チートがなくても最強です!?〜最弱勇者はハードモードの異世界を策略と悪知恵で必死こいて生きていく〜

ソリダス

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第四章 ハルマ編

第三十七話 力を持たない者なりの戦い方

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 俺達は途中でとある用事を済ませてから『勇者公園』へと戻ってきた。


 「よし、大体の準備はこれでいいかな?」


 手に持ったやや大きめのビニール袋をベンチに置き、腰に手を当ててふぅと息をついた。


 「いったいそんなものをどこで使うってんだ?」


 デイモスは不思議そうに袋の中を覗く。ヴェルデもデイモスの肩越しに中身を覗いている。


 「この中に入っている物はこれからの作戦で使うんだよ。詳しくは後でのお楽しみってことで!……さぁて、そんな話をしている間に向こうの準備も出来たみたいだな」


 俺の視線の先には討伐隊の装甲車とも思われる車が3台、公園の出入口に止まっていた。

 その内真ん中の1台から見覚えのあるスキンヘッドの討伐隊隊長が降りてきた。それに続いて重装備の兵士たちも続々と降りてくる。

 彼らは俺たちの元へとゆっくりと歩いて近付いてくる。

 俺はそれを不敵な笑みを浮かべ、ベンチにどっかりと腰掛けながら待ち構える。と、同時に頭の中のスイッチを切り替えた。


 「よぉ、遅かったじゃないか。待ってたぜ」


 そう言って俺は彼らにニヤリと笑いかける。

 強気な雰囲気を出してはいるが、実は今にも全身がプルップル震えてしまいそうなほどビビっている。

 ここが最初の難関だ。

 討伐隊側が俺の狙い通りに動いてくれなければ、魔王軍と戦う前に負けが確定してしまう。


 表情には出さないがハラハラしながら、隊長が次に放つ言葉に集中する。

 すると、隊長はいきなり片膝を付き頭を下げた。


 「申し訳ありません、あなたが勇者であるかどうかの確認に時間がかかりまして……。先程の御無礼、どうかお許しください」


 「「ッ!?」」


 後ろの隊員達は隊長のそんな姿を見て困惑しているようだ。


 だが、この場で1番困惑したのは間違いなく俺だと思う。


 「え?」

 

 あれ?さっきと明らかに態度が違う。いや、これはあまりにも違いすぎる。

 もしかして、あれか?ベルドルム隊長に何か言われたのか?まぁ、十中八九それだろう。この状況ではそれしか考えられない。

 完全に予想外だった。

 もちろんさっきのような高圧的な態度はさすがに勘弁してもらいたいし、少しはマシになるといいなという思いがあったのは事実だ。

 けどさぁ……これはこれでやりにくいよ……。

 だってさ、この状態だと何を考えているのか全く読めねぇんだもん。


 よくある物語の流れだと、俺がこのまま裏切られて殺されそうな感じがするが、あまり深く考えてはならない。

 考えちゃダメだ、考えちゃダメだと繰り返し自分に言い聞かせる。……『考えちゃダメと意識している時点で考えちゃってるじゃん』なんて野暮なツッコミが聞こえてきても無視する事にする。


 「い、いいんだ。別に俺は気にしてはいない。それよりも今は優先させねばならないことがあるだろう?さぁ、早く君たちの拠点へ向かおう」


 俺はなんとか必死に話を逸らす……じゃなくて、元に戻そうとする。


 「分かりました。それではそちらのお二人も3台ある車のうち真ん中の車に乗ってください。その車に乗って本作戦の本部へと向かいますので」


 そう言って隊長は俺とデイモス、そしてヴェルデにも車に入るように促した。俺も2人に目配せをして、隊長の指示に従ってもらった。

 俺とヴェルデは何の警戒もなく車へと乗り込んだが、デイモスだけは周囲に一定の警戒を置きながら慎重に乗り込んだ。


 そして一緒に車に乗ってきた隊長に、俺はいくつか頼み事をした。


 「隊長、申し訳ないが魔王軍が篭城しているあの電波塔の全フロア地図と詳細なデータを用意してくれ。確かめたい事がある」


 「分かりました。本部の方に準備させておきます」


 隊長はこくりと頷き、すぐさまポケットからスマートフォンによく似た携帯端末を取り出した。おそらくは、それで連絡を取るのだろう。

 俺はこの機会に、自分の中にある1つの可能性を確信へ変えることにした。


 「隊長、すまないがもう一つだけいいか?」


 「はい、なんでしょうか?」


 「……携帯端末を用いて世界中の不特定多数の人間とコミュニケーションを取る事が出来る情報発信ツールはあるか?」


 これを受けた隊長は顎に手を置き、考えるような仕草を見せた後にこう言った。


 「……もしや『インターネッツァ』の事ですか?それなら確かにありますが……。今だと民間に普及している携帯端末は全てインターネッツァに接続されていると思います」


 ……なんというか、思った以上にモロ出しな名前だった。しかも、肝心の機能の方も完全に俺が知ってるインターネットそのままだし。


 「インターネッツァとはたまげたなぁ……」


 「はい?」


 ヤバい、いつの間にか本音が口から漏れてた。だが、ここで狼狽はしない。

 俺は静かに首を振り、次の質問へと話を変える。


 「いや、なんでもない……。そのインターネッツァを利用した、もっと気軽に情報発信をできるツールはあるか?」


 「ええ、確かにそういったツールは複数存在します」


 「なるほど。……ありがとう、隊長。参考になった」


 俺はそれを聞いた後、腕を組んでゆっくりと目を瞑った。

 別に眠る為に目を瞑った訳では無い。というか、今の状態で眠れと言われても絶対に眠れない。それほどまでに俺の脳みそはフル回転していた。……まぁ、つっても多分動いているのは悪知恵を司る部分だけだが。


 俺は悪知恵を働かせ、今俺が把握、予想しているこちら側の手札を全て考慮して作戦を立てる。

 相手は非常にずる賢い。電波塔をジャックして人質を取り、さらには世論を操作してジワジワ人類を潰しに来るなんて、中々洒落た事をしやがるくらいには。

 それに魔王軍の幹部を名乗るほどだから、戦闘能力だって高いのだろう。


 だが、正直言うと、変に馬鹿だったり賢かったりする奴より、こういうひねくれた輩の方が行動がよっぽど読みやすい。


 だが、勘違いしないでいただきたい!別にそういう奴らと同じ思考回路だから、だとかいう訳では無い!

 ……これ以上言うと、さすがに虚しくなるので止めておく。


 とにかく、相手の動きは読めるということは大きなアドバンテージだ。

 となれば後は戦闘の方だが……まぁ、これに関してもある程度は考えてはある。俺は全く戦えないけど。


 そんな感じで、俺は様々な状況を想定してそれが成功する度にニヤニヤと笑っていた。傍から見たら明らかにヤベー奴と周囲には写っていただろう。

 実際、両隣に腰掛けているデイモスとヴェルデからは尋常じゃないくらいの冷たい視線を感じ取った。もう雰囲気で分かる分かる。

 だが、そんなことを気にしてたらマジでやられる。

 俺には何の特別な力もないんだ。

 だからやれることは全力でやらなければならない。力を持たない奴には持たないなりの戦い方があるってところを見せてやる。


 そう考えて俺は到着するまでずっと作戦に穴がないか吟味を続けた。しばらくすると、


 「本部に到着しました」


 車が止まると同時にもたらされたその声を受け、俺は開かれた車の扉から外へ向かって一歩を踏み出した。



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