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第1章 転生編
第2話 ここはどこ?わたしは誰?
しおりを挟む結論から言おう。俺は多分、異世界の赤ん坊のガキに転生した。
ふかふかなシーツ。知らない木製の天井。窓から見える緑豊かな田舎の景色。部屋に立てかけてある剣や杖。電化製品は一切ない。まともに動けないししゃべれない。小さすぎる手。そしてさっきの神のお告げ?
俺は目覚めてからずっと、今の状況を冷静に考察していた結果、転生していることに気が付いた。俺はラノベ脳だからな。受け入れるのも速いんや。
やけに視界もはっきりしている。眼鏡をかけていても、ここまでクリアには見えないのに。前世はWiiくらいの画質だったのが、PS5になったくらいにはクリアだ。
念願の異世界や、本当は喜びたいが、まだ懸念点がある。毒親の可能性、そして容姿ガチャ。イケメンになれたらいいなあなんて思ってたが、俺の悪運じゃなあ……。
クソ、ネガティブなこと考えんな。今回こそはきっと楽しいはずだ!地球では散々だったけど、今回はきっと、彼女作って、イチャイチャするんだ。もしかして、俺TUEEE展開もあったりするんかな……。
「チー、何笑ってんだ?」
「ひっ!?」
いきなり人の声がした。
マジでビビった。俺は声をした方を見る。そこには、180㎝くらいだろうか……背の高い黒髪の少し顎髭を生やしたイケメンが俺を見下ろしていた。目つきは鋭く、体格は細いが体は鍛え抜かれていて、岩より硬そうな筋肉を持っている。
チッ、羨ましい。こういう顔に恵まれたやつが猿みたいにキャッキャ腰振って性欲満たせるんだ。この男の正体、可能性としては、この世界の俺の父、だと思うが、念のため聞いてみる。
「あお、ああたは?」
だめだ。「あの、あなたは?」と聞いたはずなのに、上手くしゃべることができない。
しかし、その男はポツンと固まった後、すぐにパッと顔を輝かせて俺を、ブンッと持ち上げた。ひえ!こええよ!
「おお!もうしゃべれるのか!さすが俺たちの息子だ!」
男は俺を持ち上げながらクルクルと回り、まるで子供のようにはしゃいでいる。それに、”息子”と言ったということは、俺の予想通り、この男はこの世界の俺の父親だ!
父親がこんなにイケメンなら、俺もきっとイケメンになるってことか?もしかして、今世の俺はイケメンイージーモードか?にやけるぜ。
「おお!笑ったぞ!チーも分かるのか!」
さっきからテンションが高いが、誰だって赤ちゃんが生まれればこんなテンションになるのか?まあ、育児放棄もされるような家庭もあるし、まず俺はそこんところでは恵まれてる。
「ちょっとギー?何子供みたいに騒いでるんですか?」
するとそこへ、柔らかい声とともに、若い茶髪の美人な女性が現れる。長い髪は緩くふわっと風になびいている。動きや言葉はおっとりとしていて、なんだか、包まれるような優しそうな表情だ。
こいつはまあ普通に考えて、母親……だよな?姉ではないだろ。
「おい、聞いてくれ、ユウ!チーが言葉をしゃべろうとしてたんだ!」
「本当!?もしかして天才になるのかも?」
ユウと呼ばれた母親も、テンションが上がっている。2人して親バカ?いや、でもまだわからん。本性を現すのは俺が育ってからだろう。人間ってのはもう全て信用ならん。
「あ、そうだ、ちょうどミルクの時間だよね。私にチーちょうだい?」
「ああ、この後は俺もユウの飲ませてくれ――」
「ダメ!そ、そういうのは夜……ね?」
母親は父親から俺を奪い取る。何気に夜の約束してんじゃねえよサルども。と、イライラしていると、そのまま、服をはだけさせた。
え?……ま、まさか……お、おおおお、おっぱ!?生AVか?天国か?生おっぱいなんて前世では一度も拝めなかったのに!?
……じゃなくて!落ち着け!もし胸を触ってしまえば……前世みたいに社会的に終わる!いや前世触ってねえけど!拝んだことすらねえけど!
……って赤ん坊は別におっぱい飲んでもいいだろ!何考えてんだ俺は!こんなチャンス滅多にねえぞ!でも怖い!
「やめおおおおおお!ひゃはいへひひしにゅううう!」
俺は顔を背け、胸を触らないようにしながら必死に叫ぶ。
「……あら?この子、飲みたくないのかな?」
「昨日までは普通に飲んでたんだよな?」
「うん。成長したってことかな?もう1歳だもんねえ」
「うう、子供って急に成長するよな……」
「そうだねえ」
親たちは勝手に納得したようだったが、俺は単純に社会的リスクを感じ取っただけだった。
そしておっぱいを飲まなかったことを死ぬほど後悔した。
------
俺は、5歳になった。しばらく生活して、分かったことがある。
俺はチー・オンターマという名前らしい。日本で言う、チーが名前で、オンターマが苗字。
オンターマって……。「すいませ~ん、三色チーズ牛丼の特盛に温玉付きをお願いします」の温玉やろ。絶対狙ってるだろおい。
父親の名前はギー、母親の名前はユウだ。チー、ギー、ユウ……。
だが、ふざけた名前とは裏腹に、親のスペックは異常に高い。
この村は「オンターマ領」というらしい。……もう名前についてはツッコまないが、つまり俺の親はこの村の領主ってことだ。うひゃあ、地位が高いのか。領主の息子の俺、イージーモード確定?
父さんは剣聖という称号を持っていて、母さんは大魔法師という称号を持っているようだ。極大魔法で雷を落としたとかなんとか。すごそうやね。
あと、ちょっと困惑していることもある。
この両親、前世の親と違って異常に優しいし、価値観の押し付けもない。今のところは理想の親って感じだ……。
父親はまだいいんだ。前世は父親の姿すら見たことなかったし、父親がどういうものなのかは分からない。
でも、母親は違う。俺の前世の母親はシングルマザーだ。だが、「お前のため」と言いながら、俺から自由を制限し、勉強ばかりさせられた。母親はそういうもんだと思っていた。
今世の母親は、どうなるのか不安で仕方ない。まだ俺が、何もできない赤ん坊のガキだから優しいだけかもしれない。
まあ、警戒しつつも生活自体はニートのようにゴロゴロしているだけだ。いいぞ?ずっとゴロゴロできるのは。ガキの特権だ。
あとは……顔次第だな。前世は異常なほどのルッキズムだったが、この世界はどうなのか……。父さんを見る限り、ブサイクに育つ心配なさそうだ。5歳だからまだはっきりイケメンとは判断できんが、何となく期待できる顔だ。
暇つぶしに、3歳ごろから家の本を読み漁っている。 この世界の文字はなぜか意味が通じる。転生特典の「自動翻訳」ってやつだろう。ありがたく使わせてもらっている。 もちろん、神童とか言われて目立つのは嫌だから、両親にバレないようにこっそりと、だ。魔法の本は超面白い。
だが、そんなニート生活を脅かす懸念事項がある。 この世界には「学園」があり、13歳になると強制的に入学させられるらしい。
魔法も剣も学べる夢の環境? 笑わせるな、俺には地獄だ。 人が怖いのは前世のまんま。学園なんて行きたくない。また誰かに目をつけられるかもしれないし、今度こそ人生詰む。
だから俺は決めた。 学園に行かなくて済むように、あるいは行っても誰にも関わらずに済むように、今のうちから魔法を独学で極めて、鉄壁の自衛能力を身につける。
目立たず、騒がず、この家から一歩も出ずに一生を終える。それが俺の生存戦略だ。
……そう思っていたのに。 俺の平穏な引きこもりライフを脅かす『侵入者』は、唐突に現れた。
------
チー。ギー。ユウ。チー。ギー。ユウ。チーギーユウ。チーギユウ。チーギュウ。チー。ギー。ユウ。
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