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第四章 ハルマ編
第三十三話 襲来!魔王軍幹部!
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彼女に見られることを想定していなかったという痛恨のミスをしてしまった俺。
あわわあわわと分かりやすく狼狽している俺を見て、デイモスが首を傾げた。
「どうした?そんなに狼狽えて。……はぁ、まだなんかあるのか……?」
随分と察しがいいじゃないか……。
ため息をついたデイモスに、俺はかくかくしかじかあれやこれやと全部話した。
そうして全てを伝え終えると、デイモスは『馬鹿か、こいつ』という感情が顔に出ているのを全く隠そうともせず、そのまま呆れたような笑みを浮かべた。
「馬鹿か、こいつ」
「おい心の声が口にまで出てんぞ」
「わざと出したんだよ」
デイモスの口調がひどく冷たく感じる。俺の気のせいだろうか。
……いや、今はデイモスと話をしている場合ではない!一刻も早く彼女に事情の説明をして誤解を解かなければ……。
今はこんな格好をしているが俺は決して露出狂ではない、平和的に解決するためには仕方なかったんだ、と伝えなければ!
そう思った俺はさっきまで彼女が立っていた前方に視線を向ける。……だが、またしてもここで予想外の事態が起こった。
「……あ、あれ?あの女の子、どこ行ったんだ?」
「そりゃ逃げたんだろ」
キョロキョロと見回してみるが、やはり姿は見えない。
「まぁ、そりゃ逃げるだろうな……。けど、チンピラから助け出すっていう目的は達成出来たから良しとしよう。恩返しになったかどうかは分かんないけど、何もしなかったよりかはあの子のためになったからな……」
「……ほら、涙拭けよ」
デイモスがスっとハンカチを取り出し、俺に貸してくれた。
「べ、別に泣いてねーし!何で俺が振られたみたいになってんだし!やめろし!優しくすんなし!これ汗だし!」
俺は受け取ったハンカチで目元を押さえながら震える声でそう言った。
すると、そんな状態の俺に後ろから誰かが不意に声をかけてきた。
「――あの、助けていただいてありがとうございます!」
ファン!と頭上にビックリマークが飛び出す俺とデイモス。
頭の中に激しく警戒アラートが鳴り響く。なんなら赤字で99.9%まで見えたような気がする。
驚いて勢いよく振り返る二人の目の前にいたのは、さっきまでチンピラに絡まれていたあの女の子だった。
い、いつの間に背後に回り込まれたんだ……?
気配を完璧に殺して突然現れた事に困惑している俺達を見て、彼女はハッと何かに気付いたような表情になる。
「あ!さっき私がギルドまで案内した方々ですよね?」
「え、ええ。その節はありがとうございました。……いや、それよりも!今はこんな露出狂みたいな格好しているんですがこれには深い理由がありましt……」
つらつらと言い訳しようとする俺。
しかし、この言い訳は彼女からの思わぬ言葉によって、途中でかき消された。
「私を助けるためにその格好をしてくれたんですよね?大丈夫ですよ、言われなくとも分かってますから!」
「……へっ?」
「ギルドに案内した時のお二人の行動と言動とか、さっきの状況なんかを考えれば『多分そうなんだろうなー』って大体の予想はつきますよ~!」
「そ、そうですか?……いやぁ、分かってくれて本当に助かりました。誤解されたまんまだと何かと……ほら、あれですしね」
左右に目を泳がせながらずいぶんと曖昧な受け答えをする俺と、そんな俺の様子を冷ややかな目で見るデイモス。
そんな俺たちを見ながら、彼女はニコニコと楽しそうに笑っていた。
とりあえずこれで人助けも上手くいった。
そろそろ『最強の魔法使い』を探しに行くかなと考え始めた時、再び彼女から話を切り出した。
「で、ギルドはどうでした?魔法使いの方は見つかりましたか?」
キラキラとした目をこちらに向けてくる。
……言えない。入って数秒で発狂してギルドを飛び出してきたなんて、口が裂けても言えない。
「……いや、あの、これから探しに行こうかなぁと、ね。うん」
そわそわと動いたり、頭をキョロキョロ見回したり、やたらと挙動不審な動きをした俺が裏返った声でそう答えた。
……おいデイモス、そんな目で俺を見るな。俺は嘘はついてない。ついてないんだ。
そう言うと彼女はパアッと更に表情を明るくして、嬉しそうに喋り始めた。
「あ、あの!私も一緒に行ってもいいですか!?実は私も魔法使いで、『最強の魔法使い』と呼ばれている方に凄く興味があるんです!」
「え、そうなの?」
つい間抜けを声を漏らした俺。
マジか、この子魔法使いなのか。
「ま、まぁ私はまだまだ落ちこぼれですけど……」
そう言って彼女は恥ずかしそうにえへへと笑う。しかし、そう語る彼女の目は嘘はついていないようだった。
……そんな顔されたら、さすがに断れないって……。
俺はコクリと頷き、彼女ににっこりと笑いかけた。
「俺は全然大丈夫ですよ。……デイモスはどうだ?」
「……まあ、別にいいが」
デイモスも渋々と言った様子で認めてくれた。
「本当ですか!ありがとうございますッ!」
彼女は元気良く感謝の言葉を述べると、深々とお辞儀をした。
「いやいやいや、そんな頭下げなくていいですから!それよりも、お名前の方を伺ってもよろしいですか?……あっ、そういえば俺達も自己紹介してなかった。俺の名前は山田太郎といいます。よろしくお願いしますね」
ぺこりとお辞儀をして挨拶をした。そして次はデイモスを手で指す。
「で、こっちの顔色が悪い男がデイモスっていいます。……この顔色、生まれつきらしくて本人も気にしてるのであんまり触れないであげてくださいね」
もちろん嘘だ。
顔色の悪い理由は非常にシンプルな『アンデッドで血が通っていないから』なのであって、決して生まれつきが原因ではない。
ただ、ここでアンデッドと疑われるのはヤバいから適当な嘘をつかせてもらった。
「……おいてめぇ!俺の肌の血色は生まれつきだって事を簡単に言うんじゃねぇ!いっつも言ってんだろうが!!」
デイモスもこちらの意図を汲んでくれたらしく、話を合わせてくれた。
俺はあえてゴメンゴメンと適当に謝罪する事でこの話を流し、先に進める。
「ギルドに行く途中でも話しましたが、俺達は魔王を倒すための旅をしてます」
「よろしくお願いします!では私も自己紹介しますね!私はヴェルデ・フラウといいます!気軽にヴェルデと呼んでくださいね!」
「分かりました!ヴェルデさんですね!」
そう言うとヴェルデは慌てて手を顔の前で振る。
「いやいや、さんは付けなくていいですよ!ヴェルデでいいです!それに堅苦しい言葉は使わなくていいですから!」
「……そ、そう?それじゃあ改めて、よろしく!」
「……よろしく頼む」
俺に続いてデイモスも簡単な挨拶をした。そして、それを受けたヴェルデもニッコリと微笑んで「よろしくね!」と俺達に挨拶を返した。
「太郎。とりあえず服を着ようか」
◆◆◆◆◆
そんな訳で着替えも終わり、街の中心の方まで歩いてきた俺達。
遠くから見ても目立つくらい大きかった電波塔が、俺達が街の中心に歩いてきた事でさらに大きく感じる。
その大きな電波塔をほへーと間抜けヅラで眺めながら歩いていると。
「――で、最強の魔法使いとやらを探すっつってもよぉ、手掛かりも何もないのに一体どこを探すつもりなんだ?」
俺の後ろをついてくるデイモスが、緊張感を感じさせないのんびりとした口調で聞いてきた。
俺は立ち止まって後ろのデイモスにくるりと振り向き、チッチッチッと人差し指を左右に振る。
「デイモス、いいか?ああいったクッソ目立ってるランドマークが街にある時は、まずは行ってみるもんだぜ?何か起こるかもしれないし、もしかしたら魔法使いがいるかも知れないしな」
「……そういうもんかねぇ」
「そういうもんさ」
こんな感じの俺とデイモスがしているのほほんとした会話に、ヴェルデは興味深そうに耳を傾けていた。
そんなこんなをしているうちに、非常に人の通りの多いスクランブル交差点に出てきた。
俺達は一旦立ち止まってキョロキョロと周囲を見回してみる。
「へぇ~すごい活気だなぁ。それにやっぱりこっちの世界でもスクランブル交差点のところには、大型ビジョンが置いてあるんだなぁ」
スクランブル交差点を囲む大きな建物の壁には、これまた大きなビジョンが様々な広告を流していた。
「そうでしょう?この道路はこの街のメインストリートですからね!ここを過ぎると電波塔もすぐですよ!」
「よっしゃ、それじゃあさっさと行くとすっかぁ」
ヴェルデの言葉を聞いたデイモスがゆっくりと歩き出そうとした。
――しかし、まるで旅行にでも来ていたかのような穏やかな雰囲気は、次の瞬間にすぐ近くから聞こえてきた爆発音と衝撃波によって吹き飛ばされる。
周囲一帯に轟く激しい爆発音、そしてそれによって発生した衝撃波が地響きとなって俺達を襲った。
周囲にいた一般人はパニックになり、あちこちを逃げ惑っていた。
……ん?もちろん俺もその『パニックになった一般人』の中に入ってますが、なにか?
「ぴゃーー!!!!!なんだなんだ!!何がどうなってんだ!?」
思わず奇声を発して分かりやすくパニックになる俺。こんな俺が世界を救う勇者とかやってます。
いや、けど爆発音なんて聞いたら普通はパニックになるって!むしろ、パニックにならない方がおかしい!
……だが、その理論で行くとどうも俺の周囲には、普通の人間はいないという事になってしまいそうだ。
「……かなり近けぇな。あの電波塔の方向からか?」
「ですね。爆心地は電波塔で間違いないと思います。それに今の爆発から魔法の反応がありました……もしかしたらですが、人為的に起こされた爆発の可能性がありますね」
二人は全く慌てる事なく、冷静に現在の状況を分析し始めた。
やべぇよこいつら……マジでやべえ。どんな図太い神経持ってたらこんなに落ち着いてられんだよ……。
爆発と同じくらいこの二人に恐怖を感じ始めたところでその二人、デイモスとヴェルデにそれぞれ両手を掴まれて電波塔の方向に引っ張られる。
「ほら、何ボーッとしてんだ!お前が待ち望んでた事件じゃねぇか!オラ!さっさと行くぞ!」
「そうですよ!もしかしたらこの爆発に『最強の魔法使い』が絡んでるかも知れませんよ!さあ!」
「いや違うでしょ!明らかにテロでしょ!ヤバいって!テロはマジで洒落にならんって!俺達が戦うのは魔王軍であって、反社会勢力ではないのであって!!嫌だぁぁぁぁ!!」
イヤイヤと駄々っ子のように首を激しく振って絶叫しながら、グイグイ引っ張られる腕を逆に引っ張り返してなんとか抵抗する。
だってテロリストって自爆とかしてくるもん!そんなん出来ひんやん普通!
ああいう狂った思想に取り憑かれた奴は絶対に関わっちゃいけない。それならまだ魔王軍の方がはるかにマシだ……と思う。
しばらくの間、必死の抵抗を続けていると、さっきまで眺めていた大型ビジョンに突如として砂嵐が入った。
数秒間、ザーッという無機質な音と灰色の画面が流れる。
だが直ぐに画面は元に戻り、あの灰色の画面から今度はちゃんとした映像が流れ始めた。
しかし、さっきまで流れていた映像とはだいぶ……いや、かなり違う。
さっきまで映っていた商品や人物の広告ではなく、今は頭がやけに大きく真ん丸で、全身の服装は主に黄色と赤を基調としたもので、そして大きなマントが特徴的な格好をしている。
……なんというか、頭部がアンパンで出来ているヒーローにそっくりだ。
周囲でパニックになっていた人々も、今は黙ってビジョンに注目している。
しかし、こちらの緊張などは向こうに伝わるはずもなく、画面のアンパンもどきはニッコリと笑いこう言った。
『やあ!こんにちは!ボクは魔王軍の最高幹部の一人、七つある大罪のうちの『貧困』を司る者!【アンパン魔人】だよ!人間のみんな、よろしくね!……で、ボクは今なにをしているかと言うと、人類に一つお願いをするためにハルマにある電波塔を乗っ取ったんだ!』
う、嘘だろ……?某アンパンヒーローの名前に一文字つけ加えただけの、見た目も名前もそっくりなパチもんが魔王軍最高幹部だって……?
「いやこれは色々とまずいだろ」と一人困惑する俺。
だが、奴は俺の精神に全く予想すらしていなかった形でさらなる攻撃を畳み掛けてくる。
『――竜王ドラグノフ、そしてドラゴンゾンビを倒した『勇者』とやらを連れてきてくれないかな?』
これを聞いた周囲の人間がザワつく中、俺とデイモスの二人は強ばった表情で思わず顔を見合わせた。
あわわあわわと分かりやすく狼狽している俺を見て、デイモスが首を傾げた。
「どうした?そんなに狼狽えて。……はぁ、まだなんかあるのか……?」
随分と察しがいいじゃないか……。
ため息をついたデイモスに、俺はかくかくしかじかあれやこれやと全部話した。
そうして全てを伝え終えると、デイモスは『馬鹿か、こいつ』という感情が顔に出ているのを全く隠そうともせず、そのまま呆れたような笑みを浮かべた。
「馬鹿か、こいつ」
「おい心の声が口にまで出てんぞ」
「わざと出したんだよ」
デイモスの口調がひどく冷たく感じる。俺の気のせいだろうか。
……いや、今はデイモスと話をしている場合ではない!一刻も早く彼女に事情の説明をして誤解を解かなければ……。
今はこんな格好をしているが俺は決して露出狂ではない、平和的に解決するためには仕方なかったんだ、と伝えなければ!
そう思った俺はさっきまで彼女が立っていた前方に視線を向ける。……だが、またしてもここで予想外の事態が起こった。
「……あ、あれ?あの女の子、どこ行ったんだ?」
「そりゃ逃げたんだろ」
キョロキョロと見回してみるが、やはり姿は見えない。
「まぁ、そりゃ逃げるだろうな……。けど、チンピラから助け出すっていう目的は達成出来たから良しとしよう。恩返しになったかどうかは分かんないけど、何もしなかったよりかはあの子のためになったからな……」
「……ほら、涙拭けよ」
デイモスがスっとハンカチを取り出し、俺に貸してくれた。
「べ、別に泣いてねーし!何で俺が振られたみたいになってんだし!やめろし!優しくすんなし!これ汗だし!」
俺は受け取ったハンカチで目元を押さえながら震える声でそう言った。
すると、そんな状態の俺に後ろから誰かが不意に声をかけてきた。
「――あの、助けていただいてありがとうございます!」
ファン!と頭上にビックリマークが飛び出す俺とデイモス。
頭の中に激しく警戒アラートが鳴り響く。なんなら赤字で99.9%まで見えたような気がする。
驚いて勢いよく振り返る二人の目の前にいたのは、さっきまでチンピラに絡まれていたあの女の子だった。
い、いつの間に背後に回り込まれたんだ……?
気配を完璧に殺して突然現れた事に困惑している俺達を見て、彼女はハッと何かに気付いたような表情になる。
「あ!さっき私がギルドまで案内した方々ですよね?」
「え、ええ。その節はありがとうございました。……いや、それよりも!今はこんな露出狂みたいな格好しているんですがこれには深い理由がありましt……」
つらつらと言い訳しようとする俺。
しかし、この言い訳は彼女からの思わぬ言葉によって、途中でかき消された。
「私を助けるためにその格好をしてくれたんですよね?大丈夫ですよ、言われなくとも分かってますから!」
「……へっ?」
「ギルドに案内した時のお二人の行動と言動とか、さっきの状況なんかを考えれば『多分そうなんだろうなー』って大体の予想はつきますよ~!」
「そ、そうですか?……いやぁ、分かってくれて本当に助かりました。誤解されたまんまだと何かと……ほら、あれですしね」
左右に目を泳がせながらずいぶんと曖昧な受け答えをする俺と、そんな俺の様子を冷ややかな目で見るデイモス。
そんな俺たちを見ながら、彼女はニコニコと楽しそうに笑っていた。
とりあえずこれで人助けも上手くいった。
そろそろ『最強の魔法使い』を探しに行くかなと考え始めた時、再び彼女から話を切り出した。
「で、ギルドはどうでした?魔法使いの方は見つかりましたか?」
キラキラとした目をこちらに向けてくる。
……言えない。入って数秒で発狂してギルドを飛び出してきたなんて、口が裂けても言えない。
「……いや、あの、これから探しに行こうかなぁと、ね。うん」
そわそわと動いたり、頭をキョロキョロ見回したり、やたらと挙動不審な動きをした俺が裏返った声でそう答えた。
……おいデイモス、そんな目で俺を見るな。俺は嘘はついてない。ついてないんだ。
そう言うと彼女はパアッと更に表情を明るくして、嬉しそうに喋り始めた。
「あ、あの!私も一緒に行ってもいいですか!?実は私も魔法使いで、『最強の魔法使い』と呼ばれている方に凄く興味があるんです!」
「え、そうなの?」
つい間抜けを声を漏らした俺。
マジか、この子魔法使いなのか。
「ま、まぁ私はまだまだ落ちこぼれですけど……」
そう言って彼女は恥ずかしそうにえへへと笑う。しかし、そう語る彼女の目は嘘はついていないようだった。
……そんな顔されたら、さすがに断れないって……。
俺はコクリと頷き、彼女ににっこりと笑いかけた。
「俺は全然大丈夫ですよ。……デイモスはどうだ?」
「……まあ、別にいいが」
デイモスも渋々と言った様子で認めてくれた。
「本当ですか!ありがとうございますッ!」
彼女は元気良く感謝の言葉を述べると、深々とお辞儀をした。
「いやいやいや、そんな頭下げなくていいですから!それよりも、お名前の方を伺ってもよろしいですか?……あっ、そういえば俺達も自己紹介してなかった。俺の名前は山田太郎といいます。よろしくお願いしますね」
ぺこりとお辞儀をして挨拶をした。そして次はデイモスを手で指す。
「で、こっちの顔色が悪い男がデイモスっていいます。……この顔色、生まれつきらしくて本人も気にしてるのであんまり触れないであげてくださいね」
もちろん嘘だ。
顔色の悪い理由は非常にシンプルな『アンデッドで血が通っていないから』なのであって、決して生まれつきが原因ではない。
ただ、ここでアンデッドと疑われるのはヤバいから適当な嘘をつかせてもらった。
「……おいてめぇ!俺の肌の血色は生まれつきだって事を簡単に言うんじゃねぇ!いっつも言ってんだろうが!!」
デイモスもこちらの意図を汲んでくれたらしく、話を合わせてくれた。
俺はあえてゴメンゴメンと適当に謝罪する事でこの話を流し、先に進める。
「ギルドに行く途中でも話しましたが、俺達は魔王を倒すための旅をしてます」
「よろしくお願いします!では私も自己紹介しますね!私はヴェルデ・フラウといいます!気軽にヴェルデと呼んでくださいね!」
「分かりました!ヴェルデさんですね!」
そう言うとヴェルデは慌てて手を顔の前で振る。
「いやいや、さんは付けなくていいですよ!ヴェルデでいいです!それに堅苦しい言葉は使わなくていいですから!」
「……そ、そう?それじゃあ改めて、よろしく!」
「……よろしく頼む」
俺に続いてデイモスも簡単な挨拶をした。そして、それを受けたヴェルデもニッコリと微笑んで「よろしくね!」と俺達に挨拶を返した。
「太郎。とりあえず服を着ようか」
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そんな訳で着替えも終わり、街の中心の方まで歩いてきた俺達。
遠くから見ても目立つくらい大きかった電波塔が、俺達が街の中心に歩いてきた事でさらに大きく感じる。
その大きな電波塔をほへーと間抜けヅラで眺めながら歩いていると。
「――で、最強の魔法使いとやらを探すっつってもよぉ、手掛かりも何もないのに一体どこを探すつもりなんだ?」
俺の後ろをついてくるデイモスが、緊張感を感じさせないのんびりとした口調で聞いてきた。
俺は立ち止まって後ろのデイモスにくるりと振り向き、チッチッチッと人差し指を左右に振る。
「デイモス、いいか?ああいったクッソ目立ってるランドマークが街にある時は、まずは行ってみるもんだぜ?何か起こるかもしれないし、もしかしたら魔法使いがいるかも知れないしな」
「……そういうもんかねぇ」
「そういうもんさ」
こんな感じの俺とデイモスがしているのほほんとした会話に、ヴェルデは興味深そうに耳を傾けていた。
そんなこんなをしているうちに、非常に人の通りの多いスクランブル交差点に出てきた。
俺達は一旦立ち止まってキョロキョロと周囲を見回してみる。
「へぇ~すごい活気だなぁ。それにやっぱりこっちの世界でもスクランブル交差点のところには、大型ビジョンが置いてあるんだなぁ」
スクランブル交差点を囲む大きな建物の壁には、これまた大きなビジョンが様々な広告を流していた。
「そうでしょう?この道路はこの街のメインストリートですからね!ここを過ぎると電波塔もすぐですよ!」
「よっしゃ、それじゃあさっさと行くとすっかぁ」
ヴェルデの言葉を聞いたデイモスがゆっくりと歩き出そうとした。
――しかし、まるで旅行にでも来ていたかのような穏やかな雰囲気は、次の瞬間にすぐ近くから聞こえてきた爆発音と衝撃波によって吹き飛ばされる。
周囲一帯に轟く激しい爆発音、そしてそれによって発生した衝撃波が地響きとなって俺達を襲った。
周囲にいた一般人はパニックになり、あちこちを逃げ惑っていた。
……ん?もちろん俺もその『パニックになった一般人』の中に入ってますが、なにか?
「ぴゃーー!!!!!なんだなんだ!!何がどうなってんだ!?」
思わず奇声を発して分かりやすくパニックになる俺。こんな俺が世界を救う勇者とかやってます。
いや、けど爆発音なんて聞いたら普通はパニックになるって!むしろ、パニックにならない方がおかしい!
……だが、その理論で行くとどうも俺の周囲には、普通の人間はいないという事になってしまいそうだ。
「……かなり近けぇな。あの電波塔の方向からか?」
「ですね。爆心地は電波塔で間違いないと思います。それに今の爆発から魔法の反応がありました……もしかしたらですが、人為的に起こされた爆発の可能性がありますね」
二人は全く慌てる事なく、冷静に現在の状況を分析し始めた。
やべぇよこいつら……マジでやべえ。どんな図太い神経持ってたらこんなに落ち着いてられんだよ……。
爆発と同じくらいこの二人に恐怖を感じ始めたところでその二人、デイモスとヴェルデにそれぞれ両手を掴まれて電波塔の方向に引っ張られる。
「ほら、何ボーッとしてんだ!お前が待ち望んでた事件じゃねぇか!オラ!さっさと行くぞ!」
「そうですよ!もしかしたらこの爆発に『最強の魔法使い』が絡んでるかも知れませんよ!さあ!」
「いや違うでしょ!明らかにテロでしょ!ヤバいって!テロはマジで洒落にならんって!俺達が戦うのは魔王軍であって、反社会勢力ではないのであって!!嫌だぁぁぁぁ!!」
イヤイヤと駄々っ子のように首を激しく振って絶叫しながら、グイグイ引っ張られる腕を逆に引っ張り返してなんとか抵抗する。
だってテロリストって自爆とかしてくるもん!そんなん出来ひんやん普通!
ああいう狂った思想に取り憑かれた奴は絶対に関わっちゃいけない。それならまだ魔王軍の方がはるかにマシだ……と思う。
しばらくの間、必死の抵抗を続けていると、さっきまで眺めていた大型ビジョンに突如として砂嵐が入った。
数秒間、ザーッという無機質な音と灰色の画面が流れる。
だが直ぐに画面は元に戻り、あの灰色の画面から今度はちゃんとした映像が流れ始めた。
しかし、さっきまで流れていた映像とはだいぶ……いや、かなり違う。
さっきまで映っていた商品や人物の広告ではなく、今は頭がやけに大きく真ん丸で、全身の服装は主に黄色と赤を基調としたもので、そして大きなマントが特徴的な格好をしている。
……なんというか、頭部がアンパンで出来ているヒーローにそっくりだ。
周囲でパニックになっていた人々も、今は黙ってビジョンに注目している。
しかし、こちらの緊張などは向こうに伝わるはずもなく、画面のアンパンもどきはニッコリと笑いこう言った。
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う、嘘だろ……?某アンパンヒーローの名前に一文字つけ加えただけの、見た目も名前もそっくりなパチもんが魔王軍最高幹部だって……?
「いやこれは色々とまずいだろ」と一人困惑する俺。
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諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
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