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トオク、トオイ
準備のさなか、そんな時でも美堂のホストは続いていく…
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そうこうして準備も着々と進んでいく中でも、変わらずに美堂はホストの仕事もこなしている。そんなある日の出勤時の事だ。おもむろに美堂はZEROに自前のギターを持ち込んだ。
「おはようございます!!」
「おはよう。」
「透さん、それって…」
「あぁ、これ?たまには弾いてみようかなと…」
「ここでですか?!」
「…何か不都合でも?」
「いえ、そんな事は…」
そんな会話をしていると凛音がやってくる。
「おはよう、何そんなところで固まって…って…透?珍しいな。」
「おはよう、いや、たまにはこんな余興もあっていいかなと…」
「それは構わないだろう…どうしたよ、珍しい。」
「凛までそれを言うか。クスクス…かわいい姫たちにせがまれてね。」
「…そうか。」
「でも透さん、ギターも弾けるんですね!!」
「俺透さんのギター聞いたことないです!!」
「ここじゃぁ滅多に弾かないしな。弾いてたのって僕が入って直位の頃だったっけ?」
「そうだな。だからあんまり聞いた事あるやつはいないかも。」
「凛さんは聞いた事あるんですよね?!」
「ある。…いいか?惚れるなよ?」
「どういう事だよ、凛!」
「まんまな意味だよ。それ以上でも以下でもない!!」
そう言いながらも裏の控室に向かう美堂。そこで弦の調整をしていると凛音が入ってくる。
「本当に姫達か?」
「まぁある意味姫達だな。儲けにはならない、まだ若い姫だけど…」
「それで?何弾くの?」
「いや、なんでもいいとは聞いているけど…取りあえずは…」
そうしてパラパラとスコアをめくる美堂。そこには人気のある曲のスコアがあった。そうしているとその音を聞きながらも凛音は聞いた。
「なんかある?」
「あぁ、文化祭がね。」
「そういやもうそんな時期か。陵透の所は何やるの?」
「メイド&ホスト喫茶。」
「マジか!!」
「あぁ、そうなった。しかもクラス委員が当たりを引いてな。見事その案が通ってしまったという訳。」
「…まさかとは思うけど…お前はホスト…やらないよな。」
「クラスの連中からは、やってくれー!とお達しが来ているからね。やるよ。時間決めてな。レアキャラっていうな。」
「本気出すのか?」
「それなりにな。」
「あぁあ、面白そう。俺も行こうかな!」
「来るな」
「なんでそんないきなりの即答プラス拒否!?」
「………」
「もしかして…前に言ってた彼女もメイドやるのか?」
「…不本意だけど仕方ないだろ。文化祭だからな…見せたくないっていうのに…」
「良し!行こう!!」
「…おい!人の話聞いてるか?」
「さて、朝礼、始めっか!!」
嬉しそうに、ワクワクしながらも凛音は浮かれ気味に控室を出て、ホールに向かう。美堂もまた着いていき、ギターは脇においていた。朝礼の号令は大抵凛音が取る。予定と昨日の売り上げ、トップ3の発表が毎日の様に交わされる。その中に群を抜いて美堂と凛音は売り上げのトップ1・2を占めて居るのだった。
「さて、今月は透が最終週に席を外す事になっている。そんな中である意味自分を売り込むチャンスは巡ってくるが、透が居ないというだけで客足も減るかも知れない。というか、間違いなく減る。そんな時に企画しているのが私服デーだ。まぁ、透は私服デ―にいないが、だからこそ存分にアピールしてくれ。ここで、透や俺の姫達をたぶらかそうと全く問題はない。その逆に少ない持ち姫を取られる覚悟で各自望んでもらいたい。」
『はいっ!!!』
「それじゃぁ、今日はこれまで、姫達のお出迎えと行きましょうか!」
『はい!!』
「それじゃぁ、本日も愛を込めて、いざ。開店!!」
そのひと言で今宵もクラブZEROは開店となる。いつもと同じように指名をしてくる姫達はもちろん当然ながら居る中で、美堂はそれぞれの姫達からの質問に答えていく。
「今月の最終週!私服デ―何でしょ?」
「透君の私服楽しみ!!」
「それが申し訳ありません、僕はその日お休みなんですよ。」
「えーーー!何でぇ?」
「少し、野暮用がありまして。どうにも抜けられないんですよ。」
「もしかして…彼女?!?!」
「いえ、僕の彼女はこの国であり、あなた達姫方ですから。」
「そうすると私も彼女になれちゃったり?」
「そうなりますね。こうして来てくれる女性の方は皆僕の大切な彼女ですよ。」
「もぉう!透君嬉しい!!!そんな事言われたらドンペリ入れちゃう!!」
「そうですか、ありがとうございます!さぁてみなさん!!僕の素敵な姫からドンペリ頂きました!!」
そう美堂は声を上げる。一気にホストは集まり出し、美堂自らコールを取る。一通りのコールも入るとお礼をいい、更に席を変えては色々と手を変えてボトルを入れて貰う美堂。そんな中で最終週に来れないからという理由で美堂はある時間を境にギターを取り出した。それからはもうすでにトップの売り上げを叩きだしているもののまだまだ稼いでいく。曲を弾けばドンペリやロマネコンティ、ブックにベア等、様々なボトルが空いていく。こうして美堂のこの荒稼ぎをした夜も更けていく。
そんな終盤に差し掛かった時だ。ある1人の客が美堂の横に座り、話し出した。
「あの透さん。」
「透でいいですよ?どうしました?」
「あの…私……透にお願いがあって…」
「何?」
「同伴とか…して頂く事は出来ないですか?」
「うん、ごめんね、僕誰であっても同伴はしてないんだ。」
「それだったら…あの…枕とか…色カノとか…ダメですか?」
「うーん。枕はね、禁止されてるし。もし禁止されてなかったとしても僕は一切しない主義でね。色恋も都合のいいだけになるでしょ。そんな都合のいいおもちゃみたいに扱いたくないんだよ。だから僕はそう言った類をすべて断ってるんだ。ごめんね?」
「…そうなんですね…それって貢献できない私だから…とかじゃなくてですか?」
「あぁ、みんなにそうしてる、どうして?」
「…透さんにして貰ったっていう人がいて…それで私も羨ましいなって…」
「それは嘘だな」
そう後ろから声をかけてきたのは凛音だった。
「うちは枕はしていないし、ましてや透のそう言った行為は一切しないのはまぁ有名な話だな。枕以外の事をしているホストはうちにも居るけどね?」
「え…凛さん…」
突然1・2が揃った事にこの女性客はパニックになっていた。それを察したのか、美堂はすぐに言葉を発した。
「凛の分の指名料は入らないから大丈夫。勝手に来て、話をしたから『はい、どうぞ料金もらいます!』じゃ割が合わないでしょう?」
「あ…でも……幸せです。」
「でもなんで僕なの?」
「ずっと…ずっと好きだったんです。それで明日、私誕生日で。いつも写真見たりしてるだけだったから…その思い出にって…」
「誕生日かぁ…それはおめでたいね!まだ時間ある?」
「え…はい…」
「なら良かった。ちょっと待ってて?」
そう言うとすっと席を立った美堂。その脇に居た仲間にそっと耳打ちをする。そうしてそっと1本のカクテルを持ってきた美堂。
「これ、開けようか」
「え…でも……私…そんな…」
「大丈夫。僕からのプレゼントだから。」
そう言いながら小さいとはいえケーキを即時用意して、スワロフスキーで飾り付けられた『シンデレラ』と呼ばれるボトルを躊躇う事無く開けた美堂。ギターを手に取り、一部照明を薄暗くしてバースデーソングを歌う。そんなサプライズに女性客は涙が止まらなかった。
言っていた通りにそのボトルとケーキ代は美堂がこの日の売り上げから支払い、お礼を何度も言いながらその姫方は帰って行く。その帰り際に『また指名します』と言い残していた。
「相変わらず、うまいな。透は」
「ん?」
「たった30万で姫を買ったか」
「言い方悪いな。これも喜んでもらう為さ。」
「その30万をポンと差し出せるようになる後継者はいつになったら育つのか…」
「クス、凛らしくないな。」
「そうか?」
「あぁ。」
「でもまぁ、これで俄然透の淡いホスト姿が見に行けると思えば俺は安いけど。」
「淡いって…?たしかにまだまだ僕は売り上げ伸ばしたいが…」
「学園祭仕様!」
「まだ言ってんのか…最悪来てもいいけど時間指定な?」
「それは透の大事な姫が居る時間?」
「居ない時間に決まってるだろ!!!」
そう言いながらもこうして最後のお客も見送りが終わり、最終の確認、清掃も終えていった。
「おはようございます!!」
「おはよう。」
「透さん、それって…」
「あぁ、これ?たまには弾いてみようかなと…」
「ここでですか?!」
「…何か不都合でも?」
「いえ、そんな事は…」
そんな会話をしていると凛音がやってくる。
「おはよう、何そんなところで固まって…って…透?珍しいな。」
「おはよう、いや、たまにはこんな余興もあっていいかなと…」
「それは構わないだろう…どうしたよ、珍しい。」
「凛までそれを言うか。クスクス…かわいい姫たちにせがまれてね。」
「…そうか。」
「でも透さん、ギターも弾けるんですね!!」
「俺透さんのギター聞いたことないです!!」
「ここじゃぁ滅多に弾かないしな。弾いてたのって僕が入って直位の頃だったっけ?」
「そうだな。だからあんまり聞いた事あるやつはいないかも。」
「凛さんは聞いた事あるんですよね?!」
「ある。…いいか?惚れるなよ?」
「どういう事だよ、凛!」
「まんまな意味だよ。それ以上でも以下でもない!!」
そう言いながらも裏の控室に向かう美堂。そこで弦の調整をしていると凛音が入ってくる。
「本当に姫達か?」
「まぁある意味姫達だな。儲けにはならない、まだ若い姫だけど…」
「それで?何弾くの?」
「いや、なんでもいいとは聞いているけど…取りあえずは…」
そうしてパラパラとスコアをめくる美堂。そこには人気のある曲のスコアがあった。そうしているとその音を聞きながらも凛音は聞いた。
「なんかある?」
「あぁ、文化祭がね。」
「そういやもうそんな時期か。陵透の所は何やるの?」
「メイド&ホスト喫茶。」
「マジか!!」
「あぁ、そうなった。しかもクラス委員が当たりを引いてな。見事その案が通ってしまったという訳。」
「…まさかとは思うけど…お前はホスト…やらないよな。」
「クラスの連中からは、やってくれー!とお達しが来ているからね。やるよ。時間決めてな。レアキャラっていうな。」
「本気出すのか?」
「それなりにな。」
「あぁあ、面白そう。俺も行こうかな!」
「来るな」
「なんでそんないきなりの即答プラス拒否!?」
「………」
「もしかして…前に言ってた彼女もメイドやるのか?」
「…不本意だけど仕方ないだろ。文化祭だからな…見せたくないっていうのに…」
「良し!行こう!!」
「…おい!人の話聞いてるか?」
「さて、朝礼、始めっか!!」
嬉しそうに、ワクワクしながらも凛音は浮かれ気味に控室を出て、ホールに向かう。美堂もまた着いていき、ギターは脇においていた。朝礼の号令は大抵凛音が取る。予定と昨日の売り上げ、トップ3の発表が毎日の様に交わされる。その中に群を抜いて美堂と凛音は売り上げのトップ1・2を占めて居るのだった。
「さて、今月は透が最終週に席を外す事になっている。そんな中である意味自分を売り込むチャンスは巡ってくるが、透が居ないというだけで客足も減るかも知れない。というか、間違いなく減る。そんな時に企画しているのが私服デーだ。まぁ、透は私服デ―にいないが、だからこそ存分にアピールしてくれ。ここで、透や俺の姫達をたぶらかそうと全く問題はない。その逆に少ない持ち姫を取られる覚悟で各自望んでもらいたい。」
『はいっ!!!』
「それじゃぁ、今日はこれまで、姫達のお出迎えと行きましょうか!」
『はい!!』
「それじゃぁ、本日も愛を込めて、いざ。開店!!」
そのひと言で今宵もクラブZEROは開店となる。いつもと同じように指名をしてくる姫達はもちろん当然ながら居る中で、美堂はそれぞれの姫達からの質問に答えていく。
「今月の最終週!私服デ―何でしょ?」
「透君の私服楽しみ!!」
「それが申し訳ありません、僕はその日お休みなんですよ。」
「えーーー!何でぇ?」
「少し、野暮用がありまして。どうにも抜けられないんですよ。」
「もしかして…彼女?!?!」
「いえ、僕の彼女はこの国であり、あなた達姫方ですから。」
「そうすると私も彼女になれちゃったり?」
「そうなりますね。こうして来てくれる女性の方は皆僕の大切な彼女ですよ。」
「もぉう!透君嬉しい!!!そんな事言われたらドンペリ入れちゃう!!」
「そうですか、ありがとうございます!さぁてみなさん!!僕の素敵な姫からドンペリ頂きました!!」
そう美堂は声を上げる。一気にホストは集まり出し、美堂自らコールを取る。一通りのコールも入るとお礼をいい、更に席を変えては色々と手を変えてボトルを入れて貰う美堂。そんな中で最終週に来れないからという理由で美堂はある時間を境にギターを取り出した。それからはもうすでにトップの売り上げを叩きだしているもののまだまだ稼いでいく。曲を弾けばドンペリやロマネコンティ、ブックにベア等、様々なボトルが空いていく。こうして美堂のこの荒稼ぎをした夜も更けていく。
そんな終盤に差し掛かった時だ。ある1人の客が美堂の横に座り、話し出した。
「あの透さん。」
「透でいいですよ?どうしました?」
「あの…私……透にお願いがあって…」
「何?」
「同伴とか…して頂く事は出来ないですか?」
「うん、ごめんね、僕誰であっても同伴はしてないんだ。」
「それだったら…あの…枕とか…色カノとか…ダメですか?」
「うーん。枕はね、禁止されてるし。もし禁止されてなかったとしても僕は一切しない主義でね。色恋も都合のいいだけになるでしょ。そんな都合のいいおもちゃみたいに扱いたくないんだよ。だから僕はそう言った類をすべて断ってるんだ。ごめんね?」
「…そうなんですね…それって貢献できない私だから…とかじゃなくてですか?」
「あぁ、みんなにそうしてる、どうして?」
「…透さんにして貰ったっていう人がいて…それで私も羨ましいなって…」
「それは嘘だな」
そう後ろから声をかけてきたのは凛音だった。
「うちは枕はしていないし、ましてや透のそう言った行為は一切しないのはまぁ有名な話だな。枕以外の事をしているホストはうちにも居るけどね?」
「え…凛さん…」
突然1・2が揃った事にこの女性客はパニックになっていた。それを察したのか、美堂はすぐに言葉を発した。
「凛の分の指名料は入らないから大丈夫。勝手に来て、話をしたから『はい、どうぞ料金もらいます!』じゃ割が合わないでしょう?」
「あ…でも……幸せです。」
「でもなんで僕なの?」
「ずっと…ずっと好きだったんです。それで明日、私誕生日で。いつも写真見たりしてるだけだったから…その思い出にって…」
「誕生日かぁ…それはおめでたいね!まだ時間ある?」
「え…はい…」
「なら良かった。ちょっと待ってて?」
そう言うとすっと席を立った美堂。その脇に居た仲間にそっと耳打ちをする。そうしてそっと1本のカクテルを持ってきた美堂。
「これ、開けようか」
「え…でも……私…そんな…」
「大丈夫。僕からのプレゼントだから。」
そう言いながら小さいとはいえケーキを即時用意して、スワロフスキーで飾り付けられた『シンデレラ』と呼ばれるボトルを躊躇う事無く開けた美堂。ギターを手に取り、一部照明を薄暗くしてバースデーソングを歌う。そんなサプライズに女性客は涙が止まらなかった。
言っていた通りにそのボトルとケーキ代は美堂がこの日の売り上げから支払い、お礼を何度も言いながらその姫方は帰って行く。その帰り際に『また指名します』と言い残していた。
「相変わらず、うまいな。透は」
「ん?」
「たった30万で姫を買ったか」
「言い方悪いな。これも喜んでもらう為さ。」
「その30万をポンと差し出せるようになる後継者はいつになったら育つのか…」
「クス、凛らしくないな。」
「そうか?」
「あぁ。」
「でもまぁ、これで俄然透の淡いホスト姿が見に行けると思えば俺は安いけど。」
「淡いって…?たしかにまだまだ僕は売り上げ伸ばしたいが…」
「学園祭仕様!」
「まだ言ってんのか…最悪来てもいいけど時間指定な?」
「それは透の大事な姫が居る時間?」
「居ない時間に決まってるだろ!!!」
そう言いながらもこうして最後のお客も見送りが終わり、最終の確認、清掃も終えていった。
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