拗らせ陰キャの異世界自己防衛ライフ 〜イケメンに転生してもガチ陰キャ〜

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第1章 転生編

第4話 実力は隠して生きないとね

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 父さんは帰ってソファに腰を下ろすなり、俺に聞いてくる。

「で、どうなんだ?仲良くなれそうか?めっちゃ清楚で可愛い子じゃないか」

「待ってください。俺は仲良くなるなんて一言も言ってませんが」

「なあ、なんでそんなに人と関わるのを嫌がるんだ?」

 む。そりゃ前世の影響があるからなのだが。

 まず、人は何を考えているか分からないし。相手の振る舞っている笑顔の裏では、俺を馬鹿にしているかもしれない。そんな奴と仲良くなりたいと思うか?

 相手が男ならまだしも、女となると、ちょっとしたことで社会的に終わるリスクが高すぎる。責任はほとんどが男が負わなければならない世界だ。

 何かを疑われた時点で、男に勝ち目はない。

 それなら関わらない方が一番、これは逃げかもしれない、でも、自分を守るための行動でもあるんだ。

 ただ、そんなこと言ったら絶対父さんに怪しまれる。

 女性と付き合ったこともないのに何言ってんだって思われる。

 実際、付き合ったことは無いが、女に避けられたし、気持ち悪がられたし、魏屋琉という女子生徒には罪を着せられた。

 とりあえず、父さんにはそれっぽく言っておくか。

「人が怖いからです」

「……チー、大丈夫だ。もっと自信持て。怖い大人は確かにいる。ユリアを見て怖いと思ったのか?そんなんじゃ、誰とも関われなくなって、ひとりぼっちの人生になっちまうぞ。あの子だってきっと仲良くしたいから話しかけてくれたんだ」

「はあ、後になって裏切られませんよね」

「子供はそういうこと考えるな。ちゃんと信頼関係築いて行けばいいじゃないか」

「その信頼関係を築いてる時に、何かあったらどうするんですか」

「何かってなんだよ……。にしても、お前と話してると、やけに大人っぽくて子供には感じないんだよな」

 まあそりゃ、高校生が転生したんだから、子供なわけがない。

 前世の17歳+今回の8歳で、精神的には24歳……いや、この世界の暦は違うから、もっと生きてる計算になる。ああもう、考えるのがめんどい!

 あ、でも精神年齢は17歳のままだよな。社会人経験なんか一度もないし。

 にしても、このままだと『明日も話しかけてみろ』とか面倒なこと言われそうだし、話題逸らすためにも、気になっていたことを聞いてみるか。

 昨日本で読んだのだが、”魔剣士”という最強の称号みたいなものがあるらしい。

 魔剣士は剣と魔法を両方扱いながら戦う役職だ。アニメとかなら剣も使いながら魔法撃つなんてことは普通なのに、この世界では剣か魔法のどちらかのエキスパートが9割だそうだ。

「父さん、分かればでいいんですけど」

「なんだ?」

「魔剣士ってそんなに難しいことなんですか?」

 父さんは意外なことを聞かれたからか、顎に手を当て考える。

「……う~ん、俺も魔剣士じゃないから詳しくはわからんが、戦いにおいて剣を使っている間に、詠唱なんか器用なことはできん。逆もそうだ。魔法を打つには詠唱と精神力と集中力を使うから剣なんて振れない。

 基本パーティを組んだら、魔法師は前衛に守ってもらいながら戦うもんだ。それを一人でやるとか、正気の沙汰じゃない。そもそも、威力のある魔法を打つには杖が必要だ。片手に剣を持って、片手に杖なんか持ったら、な、分かるだろ?」

 右手に剣、左手に杖……。だっさ。いや、うん、そうだよね。すごい戦いにくそう。剣振ってたら杖なんか振れねえよな。

 ……杖?……そ、そうか。実は最近、俺は魔法習得に伸び悩んでた。初級レベルの魔法はだいたい習得できたが、初級というだけあって、ほんとに基礎の部分しかやらないのだ。

 戦いでは基本使わないような、日常生活レベルの魔法だ。

 火ならちょっとボッて出すだけ。水は水鉄砲レベル。土なら簡単な錬成、そんな感じだ。

 中級以上からは戦いになったときに役に立つような魔法だ。威力の加減や方向などもっと細かい詠唱が必要になる。

 実際に中級以上を試してみたのだが、発動しないで終わることが多い。土魔法の錬成なら多少は扱えるが……。

 いつも杖が欲しいって言ったら魔法練習してることバレるから、素手で魔法を発動していた。

 でも、もしかしたら魔素不足なわけじゃなくて、杖を持っていないから、効率よく魔素を通していなかった可能性が高い。俺は世界で数人の大魔法師の息子だ、魔力保有量が少ないとは考えにくい。素手だと、必要MPが少ないってことだろう。

 で、最近は伸び悩んでやる気なくして、剣に打ち込んだり、適当に土魔法の錬成して遊んでたっけな。適当にポケ〇ンとかのフィギュア作ったり……。

「あ、はい。わかりました」

「もしかして、魔剣士をめざしてるのか?」

「え、いや、んなわけないじゃないですか」

「そ、そうか」

 杖について確か初級の本に詳しく書いてたはず。後で魔法教本の最初の方読み飛ばしてないか見てみるか。

「なあチー」

「え、はい」

 父さんは不意に、ソファの横にあるからのコップを指さした。

「運動の後だし、きれいな水が飲みたい。コップに水出してくれ」

「え、あ、えっと……」

 どういうことだ?なんで俺に頼んでくる?まて、考えろ。こ……これは罠だ!

 確かに俺は水くらいなら魔法を使って出せる。でも、それだと俺が魔法を独学で習得していることがバレてしまう!母さんも俺に魔法を教えてるわけでもない。絶対に父さんは「俺の息子は剣も魔法もできるぜ!」みたいに言いふらす。

 それはつまり、俺の平和な引きこもりライフの崩壊……あっぶねええええ!!俺は無表情で嘘をついた。

「出せるわけないじゃないですか。俺まだ魔法習ってないんですから」

「ん?……ああ、そうだったな」

 父さんは俺の顔をじっと見た後、つまらなそうにそのまま母さんに水を貰いにいった。危ない、騙されるところだった。

 俺は実力を隠し続ける。平和に暮らすためにな。



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