窓際の不思議な彼

tatudoshinosasoriza

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窓際の不思議な彼-part11-旅人

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■旅人
「ふう・・・」
「熱いなー。日本は」
「何年ぶりかな・・・」
「さてと・・・」


「あれ?」
「いないのかな・・・」
「まいったな・・・」
「あちい・・・」


「図書館か・・・」
「懐かしいな・・・」
「昔、よく来たっけ・・・」
「涼しい・・・」
「どのくらいで帰って来るかな・・・」
「本か・・・」
「本当に・・・久しぶりだ・・・」


「え?ああ、すいません」
「もう閉館ですね?」
「さてと・・・」
「もう帰ってるかな?」


「・・・ただいま」
「うん。なんとかね」
「はは。小汚くなった?」
「うん。うん」
「元気そうで良かったよ」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「父さんは?」
「そう。もうすぐ?」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「あっ・・・」
「おかえり・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「うん。何年ぶりかな・・・」
「え?うん。もらうよ・・・」
「じゃあ、乾杯」
「うまい」
「え?うん・・・」
「そんなに長くはいない・・・かな」
「うん。ごめん」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「父さん、母さん」
「聞いてほしいことがあります」
「俺、結婚しました」
「実は子供もできました」
「まだ産まれてないけど」
「うん。突然でごめん・・・」
「うん。向こうでね。奥さんと知り合って」
「どこの街?」
「いや、街っていうか・・・」
「村・・・かな」
「うん。ずっといろんなところに行ってね」
「最終的にそこに落ち着いた・・・」
「うん。本当は奥さんも連れて来たかったけど・・・」
「子供がお腹にいるし・・・」
「急に人が溢れているところに来るのも・・・」
「本当はね、帰ってくる気は無かったんだ・・・」
「すごい迷ったんだ」
「勝手に出て行って、勝手に生きてきた自分が・・・」
「今更、どの面下げてって・・・」
「・・・」
「ある人にね、言われたんだ・・・」
「本当に後悔は無いのか」
「報告するのがケジメじゃないかって・・・」
「うん。ああ、いや・・・」
「日本人の・・・」
「若い男の人だよ・・・」
「学生さん、かな・・・」
「うん。買い出しで街に出ることがあってね」
「街にはカフェもあるし」
「奥さんを休ませようと思ってね」
「そしたら」
「カフェで日本語を話している人がいてね・・・」
「今の機械はすごいね」
「機械に話せば翻訳してくれるんだね」
「反射的に話し掛けたんだ」
「うん。奥さんと一緒に窓際の席でね」
「周りを見たら他にも日本の方がいてね」
「彼と話しているうちにね・・・」
「日本で過ごしていた時のことを思い出したよ」
「さっきね・・・」
「図書館に行ったよ」
「うん。昔、みんなでよく行ったよね・・・」
「たくさん、絵本や本を読んでくれた・・・」
「奥さんがね・・・」
「お腹の子に聞かせるんだって・・・」
「絵本や子供用の本を読むんだ・・・」
「なんだか、懐かしくなって・・・」
「こうして、帰って来た・・・」
「・・・」
「え?」
「いつ頃、産まれるか?」
「まだまだだよ。本当に最近なんだ・・・」
「うん・・・」
「本当に?」
「遠いよ?・・・本当に・・・」
「分かったよ・・・」
「ありがとう・・・」
「父さん、母さん・・・」
「ありがとう・・・」


「・・・嘘だろ?」
「やあ、覚えてる?」
「ここら辺に住んでるの?」
「よく来るの?この図書館」
「たまたま?」
「はは・・・ははは」
「いや、突然ごめん」
「そんな偶然ある?と思ってさ」
「え?うん。確かにね・・・」
「こんなに広い世界で・・・」
「遠く離れた場所で・・・」
「僕と奥さんは出会った・・・」
「それに、君にも・・・」
「意外と・・・」
「世界は狭いのかもね・・・」
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