「あん?金ぐれぇ…若様、持って帰る算段でもしててくだせぇ」

 歯抜け男はセーラーおっさんの所へ行って。何やら驚いてあくどい顔をしたようにみえた。
 大人ほどの蛇を、持って帰れって、何だこいつ。あと、ハサミ男が、舌なめずりしながら、ケルンを見ているが…まさか…こいつは!

 ノータッチ!フェチ道の道は違えど、これを守れない輩ではないよな…ケルンはまだその手の道は触れないようにしてるんだ。

 確かに、小さい男の子好きからすれば、それこそ舌なめずりするかもしれない。 

 ケルンは、父様と母様のいいところだけ受け継いだような容姿だ。女の子っほいとまではいかないが、男の子らしいともいえない。中性よりの男の子だ。
 ナルシストじみたことをいうが、だって母様ってば美人なんだぜ?父様もイケメン。どうあがいたって将来はイケメン。
 まぁ、俺って要素がくっつけば、普通よりちょいイケメン?ぐらいになるんじゃないかな。ケモナーってイケメンでも残念にするってどこかの世界じゃいわれたしな。

 将来残念になる予定なんだ。
 だから、そのでっぱりを押さえてくれねぇかな!ケルンがわかってなくても、俺はわかるから!そのテントはすぐにしまってください!

「テント?」
 ケルンは気にするな!
「キャンプするの?」
 もう何年かしたら教えてやっから!

「柔らかそうな肌…いいなぁ…」
 
 ハサミ男がこっちをみている。とても、とっても、とーっても熱心に。
 け、警察!この世界だと、自衛部か!ティルカ!助けて!襲われる!

 シャキン、シャキン…ハサミ男が、ハサミを鳴らす…ヤバいな。

 ここまでは、一応計画していたのだが、隷属の魔石は、予想外だ。隷属の魔石は、かなり高価でなかなか手に入ることも、作ることも難しい。

 しかし、隷属か…どっかでそういう採掘場所でも、みつかったのだろうか?

 キノコ元帥が使っていた魔石のことは、あのあと、少しだけ聞けたのだが…かなり厄介なのだ。

 リンメギン国で魔石収集を趣味としていた戦争支持派が持っていたというのだ。それをキノコ元帥が入手して、あの事件を起こしたというのだ。
 その魔石収集をして者は濁していたが、すでに死んでいるようだ。どこで入手したかもわからないが、人工では不可能な種類の魔法が魔石化しているとうことは、どこかに隷属の魔法がしみ込んだ土地があって、そこで魔石が採掘されているのではないかと、にらんでいる。

 隷属はかなり危険で嫌われた魔法だから、古代の墳墓などがあやしいのではないかと父様も独り言でいっていたからな…しかし、隷属か。

 あの事件…我が家ではあのキノコのせいで、坊っちゃまがドワーフなんかに狙われることに…事件と、長い名前がつけられている。やめてほしい。
 引退発現のあとで、エフデはドワーフではないかっていう話題に、リンメギン国が将来的にはなんていいだして、我が家が荒れたんだからな。

 それにしても…この蛇…大丈夫だろうか?
 
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