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第2話 陽光、空気、水
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ネギは電柱にしがみつき、激しく吐いた。
胃の中身をすべて吐き出してしまいそうな勢いだった。
背後では後輩の——にんに人間のガリックが、慌てた様子で背中をさすっている。
「ネギ兄、大丈夫っすか?」
ネギは手をひらひらと振り、「平気だ——」と言いかけたその言葉は、さらに強い吐き気に押し戻された。
◆◇◆
二人は児童公園に置かれた木馬を、それぞれ一台ずつ占領していた。
足元には缶入りのスタンリー(栄養液)が転がっており、この場所とはひどく不釣り合いだ。
オフィスでのあの騒動は、結局、二人そろって部長室に呼び出されるという形で幕を閉じた。
コショウのやつは、ハンカチで顔を覆い、部長の足元にひれ伏して泣き訴えた。
——まるで安っぽい昼ドラだ。
ぶりっ子の愛人、鷹のように鋭い正妻、そして心の離れた愚かな夫。
理知的で冷静と評判の玉ねぎ部長も、その“甘い麻薬”に見事にやられてしまった。
同じく辛味と芳香を持つ存在として、誰よりもネギを信頼していたはずなのに、今日は弁明の機会すら与えなかった。
冷たい風が吹き抜け、空き缶が転がる。
ネギはくしゃみを一つして、回想から引き戻された。
鼻をこすり、顎を木馬の頭に預ける。
長すぎる手足は力なく地面に垂れ下がっていた。
「ネギ兄」
隣に座っていたガリックが、ふいに真剣な表情でこちらを見る。
「俺たち、いつになったら……太陽に頼らなくても生きられるようになるんすかね」
「……は?」
ネギの頭は、もう複雑な思考をする余裕を失っていた。
ガリックは構わず言葉を続ける。
「太陽、空気、水。植物にとって、どれも欠かせないっすよね。
空気はどこにでもあるし、水は地球の七割を占めてる。
もし、太陽がなくても生きられる存在になれたら
——完全に寝転がって生きられるじゃないっすか」
「全員が働かなくなったら、何も作られない。
生産は止まって、結局、みんな餓死だ」
冷たい風のおかげで、ネギは少し正気を取り戻していた。
「じゃあ、作ればいいんすよ」
ガリックの目が、ぱっと輝く。
「労働の価値を表す“何か”を。みんなでそれを交換するんす。
たとえば——紙に書くとか!めちゃくちゃ便利じゃないっすか?」
成功したばかりの発明家のように、彼はどんどん興奮していく。
「名前は——マネー!マネーっす。
俺の一番好きな女優の名前なんで、嫌う人はいないはずっす!」
彼はすっかり、自分が作り上げたユートピアに浸っていた。
そこでは、冷たくて低い木馬にまたがっているのではなく、海辺のデッキチェアに寝転び、無限の陽光を浴びているのだ。
「へへ……」
不意に、くぐもった笑い声が割り込んできた。
公園の片隅。
段ボールをかぶった浮浪者が、影の中に座っている。
「理(ことわり)は変わらんよ」
わずかに顔を上げると、街灯の淡い光が、斑な黄ばんだ歯を照らし出した。
「太陽でも、他の何でもいい。
お前さんたちの言う“マネー”だって、結局は少数の手の中に集まる」
ガリックの夢の泡は、ぱん、と音を立てて弾けた。
彼は勢いよく立ち上がり、怒鳴り込もうとする。
ネギは慌ててそれを止め、スタンリーの缶を一つ拾って老人に投げた。
口止め代わりだ。
「待て!」
遠くから、鋭い声が響いた。
ネギが顔を上げると、二つの影が前後して駆けてくる。
後ろが警官だと気づいた瞬間、彼は反射的に、脇をすり抜けようとした人物の腕を掴んだ。
引きちぎられるように外れた、鮮やかな黄色のフード。
現れたのは、しょうが色のドレッドヘアと、涙をたたえながらも強情さを隠しきれない少女の顔だった。
その涙は、一瞬でネギの心の奥の、ある場所を濡らした。
彼は呆然とする。
フードは、指先からするりと滑り落ちていった。
「顔は見たか!」
胡瓜警官が駆け寄り、膝に手をついて息を整える。
吐く息には、どこか爽やかな香りが混じっていた。
「……見てません」
言葉は、考えるより先に口をついて出た。
なぜ、見ず知らずの少女のために嘘をついたのか——自分でもわからない。
ただ、あの涙の“重さ”だけは理解した気がした。
罪を隠すための偽装ではない。
それは、もっと深いもの——理不尽、不公正、そしてこの暗い世界への無言の叫び。
胡瓜警官は背筋を伸ばし、全身の棘を逆立てる。
いつでも犯人に飛びかかれる構えだ。
「本当に、見てないんだな?」
「……見てません」
ネギはもう一度言った。
今度は、自分に言い直す隙すら与えなかった。
騒ぎは、やがて収まった。
振り返ると、ガリックは木馬の上でぐったりと眠りこけている。
先ほどの怒鳴り声は、どうやら彼にとって子守歌になったらしい。
段ボール頭の浮浪者の姿は、いつの間にか消えていた。
地面に残っているのは、風に転がされる空き缶だけ。
そのうちの一つ、スタンリーの缶の下に、一枚の葉が押さえつけられている。
半分は、すでに黄ばんで枯れかけていた。
そこには、こう書かれていた。
——ドリームホットライン XXX-XXXX-XXXX 那須 正太郎
大きく書かれた「ドリーム」が、病に侵されたその葉の上で、やけに眩しく見えた。
トイレの扉に貼られた安っぽい詐欺広告のように、騙しだとわかっていても、なぜか誰かが電話をかけてしまう。
ネギはしばらく黙り込み、やがて腰をかがめた。
くしゃくしゃのその葉を拾い上げ、丁寧に折りたたみ、スーツの内ポケットへしまう。
——稚拙な詐欺ほど、騙される側を選別するのに、都合がいいのだから。
◆◇◆
ガリックと別れたあと、ネギは一人で帰路についた。
この一帯の歓楽街を抜ければ、彼の住まいにたどり着く。
ここは第5環の中で、唯一「光」が残されている場所だった。
ネオンが不規則に明滅する。
ピンク、エメラルドグリーン、ディープブルー——不健全な光。
ああした人工の光源は、植物人の神経を狂わせ、感情を暴走させ、欲望や暴力的な夢を芽吹かせる。
それでも、闇の中で生きる者にとっては、無いよりはましだ。
幻の光であっても、それはかろうじて残された希望なのだから。
ネギは足を引きずるように通りを歩きながら、頭の中がぐちゃぐちゃになっていくのを感じていた。
さっき警官に嘘をついたことを、今になって後悔し始めていたのだ。
思考が絡まり合い、どこからほどけばいいのかも分からない。
不意に肩をぶつけられ、我に返る。
いつの間にか通りは人で溢れ、さまざまな植物人間たちが、同じ方向へと吸い寄せられていた。
「カラ・トウ氏が来たらしいぞ!選挙演説をするって!」
「マジかよ!本物が見られるのか?」
群衆がざわめき立つ。
ネギは一瞬きょとんとしたが、すぐにその熱気に巻き込まれ、悩みを後ろへ押し流された。
彼は人の流れに乗って小走りになり、きらめく光の海を突き抜けていく。
だが、ようやく広場にたどり着いたときには、演説はすでに終わっていた。
舞台裏へと向かう、背筋の伸びた大きな後ろ姿がひとつ見えるだけだった。
ネギは息を詰めた。
——あれが、カラ・トウ氏だ。
たとえただのスタッフだったとしても、彼はそう信じたかった。
その瞬間、血が再び巡り出すのを感じた。
足取りは軽く、地面から浮きそうになる。
ネギはカバンを握り直し、サメのような歯をのぞかせて口角を上げた。
完全な闇へと帰るその夜、彼の心だけは、初めて明るかった。
◆◇◆
人波が散り、ネオンの下から二つの見覚えのある影が現れる。
長身のアフロの男はシルクのハンカチで口元を押さえ、小柄な玉ねぎの男は、うつむき加減で大人しくその後ろに従っていた。
「汚いな……。カラ・トウ氏が来るって聞かなきゃ、第5環になんて一歩も踏み入れなかった」
コショウは眉をひそめ、ハンカチをきつく握りしめる。
そのとき、失望でくすんでいた彼の目が、ふっと輝きを取り戻した。
「おや——これはネギ先輩じゃありませんか?」
軽やかな声で、わざとらしく驚いたふりをする。
「まさか、先輩……第5環にお住まいなんです?なるほど、あんなに必死で働いてた理由が分かりましたよ——スラムから逃げ出したかった、ってわけですね!」
そう言いながら、彼は部長の肩に手を置いた。
指先が、ぴくりと震える——じん、とした痺れが走り、再び部長の脳は容易く掌握された。
部長はぎこちなく笑った。
まるで糸で操られる操り人形のように。
「あはは……そうだなぁ……立派な心意気だ……ははは……」
ネギは黙って、その光景を見つめていた。
胸の奥で、言葉にできない皮肉が渦を巻く。
——高みに立つ英雄には、出身を問わない。
だが、まだ泥の中でもがく者には、手を差し伸べるどころか、踏みつけて、自分の立場を守る。
怒りが喉元までせり上がり、胸の名札を引きちぎって地面に叩きつけそうになる。
「……クソ、もうやってられるか」
その叫びは、心の中で爆ぜただけだった。
冷たい夜風が頬をなで、口を開いたネギの唇からこぼれたのは、白い息だけだった。
胃の中身をすべて吐き出してしまいそうな勢いだった。
背後では後輩の——にんに人間のガリックが、慌てた様子で背中をさすっている。
「ネギ兄、大丈夫っすか?」
ネギは手をひらひらと振り、「平気だ——」と言いかけたその言葉は、さらに強い吐き気に押し戻された。
◆◇◆
二人は児童公園に置かれた木馬を、それぞれ一台ずつ占領していた。
足元には缶入りのスタンリー(栄養液)が転がっており、この場所とはひどく不釣り合いだ。
オフィスでのあの騒動は、結局、二人そろって部長室に呼び出されるという形で幕を閉じた。
コショウのやつは、ハンカチで顔を覆い、部長の足元にひれ伏して泣き訴えた。
——まるで安っぽい昼ドラだ。
ぶりっ子の愛人、鷹のように鋭い正妻、そして心の離れた愚かな夫。
理知的で冷静と評判の玉ねぎ部長も、その“甘い麻薬”に見事にやられてしまった。
同じく辛味と芳香を持つ存在として、誰よりもネギを信頼していたはずなのに、今日は弁明の機会すら与えなかった。
冷たい風が吹き抜け、空き缶が転がる。
ネギはくしゃみを一つして、回想から引き戻された。
鼻をこすり、顎を木馬の頭に預ける。
長すぎる手足は力なく地面に垂れ下がっていた。
「ネギ兄」
隣に座っていたガリックが、ふいに真剣な表情でこちらを見る。
「俺たち、いつになったら……太陽に頼らなくても生きられるようになるんすかね」
「……は?」
ネギの頭は、もう複雑な思考をする余裕を失っていた。
ガリックは構わず言葉を続ける。
「太陽、空気、水。植物にとって、どれも欠かせないっすよね。
空気はどこにでもあるし、水は地球の七割を占めてる。
もし、太陽がなくても生きられる存在になれたら
——完全に寝転がって生きられるじゃないっすか」
「全員が働かなくなったら、何も作られない。
生産は止まって、結局、みんな餓死だ」
冷たい風のおかげで、ネギは少し正気を取り戻していた。
「じゃあ、作ればいいんすよ」
ガリックの目が、ぱっと輝く。
「労働の価値を表す“何か”を。みんなでそれを交換するんす。
たとえば——紙に書くとか!めちゃくちゃ便利じゃないっすか?」
成功したばかりの発明家のように、彼はどんどん興奮していく。
「名前は——マネー!マネーっす。
俺の一番好きな女優の名前なんで、嫌う人はいないはずっす!」
彼はすっかり、自分が作り上げたユートピアに浸っていた。
そこでは、冷たくて低い木馬にまたがっているのではなく、海辺のデッキチェアに寝転び、無限の陽光を浴びているのだ。
「へへ……」
不意に、くぐもった笑い声が割り込んできた。
公園の片隅。
段ボールをかぶった浮浪者が、影の中に座っている。
「理(ことわり)は変わらんよ」
わずかに顔を上げると、街灯の淡い光が、斑な黄ばんだ歯を照らし出した。
「太陽でも、他の何でもいい。
お前さんたちの言う“マネー”だって、結局は少数の手の中に集まる」
ガリックの夢の泡は、ぱん、と音を立てて弾けた。
彼は勢いよく立ち上がり、怒鳴り込もうとする。
ネギは慌ててそれを止め、スタンリーの缶を一つ拾って老人に投げた。
口止め代わりだ。
「待て!」
遠くから、鋭い声が響いた。
ネギが顔を上げると、二つの影が前後して駆けてくる。
後ろが警官だと気づいた瞬間、彼は反射的に、脇をすり抜けようとした人物の腕を掴んだ。
引きちぎられるように外れた、鮮やかな黄色のフード。
現れたのは、しょうが色のドレッドヘアと、涙をたたえながらも強情さを隠しきれない少女の顔だった。
その涙は、一瞬でネギの心の奥の、ある場所を濡らした。
彼は呆然とする。
フードは、指先からするりと滑り落ちていった。
「顔は見たか!」
胡瓜警官が駆け寄り、膝に手をついて息を整える。
吐く息には、どこか爽やかな香りが混じっていた。
「……見てません」
言葉は、考えるより先に口をついて出た。
なぜ、見ず知らずの少女のために嘘をついたのか——自分でもわからない。
ただ、あの涙の“重さ”だけは理解した気がした。
罪を隠すための偽装ではない。
それは、もっと深いもの——理不尽、不公正、そしてこの暗い世界への無言の叫び。
胡瓜警官は背筋を伸ばし、全身の棘を逆立てる。
いつでも犯人に飛びかかれる構えだ。
「本当に、見てないんだな?」
「……見てません」
ネギはもう一度言った。
今度は、自分に言い直す隙すら与えなかった。
騒ぎは、やがて収まった。
振り返ると、ガリックは木馬の上でぐったりと眠りこけている。
先ほどの怒鳴り声は、どうやら彼にとって子守歌になったらしい。
段ボール頭の浮浪者の姿は、いつの間にか消えていた。
地面に残っているのは、風に転がされる空き缶だけ。
そのうちの一つ、スタンリーの缶の下に、一枚の葉が押さえつけられている。
半分は、すでに黄ばんで枯れかけていた。
そこには、こう書かれていた。
——ドリームホットライン XXX-XXXX-XXXX 那須 正太郎
大きく書かれた「ドリーム」が、病に侵されたその葉の上で、やけに眩しく見えた。
トイレの扉に貼られた安っぽい詐欺広告のように、騙しだとわかっていても、なぜか誰かが電話をかけてしまう。
ネギはしばらく黙り込み、やがて腰をかがめた。
くしゃくしゃのその葉を拾い上げ、丁寧に折りたたみ、スーツの内ポケットへしまう。
——稚拙な詐欺ほど、騙される側を選別するのに、都合がいいのだから。
◆◇◆
ガリックと別れたあと、ネギは一人で帰路についた。
この一帯の歓楽街を抜ければ、彼の住まいにたどり着く。
ここは第5環の中で、唯一「光」が残されている場所だった。
ネオンが不規則に明滅する。
ピンク、エメラルドグリーン、ディープブルー——不健全な光。
ああした人工の光源は、植物人の神経を狂わせ、感情を暴走させ、欲望や暴力的な夢を芽吹かせる。
それでも、闇の中で生きる者にとっては、無いよりはましだ。
幻の光であっても、それはかろうじて残された希望なのだから。
ネギは足を引きずるように通りを歩きながら、頭の中がぐちゃぐちゃになっていくのを感じていた。
さっき警官に嘘をついたことを、今になって後悔し始めていたのだ。
思考が絡まり合い、どこからほどけばいいのかも分からない。
不意に肩をぶつけられ、我に返る。
いつの間にか通りは人で溢れ、さまざまな植物人間たちが、同じ方向へと吸い寄せられていた。
「カラ・トウ氏が来たらしいぞ!選挙演説をするって!」
「マジかよ!本物が見られるのか?」
群衆がざわめき立つ。
ネギは一瞬きょとんとしたが、すぐにその熱気に巻き込まれ、悩みを後ろへ押し流された。
彼は人の流れに乗って小走りになり、きらめく光の海を突き抜けていく。
だが、ようやく広場にたどり着いたときには、演説はすでに終わっていた。
舞台裏へと向かう、背筋の伸びた大きな後ろ姿がひとつ見えるだけだった。
ネギは息を詰めた。
——あれが、カラ・トウ氏だ。
たとえただのスタッフだったとしても、彼はそう信じたかった。
その瞬間、血が再び巡り出すのを感じた。
足取りは軽く、地面から浮きそうになる。
ネギはカバンを握り直し、サメのような歯をのぞかせて口角を上げた。
完全な闇へと帰るその夜、彼の心だけは、初めて明るかった。
◆◇◆
人波が散り、ネオンの下から二つの見覚えのある影が現れる。
長身のアフロの男はシルクのハンカチで口元を押さえ、小柄な玉ねぎの男は、うつむき加減で大人しくその後ろに従っていた。
「汚いな……。カラ・トウ氏が来るって聞かなきゃ、第5環になんて一歩も踏み入れなかった」
コショウは眉をひそめ、ハンカチをきつく握りしめる。
そのとき、失望でくすんでいた彼の目が、ふっと輝きを取り戻した。
「おや——これはネギ先輩じゃありませんか?」
軽やかな声で、わざとらしく驚いたふりをする。
「まさか、先輩……第5環にお住まいなんです?なるほど、あんなに必死で働いてた理由が分かりましたよ——スラムから逃げ出したかった、ってわけですね!」
そう言いながら、彼は部長の肩に手を置いた。
指先が、ぴくりと震える——じん、とした痺れが走り、再び部長の脳は容易く掌握された。
部長はぎこちなく笑った。
まるで糸で操られる操り人形のように。
「あはは……そうだなぁ……立派な心意気だ……ははは……」
ネギは黙って、その光景を見つめていた。
胸の奥で、言葉にできない皮肉が渦を巻く。
——高みに立つ英雄には、出身を問わない。
だが、まだ泥の中でもがく者には、手を差し伸べるどころか、踏みつけて、自分の立場を守る。
怒りが喉元までせり上がり、胸の名札を引きちぎって地面に叩きつけそうになる。
「……クソ、もうやってられるか」
その叫びは、心の中で爆ぜただけだった。
冷たい夜風が頬をなで、口を開いたネギの唇からこぼれたのは、白い息だけだった。
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