26 / 27
恋してる
しおりを挟む
『俺が好きなのは―――今、目の前にいる、4人だよ』
梨夢の言葉に、俺らは一瞬ピタリと動きを止めた。
いや、好きだと言ってくれるのは嬉しい。
だけど、梨夢はいつも俺たち4人のことを好きだと言ってくれている。
あの時、母さんたちに報告した『好きな人』と言うのは、そういう『好き』ということなのか・・・・?
俺らの微妙な表情に気づいたのか、梨夢がちょっと首を傾げた。
「あれ?伝わらない?」
「いや・・・ていうか、梨夢が俺らのことを好きでいてくれるのは知ってるって言うか、わかってるって言うか・・・」
どう言ったらいいかわからない。
そんな俺を、周が呆れたように見る。
「しっかりしてよ、護。長男でしょ」
「んなこと言われても・・・・てっきり、知らない女の子の名前とか言われるのかと思ってたから」
「護は・・・・てか、みんなそう思ってたの?俺が誰か女の子の名前言うって」
梨夢の言葉に、みんなが頷く。
「・・・その方がよかった?」
『いや、よくないけど』
即答した俺たちに、梨夢がふっと笑う。
「よくないの?」
「いや、だって、俺らずっと考えてたんだよ!梨夢の好きな人って誰だろうって。俺ら4人、誰も何も気づいてなくて、梨夢にそんな好きな人がいるなら絶対気付くはずなのにって思ってたんだよ」
俺の言葉に、他の3人も頷く。
梨夢は、そんな俺らの顔をじっと見ていたけれど―――
「―――だって俺、4人よりも好きな人なんて、いないもん」
「梨夢、けどそれは、兄弟としてって意味で―――」
「ちがうよ」
『え?』
4人の声が重なる。
梨夢の目が、微かに潤んでいた。
「違うんだ・・・・。俺、本当に・・・・4人が好きなんだ」
「梨夢?それってどういう意味で・・・・」
梨夢は、ふっと短く息を吐き、再び椅子に座った。
「―――前に、俺、護に聞いたでしょ?俺がどんな人間でもここにいていいかって」
「うん」
「俺ね・・・・気付いちゃったんだ。あの時―――久保田の盗撮騒ぎの時」
プールで梨夢を盗撮していた体育教師の久保田。
その久保田が、それまでにも梨夢の体を触っていたことを知って俺らは激怒した。
あの時、梨夢はとてもショックを受けていた。
それは、その前に渋木から告白されていたという出来事もあり、余計に動揺していたんだと俺は思っていたけれど―――
「俺ね・・・・たぶん、ゲイなんだ」
意を決したようにそう言った梨夢に、俺たちはすぐに言葉を発することができなかった。
「・・・前から、女の子から告白されたときに感じてたんだ。俺、女の子を恋愛対象として見れないって。小学生の頃までは、まだ自分が子供だからだと思ってた。でも・・・中学生になって、何度か男の子から告白されて」
「何度か?」
慎が、顔を上げたが。
「慎、今はちょっと待て」
廉くんにそう言われ、慎はまた黙った。
「俺・・・男の子から告白されたときの方がどきどきしてることに気づいたんだ。付き合う気なんてなくても、好きって言ってもらえることが嬉しかった。断る罪悪感はあったけど・・・それでも、好意を持ってもらえることが嬉しかったんだ。だから、もしかしたら男の子に対して思わせぶりな態度取ってたかもしれないって思った。和也に対しても―――」
「―――は?和也?梨夢くんそれどういう―――」
「周、お前もとりあえず聞けって」
周をたしなめる廉くんが、ちらりと俺を見る。
―――あれ、廉くんも知ってる・・・?
「あ、ごめん、そのことはまた今度ね。とにかく―――自分が、男の子に対してそういう態度取ってたかもしれないって思って。だから、美術の岡田とか体育の久保田にも付け入られたのかもしれないって思って・・・」
「梨夢、それはちげえよ。あいつらはただの変態だから、そんな風に思う必要ない」
そう俺が言うと、梨夢は泣きそうな顔で俺を見て笑った。
「ん・・・。でも、自分がゲイかもって思ったら、今までの自分の気持ちが全部腑に落ちたって言うか・・・。それで、俺がゲイだって知ったらみんながどう思うだろうって思ったら、すごい不安になって」
―――だから、『俺がどんな人間でも』って言ったのか・・・。
「みんなに、嫌われたらどうしようって・・・・」
梨夢の目から、涙がポロリと零れ落ちた。
「何言ってんだよ、梨夢」
俺は梨夢の頭を撫でた。
周が立ち上がり、タオルを持って梨夢のそばに行く。
「泣かないで、梨夢くん。俺らが梨夢くんを嫌いになるなんて、ありえないから」
そう言いながら、優しく梨夢の涙をふく。
「そうそう。どんな梨夢だって、俺らは梨夢が好きだよ」
と、廉くん。
そして、慎も
「俺らの方が、梨夢を好きだから!」
と、その言葉に、梨夢が一瞬きょとんとする。
「慎、ちょっと黙ってようか」
廉くんに肩を叩かれ、慎が「え~」と口をとがらせ椅子に座り直す。
その様子を見て、梨夢がちょっと笑う。
「ありがと・・・。今は、わかるよ。俺が引きこもってる時、みんながすごい心配してくれてたのもわかってる。でも、不安だったんだ。気持ち悪いって思われるんじゃないかって。あの岡田とか久保田に対してみんなが思ってたみたいに・・・・」
「そんなわけ、ないじゃん。梨夢くんのこと気持ち悪いなんて思うはずない」
周の言葉に、梨夢は嬉しそうにうなずいた。
「ん・・・・。あの、引きこもってる間、なにが一番辛かったかって言ったら、みんなといつもみたいにふざけたりできなかったことなんだ。おかしいでしょ?自分で引きこもったのに・・・・」
「梨夢・・・・」
「それで・・・・気付いたの。俺、みんなの弟して、兄弟としてみんなが好きだけど―――でも、そうじゃなくて・・・その、俺、もしかして4人に恋してるのかなって・・・」
『!!!!』
梨夢の頬が染まり、その瞳は潤み―――
俺たち4人がどうして固まってるか、絶対わかってない不安げな表情で、俺たちを見つめたのだった・・・・。
梨夢の言葉に、俺らは一瞬ピタリと動きを止めた。
いや、好きだと言ってくれるのは嬉しい。
だけど、梨夢はいつも俺たち4人のことを好きだと言ってくれている。
あの時、母さんたちに報告した『好きな人』と言うのは、そういう『好き』ということなのか・・・・?
俺らの微妙な表情に気づいたのか、梨夢がちょっと首を傾げた。
「あれ?伝わらない?」
「いや・・・ていうか、梨夢が俺らのことを好きでいてくれるのは知ってるって言うか、わかってるって言うか・・・」
どう言ったらいいかわからない。
そんな俺を、周が呆れたように見る。
「しっかりしてよ、護。長男でしょ」
「んなこと言われても・・・・てっきり、知らない女の子の名前とか言われるのかと思ってたから」
「護は・・・・てか、みんなそう思ってたの?俺が誰か女の子の名前言うって」
梨夢の言葉に、みんなが頷く。
「・・・その方がよかった?」
『いや、よくないけど』
即答した俺たちに、梨夢がふっと笑う。
「よくないの?」
「いや、だって、俺らずっと考えてたんだよ!梨夢の好きな人って誰だろうって。俺ら4人、誰も何も気づいてなくて、梨夢にそんな好きな人がいるなら絶対気付くはずなのにって思ってたんだよ」
俺の言葉に、他の3人も頷く。
梨夢は、そんな俺らの顔をじっと見ていたけれど―――
「―――だって俺、4人よりも好きな人なんて、いないもん」
「梨夢、けどそれは、兄弟としてって意味で―――」
「ちがうよ」
『え?』
4人の声が重なる。
梨夢の目が、微かに潤んでいた。
「違うんだ・・・・。俺、本当に・・・・4人が好きなんだ」
「梨夢?それってどういう意味で・・・・」
梨夢は、ふっと短く息を吐き、再び椅子に座った。
「―――前に、俺、護に聞いたでしょ?俺がどんな人間でもここにいていいかって」
「うん」
「俺ね・・・・気付いちゃったんだ。あの時―――久保田の盗撮騒ぎの時」
プールで梨夢を盗撮していた体育教師の久保田。
その久保田が、それまでにも梨夢の体を触っていたことを知って俺らは激怒した。
あの時、梨夢はとてもショックを受けていた。
それは、その前に渋木から告白されていたという出来事もあり、余計に動揺していたんだと俺は思っていたけれど―――
「俺ね・・・・たぶん、ゲイなんだ」
意を決したようにそう言った梨夢に、俺たちはすぐに言葉を発することができなかった。
「・・・前から、女の子から告白されたときに感じてたんだ。俺、女の子を恋愛対象として見れないって。小学生の頃までは、まだ自分が子供だからだと思ってた。でも・・・中学生になって、何度か男の子から告白されて」
「何度か?」
慎が、顔を上げたが。
「慎、今はちょっと待て」
廉くんにそう言われ、慎はまた黙った。
「俺・・・男の子から告白されたときの方がどきどきしてることに気づいたんだ。付き合う気なんてなくても、好きって言ってもらえることが嬉しかった。断る罪悪感はあったけど・・・それでも、好意を持ってもらえることが嬉しかったんだ。だから、もしかしたら男の子に対して思わせぶりな態度取ってたかもしれないって思った。和也に対しても―――」
「―――は?和也?梨夢くんそれどういう―――」
「周、お前もとりあえず聞けって」
周をたしなめる廉くんが、ちらりと俺を見る。
―――あれ、廉くんも知ってる・・・?
「あ、ごめん、そのことはまた今度ね。とにかく―――自分が、男の子に対してそういう態度取ってたかもしれないって思って。だから、美術の岡田とか体育の久保田にも付け入られたのかもしれないって思って・・・」
「梨夢、それはちげえよ。あいつらはただの変態だから、そんな風に思う必要ない」
そう俺が言うと、梨夢は泣きそうな顔で俺を見て笑った。
「ん・・・。でも、自分がゲイかもって思ったら、今までの自分の気持ちが全部腑に落ちたって言うか・・・。それで、俺がゲイだって知ったらみんながどう思うだろうって思ったら、すごい不安になって」
―――だから、『俺がどんな人間でも』って言ったのか・・・。
「みんなに、嫌われたらどうしようって・・・・」
梨夢の目から、涙がポロリと零れ落ちた。
「何言ってんだよ、梨夢」
俺は梨夢の頭を撫でた。
周が立ち上がり、タオルを持って梨夢のそばに行く。
「泣かないで、梨夢くん。俺らが梨夢くんを嫌いになるなんて、ありえないから」
そう言いながら、優しく梨夢の涙をふく。
「そうそう。どんな梨夢だって、俺らは梨夢が好きだよ」
と、廉くん。
そして、慎も
「俺らの方が、梨夢を好きだから!」
と、その言葉に、梨夢が一瞬きょとんとする。
「慎、ちょっと黙ってようか」
廉くんに肩を叩かれ、慎が「え~」と口をとがらせ椅子に座り直す。
その様子を見て、梨夢がちょっと笑う。
「ありがと・・・。今は、わかるよ。俺が引きこもってる時、みんながすごい心配してくれてたのもわかってる。でも、不安だったんだ。気持ち悪いって思われるんじゃないかって。あの岡田とか久保田に対してみんなが思ってたみたいに・・・・」
「そんなわけ、ないじゃん。梨夢くんのこと気持ち悪いなんて思うはずない」
周の言葉に、梨夢は嬉しそうにうなずいた。
「ん・・・・。あの、引きこもってる間、なにが一番辛かったかって言ったら、みんなといつもみたいにふざけたりできなかったことなんだ。おかしいでしょ?自分で引きこもったのに・・・・」
「梨夢・・・・」
「それで・・・・気付いたの。俺、みんなの弟して、兄弟としてみんなが好きだけど―――でも、そうじゃなくて・・・その、俺、もしかして4人に恋してるのかなって・・・」
『!!!!』
梨夢の頬が染まり、その瞳は潤み―――
俺たち4人がどうして固まってるか、絶対わかってない不安げな表情で、俺たちを見つめたのだった・・・・。
140
あなたにおすすめの小説
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
悪夢の先に
紫月ゆえ
BL
人に頼ることを知らない大学生(受)が体調不良に陥ってしまう。そんな彼に手を差し伸べる恋人(攻)にも、悪夢を見たことで拒絶をしてしまうが…。
※体調不良表現あり。嘔吐表現あるので苦手な方はご注意ください。
『孤毒の解毒薬』の続編です!
西条雪(受):ぼっち学生。人と関わることに抵抗を抱いている。無自覚だが、容姿はかなり整っている。
白銀奏斗(攻):勉学、容姿、人望を兼ね備えた人気者。柔らかく穏やかな雰囲気をまとう。
ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる