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ダイサクセン

~side 桜~

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とある土曜日の2時限目。現代国語の時間。時間になるものの先生が来ない。教科担当が聞きに行くと、すぐに戻って来た。

「今日自習だって!!!」

そう言いながらも黒板に大きく『自習』の文字を書き出した。それを見た桜はふっと笑うと結子にひっそりと声をかける。

「結子…」
「うん、いいよ。行ってくるんでしょ?」
「うん。」

そうして現国の時間の自習になると桜は決まって図書室に行く。それも結子と望しか知らない。カードゲームをするクラスメイトやただ教室で黙々と本を読むもの。様々居る中で桜はいつも抜け出して図書室で1時間過ごすのだった。図書室に着くとそぅっとあける。他のクラスで使っている事もあるからだ。しかしこの時間は誰もいない為、嬉しそうに入ると決まった定位置に座る。

「さて…」

取りあえずと形だけでもと本を1冊持つ。それを目の前にして頭の中では美堂の誕生日プレゼントの事で頭がいっぱいになっていた。
何をあげたらいいのか、まずそれが解らない。物品にしてもホストをしているのなら色々な物を、それこそ高額な物を貰うだろ。手紙…でもそれだけじゃ、何も普段と変わらない…美堂の様にギター等で作詞作曲が出来るならそれもいいのだが、そんなのやった事もない。

「はぁ…困った…どうしたものかな…」

いろいろな思いや考えは浮かんでくるものの、すぐに自分自身の中で却下ともう1人の自分が答えを出す。もやもやとした思いの中、本とにらめっこしながら突っ伏してしまったその時だった。キィっとゆっくり扉が開いた。

「やば…誰か来たかな…」

そう思いながらも本を読んでいる振りをしていた。するとその先には美堂がいた。

「やっぱり。ここでサボってたか。」
「…サボってないよ?」

突然降って湧いたかの様に美堂との2人きりの時間がやってきたのだ。しかし、平静を装うかの様に本を持ち上げた桜。そんな桜の前をスーッと通り、少し奥まった所に入って行った美堂。そんな美堂の後に着いて中にはいっていった桜。

「でも何でここに居るってわかったの?」
「現国の自習の時で桜がここに来なかったときあるか?」
「……ッ」
「知ってんだよ。」

そう話す美堂の横に立ちながらも桜はじっと相手を見つめている。『サボりだ』という美堂に桜は思いついたかのように話し出す。

「そう言う先生は?先生もサボりじゃない?」
「僕は休息という名の仕事中だ。」

その子供じみても居る言い訳に桜は可笑しくなって笑い出してしまった。そう話しながらもスーツなど気にせず床に座った美堂を後ろで手を組んだまま桜は見下ろしてみる。いつもと立場が逆転しているその光景に少しだけ嬉しくなっていた。

「どうした?」

そう聞く美堂に桜は申し訳なさそうに俯いてゆっくりと口を開く。

「…ごめんね?」
「何が?」
「誕生日…プレゼントまだ決まらなくて…」

そう呟いた瞬間にフッと笑い返されながらも美堂はそんな桜に返事をする。

「いいよ。そんな事気にしてたのか?」
「先生にしたらそんな事かも知れないけど私にしたら大事な事だよ?」
「だったら頂戴?」
「え…何を?」

珍しく美堂が欲しいというものがあるという。しかし手招きする美堂の顔は少しだけその顔は企んでいるようにも見えた。手招きに誘われる様に下にしゃがみ込む桜。トンっと方に美堂の両腕の重みを感じた。

「桜からのプレゼント、僕が決めていい?」
「うん、何?」

何を言われるんだろう…私に買えるものならいいけど…

そんな思いを持ちながらも美堂の続く言葉を待った。

「桜からキス、して?」

待ったのちに聞こえてきたのはあまりにも突拍子の無い物だった。

キス…?私からって…え…何?えっと…

桜の頭の中は色々と混ざりはじめた。そんな桜に追い打ちをかける様に美堂は続ける。

「桜からキス、してくれたらそれでいい。」
「ちょ…っ……でも…いま?」
「そう、今」

冗談かと思っていた。誕生日のプレゼントがキスだなんて…それも今この瞬間にだという。

「…本気?」
「本気。」

冗談かと思いもう一度確認の気持ちも込めて桜は美堂に問うた。しかし美堂の答えは変わらなかった。下から見上げる美堂の真っ直ぐな視線に桜は真っ赤になりながら呟いた。

「…ッ……せめて…目…つぶってください…」
「…うん」

その言葉に素直に美堂は瞼を閉じた、ゆっくりと美堂の頬に触れる。解ってはいたものの、男性の割にはするりとした肌。睫毛も長い…ゆっくりと顔を近付ける桜。

ドクン…ドクン…ドクドク…

異常なまでに高鳴る鼓動…自分もギリギリまでうっすらと目を開けているものの、吐息がかかる…この距離となった時、恥ずかしさから少し触れただけで離れてしまった。

「これでいい…?」

そうたどたどしく聞いた桜。良いとしなくても、これ以上は鼓動の限界だった。そんな桜の腰に腕を回した美堂はぐっと後頭部を固定し、引き寄せる。

「…フ…もっと」

そう言うと深く、深い美堂のキスが降りてくる。噛みつくような…それでいて愛情を惜しみなく注ぎ込むようなキス…頭の芯がぼぅ…とする様なこの美堂のキスが桜は好きになっていた。抱え込まれ、気付けば舌も入り込み、舌を付け根から深く絡め取られていく。上顎から、やらしくも舐めあげ、気付けば口角から唾液がヤラしくもたれていくのが桜も解った。それでも美堂の舌を、口唇を拒む事は出来なかった。

下半身も疼いてくる…下着まで濡れているのがはっきり解る…息を整える間もほとんどない中ではあったが、桜は美堂を求めていた。その証拠に、美堂の上着の中に手を滑り込ませる。ジャケット越しよりもさらに美堂の温もりははっきりと感じ取ることが出来た。そのすぐ後に美堂はようやく桜を解放した。すると美堂が自分からシャツをまくり桜の手を自身の肌に触れさせた。その間も桜の耳、頬…首筋へと美堂の器用な舌が舐めていく。肌に触れた所で胸元に達した時だ。桜は美堂の胸に立つ小さな突起に触れた。指の腹でそっと転がし、時折摘まんでみる…すると美堂の体がピクリと反応した野を感じた。

「陵透…」

その反応と、美堂のくれる愛撫で、桜は以前に美堂のくれる愛撫がまた欲しくなった。

…でも…それって私からねだっていいのかな…

そんな疑問が巡る中、それでも我慢できなくなってきた桜は恥ずかしさを堪えながら美堂の耳元でそっと呟いた。

「陵…透……あのね?」
「ん…?」
「あの…ン」
「なに?桜…」
「あの…ね?」
「ん?」
「……また…ッッ…しぃ」
「なに?」
「陵透に……その…されたい…」

顔から火が出そうなほどに緊張しながらも伝えた桜だったが、その願い叶わずに意地悪にも授業終了のチャイムは鳴り響いた。

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