凜恋心 ♢ 転生編 ♢

降谷みやび

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battle14.5… 甦る想い (pov三蔵)

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たばこが切れたついでにと八戒と一緒に買い物に行けば…





「ーーーー・・・…ッッ!?」






「…三蔵?あれって雅、ですよね」

「…だな」

「絡まれてません?」






そういわれてみればそう見えるかも知れんが……








「…でも普通に話してるだけかも知れんだろうが…」

「そうでしょうか…」








そうこうしてればパタパタとこっちめがけて走ってくるし…









「私、この人達と用事あるから…」





おい、いつ用事なんか作った…?






「なんだよ、この人って…旅の連中だろ?名前も知らない奴に助け求めんのかよ?そんなに俺の事嫌なわけ?」

「そうじゃないけど…ごめんね?慧攔。行こ?







不意に名前を呼ばれて…





俺はそのまま抱き寄せそうになった…







記憶がなくなったなんて嘘なんだよって…






そう笑ってくれるのかと思った…





でも…









「…ごめんなさい、三蔵さん…ですよね…巻き込んじゃって……それにいきなり呼び捨てにして…」






戻ったんじゃねえのか……




だったら……そんな無防備に名前呼ぶんじゃねえよ…






勘違いしそうになるだろ…









「変なことに巻き込むんじゃねえよ」








……構わねえよ…雅になら…





変だろうと、面倒事だろうと…





大したことじゃねえよ…






茶店に入れば席の座る位置に悩んでやがる…





こんな風に悩んでるのは初めてだな。


出会った時ですら…

こんなに悩まなかっただろう?





『どちらでも好きな方にどうぞ?』



何て八戒の言葉に




『お隣いいですか?』



なんて、ためらいがちに聞いてくる…





好きにしろと答えれば俺の知ってる顔で笑ってる…






記憶が無い事以外は何も変わらない…





それに加えて…ほぼ初対面の俺にシェアまでする始末だ…




本当に記憶無いのか?

俺を試してるんだろ?





どれ程聞きたかったか解らなかった。






色々と話して…





といっても俺は最後の方までそれほど話しはしなかったが…





話し方や…気配りや…表情一つ一つが





間違いなく雅なのに……




なんだこの気持ち……





俺の意識は少し前に不意打ちで呼ばれた名前で思考が止まってる。





話せば長くなるって言いながら記憶の事を話だして……





俺も黙ってられなかった…




待ってるだけで動かねえのか…?




なんて聞いて……





記憶の無い奴にその記憶の元を探し出せなんて





無理に決まってんのに……





もしかしたら…




そう話していたら…





ふと思い出してくれるんじゃないかなんて…





はっ……笑えてくる…



砂漠で砂金見付けるみてえな確率だ……





 ほんと…どうかしてる……





最後には…





『誰だったかな…受け売りなんですけどね?自分の信じたいものを信じたいんです…』






俺だよ、それ言ったの。






あぁ、そうか…





俺達の存在が消えてるだけで……




雅の中にも





ちゃんと俺達は残ってたんだな…





それが解っただけで…





今日は十分だよ…





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