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第八十一話 ストーカー気味な貴族令嬢との対峙
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貴族の挨拶対応も無事に終わり、歓談タイムとなった。
私もフレイア様とアメリアさんと共に話をしつつ、ルーカス様に執着している貴族令嬢を監視していた。
貴族令嬢は、周囲の人と歓談しつつチラチラとルーカス様を見ていた。
やはり、何かのタイミングを計ってルーカス様に接触したいのだろう。
すると、私たちのところにマリア様がグラスを手にしてやってきた。
もちろん、未成年のマリア様が飲んでいるのはぶどうジュースだ。
「ルーカス兄様が動くのじゃ。皆も、いつでも動けるようにするのじゃ」
マリア様は、周囲に声が漏れないように小声でこれからの流れを説明した。
ルーカス様が席を外して廊下に向かい、貴族令嬢が動いたところを私たちも尾行することになった。
今度は、ルーカス様がチラリと私たちに視線を向けた。
そして、歓談中の貴族に詫びを入れつつ廊下に向かった。
ルーカス様が大部屋を出て程なくして、今度は貴族令嬢が大部屋の別のドアから廊下に向かった。
そこで、私たちはマリア様とフレイア様がルーカス様が出たドアに、そして私とアメリアさんが貴族令嬢が出たドアに向かった。
「ルーカス様に諭されて、素直に引き下がってくれれば良いのですが……」
アメリアさんは難しい表情をしながら希望的観測を述べていたけど、私もその可能性はかなり低いと思っていた。
そしてこっそりと廊下を覗き込むと、既にルーカス様と貴族令嬢の舞台が幕を開けていた。
「ルーカス様、お願いがあります。私とラストダンスを踊って下さい」
おーっと、貴族令嬢が頭を下げながらもいきなり直球をルーカス様に投げ込んできた。
流石にルーカス様も呆れた表情でいて、ルーカス様の後ろから成り行きを見守っているマリア様、フレイア様、そしてアメリアさんもあちゃーって表情をしていた。
「あなたとラストダンスを踊ることはできない。要件はそれだけか?」
「なっ……」
そして、ルーカス様は返す刀で貴族令嬢の返事をぶった斬った。
あまりにも鋭い返しに、貴族令嬢は一瞬呆気に取られてしまった。
しかし、貴族令嬢も負けてはいなかった。
「ルーカス様、例の平民のことを思っているのですか? 私の、私の方がそのものよりもルーカス様のことを愛しております。お慕いしております」
貴族令嬢は胸に手を当てながら熱弁を振るっていて、最初に感じた儚げな姿からは想像もつかなかった。
しかし、ここであることに気がついてしまった。
どうやら、覗きながら様子を見ている三人もハッキリとあることに気がついたみたいです。
そして、このタイミングで動いたのはなんとアメリアさんでした。
ザッ。
「あっ、アメリア様!?」
「覗き見るというみっともない態度を取った事をお許し下さい。しかし、貴方にどうしても言わなければならないことがあります」
突然現れたアメリアさんを見るなり、貴族令嬢はかなり狼狽していた。
それでも、アメリアさんは毅然とした態度を崩さなかった。
「貴方は、愛というものを勘違いしています。愛というのは、お互いの気持ちが通じ合って初めて愛と言います。しかし、貴方は自分の気持ちを一方的に相手に押し付けて、相手のことを本当に考えていません」
「そ、そんな事は……」
アメリアさんは残念そうな声色で話しつつ、貴族令嬢に近づいていった。
アメリアさんが一歩近づく度に、貴族令嬢は慄いていた。
「貴方の思いは、ある種ルーカス様への憧れです。憧れは誰しもが持つもので、それ自体はごく自然なことです。しかし、憧れからくる自分の思いを相手に押し付けるのはまた別の話です。相手と友好な関係を築かなければ、お互いの気持ちは通じ合いません」
「違う、私はルーカス様を……」
貴族令嬢はアメリアさんの言葉に飲まれて完全に狼狽しており、姿を現したマリア様、フレイア様、そして私を見ても頭を抱えているだけだった。
そして、貴族令嬢にトドメを差したのは、他ならぬルーカス様だった。
「あなたが事あるごとに私の側に現れることで、周囲に余計な警備の手間をかけさせていた。つまり、私はあなたの存在を迷惑ととらえていたのだ。リンのこととは関係なく、自分の都合だけを考えるあなたとは結婚はできないと断言しよう。もう少し、自分と関わる周囲の人のことを考える必要がある」
「あぁ、うぅ……」
ルーカス様にハッキリと断言され、貴族令嬢は自分の腕で体を抱きしめながら崩れ落ちた。
しかし、この貴族令嬢がそう簡単に自分の思いを諦めるとは思えなかった。
ふと、私はあることができないかと思い、泣き崩れている貴族令嬢に近づいた。
シュイン、ぴかー。
やはり、そうだ。
「いま、状態異常回復魔法をあなたにかけました。頭の中が、少しスッキリしたと思います。当分は、治療を受けつつゆっくりする方がいいと思いますよ」
「うぅ、うぅ……」
精神的に不安定になっていると思い、試しにかけた状態異常回復魔法が効いていた。
いずれにせよ、この状況では当分ルーカス様へ接近はできないはずだろうし、その間に治療を進めるしかなさそうだ。
そして、この貴族令嬢の家族を呼び寄せてルーカス様自ら説明をした。
実は貴族令嬢がルーカス様にストーカー気質な対応を取っていたのを知っていたが、この貴族としても娘がルーカス様の妻に万が一なれればという甘い考えを持っていた。
その結果がこの状況だった。
「ルーカス兄上のめでたい場なので、今は特に言及はせぬ。後は、どういう行動をすればよいか分かるな?」
「か、畏まりました……」
自分よりも遥かに年下のマリア様に気圧され、侯爵夫婦は未だに泣き崩れている娘を連れて去って行った。
もう遅いだろうが、これ以上王家の反感を買うよりもと思ったのだろう。
「今後は、ストーカー気質のあるものは優先的に婚約者候補から除外せねばならぬ。お互いが不幸になるぞ」
「相手が勝手に不幸になってくれる分ならまだましだけど、ああいうタイプは周りを巻き込むもんね。このくらいで収まって良かったと思いましょう」
マリア様とフレイア様がため息をつきながら感想を述べている中、ルーカス様はアメリアさんと私に話しかけてきた。
「ルーカス様、出過ぎた真似をして大変申し訳ありません」
「私も、勝手に治療をし申し訳ありません」
「アメリア、リン、助かった。私の言いたいことを代弁してくれたし、今後のことを考えるとリンの治療も大きな意味がある。相手を思うことの大切さを、改めて思った」
ルーカス様は、だいぶスッキリした表情をしていた。
先程の貴族令嬢の件は、ルーカス様の中でもかなりの悩みの種だったのだろう。
いずれにせよ、これでパーティーの邪魔をするものはいなくなったはずだ。
私も、懸念がなくなってホッとしていたのだった。
私もフレイア様とアメリアさんと共に話をしつつ、ルーカス様に執着している貴族令嬢を監視していた。
貴族令嬢は、周囲の人と歓談しつつチラチラとルーカス様を見ていた。
やはり、何かのタイミングを計ってルーカス様に接触したいのだろう。
すると、私たちのところにマリア様がグラスを手にしてやってきた。
もちろん、未成年のマリア様が飲んでいるのはぶどうジュースだ。
「ルーカス兄様が動くのじゃ。皆も、いつでも動けるようにするのじゃ」
マリア様は、周囲に声が漏れないように小声でこれからの流れを説明した。
ルーカス様が席を外して廊下に向かい、貴族令嬢が動いたところを私たちも尾行することになった。
今度は、ルーカス様がチラリと私たちに視線を向けた。
そして、歓談中の貴族に詫びを入れつつ廊下に向かった。
ルーカス様が大部屋を出て程なくして、今度は貴族令嬢が大部屋の別のドアから廊下に向かった。
そこで、私たちはマリア様とフレイア様がルーカス様が出たドアに、そして私とアメリアさんが貴族令嬢が出たドアに向かった。
「ルーカス様に諭されて、素直に引き下がってくれれば良いのですが……」
アメリアさんは難しい表情をしながら希望的観測を述べていたけど、私もその可能性はかなり低いと思っていた。
そしてこっそりと廊下を覗き込むと、既にルーカス様と貴族令嬢の舞台が幕を開けていた。
「ルーカス様、お願いがあります。私とラストダンスを踊って下さい」
おーっと、貴族令嬢が頭を下げながらもいきなり直球をルーカス様に投げ込んできた。
流石にルーカス様も呆れた表情でいて、ルーカス様の後ろから成り行きを見守っているマリア様、フレイア様、そしてアメリアさんもあちゃーって表情をしていた。
「あなたとラストダンスを踊ることはできない。要件はそれだけか?」
「なっ……」
そして、ルーカス様は返す刀で貴族令嬢の返事をぶった斬った。
あまりにも鋭い返しに、貴族令嬢は一瞬呆気に取られてしまった。
しかし、貴族令嬢も負けてはいなかった。
「ルーカス様、例の平民のことを思っているのですか? 私の、私の方がそのものよりもルーカス様のことを愛しております。お慕いしております」
貴族令嬢は胸に手を当てながら熱弁を振るっていて、最初に感じた儚げな姿からは想像もつかなかった。
しかし、ここであることに気がついてしまった。
どうやら、覗きながら様子を見ている三人もハッキリとあることに気がついたみたいです。
そして、このタイミングで動いたのはなんとアメリアさんでした。
ザッ。
「あっ、アメリア様!?」
「覗き見るというみっともない態度を取った事をお許し下さい。しかし、貴方にどうしても言わなければならないことがあります」
突然現れたアメリアさんを見るなり、貴族令嬢はかなり狼狽していた。
それでも、アメリアさんは毅然とした態度を崩さなかった。
「貴方は、愛というものを勘違いしています。愛というのは、お互いの気持ちが通じ合って初めて愛と言います。しかし、貴方は自分の気持ちを一方的に相手に押し付けて、相手のことを本当に考えていません」
「そ、そんな事は……」
アメリアさんは残念そうな声色で話しつつ、貴族令嬢に近づいていった。
アメリアさんが一歩近づく度に、貴族令嬢は慄いていた。
「貴方の思いは、ある種ルーカス様への憧れです。憧れは誰しもが持つもので、それ自体はごく自然なことです。しかし、憧れからくる自分の思いを相手に押し付けるのはまた別の話です。相手と友好な関係を築かなければ、お互いの気持ちは通じ合いません」
「違う、私はルーカス様を……」
貴族令嬢はアメリアさんの言葉に飲まれて完全に狼狽しており、姿を現したマリア様、フレイア様、そして私を見ても頭を抱えているだけだった。
そして、貴族令嬢にトドメを差したのは、他ならぬルーカス様だった。
「あなたが事あるごとに私の側に現れることで、周囲に余計な警備の手間をかけさせていた。つまり、私はあなたの存在を迷惑ととらえていたのだ。リンのこととは関係なく、自分の都合だけを考えるあなたとは結婚はできないと断言しよう。もう少し、自分と関わる周囲の人のことを考える必要がある」
「あぁ、うぅ……」
ルーカス様にハッキリと断言され、貴族令嬢は自分の腕で体を抱きしめながら崩れ落ちた。
しかし、この貴族令嬢がそう簡単に自分の思いを諦めるとは思えなかった。
ふと、私はあることができないかと思い、泣き崩れている貴族令嬢に近づいた。
シュイン、ぴかー。
やはり、そうだ。
「いま、状態異常回復魔法をあなたにかけました。頭の中が、少しスッキリしたと思います。当分は、治療を受けつつゆっくりする方がいいと思いますよ」
「うぅ、うぅ……」
精神的に不安定になっていると思い、試しにかけた状態異常回復魔法が効いていた。
いずれにせよ、この状況では当分ルーカス様へ接近はできないはずだろうし、その間に治療を進めるしかなさそうだ。
そして、この貴族令嬢の家族を呼び寄せてルーカス様自ら説明をした。
実は貴族令嬢がルーカス様にストーカー気質な対応を取っていたのを知っていたが、この貴族としても娘がルーカス様の妻に万が一なれればという甘い考えを持っていた。
その結果がこの状況だった。
「ルーカス兄上のめでたい場なので、今は特に言及はせぬ。後は、どういう行動をすればよいか分かるな?」
「か、畏まりました……」
自分よりも遥かに年下のマリア様に気圧され、侯爵夫婦は未だに泣き崩れている娘を連れて去って行った。
もう遅いだろうが、これ以上王家の反感を買うよりもと思ったのだろう。
「今後は、ストーカー気質のあるものは優先的に婚約者候補から除外せねばならぬ。お互いが不幸になるぞ」
「相手が勝手に不幸になってくれる分ならまだましだけど、ああいうタイプは周りを巻き込むもんね。このくらいで収まって良かったと思いましょう」
マリア様とフレイア様がため息をつきながら感想を述べている中、ルーカス様はアメリアさんと私に話しかけてきた。
「ルーカス様、出過ぎた真似をして大変申し訳ありません」
「私も、勝手に治療をし申し訳ありません」
「アメリア、リン、助かった。私の言いたいことを代弁してくれたし、今後のことを考えるとリンの治療も大きな意味がある。相手を思うことの大切さを、改めて思った」
ルーカス様は、だいぶスッキリした表情をしていた。
先程の貴族令嬢の件は、ルーカス様の中でもかなりの悩みの種だったのだろう。
いずれにせよ、これでパーティーの邪魔をするものはいなくなったはずだ。
私も、懸念がなくなってホッとしていたのだった。
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