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第四章 ハルマ編
第四十六話 ゴミ同然の存在意義
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はい、というわけで。
ヴェルデとの話も一旦全部ぶん投げて、スタコラサッサと逃げるようにやって来ました。……けど、気のせいかなぁ?後ろからヴェルデが付いてきてるような気がするんだよなぁ……。
そんなことを考えながら、案内してくれている隊員の後ろを付いていくと、以前作戦会議の際に訪れた部屋に着いた。
そこには討伐隊の隊長や副隊長、その他の隊員達が集まっていた。
「……ッ!勇者様ッ!来てくださいましたか!」
「え、えぇ、来ましたけど……どうしたんですか?そんなに慌てて……」
討伐隊の副隊長がかなり慌てた様子で、ズレた眼鏡を直しながら言った。だが、そのテンションの勢いについていけない俺は、思わず不思議そうな表情で尋ねる。
すると、副隊長の後ろにいたスキンヘッドが特徴的なあの隊長が出てきて、真剣な面持ちで説明を始めた。
「実はですね……勇者様に緊急で報告しなければならない事案が発生しました」
「え、何それ。ちょ、怖いんですけど……怖いんですけど!」
きょうふのあまりプルプルと震える俺に、隊長は優しく諭すように話していく。
「落ち着いて思い出してください。勇者様が我々にかけてくださった言葉を――」
◆◆◆◆
――あれはアンパン魔人を倒し、魔王軍の計画の全てを打ち砕くための作戦を考えている時、だったはず。……『はず』とかやたらとフワフワした事を言っているのは、ただ単純に俺の脳のスペックが足りないあまり、既に記憶の一部が抜け落ちてる部分があるだろうという自信の無さからくるものなので、あんまり深い意味は無いです。はい。
何を言ってるんだ、俺は。
話を戻す。
俺はその作戦がはっきりと決まらない状況で、討伐隊にある提案をした。
「――討伐隊の隊員達に一つ提案がある」
俺の声に気が付いた討伐隊の隊員達が、無言でこちらに視線を向ける。皆の意識がこちらに向いたのを確認して俺は、ある作戦を持ちかけた。
「携帯端末を用いて不特定多数の人間に対して情報発信が出来るツールがあるんだろう?……ほら、『インターネッツァ』とかいうパチモ……じゃねぇや。あれだよ、あれ。あれをこの作戦に利用したいんだが」
「……それを使って一体何をするんですか?」
「簡単だ。今すぐ一般人のふりをしてインターネッツァ上に討伐隊擁護と批判のコメントを投稿しろ」
「えっ?」
周囲に同様の声が広がる。俺は話を続ける。
「敵が持ってるのはテレビの電波だろ?だったらこっちは敵の電波を利用した上で、さらにもう一歩。インターネッツァを使って奴らの目論見を叩き潰す」
しかし、それに討伐隊の者達は怪訝そうな表情をうかべる。
「叩き潰すといっても……」
「恐らくだが、世論は最初は賛否分かれるはずだ。『彼らは勇気に溢れた討伐隊の鑑』と『人質の生命を危険に晒し軽率な行動を取った者達』の大きく分けてこの二つだろう。そこでだ、まずは批判の意見を少し投稿して拡散しろ。そして、その投稿のコメント欄に擁護の意見を乗せるんだ。だが、それだけでは足りない。そこからは擁護の意見を大量に投下し、さらには各方面のマスコミにも協力を働きかけろ」
俺のとんでもない発言に戸惑ったような様子を見せる討伐隊の隊員に、俺はにやりと笑いかける。
「集団意識を利用するんだよ。そうすれば、少し時間はかかるだろうが絶対にこの騒動は収束する。しかも討伐隊の賛同者多数というオマケも付いてな」
「……上手くいくのでしょうか……」
「最終的には賛成多数に落ち着くはずだ。……世間は英雄を求めたがってる。所詮、世論なんざそんなもんさ」
「で、ですが、それでは我々は――」
何か言いかけたようだが、俺はその言葉を遮り言い放った。
「手段なんざ選んでらんねぇんだよ。元はと言えば向こうが先に使ってきた方法だろう?だったらこっちも利用していこうじゃねぇか」
◆◆◆◆
「――あーーー。そんなことも言ったね。それで?今はどんな感じなの?」
そう問いかける俺。それに対し、副隊長はこちらと目線を合わせずに話をする。
「それが、あの、我々討伐隊に関してはこの件の収束が見えてきたのですが……」
ここで言葉を途切れさせる副隊長。俺は首を傾げながら「ですが?」と話の続きを促す。
だが、その続きを話始めたのは副隊長の後ろにいた隊長だった。
「その代わり、勇者様に批判が集中してます」
「…………ん?ちょっと待ってちょっと待って?すみません、よく聞こえませんでした」
「いえ、ですから、我々討伐隊や人類軍に向いていたヘイトが一斉に勇者様に行きました」
「な、なんでぇ!?」
俺は思わず目を剥いて叫んだ。
そりゃ叫びたくもなりますって。だって俺なんもしてないし。良くも悪くも。……いや、よくよく考えるとちゃんとやることはやってたわ。スプリンクラー起動させたのも俺だし、今回の作戦の大まかな部分を考えたのも俺だし。
少なくとも批判されるようなことはしてないはずだ!
「なんで俺が批判されなきゃ行けないんだよ!おかしくないかそれは!?」
激昴した俺は、討伐隊の彼らに問い詰める。
すると、彼らは顔を見合わせた後に申し訳なさそうにおずおずと話し始めた。
「魔王軍幹部の【貧困】との戦闘がテレビに流れてまして……それを見た人々が――」
「それは俺が狙って放送したんだよ!そうして命懸けで戦ってる様子を見せれば、印象って全然変わってくるじゃん!?」
「それです。その映像にばっちり入っちゃってたんですよ…………勇者様が魔王軍幹部に命乞いをして土下座している映像や、人格を疑うような発言の音声が……」
「あっ……」
察した俺はパクパクと酸欠の魚のように口を開閉させる。そしてさらに彼らは畳み掛けてくる。
「しかもですね……『あいつはなんで偉そうな事を言ってるくせに何もしないんだ?』という意見があちこちで上がっておりまして……」
「あっあっ………あっ……あっ……」
脳みそをコネコネいじくり回されてるような異様な声を上げて、俺はその場にかたまり動きを止める。
「言い訳できねぇな、これは」
デイモスはため息をつき、額を押さえながら言った。
しばらく俺はそのままだったが、少し時間が経つたあと、徐に口を開いた。
「ねぇ俺闇堕ちしていい?魔王軍に寝返っていい?多分今、俺がこの世界で一番人類滅ぼしたいと思ってるわ」
「それなら尚更私を仲間にするべきじゃない?これからは仲間もなかなか見つからなくなるでしょ?だったらここで一人でも仲間を作っておくのは大事なんじゃないの」
ヴェルデはぐいと顔を近づけてそう言った。
それにオレは死んだ魚のような目を空中に向けながら、心底どうでもいいという感情を隠そうともせずにボソボソ呟く。
「あぁもういいよ……勝手にしろ……仲間にでもなんでもなればいいよ……」
そうして俺は視線をどっかに向けたまま、外に向かって力なくフラフラと歩き出した――。
――こうして『勇者 山田太郎』は、チート能力や特殊能力だけでなく、一般人からの信頼すらも完全に失った。
チートもない。
魔法も特殊能力も使えない。
地位も名誉もそこらに転がるゴミ程度しか持っていない。
持っているのはひのきのぼうとはした金。
あとはゾンビのおっさんと、サイコパスの魔法使いが仲間にいるくらい。
そんな絶望的な状況の中、山田太郎は魔王を倒すために今日も必死に生きていく。
ヴェルデとの話も一旦全部ぶん投げて、スタコラサッサと逃げるようにやって来ました。……けど、気のせいかなぁ?後ろからヴェルデが付いてきてるような気がするんだよなぁ……。
そんなことを考えながら、案内してくれている隊員の後ろを付いていくと、以前作戦会議の際に訪れた部屋に着いた。
そこには討伐隊の隊長や副隊長、その他の隊員達が集まっていた。
「……ッ!勇者様ッ!来てくださいましたか!」
「え、えぇ、来ましたけど……どうしたんですか?そんなに慌てて……」
討伐隊の副隊長がかなり慌てた様子で、ズレた眼鏡を直しながら言った。だが、そのテンションの勢いについていけない俺は、思わず不思議そうな表情で尋ねる。
すると、副隊長の後ろにいたスキンヘッドが特徴的なあの隊長が出てきて、真剣な面持ちで説明を始めた。
「実はですね……勇者様に緊急で報告しなければならない事案が発生しました」
「え、何それ。ちょ、怖いんですけど……怖いんですけど!」
きょうふのあまりプルプルと震える俺に、隊長は優しく諭すように話していく。
「落ち着いて思い出してください。勇者様が我々にかけてくださった言葉を――」
◆◆◆◆
――あれはアンパン魔人を倒し、魔王軍の計画の全てを打ち砕くための作戦を考えている時、だったはず。……『はず』とかやたらとフワフワした事を言っているのは、ただ単純に俺の脳のスペックが足りないあまり、既に記憶の一部が抜け落ちてる部分があるだろうという自信の無さからくるものなので、あんまり深い意味は無いです。はい。
何を言ってるんだ、俺は。
話を戻す。
俺はその作戦がはっきりと決まらない状況で、討伐隊にある提案をした。
「――討伐隊の隊員達に一つ提案がある」
俺の声に気が付いた討伐隊の隊員達が、無言でこちらに視線を向ける。皆の意識がこちらに向いたのを確認して俺は、ある作戦を持ちかけた。
「携帯端末を用いて不特定多数の人間に対して情報発信が出来るツールがあるんだろう?……ほら、『インターネッツァ』とかいうパチモ……じゃねぇや。あれだよ、あれ。あれをこの作戦に利用したいんだが」
「……それを使って一体何をするんですか?」
「簡単だ。今すぐ一般人のふりをしてインターネッツァ上に討伐隊擁護と批判のコメントを投稿しろ」
「えっ?」
周囲に同様の声が広がる。俺は話を続ける。
「敵が持ってるのはテレビの電波だろ?だったらこっちは敵の電波を利用した上で、さらにもう一歩。インターネッツァを使って奴らの目論見を叩き潰す」
しかし、それに討伐隊の者達は怪訝そうな表情をうかべる。
「叩き潰すといっても……」
「恐らくだが、世論は最初は賛否分かれるはずだ。『彼らは勇気に溢れた討伐隊の鑑』と『人質の生命を危険に晒し軽率な行動を取った者達』の大きく分けてこの二つだろう。そこでだ、まずは批判の意見を少し投稿して拡散しろ。そして、その投稿のコメント欄に擁護の意見を乗せるんだ。だが、それだけでは足りない。そこからは擁護の意見を大量に投下し、さらには各方面のマスコミにも協力を働きかけろ」
俺のとんでもない発言に戸惑ったような様子を見せる討伐隊の隊員に、俺はにやりと笑いかける。
「集団意識を利用するんだよ。そうすれば、少し時間はかかるだろうが絶対にこの騒動は収束する。しかも討伐隊の賛同者多数というオマケも付いてな」
「……上手くいくのでしょうか……」
「最終的には賛成多数に落ち着くはずだ。……世間は英雄を求めたがってる。所詮、世論なんざそんなもんさ」
「で、ですが、それでは我々は――」
何か言いかけたようだが、俺はその言葉を遮り言い放った。
「手段なんざ選んでらんねぇんだよ。元はと言えば向こうが先に使ってきた方法だろう?だったらこっちも利用していこうじゃねぇか」
◆◆◆◆
「――あーーー。そんなことも言ったね。それで?今はどんな感じなの?」
そう問いかける俺。それに対し、副隊長はこちらと目線を合わせずに話をする。
「それが、あの、我々討伐隊に関してはこの件の収束が見えてきたのですが……」
ここで言葉を途切れさせる副隊長。俺は首を傾げながら「ですが?」と話の続きを促す。
だが、その続きを話始めたのは副隊長の後ろにいた隊長だった。
「その代わり、勇者様に批判が集中してます」
「…………ん?ちょっと待ってちょっと待って?すみません、よく聞こえませんでした」
「いえ、ですから、我々討伐隊や人類軍に向いていたヘイトが一斉に勇者様に行きました」
「な、なんでぇ!?」
俺は思わず目を剥いて叫んだ。
そりゃ叫びたくもなりますって。だって俺なんもしてないし。良くも悪くも。……いや、よくよく考えるとちゃんとやることはやってたわ。スプリンクラー起動させたのも俺だし、今回の作戦の大まかな部分を考えたのも俺だし。
少なくとも批判されるようなことはしてないはずだ!
「なんで俺が批判されなきゃ行けないんだよ!おかしくないかそれは!?」
激昴した俺は、討伐隊の彼らに問い詰める。
すると、彼らは顔を見合わせた後に申し訳なさそうにおずおずと話し始めた。
「魔王軍幹部の【貧困】との戦闘がテレビに流れてまして……それを見た人々が――」
「それは俺が狙って放送したんだよ!そうして命懸けで戦ってる様子を見せれば、印象って全然変わってくるじゃん!?」
「それです。その映像にばっちり入っちゃってたんですよ…………勇者様が魔王軍幹部に命乞いをして土下座している映像や、人格を疑うような発言の音声が……」
「あっ……」
察した俺はパクパクと酸欠の魚のように口を開閉させる。そしてさらに彼らは畳み掛けてくる。
「しかもですね……『あいつはなんで偉そうな事を言ってるくせに何もしないんだ?』という意見があちこちで上がっておりまして……」
「あっあっ………あっ……あっ……」
脳みそをコネコネいじくり回されてるような異様な声を上げて、俺はその場にかたまり動きを止める。
「言い訳できねぇな、これは」
デイモスはため息をつき、額を押さえながら言った。
しばらく俺はそのままだったが、少し時間が経つたあと、徐に口を開いた。
「ねぇ俺闇堕ちしていい?魔王軍に寝返っていい?多分今、俺がこの世界で一番人類滅ぼしたいと思ってるわ」
「それなら尚更私を仲間にするべきじゃない?これからは仲間もなかなか見つからなくなるでしょ?だったらここで一人でも仲間を作っておくのは大事なんじゃないの」
ヴェルデはぐいと顔を近づけてそう言った。
それにオレは死んだ魚のような目を空中に向けながら、心底どうでもいいという感情を隠そうともせずにボソボソ呟く。
「あぁもういいよ……勝手にしろ……仲間にでもなんでもなればいいよ……」
そうして俺は視線をどっかに向けたまま、外に向かって力なくフラフラと歩き出した――。
――こうして『勇者 山田太郎』は、チート能力や特殊能力だけでなく、一般人からの信頼すらも完全に失った。
チートもない。
魔法も特殊能力も使えない。
地位も名誉もそこらに転がるゴミ程度しか持っていない。
持っているのはひのきのぼうとはした金。
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