凜恋心

降谷みやび

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battle49…ピンクレモネード

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朝食を終えた一行。昼過ぎには出発すると言う事もあり、最終的な買い出しをすることにした。

「次の街までどれくらい?」
「恐らく二日、でしょうか…」
「そっか、じゃぁ買ってこないとな!!」
「と言っても、次は街じゃないので…」
「でも、飯の美味しい宿屋があればどこでもいいかなって思うけど…」
「ほんっっっとお前は食い気だなぁ……」

そう言われながらも買い出し組の八戒と悟空、雅は一足先に宿を出る。

「……俺も出る」
「ちょっと待てよ!!おい…!!」
「なんだ」
「俺一人かよ」
「寂しいのか?」
「誰がだよ」

そういいながらも三蔵は宿を後にしていった。しかし、その服装は包衣を脱いだアンダーの上に以前買って貰っていた上着を来ていた。

「あの格好で行くなら行く場所は一ヵ所だな…」

悟浄はそう呟いていた。
予想通り、三蔵はあるひとつの店を目指していた。そう、昨日入ることの出来なかったあの店だ。

「……ハァァ…」

そうため息を吐きながらも、次の目的地は村…と言うのが頭を過り足を進めた。

「いらっしゃいませぇ!!」
「…はぁ」
「あら、お兄さん!イッケメン!」

そういってきたのは昨日の娘とは違う女性だった。胸はたわわに膨らみ、その胸を惜しげも無く出している。花魁の姿の様な着崩した着物姿で三蔵を迎えている。

「今日は何かお探し?」
「…いや、自分で探す」
「そう?つれないなぁ…一緒に探しましょうか?」
「結構だ」

そういうと絡み付かせてくる腕をほどき、三蔵は店内を回っている。目がチカチカとしそうな程の明るい壁色にも関わらず、少し薄暗い店内。そこには様々なアイテムが入っている。

「……ハァァ…」

それらしき場所を見付けると、色々と見ていく。

「あら、それ探しに来たの?」
「…またおまえか…」
「それならこれは?」
「自分で探すと言っているだろうが…」
「んもぅ…」

そうして三蔵は少し薄目の物で、数も八枚入ったものを選んだ。

「それだけでいいの?」
「フン…いくらだ」
「それと一緒にこれは?」

そういって出されたのは、バイブだった。

「…要らん」
「あら、相当自信アリって感じ?」
「さっさとしろ。これだけで良い」

何よりも早く出たくて仕方ない様子の三蔵。さっさと会計を済ませて店を後にした。

「全く……あれだから女は…」

そう呟いていた。少しして宿に向かうと悟浄はにやにやとした顔で待ち構えていた。

「買えたみたいだけど…?三蔵」
「……なんの話だ」
「わざわざ法衣脱いで行く所なんて一ヵ所しかねえだろうが。それとも俺の思い過ごし?」
「黙ってろ、クソ河童」
「…てか三蔵?」
「なんだ」
「買ったのってゴムだけか?」
「……だったらなんだ」
「ほら、もっと面白いものとか無かったの?」
「面白いって……」
「大人のオモチャとか…」
「……あそこの女と貴様は同類かよ」
「あったんなら買えば良かったのに」
「要らん」
「……雅も悦ぶかもよ?」
「…フン…しらねえな」

そう話していた。そうこうしている内に三人も帰ってくる。そうして片付けをし、いざ出発していく。その道中で雅は悟浄に問いかけていた。

「あ!」
「何?」
「ごじょごじょ、もうじき誕生日だね!」
「あーー、言われてみれば…」
「何かお祝いしたいね」
「雅が祝ってくれんなら俺十分だよ?」
「皆でお祝いした方が楽しくない?八戒や悟空の合同の時みたいに!」
「ま、それも悪くねえけど…」
「なにかリクエストある?」
「んー、雅とデート?」
「…良い度胸だな…」
「や、三蔵?今のは明らかに雅が聞いてますしね?」
「それ以外ってなら……なんでもいいぜ?あ、ケーキって柄じゃねえからそれ要らね」
「要らねって、用意するのは悟浄じゃないからね?私たちよ?」
「おい雅」
「なに?三蔵」
「その私たちの中に俺も入ってるのか?」
「当然でしょ?」
「…だそうですよ?」
「ふざけんな…」
「こっちだって願い下げだぜ」
「そういわないの!せめて誕生日くらい…」
「うまいもん食えりゃそれで良い!」
「悟空!!」

そんな相変わらずの会話が飛び交っている。どうしようも無い位の楽しい感覚が雅には嬉しかった。

「そうだな…マジで俺、一回雅と二人きりで出掛けてみたいんだけど、三蔵」
「……却下」
「なぁ三蔵ぉぅ!!」
「……しらん」
「誕生日くらい良いじゃねえの!」
「お前の誕生日は是非野宿を願う」
「…あのさ、当の本人の雅は?どう思ってんの?」
「え?私?」
「おぅ!」
「エロ無しなら良いと思うけど…」
「ですって、三蔵。どうします?」
「……こいつに約束出来んのか?エロ河童にエロ無しって……」
「そりゃ雅が相手なんで?彼女が嫌がるならしないと思いますよ?」
「…ハァ…」
「なぁ、良いじゃん。三蔵の独り占めは良くねえと思うよ?」
「と言っても三蔵はどちらかと言えば独占欲の塊ですしねえ…」
「……一日だけだからな…」
「…うそ…マジ?」
「そう思うならやめろ」
「うそ!!冗談!」
「なら、悟浄の誕生日、決まりだね!あとは、夕御飯をごちそうにして…」
「マジで!?なに?肉?」
「……キュウリ?」
「ぅぇええぇぇぇぇ」
「や、猿、それ俺の台詞だわ……」

そう話ながらも珍しくジープの上では笑い声が広がっていた。そんなときだ。

「ぐへへへへ…三蔵一行ぉぉぉぉ!!見付けたぜ」
「あーー……てか、またすんげぇ数だな…」
「どうすんの?これ…」
「さっさと片づけるぞ…」
「さっさとやるにはどうしようも無いくらいの数ですけど…?」
「……燃えるごみか?」
「そりゃ三蔵の経文だろ」
「勝手に燃やすな、バカ」
「てか、屍になったら皆さん燃えるんじゃないですか?」
「それもそうだな」
「てか、バラバラになったら燃えるってか粗大ごみじゃね?」
「回収業者さんも大変ですねぇ…」
「なぁなぁ、雅どうすんの?」
「はい!自分の身は守れるように努力します。」
「てか触れさせんな」
「保護者さんは厳しいねぇ…」
「誰が保護者だ」
「てか悟浄?三蔵は保護者じゃありませんよ?」
「ぁん?」
「雅の彼氏だろ?」
「うるせえよ、悟空」
「照れんなって!!」

そう話していた。

「無駄口叩いてんなよ!!」
「あら、怒られちゃいましたね…」
「せっかく逃げる時間やったのに」
「遠慮は要らねえな」
『かかれぇぇぇぇ!!!!』

その妖怪の言葉で飛びかかってくるのと同時に一行は次々となぎ倒していく。三蔵はその場に残って雅を守りながらも銃で妖怪を滅していく。

「フン…全く…全然減らねえな。」
「三蔵、お前が少ねえんじゃねえの?」
「うるせえよ。」
「もうさぁ、チャチャっとやったら?」
「そんなつもりはねえ、もう片付くだろ」
「…それもそう、かっと!!」

そうして三蔵が最後の一匹を撃ち抜いてさっきまでの静けさがやってくる。

「なぁあんかさぁぁ?」
「腹減った」
「俺の台詞とるなよな!!」
「あんなに来るからだろうが…」
「三蔵がモッテモテなのがいけねえだろ?」
「三蔵がモテモテって言うよりも、三蔵の持ってるモッテモテなんじゃないの?最近そう思えてきた……」
「…クッ…」
「サイコーー!確かに!そうかもしれねえ…!!」
「…お前ら…」
「きゃーー!!こわぁいーー」
「うるせえ!!」
「恋人…なんですよね?あなたたち…」

銃口を向ける三蔵に対して八戒は話し出す。
それから休憩を兼ねての昼食、そしてまたジープに乗って先に進み、休憩しては、走り…を繰り返していく。野宿になりつつも問題もなく二日が過ぎた。

「なぁなぁ……今日には村に着く?」
「そうですねぇ…今日の昼頃には着くと思いますが…」
「腹減ったぁぁ…」

そんな時だ。

「いたぞ!!玄奘三蔵ぉぉぉぉぉ!!!」
「……ぅえぇ…また?」
「なんだ…今週はサービスデーか何かか?」
「何のサービスだっつぅの、俺的には美女のサービスのが嬉しいわ」
「俺餃子とラーメンのサービス!!」
「んーー、僕なら…何が良いですかねえ」
「私ね!」
「雅は黙ってろ」
「えぇぇぇ?」
「不満そうだな。」
「聞いてくれないから!」
「…後で聞いてやるよ」
「あ、僕人前でイチャイチャされないサービス希望します」
「俺も!」
「あーー、賛同だな」
「さっさとやるぞ」

そう言われながらも、襲ってくる妖怪に対応していく四人。

「グヘヘヘ…」
「ッッ…?!」
「雅!」

しかし、スッと手を払い、空を切った瞬間に妖怪は真っ二つになった。

「…み…やび?」
「あれ……何?」
「…あぁーー…」

一瞬目付きが変わった瞬間に起きたことだった。雅が手にかけたのはその妖怪一匹だったのだが不思議な感覚になっていた。

「……さっきさ、雅って妖怪倒した?」
「…コク」
「心配しなくても大丈夫ですよ。」
「でも…八戒……」

不安そうな雅を気遣いながらも村に着いた一行は昼食にまずは向かった。しかしなかなか食が進まない雅。理由はさっきの事だろうと容易に想像はついていた。

「三蔵、宿についたら少し雅と話をさせてください。」
「解った…」

小さく答え、何か少しでも…と促していたのだった。
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