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海事事件報告書(受理番号:C1種-372-00735号)

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~定期旅客船ジャージー号からの報告を要約~


その日、ジャージー号はルファ公爵領サウザンド港を定刻に出航。
天候は快晴、同船は予定の航路を順調に進む。

夜半になり甲板は数組の客が風景を眺めていた。
天候は変わらず快晴、満月が非常に明るい。
見張り員より報告、後方から高速で近づく船を視認。
回光通信機により発信のところ返信あり、ミラン子爵家所有の高速船スターライター号と認識。
王国航海法に基づき、スターライター号がジャージー号右舷側より追い抜く。
汽笛に対し答礼。




追い抜きから約10分後、およそ2マイル(3.2km)先で水柱が立つ。
見張り員よりスターライター号で異変と報告。
船長が直ちに非常事態を宣言、船員総員起こし、旅客に船室待機を発令。
ジャージー号が汽笛により緊急防護を発報。
同時に同船左舷前方で操業中だった漁船団も当該地点への移動を開始。




水柱を視認したエリアに漁船団先着、続いてジャージー号が現着。
海域にはスターライター号のものと思われる残骸多数。
同船が救命艇を降ろし救助活動を開始。
2時間調査するも生存者は発見できず、船長は救難措置を終了。

王国航海法に基づき船長は臨時調査官として目撃者より事情聴取。
複数の漁民によると、スターライター号は何かにぶつかったかのごとく轟音と共に緊急停止。
船首を下に、船尾を上にして直立になるほどで、その衝撃は想像に絶すると推認。
これにより船底が再度着水した際に竜骨が破断、短時間で沈没したと思われる。





ただ問題なのは。
いくらスターライター号が最大船速で巡行中だったとしても。
また、高速を出すために最大級に軽量化された船だったとしても。
当該海域には危険な暗礁など存在しないということであり、沈没の直接的な原因が全く想像できないということ。
ジャージー号を含め大型の旅客船や貨物船の航路であり、同様の事故は今まで聞いたことが無い。
地元の漁民に聴取するも、暗礁は周囲には無いとのことである。

とはいえジャージー号の見張り員だけでなく、乗客や漁民の複数人が水柱を確認していること。
また当該海域に残骸があり、同時にスターライター号が視認できなくなったこと。
よってスターライター号は沈没、同船の乗組員は全員が死亡したと推認する。




これをもって以後の調査を王宮調査官へ引き継ぐ。

以上
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