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第三章 ゾムベル編
第十九話 ゾムベルへ向けて
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ドッデ村を出発した俺は今、10ゴールドバスを利用して別の街へと向かっている。
割と大きなバスで座席の数もそこそこ多いが、今の時間帯は利用する人間はあまりいないらしく、車内は俺を含めて数人程度とそれほど混んでいない。
俺はガタガタと揺れるバスの車内の中、1番後ろの席に腰掛けて封筒に入った50万ゴールドの札束を眺めていた。
これだけの金があれば、武器や防具を買ったりだの装備を整える金を差し引いてもしばらくは生活には困らなそうだな……。
そんな事を考えながら満足げにニヤつく俺。
まぁ、それもしょうがないよな。
だって、当面の死の危機から解放されたんだ。
勇者としてモンスターと戦って死んだ、とかならまだ分かるんだが、金もなく食べる物もなくてそこら辺で餓死とか、間違っても勇者を名乗る奴の死に方じゃない。
そんな死に方をしなくて済みそうだったので、ついついはしゃいでしまった。
………かといってモンスターに殺されたい訳では無いが。
さて。
そんな俺がこんな大金を持ち、バスでどこに向かっているのかと言うと【ゾムベル】というドッデ村よりも規模が大きいらしい町に向かっている。
そこに向かう目的はただ一つ。
モンスターの討伐だ。
…………殺されたくないとか言った直後に、死の危険が常に付きまとうモンスター討伐とか、中々に矛盾してる事を平気でぬかす俺を止める者は誰もいない。
そう、誰もいない。
………え、仲間?
こ、これから増えてくるんだよ、きっと。
うん、そうだよ。きっとそうだ。そうに違いない。
………話を戻す。
そのゾムベルという町の外れに共同墓地があるそうなのだが、つい先日からアンデッドモンスターが発生するようになったらしい。
聞くと、討伐隊は発生したアンデッドを発生当日に全て倒したらしいのだが、次の日には何故か前日倒したアンデッドと同等ぐらいの数のアンデッドが再発生していた。
その日も全て倒したのだが、また次の日には……。
つまり、いくら倒しても次の日には元の数に戻ると。
俺が村長から受けた説明だとそういう事らしかった。
墓地にアンデッドという事は、どうせゾンビとかその辺だろう。
それだったら俺一人でも1匹2匹くらいなら何とかなりそうだ。
俺のイメージしているゾンビは、元いた世界で見た事がある映画やゲームに出てくる様な物を想像している。
………ウイルス云々の影響で人間の原型留めてないようなマジもんの化け物の場合は知らん。その場合は逃げる。迷わず逃げる。
だって死にたくないから。
と、いうわけでこれからは仮想敵をゾンビと想定して話を進めていく。
どうせゾンビの動きは緩慢なはずだ。そこを金属バットや鉄パイプなどの武器で頭部を攻撃すれば問題なく倒せるだろう。
加えてもし、この世界にレベルやステータスの概念があるのならば、ここで無限湧きするアンデッドを一体一体ちまちまと倒し続けてレベルアップを図っていきたい。
異世界なんだからレベル制とかステータスとか、そこら辺のファンタジー設定は大丈夫だろうと思いたいが。
………いや、実を言うとステータスやレベルなどはないであろうという事を、俺は薄々気付いている。
その根拠として挙げるのが、竜王ドラグノフと名乗っていたあのドラゴン戦だ。
ドラグノフは間違いなく物語終盤に出てくる様な相手だった。
間違っても駆け出し勇者が序盤で、それも初戦闘の相手で戦って良い存在じゃない。
正直言って、もうこの時点でファンタジーも主人公補正もクソもないのは明白である。
だが、俺はそのモンスターを奇跡的に倒す事が出来た。
………本当、一体どんな奇跡が起こればあんな化け物を倒せるのか、もはや想像もつかない。
それともあれか、俺はあの場面でもしかして一生分の運を使い切ったのか。
…………………………。
はっ!危ない危ない。
この札束がなければ、危うく俺の理性がネガティブ思考に根こそぎ持っていかれるところだった。
大丈夫、俺にはこの金がある。
大丈夫、大丈夫………。
俺がぶつぶつと呟いていると、俺の前に座っていたおばあちゃんが心配そうにこちらの様子を見ている。
大丈夫です、俺は至って正常です。……とりあえず今のところは。
……っと、話を戻す。
もしこの世界にレベルやステータスなんぞがあるのだったら、あのドラゴンを倒した事で一気にレベルが上昇してもおかしくはないだろう。
しかし、レベルが上がった音なんぞは聞こえてこなかったし、身体能力が上がったような感覚も一切なかった。
…………まあ、それについては仲間が出来たら訊いてみるとしよう。
今はまだいないけどな!!!
そんなこんなで、この世界では俺の想像しているファンタジー設定がどこまで通じるのかを確かめてみる為。
そして、発生するイベントに関わっていかないといつまで経っても魔王には辿り着かないんでしょ?という元の世界での経験則から、俺はゾムベルに向かうことを決めたのだ。
あとは……やっぱり『金が欲しいから』かなぁ。
ひっきりなしに出現するアンデッドの対応に困った町は、アンデッドモンスターに対して結構な額の懸賞金も掛けられているそうだ。(ドッデ村で聞いた)
が、近年、魔王軍のモンスター達が徐々に力を付けてきているため、自分から進んで冒険者になろうとする者は以前と比べて少なくなってきたという。
特に地方はその傾向が強く、深刻な冒険者不足に悩まされているそうだ。
そのためそれを補う形で討伐隊が配置されているらしい。
………えっ?ちょっと待てよ。
この世界の人達ってほとんどが魔法や特殊能力を使えるんじゃありませんでしたっけ?
そんな人達ですら冒険者になりたがらないとか、魔法すらひとつも使えない俺は絶望的じゃないですかね?
せめてある程度まとまった金が手元にあれば、勇者の名前をほっぽり捨てて逃げられる可能性も…………。
ん?
そういえば今の俺の手元には50万ものまとまった大金があるな……。
…………こんな偶然が果たしてあるのだろうか。
これはつまり『勇者の肩書きなんぞ放り捨てて、その金持ってトンズラこいちまえ』という、神のお告げが云々的なそういうあれ的なあれか?
そんな事をバスの車内で悶々と考えていると。
『まもなく【ゾムベル】に停車します。お降りになる方はお近くの降車ボタンを押してください』
次に停まる場所がアナウンスで流れる。
………まずは共同墓地に行ってみよう。それから考えてみるのでも遅くはないだろう。
そうして、様々な現状が重なり情緒不安定な俺は、躊躇いながらも近くにあった降車ボタンを押したのだった。
割と大きなバスで座席の数もそこそこ多いが、今の時間帯は利用する人間はあまりいないらしく、車内は俺を含めて数人程度とそれほど混んでいない。
俺はガタガタと揺れるバスの車内の中、1番後ろの席に腰掛けて封筒に入った50万ゴールドの札束を眺めていた。
これだけの金があれば、武器や防具を買ったりだの装備を整える金を差し引いてもしばらくは生活には困らなそうだな……。
そんな事を考えながら満足げにニヤつく俺。
まぁ、それもしょうがないよな。
だって、当面の死の危機から解放されたんだ。
勇者としてモンスターと戦って死んだ、とかならまだ分かるんだが、金もなく食べる物もなくてそこら辺で餓死とか、間違っても勇者を名乗る奴の死に方じゃない。
そんな死に方をしなくて済みそうだったので、ついついはしゃいでしまった。
………かといってモンスターに殺されたい訳では無いが。
さて。
そんな俺がこんな大金を持ち、バスでどこに向かっているのかと言うと【ゾムベル】というドッデ村よりも規模が大きいらしい町に向かっている。
そこに向かう目的はただ一つ。
モンスターの討伐だ。
…………殺されたくないとか言った直後に、死の危険が常に付きまとうモンスター討伐とか、中々に矛盾してる事を平気でぬかす俺を止める者は誰もいない。
そう、誰もいない。
………え、仲間?
こ、これから増えてくるんだよ、きっと。
うん、そうだよ。きっとそうだ。そうに違いない。
………話を戻す。
そのゾムベルという町の外れに共同墓地があるそうなのだが、つい先日からアンデッドモンスターが発生するようになったらしい。
聞くと、討伐隊は発生したアンデッドを発生当日に全て倒したらしいのだが、次の日には何故か前日倒したアンデッドと同等ぐらいの数のアンデッドが再発生していた。
その日も全て倒したのだが、また次の日には……。
つまり、いくら倒しても次の日には元の数に戻ると。
俺が村長から受けた説明だとそういう事らしかった。
墓地にアンデッドという事は、どうせゾンビとかその辺だろう。
それだったら俺一人でも1匹2匹くらいなら何とかなりそうだ。
俺のイメージしているゾンビは、元いた世界で見た事がある映画やゲームに出てくる様な物を想像している。
………ウイルス云々の影響で人間の原型留めてないようなマジもんの化け物の場合は知らん。その場合は逃げる。迷わず逃げる。
だって死にたくないから。
と、いうわけでこれからは仮想敵をゾンビと想定して話を進めていく。
どうせゾンビの動きは緩慢なはずだ。そこを金属バットや鉄パイプなどの武器で頭部を攻撃すれば問題なく倒せるだろう。
加えてもし、この世界にレベルやステータスの概念があるのならば、ここで無限湧きするアンデッドを一体一体ちまちまと倒し続けてレベルアップを図っていきたい。
異世界なんだからレベル制とかステータスとか、そこら辺のファンタジー設定は大丈夫だろうと思いたいが。
………いや、実を言うとステータスやレベルなどはないであろうという事を、俺は薄々気付いている。
その根拠として挙げるのが、竜王ドラグノフと名乗っていたあのドラゴン戦だ。
ドラグノフは間違いなく物語終盤に出てくる様な相手だった。
間違っても駆け出し勇者が序盤で、それも初戦闘の相手で戦って良い存在じゃない。
正直言って、もうこの時点でファンタジーも主人公補正もクソもないのは明白である。
だが、俺はそのモンスターを奇跡的に倒す事が出来た。
………本当、一体どんな奇跡が起こればあんな化け物を倒せるのか、もはや想像もつかない。
それともあれか、俺はあの場面でもしかして一生分の運を使い切ったのか。
…………………………。
はっ!危ない危ない。
この札束がなければ、危うく俺の理性がネガティブ思考に根こそぎ持っていかれるところだった。
大丈夫、俺にはこの金がある。
大丈夫、大丈夫………。
俺がぶつぶつと呟いていると、俺の前に座っていたおばあちゃんが心配そうにこちらの様子を見ている。
大丈夫です、俺は至って正常です。……とりあえず今のところは。
……っと、話を戻す。
もしこの世界にレベルやステータスなんぞがあるのだったら、あのドラゴンを倒した事で一気にレベルが上昇してもおかしくはないだろう。
しかし、レベルが上がった音なんぞは聞こえてこなかったし、身体能力が上がったような感覚も一切なかった。
…………まあ、それについては仲間が出来たら訊いてみるとしよう。
今はまだいないけどな!!!
そんなこんなで、この世界では俺の想像しているファンタジー設定がどこまで通じるのかを確かめてみる為。
そして、発生するイベントに関わっていかないといつまで経っても魔王には辿り着かないんでしょ?という元の世界での経験則から、俺はゾムベルに向かうことを決めたのだ。
あとは……やっぱり『金が欲しいから』かなぁ。
ひっきりなしに出現するアンデッドの対応に困った町は、アンデッドモンスターに対して結構な額の懸賞金も掛けられているそうだ。(ドッデ村で聞いた)
が、近年、魔王軍のモンスター達が徐々に力を付けてきているため、自分から進んで冒険者になろうとする者は以前と比べて少なくなってきたという。
特に地方はその傾向が強く、深刻な冒険者不足に悩まされているそうだ。
そのためそれを補う形で討伐隊が配置されているらしい。
………えっ?ちょっと待てよ。
この世界の人達ってほとんどが魔法や特殊能力を使えるんじゃありませんでしたっけ?
そんな人達ですら冒険者になりたがらないとか、魔法すらひとつも使えない俺は絶望的じゃないですかね?
せめてある程度まとまった金が手元にあれば、勇者の名前をほっぽり捨てて逃げられる可能性も…………。
ん?
そういえば今の俺の手元には50万ものまとまった大金があるな……。
…………こんな偶然が果たしてあるのだろうか。
これはつまり『勇者の肩書きなんぞ放り捨てて、その金持ってトンズラこいちまえ』という、神のお告げが云々的なそういうあれ的なあれか?
そんな事をバスの車内で悶々と考えていると。
『まもなく【ゾムベル】に停車します。お降りになる方はお近くの降車ボタンを押してください』
次に停まる場所がアナウンスで流れる。
………まずは共同墓地に行ってみよう。それから考えてみるのでも遅くはないだろう。
そうして、様々な現状が重なり情緒不安定な俺は、躊躇いながらも近くにあった降車ボタンを押したのだった。
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