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しおりを挟む大きな壁石に足が挟まれて身動きできないベンは呻いている。
「早く・・・逃げて!」
ベンが僕に逃げるように言ってくる。
「ベン! ベン!」
僕はベンの上に落ちた大きな石を退けようとするが、非力でかなわない。
その間も爆発音と人々の叫び声が聞こえくる。
「そんな、ベン。どうして僕のことをかばったの。僕のせいだ。ベン」
信じられなくて、涙が溢れてくる。
「ティノ! おれのティノを責めるのはおれが許さないよ」
「ティノ……がおれのことを好きなら、おれのことを少しでも信じているなら、……もう自分のことを悪く言わないで」
顔を青ざめさせながら、そんなことをまだ言ってくる。最初は微笑みながら、段々途切れながらベンが言う。息が上がってきている。
「ティノ、……建物が倒壊したら危ない。だから逃げて」
ベンが僕を逃がそうとしてくる。
「ベン、ベン、馬鹿なベン、大馬鹿野郎だ」
ベンが苦笑する。
「あのね、ベン」
僕は涙がするすると流れてくるのに任せる。
「僕が一人で逃げて、……ベンのいない世界で一……人で生きて幸せになると思う? 」
僕はベンの頭を撫でる。
「僕を大切にしてくれるベンのいない世界で僕は生きていけないんだよ。……ベンは責任をとるべきだと思う」
僕はベンの頭を抱きしめる。
「一生僕の傍にいて、僕がどれだけ幸せになるべきか、ずっと僕に言い続けてくれなきゃ」
僕が微笑みながら言うと、ベンも笑った。笑ったけど辛そうに言い募る。
「だけどティノ……おれはティノに生きてほしい」
ベンの青い瞳が僕を呆れて見ている。でも、優しくて、僕は幸せなのに不思議と涙が頬を濡らす。僕はベンと出会えて幸せだった。最後までベンの傍にいれて幸せだ。
「ティノ早く……ああ……逃げて」
ベンが苦しいのか、顔をしかめて目を閉じ始めた。ハアハアと息が荒い。呼吸が乱れている。
遠くで更に建物が崩れる音がする。白い煙が視界を悪くする。
僕は大きな石が邪魔でベンの傍に寄り添えないけど、できる限りベンにくっつく。どれだけ建物が崩れても、ベンの傍にいられるように。
奇跡が起きてベンが助かるように、僕はベンの頭と体を守るように抱きしめる。
「ベン、僕は伝えたかな。僕はベンといれて幸せだった。ベンと出会えて幸せだった」
倒壊寸前の大聖堂の中で、バタバタと大勢の人が駆けている音がする。逃げまどう人や、「助けて」と叫ぶ声。「逃げろ」という大声が聞こえてくる。
救助が来たのかと思い「助けて」と僕も声を上げる。「ここに人がいます」
上半身だけを起こして、助けを呼ぶけど誰もが僕らを助ける余裕もなく、走り通りすぎていく。
その時、白い煙越しに、フードを被った男をふと目が合ったような気がした。男も動きを止めてこちらを見てくる。不思議な気持ちになる。助けてくれるのかと一瞬僕の目が希望に大きく開く。
だけどその男の人は僕の元に駆け寄ると、僕を殴った。抱きしめていたベンの頭が僕の膝から落ちる。
「こんなところにいたのか、この売国奴め。二重スパイをして国を陥れたその罪は大きい」と僕をベンから無理やり引き離して、僕をずりずりと引きずっていく。
「やめて! やめてください。ベン!ベン!」
僕は必死に抗ってベンの名前を呼ぶけど、相手の力が強くてままならない。
倒壊していく壁や柱の煙がひどく、すぐにベンの姿が見えなくなる。
まさか最後にベンの傍にいられないなんて。ベンを一人にできないのに。
死ぬのは怖くない。ベンと一緒なら。ベンと離れてしまうことが怖い!
「ベン! ベン!」
僕の声だけが響いていく。大神殿から抱えられて連れ出されると、無理やり乱暴に馬車に乗せられ、すぐに出発する。
なんとかドアとその窓に縋りつくと、歴史ある大聖堂が崩れ落ちていくのが見えた。
「うそだ! ベン! ベン!」
「あああああああああああ」
僕の叫び声を聞いた男が「うるさい」と刀柄で僕の頭を殴った。
衝撃で僕の目の前に光が走り真っ暗になった。
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