凜恋心 ♢ 転生編 ♢

降谷みやび

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scene19.5…想ふ (pov二郎神)

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最近菩薩の様子がおかしい  






独特の雰囲気…ではない。





雅が…彼女が下界に戻って以来





おかしいのだ。





ほら、今だって…






あんな菩薩の表情は見た事無い。





誰が相手でもあまりあの様な顔はしなかったのに





それもそうか……





雅からも時折菩薩の移り香がするくらいだ






手酌酒もなかなか減らずに





何をそんなに見つめているんですか…?







聞けば『雅の様子を…』って返ってくる






本当に…





甘いような…愛おしさ満開の顔で…





「クソつまんねぇ」




何て言ってらした日々がある意味懐かしい。







「……やっぱオレの元に置いとくんだったかな…」

「おふざけが過ぎてますぞ?!」

「ふざけてねえよ」






そう言う菩薩の顔は



いつになく真剣で……






「オレはふざけてねえさ。ただ…」

「……ただ、なんですか?」

「……いや、こっちの話だ」








そういいながらも




寂しそうな…




愛おしい恋人を見つめるような……






そんな顔をずっとしてる。





寂しいんでしょうか?






そうそう下界にも行けないですし?





損な役回りですね





菩薩……





しかし、金蟬…いや、玄奘三蔵にしろ



観世音菩薩にしろ……





雅、あなたは本当にがよく似合う……





いや、あなたは天然的なものか…






どうしたらそうも最高位の者を




魅了するのだ……





あなたに言えば…



「そんなこと無いよー!」


なんてけらけら笑うんでしょうな






ただの下界の小娘なのだが……





取り分け美しいわけでも無いのに……






あぁ、そうか……





玄奘三蔵の回りにも…




観世音菩薩の回りにも……






あなたのような存在の女性が居なかったんだ






誰もが欲しがる能力を






あなたは生まれてもう既に持ち合わせている…








それはすごくすごいことだ。





財産や徳を積んでも手になど入らない





人を魅了する空気……





人を笑顔にするその柔らかい笑み…






真っ直ぐすぎる性格…






それじゃぁ、誰もがあなたに惹かれていく訳ですな…






そうは言っても


そろそろ切り上げて貰わないと。






菩薩も仕事に戻ってもらわなくては……






公務が貯まって提出書類が遅延したなんて事になれば





花見どころじゃなくなりますよ?






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