選ばれたのはケモナーでした

竹端景

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第四章 学園に行くケモナー

サイジャルはへんてこ

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 二人と一緒に学園の門をくぐってサイジャルへと入った。

 一応学園都市という名前の通り、ここは都市であるが、その実態は世界中の研究者や様々な分野の先駆者が集まる、知識と芸術の国だ。

 どこにも属さない代わりにどこの人間でも受け入れる。
 俺たちが学園といっているのは、サイジャルの一面でしかないらしい。

 とはいえ、俺たちにはあんまり関係がない。
 研究者ではないからな。ギリギリで芸術家…といっていいのだろうか?あくまで趣味だからなぁ。ケルンが将来的になにになりたいのかは、まだ決まっていないが、もしかしたら、芸術方面に行く可能性は高いかもしれない。

 関係があるとしたら、ナザドが勤めていることと、この学園のどこかにご先祖様が建てた建物があるということぐらいだろう。

 にしてもだ。

「たっくさんの人!」
 これ、全員学園の関係者なのか。多いなぁ。
「お兄ちゃん、あれはなに?」
 ん?…あれは…バイク?こんな所にあんのかよ。

 壁を登っているのは自動二輪車。まぁ、バイクでもオフロードバイクならかっこいいだろう。それよりも早い原付みたいなバイクがあっちこっちで配達をしている。

「さすがサイジャル…あの発明をああもあっさり使うとは…」
「バイクぅ?のこと?」
 バイクな。

 そう訂正したが、若干違った。

「ケルンも知っていたか。バイ・クゥーはまだ世に広まっていないが、そのうちクウリィエンシアにも導入する予定だ」

 バイクじゃなくて、バイ・クゥーなのかよ!…まぁ、ほとんど音がしないからな。エンジンの音はしていなくて、少し高いこぉぉっという音がしているだけだ。
 蒸気が少し出ているようだが、魔石を反発させあっているんだろうな。浮遊というより、バイクを軸にして引力を常に下向きにして走れば壁も登れるかもしれない。
 まぁ、条件として地面や壁とでもしてるのだろうな。さすがに、空は飛んでいない。
 
 モフーナの人は本当に飛ぶのが好きだからなぁ。
「お空を飛んだら楽しいし、早いよ?」
 いや、お前も好きだよな。
「空はいいな…そういう研究も進んでいるといいんだがな」

 ミケ君、君もなのか。
 くすくすとメリアちゃんも笑っているが、俺は知っている。屋敷のペギン君を羨ましそうにみていたメリアちゃんの姿をな!とてもかわいかったです。

「そうだねー。あ、でもお兄ちゃんも空好きでしょ?僕、知ってるよー?」
 好きってか、季節を感じれるからな。でも好き好んで飛んでまで感じたいとは思わねぇな。
「体が…その…あのね?…元気になったら、絶対に一緒に空を飛ぼうね?」
 あー…そうだな。そうなったらな。

 他にも人がいるから言葉をかえているが、体が見つかったらと、いいたいみたいだな。
 最近、どうもこういうすれ違いといえばいいのか…ケルンが、俺の体を探す!と言い張っているのだ。

 父様がケルンのために作り話をするから、ケルンはすっかり、俺の体を悪い人が盗んでいって、そのせいで俺はケルンの中にいると思っている。

 この年頃の子供は記憶とかを都合よく改変できるからなぁ…俺、最初なんて妖精さん扱いだったんだぞ?まぁ、色んな話とかを教えたり、話し相手にはなっていたけど…それが原因か?

 兄弟が欲しかったみたいだし…まぁ、なんで知識の俺がこうしてケルンとは別の自我を持っているのかは、まだよくわかってないが…少しぐらいは付き合ってもいいか。

「たくさん人がいるけどどれぐらいいるのかな?」
 さあ?さすがにそこまではわからないな。

 敷地というべきか、小島全ての人口はわからない。

「まず、この学園の生徒総数は、一万…と、いわれている」
「いわれている?」

 階段を上り下りしていると、不思議なことをミケ君がいった。
 一万?言われている?いや、管理してたら、わかるんじゃないの?

「一万という数字も多いだろ?だが、生徒の数が正確にわからないんだ。卒業せずに、学生のままという人間もいれば、国が無くなって、学生の席を残しつつ、講師のようなことをする者もいる」
「え!だったら、誰が生徒で誰が先生とか、わからないってこと?」

 なんだそのややこしいの!

「学園都市サイジャル。俗に幻影国家サイジャルと呼ばれているのも、原因だ」

 幻影国家…ああ、キャスの授業でやったな。
 確か、幻影国家っていうのは、国王も国民もいるのだけど、その境がない国だっけ?それなのに、国として存在している矛盾だらけの国って、サイジャルのことか。

「学園長が、公式の場での最高責任者だが、さらにうえに理事会が存在している。噂では、理事会の者はエルフであるとか、龍であるとか。まぁ、とにかく、謎が多いんだ」

「エルフ!龍!すごぉーい!会ってみたい!」
 ほー。エルフや、龍か!みてみたいなー。でも、噂だからな…本当だったらいいんだけどなー。
「それは難しいな。噂…だからな」
 ほら、やっぱりな。

 きゃっきゃっとはしゃいでいるケルンをミケ君はため息をついてみる。

「それにしてもだ、ケルン。お前は建国貴族で、一応王族の血統ということを忘れるなよ?」
「え?なにかあるの?」

 うっ…痛いとこついてくるな。ケルンに自覚があるかといわれると、まったくない。何故なら、比較するような生活をしてきていないからだ。

 貴族と貴族じゃない人の違いがさっぱりわからないんだよな。

 王族の血とかいわれても、継承権は母様が持ってただけで、ケルンには関係ない…はず。いや、ないよな?あれ?意識失ってた時の話だからいまいち、わからない。まぁ…フェスマルク家は関係ないから…大丈夫か。

「まず、同じ組になる者は同郷の位の高い者たちになるだろう」
「えっと…同級生ってやつ?クウリィエンシアの人ばかりになるんだぁ」
「そうだ…もしも、組を王族だけにしてみろ。敵国や過去に争っていた国の者がいれば…事故でも起こされたら、下手すれば、どちらかの国が滅ぶ。最低でも傾くだろ?だから、入学式のその場で、組分けが決まる。組の人員については、担任と同じ組の者しか知らない」

 なるほど。クラス単位で動くこととかが、あるかもしれないからな。もし、王族クラスなんて、分けてしまったら、狙われるか。
 それに、同じクラスに敵とか味方とかがいたら、もめ事しか起こらないだろうな。

「一応、各組には特徴があるんだがな。秀才が集まるとか、商人達が多いとかな。そんなわけで、昔は、百人組と、五人組なんてほどの人数差がでる組があったそうだ」

 百人クラスか…友達百人できるかな…五人クラスは…ぎりぎり、一班ぐらいか。

「ねぇねぇ、ミケ君。百人でサンドウィッチ食べれるかな?」
「なんだ、百人で食べるとは?」
「お兄ちゃんがね、友達百人できたら百人で食べたいなって歌を歌ってたの!だから、百人とかできるかなぁ?って」

 いや、それおにぎりだぞ。

「なんだその歌」
「初耳ですわ」
「あっれぇ?」

 メリアちゃんにまたも笑われてしまったが、ミケ君も、まさかのミルディまで笑うとは。

「ケルン様と一緒のクラスだと、嬉しいのですけど…毎日楽しそうです」
「僕も、メリアちゃんと一緒だといいなー。あ、ミケ君もだよ?」
「ふ、ふん。べ、別に私は気にはしない。組が違っても、講義を同じにすればいいだけだ」
「そうだねー。一緒に決めようね!」

 メリアちゃんは、とても素直なのに、ミケ君は意地っ張りだよなー。何だかんだいって、面倒見いいから、流石、お兄ちゃんなだけはあるな。
 もうちょっと素直になってくれたら、すぐに友達たくさんできるだろうな。

「友達百人できるかなぁ?」
「ケルン様ならできますわ」
「ちがいない」

 全員で頷くが、きょとんとしてケルンはわかっていない。
 やっぱり、ケルンは子供っぽいな…ここは俺がしっかりして…はっ!なんだ!あの窓の所にいるのは!カメレオンかぁぁ!ちょっともう一回虹色に!

「お兄ちゃんも、はしゃいでるよ?」
 …それはいいっこなしにしような。


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ブックマークがありがとうございます。
増えると嬉しくて執筆速度があがる単純な作者です。
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