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第21話
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「わたしたちも、気をつけてはいたんです。俊樹くんの行動に・・・・。サキちゃんに、何かするんじゃないかと。そうなる前に、何らかの対策をしなければ。職員たちはみんなそう思っていました。でも・・・・俊樹くんは、そんなわたしたちの考えに気付いていて、わたしたちの前で直接サキちゃんに何かすることはありませんでした。サキちゃんと皐月くん、俊樹くんの間に何があったのか・・・・・詳しいことは本当に知らないんです。ただ、あの3人の間に何かあったんじゃないかと思い、夜の見回りの回数を増やしていた時です。夜中に、皐月くんの部屋から出てくる俊樹くんを見たんです」
「・・・・何をしていたのかは・・・・・」
俺の言葉に、藤崎さんは首を横に振った。
「わかりません。俊樹くんを呼びとめて聞きましたが、『ちょっと話してただけ』と言ってにやにやするだけでした。それから、皐月くんの部屋に行きました。皐月くんは―――」
藤崎さんが、ぎゅっと目を瞑った。
「ふとんを頭までかぶり、震えているようでした・・・・。声をかけると、顔を見せてくれましたが・・・・その目には涙が浮かんでいました」
俺は、拳を握りしめた。
「そのことを、園長には・・・?」
「・・・・皐月くんが、言ったんです。『なんでもないから、誰にも言わないで』って。わたしは、『なんでもないわけないでしょう?園長先生に相談しましょう』と言いました。でも、皐月くんは『ダメだ』と。『絶対誰にも言わないで。これは、サキちゃんを守るためなんだ』って言ってました」
「サキちゃんを?」
「ええ。結局、皐月くんは何があったか教えてくれず・・・・わたしも、皐月くんやサキちゃんのことを考えると園長に報告するのをためらってしまい、悩んでいるうちに事件があり、俊樹くんが施設を出て行くことになったんです」
「・・・・今野俊樹は、その時以外にも皐月くんの部屋へ?」
「ええ・・・・わたしは決められた見回りの時間以外にも、何度も皐月くんの部屋を見に行くようにしていました。でも、俊樹くんはそういう勘が働くのか、わたしの目を盗んでは皐月くんの部屋へ・・・・。俊樹くんが皐月くんの部屋から出てくるところを見たのは、1度や2度じゃありませんでした。そのたびに俊樹くんを呼びとめ夜は部屋から出ないよう注意していたのですが・・・・俊樹くんは、ただ話をしているだけだ、皐月くんも承知の上だというだけで・・・・。わたしは・・・・皐月くんの部屋を見ることができませんでした」
「どうして・・・・どうして園長に言わなかったんですか!皐月くんが、どんな目にあっていたか・・・!」
思わず、声が高くなる。
まだ13歳の子供だった皐月くん。
どれほどの傷を、その小さな体と心に負ったのか・・・・。
「後悔、しています。なぜ勇気を出して彼を止めることができなかったのかと。俊樹くんはもう体も大人と同じくらい大きく力もあり・・・職員に乱暴しようとすることもありました。わたしも、何度も殴られそうになったり、物を投げつけられたことも・・・・・。ただ、あの子は絶対に証拠を残さないんです。体に傷を残すようなことをしない。そのために、訴えても彼がそれを否定すればそれ以上追及することができなかった。わたしは・・・・怖かったんです。あの、悪魔のような子どもが・・・・」
藤崎さんの目には、涙が浮かんでいた。
俺は、溜息をつき、藤崎さんに背中を向けた。
今は、彼女に優しい言葉をかけることができなかった。
皐月くんのことを考えると・・・・・。
「・・・・何をしていたのかは・・・・・」
俺の言葉に、藤崎さんは首を横に振った。
「わかりません。俊樹くんを呼びとめて聞きましたが、『ちょっと話してただけ』と言ってにやにやするだけでした。それから、皐月くんの部屋に行きました。皐月くんは―――」
藤崎さんが、ぎゅっと目を瞑った。
「ふとんを頭までかぶり、震えているようでした・・・・。声をかけると、顔を見せてくれましたが・・・・その目には涙が浮かんでいました」
俺は、拳を握りしめた。
「そのことを、園長には・・・?」
「・・・・皐月くんが、言ったんです。『なんでもないから、誰にも言わないで』って。わたしは、『なんでもないわけないでしょう?園長先生に相談しましょう』と言いました。でも、皐月くんは『ダメだ』と。『絶対誰にも言わないで。これは、サキちゃんを守るためなんだ』って言ってました」
「サキちゃんを?」
「ええ。結局、皐月くんは何があったか教えてくれず・・・・わたしも、皐月くんやサキちゃんのことを考えると園長に報告するのをためらってしまい、悩んでいるうちに事件があり、俊樹くんが施設を出て行くことになったんです」
「・・・・今野俊樹は、その時以外にも皐月くんの部屋へ?」
「ええ・・・・わたしは決められた見回りの時間以外にも、何度も皐月くんの部屋を見に行くようにしていました。でも、俊樹くんはそういう勘が働くのか、わたしの目を盗んでは皐月くんの部屋へ・・・・。俊樹くんが皐月くんの部屋から出てくるところを見たのは、1度や2度じゃありませんでした。そのたびに俊樹くんを呼びとめ夜は部屋から出ないよう注意していたのですが・・・・俊樹くんは、ただ話をしているだけだ、皐月くんも承知の上だというだけで・・・・。わたしは・・・・皐月くんの部屋を見ることができませんでした」
「どうして・・・・どうして園長に言わなかったんですか!皐月くんが、どんな目にあっていたか・・・!」
思わず、声が高くなる。
まだ13歳の子供だった皐月くん。
どれほどの傷を、その小さな体と心に負ったのか・・・・。
「後悔、しています。なぜ勇気を出して彼を止めることができなかったのかと。俊樹くんはもう体も大人と同じくらい大きく力もあり・・・職員に乱暴しようとすることもありました。わたしも、何度も殴られそうになったり、物を投げつけられたことも・・・・・。ただ、あの子は絶対に証拠を残さないんです。体に傷を残すようなことをしない。そのために、訴えても彼がそれを否定すればそれ以上追及することができなかった。わたしは・・・・怖かったんです。あの、悪魔のような子どもが・・・・」
藤崎さんの目には、涙が浮かんでいた。
俺は、溜息をつき、藤崎さんに背中を向けた。
今は、彼女に優しい言葉をかけることができなかった。
皐月くんのことを考えると・・・・・。
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