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第三章 ゾムベル編
第二十一話 くさった死体 があらわれた!
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「あああああああ!!…………ん?ゾンビなんてどこにもいねぇじゃねぇか。まったく、驚かすなよ……」
「出たああああああ!!ゾンビだああああああ!!」
ゾンビが何か話しているが、俺はそれをガン無視して絶叫し続ける。
ほとんど悲鳴のような叫び声を上げ、はしたなく喚きながら数歩後ろへと下がった。
そんな俺の様子を見ていた―――恐らく中年くらいだろうか―――男のゾンビが、耳を塞ぎ顔をしかめる。
「……るっせーな。あんまりでけぇ声出すんじゃねぇよ、こちとら二日酔いで頭が割れそうなくらい痛ぇんだ」
言動がやたらと人間臭い二日酔いのオッサンゾンビはそう言うと、のらりくらりとだるそうに立ち上がり、よっこらせと穴から這い出してきた。
じわじわと距離を詰められた俺は慌てて相棒である【ヒノキの棒】を構える。
すると、それを見たゾンビが俺が手に持っているヒノキの棒を指差して。
「ちょっとちょっと!人にそんな物騒なもん向けるな、危ないだろ!そういうことは冗談でもやったら駄目だって親に習わなかったのか?!」
何故かアンデッドに説教されるという訳の分からない状況に一瞬たじろぐが、すぐさま言い返す。
「アンデッドモンスターが何言ってんだ!お前は人じゃないだろ!」
「……は?アンデッド?俺が?え?何言ってんだお前」
ゾンビは自分の顔を指差して困惑した様子で訊いてくる。
「この場には俺とお前しかいないだろうが!ほんと、何なのこの世界!?アンデッドがペラペラと話してたり、二日酔いで頭痛てぇとか訳分かんねぇ事言ってるし、俺の理想のファンタジー異世界はどこに行ったァ!!」
「何を言うかと思ったらファンタジー異世界?そんで俺がアンデッド?……本当に面白い奴だな、お前。よし、今回のところは特別にこれで許してやろう。だけど、二度と人にこんな事したら駄目だぞ?危ないからな」
………ああ、多分分かった。
こいつ、自分が死んでアンデッドとして甦った事に気が付いてない感じの奴だ。
少し可哀想な気もするが、ここで現実を教えておいた方がこいつのためにもなるだろう。
俺はスーツのジャケット、その懐のポケットに仕舞っていたスマートフォンを徐に取り出す。
俺が前に突き出したスマホを、おっさんゾンビは興味津々に覗き込んでくる。
「………ん?なんだそりゃ?新しい食いもんか?」
「これのどこを見たら食い物に見えるんだよ。………はーい、こっち向いてーはい、ポーズ!」
その合図と同時に俺はスマホのカメラアプリのシャッターを押した。
シャッターを押した瞬間、オッサンゾンビが右手を顔の前にかざし、やや横を向いて反り返っている……いわゆるジョジョ立ちと呼ばれるポーズを取った事はこの際どうでもいい。
スマホの画面を向けて今撮った写真をおっさんに見せる。
「……ほい」
「おいおい写真を撮るんだったら撮るって言ってくれよー。さぁどれどれ、綺麗に撮れたかな~?おっ、俺のポーズバッチリじゃん!いやぁ、満足満足」
ホクホク顔でご満悦のおっさんゾンビ。
ちゃんと写ってなかったのか!?と不安になった俺はスマホの画面を再確認してみるが、バッチリ眼球が垂れたおっさんゾンビがジョジョ立ちをしているという、カオスここに極まれりな写真はきちんと写っている。
「いや、綺麗に撮れたかどうかはどうでもいいんだよ!その他にもおかしい部分があるでしょ!?むしろそっちのおかしな部分の方がメインなんだけど!なんで気付かないの!?」
「?……お前、いつまで訳の分からん事を言ってるんだ?ほら、俺の気が変わらない内にもうどっか行けよ。今回はイイ感じに写真も撮ってもらったし、よっぽどの事がない限り怒るつもりは無いぞ」
「いいからこれを見ろって!」
俺はおっさんゾンビの顔にスマホの画面を近付ける。
「しゃーねーなー。………あれ、もしかして何か顔についてんのか?おい、そういうのは写真を撮る前に言ってくれよ。ったく、どれどれ……ギャアアアアァァァァ!!!ば、ばばば化け物ォォォォォ!!!」
バラエティ番組だったら100点のリアクションだけを残し、おっさんは受け身も取らず後ろに倒れてゴッという後頭部が地面と激突する鈍い音が響き渡った。
◆ ◆ ◆
「おっ、ようやく目を覚ましたな」
「………ん。あ"ぁ……頭痛え」
強かに打ちつけた後頭部ではなく、何故か額を押さえながら、むっくりと上半身を起き上がらせるおっさん。
おっさんに向かって俺は苦笑を浮かべながらざっくりと説明する。
「そりゃ痛いだろうな。だってお前、叫んだ後気絶して後頭部を地面に思いっ切りぶつけたんだぜ?」
「いや、そっちじゃなくて二日酔いの頭痛の方の話。……あぁ、気持ち悪い」
「そうかよ、酒の飲みすぎには気をつけろよな。………で、なんでお前はゾンビになってるわけ?」
今更色々と遠回しに尋ねるのもなにかと面倒臭いので、話の流れをぶった切って俺はおっさんに対し単刀直入にそう言った。
俺からの質問を受けたおっさんはというと、顎に手を置き何かを考えているようだ。
「うーん……ちょっと記憶がフワフワしてるんだけど、その中で俺が覚えてるのは酒飲んで泥酔した状態で歩いてたら、この墓場に辿り着いてよ。墓穴に落っこちちまったんだ。あん時は夜中だったし、霧も今みたいな感じで掛かってたから穴なんてサッパリ見えなかったんだよなぁ」
「………で?」
「気が付いたらコレだ。恐らく、俺は墓穴ん中で死んだんだろうな」
首を竦めて苦笑するおっさん。
その姿を見て俺は盛大にため息をついた。
「……死者を弔う場所で自分から死んでたら世話ねぇな」
「いやはや全くだ!アッハッハッハ!!」
「今の話を聞いた部外者の俺でもこの事態に笑えないのに、お前はなんでそんなに高らかに笑ってられるの!?」
1発顔面を殴りたい衝動に駆られている俺に、今度はおっさんの方から質問を受ける。
「そういえばお前はなんでこんな場所にいるんだ?普通はこんなところに来たがらないもんだろ?もしかして墓参りか?」
「違げぇよ。ここにアンデッドモンスターが大量に出るって聞いたからレベル上げに丁度良いかなと思ってよ。けど、いざ来てみたらオッサンのゾンビが一体だけ……」
「………レベル上げ?なんだそれ?」
不思議そうに小首を傾げるおっさんに、俺は雑な説明をする。
「何って……。文字通り、自分のレベルを上げるんだよ。勇者はこうやって地道にレベルを上げてくもんなんだよ。………………あれ、ちょっと待って。お前って生きてた時の記憶って残ってる?」
「さっきも言ったがフワフワとしか覚えてねぇんだって。……けど、ある程度なら答えられると思うが」
「…………あのさ、いくつか質問していい?」
「質問?……まぁ、別に構わねぇが……」
「『レベル』とか『ステータス』って知ってる?」
「いや…………聞いたことねぇなぁ」
「ステータスっていうのは自分の能力がどのくらいなのかを数値化して見れる物を言うんだけど………それでも、やっぱり知らない?」
「自分の能力を数値化ねぇ………。もしかしたらそういう特殊能力を持ってる奴もいるかもしれないが、少なくとも俺はそんな奴今まで見た事も聞いたこともないな」
その言葉を聞いた瞬間、俺の脳みそはその機能を停止した。……いや、正しくは『現実から逃げる為に自ら脳みそをシャットダウンさせた』という表現の方がより正確だ。
この異世界には、レベルやステータスといった概念が存在しない、という残酷な現実を理解すると同時に、俺の視界は暗転し、足元から急激に力が抜けていくのが分かった。
「出たああああああ!!ゾンビだああああああ!!」
ゾンビが何か話しているが、俺はそれをガン無視して絶叫し続ける。
ほとんど悲鳴のような叫び声を上げ、はしたなく喚きながら数歩後ろへと下がった。
そんな俺の様子を見ていた―――恐らく中年くらいだろうか―――男のゾンビが、耳を塞ぎ顔をしかめる。
「……るっせーな。あんまりでけぇ声出すんじゃねぇよ、こちとら二日酔いで頭が割れそうなくらい痛ぇんだ」
言動がやたらと人間臭い二日酔いのオッサンゾンビはそう言うと、のらりくらりとだるそうに立ち上がり、よっこらせと穴から這い出してきた。
じわじわと距離を詰められた俺は慌てて相棒である【ヒノキの棒】を構える。
すると、それを見たゾンビが俺が手に持っているヒノキの棒を指差して。
「ちょっとちょっと!人にそんな物騒なもん向けるな、危ないだろ!そういうことは冗談でもやったら駄目だって親に習わなかったのか?!」
何故かアンデッドに説教されるという訳の分からない状況に一瞬たじろぐが、すぐさま言い返す。
「アンデッドモンスターが何言ってんだ!お前は人じゃないだろ!」
「……は?アンデッド?俺が?え?何言ってんだお前」
ゾンビは自分の顔を指差して困惑した様子で訊いてくる。
「この場には俺とお前しかいないだろうが!ほんと、何なのこの世界!?アンデッドがペラペラと話してたり、二日酔いで頭痛てぇとか訳分かんねぇ事言ってるし、俺の理想のファンタジー異世界はどこに行ったァ!!」
「何を言うかと思ったらファンタジー異世界?そんで俺がアンデッド?……本当に面白い奴だな、お前。よし、今回のところは特別にこれで許してやろう。だけど、二度と人にこんな事したら駄目だぞ?危ないからな」
………ああ、多分分かった。
こいつ、自分が死んでアンデッドとして甦った事に気が付いてない感じの奴だ。
少し可哀想な気もするが、ここで現実を教えておいた方がこいつのためにもなるだろう。
俺はスーツのジャケット、その懐のポケットに仕舞っていたスマートフォンを徐に取り出す。
俺が前に突き出したスマホを、おっさんゾンビは興味津々に覗き込んでくる。
「………ん?なんだそりゃ?新しい食いもんか?」
「これのどこを見たら食い物に見えるんだよ。………はーい、こっち向いてーはい、ポーズ!」
その合図と同時に俺はスマホのカメラアプリのシャッターを押した。
シャッターを押した瞬間、オッサンゾンビが右手を顔の前にかざし、やや横を向いて反り返っている……いわゆるジョジョ立ちと呼ばれるポーズを取った事はこの際どうでもいい。
スマホの画面を向けて今撮った写真をおっさんに見せる。
「……ほい」
「おいおい写真を撮るんだったら撮るって言ってくれよー。さぁどれどれ、綺麗に撮れたかな~?おっ、俺のポーズバッチリじゃん!いやぁ、満足満足」
ホクホク顔でご満悦のおっさんゾンビ。
ちゃんと写ってなかったのか!?と不安になった俺はスマホの画面を再確認してみるが、バッチリ眼球が垂れたおっさんゾンビがジョジョ立ちをしているという、カオスここに極まれりな写真はきちんと写っている。
「いや、綺麗に撮れたかどうかはどうでもいいんだよ!その他にもおかしい部分があるでしょ!?むしろそっちのおかしな部分の方がメインなんだけど!なんで気付かないの!?」
「?……お前、いつまで訳の分からん事を言ってるんだ?ほら、俺の気が変わらない内にもうどっか行けよ。今回はイイ感じに写真も撮ってもらったし、よっぽどの事がない限り怒るつもりは無いぞ」
「いいからこれを見ろって!」
俺はおっさんゾンビの顔にスマホの画面を近付ける。
「しゃーねーなー。………あれ、もしかして何か顔についてんのか?おい、そういうのは写真を撮る前に言ってくれよ。ったく、どれどれ……ギャアアアアァァァァ!!!ば、ばばば化け物ォォォォォ!!!」
バラエティ番組だったら100点のリアクションだけを残し、おっさんは受け身も取らず後ろに倒れてゴッという後頭部が地面と激突する鈍い音が響き渡った。
◆ ◆ ◆
「おっ、ようやく目を覚ましたな」
「………ん。あ"ぁ……頭痛え」
強かに打ちつけた後頭部ではなく、何故か額を押さえながら、むっくりと上半身を起き上がらせるおっさん。
おっさんに向かって俺は苦笑を浮かべながらざっくりと説明する。
「そりゃ痛いだろうな。だってお前、叫んだ後気絶して後頭部を地面に思いっ切りぶつけたんだぜ?」
「いや、そっちじゃなくて二日酔いの頭痛の方の話。……あぁ、気持ち悪い」
「そうかよ、酒の飲みすぎには気をつけろよな。………で、なんでお前はゾンビになってるわけ?」
今更色々と遠回しに尋ねるのもなにかと面倒臭いので、話の流れをぶった切って俺はおっさんに対し単刀直入にそう言った。
俺からの質問を受けたおっさんはというと、顎に手を置き何かを考えているようだ。
「うーん……ちょっと記憶がフワフワしてるんだけど、その中で俺が覚えてるのは酒飲んで泥酔した状態で歩いてたら、この墓場に辿り着いてよ。墓穴に落っこちちまったんだ。あん時は夜中だったし、霧も今みたいな感じで掛かってたから穴なんてサッパリ見えなかったんだよなぁ」
「………で?」
「気が付いたらコレだ。恐らく、俺は墓穴ん中で死んだんだろうな」
首を竦めて苦笑するおっさん。
その姿を見て俺は盛大にため息をついた。
「……死者を弔う場所で自分から死んでたら世話ねぇな」
「いやはや全くだ!アッハッハッハ!!」
「今の話を聞いた部外者の俺でもこの事態に笑えないのに、お前はなんでそんなに高らかに笑ってられるの!?」
1発顔面を殴りたい衝動に駆られている俺に、今度はおっさんの方から質問を受ける。
「そういえばお前はなんでこんな場所にいるんだ?普通はこんなところに来たがらないもんだろ?もしかして墓参りか?」
「違げぇよ。ここにアンデッドモンスターが大量に出るって聞いたからレベル上げに丁度良いかなと思ってよ。けど、いざ来てみたらオッサンのゾンビが一体だけ……」
「………レベル上げ?なんだそれ?」
不思議そうに小首を傾げるおっさんに、俺は雑な説明をする。
「何って……。文字通り、自分のレベルを上げるんだよ。勇者はこうやって地道にレベルを上げてくもんなんだよ。………………あれ、ちょっと待って。お前って生きてた時の記憶って残ってる?」
「さっきも言ったがフワフワとしか覚えてねぇんだって。……けど、ある程度なら答えられると思うが」
「…………あのさ、いくつか質問していい?」
「質問?……まぁ、別に構わねぇが……」
「『レベル』とか『ステータス』って知ってる?」
「いや…………聞いたことねぇなぁ」
「ステータスっていうのは自分の能力がどのくらいなのかを数値化して見れる物を言うんだけど………それでも、やっぱり知らない?」
「自分の能力を数値化ねぇ………。もしかしたらそういう特殊能力を持ってる奴もいるかもしれないが、少なくとも俺はそんな奴今まで見た事も聞いたこともないな」
その言葉を聞いた瞬間、俺の脳みそはその機能を停止した。……いや、正しくは『現実から逃げる為に自ら脳みそをシャットダウンさせた』という表現の方がより正確だ。
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