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ジェイクの家を出た
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次の日、ジェイクの家から出た。鞄一つだけの荷物だった。
おれは元々なんの荷物もないから、反対にジェイクが色々用意をしてくれて、鞄一つだが、中にたくさんの服や下着やら、身の回りの物が入っていた。
ジェイクは一度部屋から出て行ったが、色々用意をして翌日には戻ってきてくれたのだった。
そして、街はずれの貴族の屋敷までジェイクが馬車で送ってくれた。
おれは何度も断ろうとしたけど、あまりにも普通に送るよって、「ほら」と手を差し伸べられると、断るのもおかしい気がして馬車に乗ってしまった。
それに外を歩くだけで気を失いそうに疲労した。動けるようになったと思っていたが、家の中しか歩いていなかったからだろうか。
このままやっていけるのだろうかと心配になるが、ジェイクにはそんなこと言えない。
馬車から降りても一苦労だった。
我ながらびっくりするが、鞄も重くて運べなかった。離れの書庫に併設してあるおれの寝場所までジェイクが持ち運んでくれた。
ジェイクは軽々と持つ鞄もおれには両手で持って一歩、歩くだけでフラッとなった。三歩が限界だった。ゼイゼイ肩で息をする。
呪われる前は雑用係兼料理係と荷物持ちをしていたんだが。随分体力が落ちてしまっている。
鞄を運んでくれたジェイクはそのまま雇い主の貴族に挨拶の時もいて、一緒に挨拶をした。
丸々と肥えた優しそうなカーディ男爵が言うには、先代が本好きで希少な本もあるが、学術的な本はないそうだ。先代が亡くなった後は、整理をするものがいなかったそうだ。
おれが頼りなく見えたのか、「ゆっくりしてくれていい。焦るものではないから、丁寧にしてくれる方がよい」と言ってくれた。
そしてジェイクがA級冒険者であることを知っていて、知り合いになれたことを喜んでいた。
もしかしたらそのお陰で、カーディさんもおれに親切なのかもしれない。何度かジェイクとおれを交互に見つめて一人で何やら納得した様子だった。
案内された書庫の隣にあるおれの部屋はこじんまりとした部屋だった。キッチンとベッド、お風呂も一部屋に全部まとまっていて、おれは気に入った。おれには十分だった。小さいけどおれだけの部屋だ。ずっと転々とした暮らしをしていたから、ジェイクの部屋を除いて初めての自分の部屋だった。
鞄から服や物を取り出して棚にしまうという作業もひどく疲れるものだった。小さな鞄に拡張作用がどれだけあるのか、持ち物の数や種類が多すぎて、それだけでも疲れる。見たことがないものもある。どこに何をしまったらいいのかもわからない。
いや、明らかにすでにこの部屋の収納のキャパシティを超えている。
まだ残っていて心配そうにおれを見ていたジェイクが片付けを手伝ってくれた。結局、ほとんどを鞄に入れたままにして、必要なものだけを取り出して、部屋に置くことになった。
ジェイクは「絶対ノアに似合うのに」って残念そうだけど、部屋に入りきらないほどの服を見て、おれは気が遠くなりそうだった。
こんなにも用意してくれたことが申し訳ないし、すべての服を着る自信もない。
おれは眩暈を堪えながら、お礼にジェイクになんとかお茶を入れようとしたが、そういえば石になる呪いから目覚めてから、お茶を入れたことがない。お茶も食事もお風呂も掃除も全て全部ジェイクにやってもらっていたから。
我ながらどれだけ甘えていたのか唖然とする。
新しい場所で勝手がわからないし、このジェイクが用意してくれた香りの良い茶葉は入れ方もどうすればいいのかわからない。
固まって青ざめていたら、それも見かねたジェイクが結局お茶を入れてくれた。ベッドに座らされお茶を手渡される。香りのよい熱いお茶を一口飲んでホッとする。
「ほんとに大丈夫かノア」
「うん」おれは空になったティーカップをテーブルの上に置くと、ベッドに横になる。体が限界だった。
ジェイクがおれの靴を脱がしてくれて、一緒に横になった。
背中をポンポンと軽く叩いてくる。「足も痛いだろ」と足も揉んでくれる。
優しい。嬉しくてジェイクに甘えたくなる。でもハッとする。
「ジェイクありがとう」そういってそっと足をジェイクの手から離す。足も揉んでもらったらだめだ。もうおれは動けるんだからジェイクにそんなことをしてもらう必要はない。
ジェイクは心配そうにおれを見てくる。
「さっき、挨拶をした雇い主のカーディさんも、ゆっくりやってくれていいっていってくれたし・・・」
おれは疲れのあまり、眠たくなってきた。目を閉じながら話す。呪いのせいだろうか。少し活動するだけで眠くなる。
あーこんなことでは初日からクビになってしまう。
「お願い」おれはパチッて目を開けてジェイクに思い切って、お願いごとをする。目が合ってジェイクの顔が赤くなる。
「どうしたんだ」
「明日の朝起こして。明日だけでいいから。このまま、おれ寝ちゃいそう」
おれが困った顔で泣きそうになりながらお願いすると、どこか満足気にジェイクは微笑むと「わかった。起こしてやる」と約束してくれた。
「ジェイクありがとう」あー甘えちゃだめなのに。ちゃんと一人で独立して働かないといけないのに。ジェイクに迷惑をかけちゃいけないのに。
そう思いながらおれは夢の中に吸い込まれていった。
おれは元々なんの荷物もないから、反対にジェイクが色々用意をしてくれて、鞄一つだが、中にたくさんの服や下着やら、身の回りの物が入っていた。
ジェイクは一度部屋から出て行ったが、色々用意をして翌日には戻ってきてくれたのだった。
そして、街はずれの貴族の屋敷までジェイクが馬車で送ってくれた。
おれは何度も断ろうとしたけど、あまりにも普通に送るよって、「ほら」と手を差し伸べられると、断るのもおかしい気がして馬車に乗ってしまった。
それに外を歩くだけで気を失いそうに疲労した。動けるようになったと思っていたが、家の中しか歩いていなかったからだろうか。
このままやっていけるのだろうかと心配になるが、ジェイクにはそんなこと言えない。
馬車から降りても一苦労だった。
我ながらびっくりするが、鞄も重くて運べなかった。離れの書庫に併設してあるおれの寝場所までジェイクが持ち運んでくれた。
ジェイクは軽々と持つ鞄もおれには両手で持って一歩、歩くだけでフラッとなった。三歩が限界だった。ゼイゼイ肩で息をする。
呪われる前は雑用係兼料理係と荷物持ちをしていたんだが。随分体力が落ちてしまっている。
鞄を運んでくれたジェイクはそのまま雇い主の貴族に挨拶の時もいて、一緒に挨拶をした。
丸々と肥えた優しそうなカーディ男爵が言うには、先代が本好きで希少な本もあるが、学術的な本はないそうだ。先代が亡くなった後は、整理をするものがいなかったそうだ。
おれが頼りなく見えたのか、「ゆっくりしてくれていい。焦るものではないから、丁寧にしてくれる方がよい」と言ってくれた。
そしてジェイクがA級冒険者であることを知っていて、知り合いになれたことを喜んでいた。
もしかしたらそのお陰で、カーディさんもおれに親切なのかもしれない。何度かジェイクとおれを交互に見つめて一人で何やら納得した様子だった。
案内された書庫の隣にあるおれの部屋はこじんまりとした部屋だった。キッチンとベッド、お風呂も一部屋に全部まとまっていて、おれは気に入った。おれには十分だった。小さいけどおれだけの部屋だ。ずっと転々とした暮らしをしていたから、ジェイクの部屋を除いて初めての自分の部屋だった。
鞄から服や物を取り出して棚にしまうという作業もひどく疲れるものだった。小さな鞄に拡張作用がどれだけあるのか、持ち物の数や種類が多すぎて、それだけでも疲れる。見たことがないものもある。どこに何をしまったらいいのかもわからない。
いや、明らかにすでにこの部屋の収納のキャパシティを超えている。
まだ残っていて心配そうにおれを見ていたジェイクが片付けを手伝ってくれた。結局、ほとんどを鞄に入れたままにして、必要なものだけを取り出して、部屋に置くことになった。
ジェイクは「絶対ノアに似合うのに」って残念そうだけど、部屋に入りきらないほどの服を見て、おれは気が遠くなりそうだった。
こんなにも用意してくれたことが申し訳ないし、すべての服を着る自信もない。
おれは眩暈を堪えながら、お礼にジェイクになんとかお茶を入れようとしたが、そういえば石になる呪いから目覚めてから、お茶を入れたことがない。お茶も食事もお風呂も掃除も全て全部ジェイクにやってもらっていたから。
我ながらどれだけ甘えていたのか唖然とする。
新しい場所で勝手がわからないし、このジェイクが用意してくれた香りの良い茶葉は入れ方もどうすればいいのかわからない。
固まって青ざめていたら、それも見かねたジェイクが結局お茶を入れてくれた。ベッドに座らされお茶を手渡される。香りのよい熱いお茶を一口飲んでホッとする。
「ほんとに大丈夫かノア」
「うん」おれは空になったティーカップをテーブルの上に置くと、ベッドに横になる。体が限界だった。
ジェイクがおれの靴を脱がしてくれて、一緒に横になった。
背中をポンポンと軽く叩いてくる。「足も痛いだろ」と足も揉んでくれる。
優しい。嬉しくてジェイクに甘えたくなる。でもハッとする。
「ジェイクありがとう」そういってそっと足をジェイクの手から離す。足も揉んでもらったらだめだ。もうおれは動けるんだからジェイクにそんなことをしてもらう必要はない。
ジェイクは心配そうにおれを見てくる。
「さっき、挨拶をした雇い主のカーディさんも、ゆっくりやってくれていいっていってくれたし・・・」
おれは疲れのあまり、眠たくなってきた。目を閉じながら話す。呪いのせいだろうか。少し活動するだけで眠くなる。
あーこんなことでは初日からクビになってしまう。
「お願い」おれはパチッて目を開けてジェイクに思い切って、お願いごとをする。目が合ってジェイクの顔が赤くなる。
「どうしたんだ」
「明日の朝起こして。明日だけでいいから。このまま、おれ寝ちゃいそう」
おれが困った顔で泣きそうになりながらお願いすると、どこか満足気にジェイクは微笑むと「わかった。起こしてやる」と約束してくれた。
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そう思いながらおれは夢の中に吸い込まれていった。
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