凜恋心 ♢ 転生編 ♢

降谷みやび

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scene2…菩薩の命(めい)

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「よ、待たせたな」
「菩薩さん……」
「フ…菩薩でいい」
「……でも」
「構うなよ。」

そういいながらもゆっくりと近付く菩薩。後ろに居る二郎神も部屋の中には入ってこなかった。

「…それで、今から、雅に重大任務を与える。」
「……任務…?」
「あぁ。」
「それって…すごく危ないこと…ですか?」
「危ないっちゃ危ねえな」
「……なんでしょう…」
「俺の暇潰しの相手になれ」

思いもよらない任務だった。

「…あの」
「聞こえなかったか?」
「や、そうじゃなくて…」
「それとも不満か?」
「違うんです!あの…」
「それからその敬語、今後一切なしな」

そんな会話を頭を抱えながら聞いている二郎神。

「…菩薩さん…」
「十点減点」
「…へ?」
「給料に響くからな?」
「ちょっと!!」

クツクツと笑う二郎神はどうにも笑いが押さえきれなかった。

「おい、なに笑ってんだ、二郎神」
「いえ…」
「思いっきり笑ったろうが」
「そうは言いましても……」
「まぁいい。いいな?明日から暇潰しになってもらうぞ?」
「暇潰しって……なにしたら…」
「なんでもいいよ」
「…そういうの一番困る……」
「困ればいいさ」
「……案外意地悪ですよね……」
「敬語」
「……ッッ…」
「なにか解らないことがあれば二郎神に聞け」
「…はい」

そういって雅の前に立つと菩薩はそっと頬を撫でた。

「オレのわがままに付き合わせて悪かったな」
「え?」
「…なんでもねえよ…」

そう言い残して雅の前から去っていった。

それからと言うものその日から雅の奮闘は続いた。そんな中でようやくの思いで二郎神を捕まえた。

「見つけた……二郎神…さん」
「どうかしたのか?」
「…菩薩…見なかった?」
「公務の筈だが……」
「また…公務?」
「…またといわれてもな」
「だって……ここに来てからまだなにも暇潰しの時間なんて無いじゃない!!」
「……そうは言っても…」
「ここにいたのか」
「菩薩!!」
「…二郎神、こいつ、借りるぞ?」
「どうぞ」
「ど……どうぞって…?!」
「まぁ、来いよ」

そういって雅は菩薩に連れていかれた。ようやく暇潰しになるのかと思いきやそこに連れてこられたのは大きな桜の木だった。

「あ…観世音菩薩様!!」

ザッと道が開かれる。

「まぁ、そんな堅苦しくなることねえよ。それより敖潤ごうじゅんはどこ行った。」
「敖潤殿なら……あ、あちらです」
「行くぞ」
「…え?」
「おい」
「これは…どうされましたか?観世音菩薩直々に…」
「コレ、雅。」
「……はい?」
「雅?敖潤。天界西方軍の総責任者だ。」
「あ……はじめまして…」
「…あぁ」
「プ…それだけかよ」
「それで?その他になにか」
「こいつの相手、西方軍にも見てもらう。」
「どう行った用件でしょうか」
「だから、オレが忙しいときにこいつの面倒見てくれ」
「……なぜでしょうか。しかもこの娘…下界の人間だろう?」
「あぁ。耳が早いな」
「で、何で俺がこの娘を見なきゃならん…」
「お前に見ろとは言わねえよ。西軍の奴らにたまに遊んでもらうだけだ。」
「…ハァ……仕方ないな」

そうして話はまとまった。

「ねぇ菩薩…」
「んー?」
「私、やっぱり菩薩の邪魔じゃない?」
「邪魔じゃねぇよ。今から付き合ってもらうし。」

その声にそっと笑う雅。少し離れた所で少し間をとると、すっと構えた菩薩。

「来いよ」
「来いって言われても…」
「あー、そうか…」

身の体制を整えると近付いてくる。

「攻防、全てを整えねぇとな。」
「…出来るのかな…」
「てめぇが自分の事信じてやれねぇでどうすんだよ。」
「そう…だよね。」

そうしてゆっくりと、しかし確実に力を高める事にした。それを遠くで見ていた西方軍の面々は口を揃えていた。

「あーあ、羨ましいな」
「本当に…」
「すごいな…観世音菩薩様に直々とは…」

そうしている時に二郎神は入ってくる。

「菩薩、そろそろ…」
「あぁ、解った」
「菩薩?」
「仕事だ仕事。」
「なんかお手伝いする!」

そう言って一緒に戻っていった。
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