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第十七章 教皇国編

三百四十八話 こき使われている辺境伯様

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 皇都について四日目。
 今日は何も公式行事はないので、孤児院の人が滞在する家の掃除を行います。
 朝食を食べたら、お手伝い要員を迎えに行きます。
 
「あら。アレク君、辺境伯からも助っ人が来るそうよ。迎えに行ってくれないかな?」
「一体誰だろう? ひとまず分かりました」

 ルーカスお兄様達を迎えに行った後、ティナおばあさまの魔導具に連絡が入った。
 とりあえず辺境伯様の屋敷に向かうと、ぷんぷんしているイザベラ様が出迎えてくれた。
 
「あの人ったら、また儀式用の服が入らなくなったのよ。今の内に体を絞っておかないと、今年の五歳の祝いで服が着れないわ」
「はあはあはあはあ」

 ふと辺境伯様の屋敷の庭を見ると、汗だくの辺境伯様が大の字で寝転んでいた。
 確かに、辺境伯様のお腹周りの肉付きがよくなっている気がするぞ。
 イザベラ様も監視する為についてくるというので、辺境伯様の息が整うのを待ってから大教会に戻った。
 王城からはアリア様も参加する事になっている。
 昨日王妃様がストレス発散できたと言ったので、今日はアリア様がきたという。
 大規模な戦闘はサイクロプスとの戦い以外は起きていないし、陛下からも護衛の増加をすることでルーカスお兄様達の同行も許されている。
 サンディとミカエルについても同様だ。
 流石に明日の教皇選挙は何かあるか分からないので、皆は参加しない予定だ。

「ブッチー、スラちゃん、頑張ってね」
「ヒヒーン」

 今日もポニさんとスラちゃん達は、聖騎士の巡回に参加します。
 プリンとヒカリは、こちらに残って護衛兼掃除のお手伝いです。
 現地に向かう人は揃ったので、先ずは孤児院に向かいます。

「「「うわあ」」」

 子ども達を中心として、瓦礫となった孤児院を見て驚きの声が上がっている。
 改めて崩壊した孤児院を見ると、爆発の凄まじさが良く分かる。
 この爆発で怪我で済んだなんて、シスターとブリットは幸運だったんだな。
 既に街の人や聖騎士によって瓦礫の撤去作業が進んでいるけど、孤児院の中にあった家具や食器などは粉々になっているだろう。
 あまり暗い事を考えてはいけないので、先ずは孤児院の人達が過ごす家に移動します。

「こちらが私達の仮宿となる家です」

 見た目は二階建ての民家で、暫く誰も住んでいなかったのか蜘蛛の巣がいっぱいあった。
 
「ぶふっ、けほ、中は埃が凄いですね」

 ドアを開けて中に入ると、埃が凄い積もっていた。
 急いでハンカチを口あてにして、埃を吸い込まない様にする。
 すると、イザベラ様が辺境伯様に一言。

「あなた、全ての部屋のドアと窓を開けてきてね」
「えー!」
「ダッシュ!」

 いきなりの大仕事に、辺境伯様はびっくりしている。
 辺境伯様一人では大変だろうとジンさんが手伝おうとしたら、イザベラ様に無言の笑顔で静止された。
 その間に、僕とリズは魔力を溜めておく。

「ゼーハーゼーハー」

 走って息が荒い辺境伯様が戻ってきたら、僕とリズの出番です。

「「えーい」」
「「「うわあ!」」」

 僕とリズの合体魔法で、一気に家の隅々まで生活魔法で綺麗にします。
 辺りが魔法でキラキラしていて、孤児院の子どもは感嘆の声を漏らしています。
 とは言っても、ある程度魔法で汚れは取れたけど、全ての埃とかは取れません。
 ここからは人海戦術で綺麗にしていきます。

「ほら、要らない家具とかも運ぶのよ」
「ヒイヒイ……」

 朽ちてしまった家具などをプリンがアイテムボックスにしまおうとしたのだが、イザベラ様がプリンを制して辺境伯様に運ばせている。
 流石にジンさんも手伝っているけど、辺境伯様は汗だくだくだ。
 勿論、二階にある家具はプリンがアイテムボックスにしまって辺境伯様に無理をさせない様にします。

「バケツに水を入れたよ」
「はーい」

 僕はバケツに魔法で作った水を入れて部屋に置いていきます。
 孤児院の子どもが、雑巾で床などを水拭きをしていきます。
 物が無くなって広々とした部屋が広がっています。
 そこそこの大きさの家らしく、一階に炊事場と水場と部屋が二つで二階に部屋が四つあります。
 一部屋に二段ベッドが二つ置けて、子どもが十人とシスターが三人の孤児院の面々にとっては広々としています。
 でも、所々壁とかが傷んでいるので、修理が必要です。
 更にはお風呂場もないので、新たに作る必要があります。

「まずは雨風を凌げれば大丈夫です。たまたま皇都の孤児院がどこも満杯だったのでこんな事になっていますが、心配はいりません」

 昨日子ども達に付き添って炊き出しに来ていたシスターの一人が、問題ないと言っている。
 教皇国は互助関係が強いので、こんな時でもお互いが助け合っているという。
 その証拠に、街の人が続々とやってきた。

「古いけど、皿や調理器具を持ってきたぞ」
「壁の補修は任せろ」
「服やタオルも必要ですね」
「まあ、皆様どうも有難う御座います」
「良いってことよ。困った時はお互い様だ」

 街の人が家の前に救援物資を持ってきてくれたり、家の修復を手伝ってくれたりしている。
 アリア様やカレン様にアイビー様が、シスターと共に街の人の対応をしてくれた。
 そして、街の人に必ず言われる光景が。

「ヒイヒイ……」
「あの奥様、旦那様が死にそうですが」
「このくらいは問題ありませんわ。お気遣いありがとうございます」

 汗まみれで動いている辺境伯様と、街の人の心配を笑顔で受け流すイザベラ様だ。
 結局辺境伯様は、昼食になるまでこき使われる事となってしまったのだった。
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