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第六章 叙爵と極秘作戦

第百三十九話 出陣

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 翌日の早朝、俺達は屋敷の庭に集まっていた。
 ガルフさんとマルクさんが参加した本体に、ブルーノ侯爵家騎士団の獣人部隊が二十人参加する。
 というかこの獣人部隊、以前俺と訓練したことのある人達だ。
 あれから訓練を重ねて、魔獣も討伐できるようになったらしい。
 俺も獣人の成長に感慨深いものがある。
 ルキアさんが俺達の前に立って話し始めた。

「皆さん、朝早くからお疲れ様です。この作戦は極秘作戦になっていますが、とても重要な戦いになります。無事に成功することを祈ります」

 皆は黙ってルキアさんの話を聞いていた。
 昨日も思ったけど、だいぶ大貴族の当主の風格が出てきている。
 初めてあった時から、かなりいい方向に変わったな。

「では作戦の内容を、ライズ子爵より説明してもらいます」

 ライズ子爵って誰だ? って声がそこら中から聞こえる。
 おい、ミケも一瞬忘れていたぞ。
 俺が前に出ると、ざわざわと獣人部隊がざわめき始めた。

「えー、サトーです。この度子爵に叙爵されました。これは置いといて、作戦の概要を説明します」

 喋りだしたら静かになってくれたので良かったが、獣人部隊は俺が子爵になって目が点になっている。
 ちゃんと話を聞いてくれるかな?
 ちょっと心配だけど、そのまま話を続けよう。

「表向きはギース伯爵領の調査になりますが、既にギース伯爵領で人神教国やワース商会が暗躍しているのが確認されています。ギース伯爵領の人神教国とワース商会の関係者を捕縛もしくは無効化し、魔獣が現れたら討伐するのが主な目的です」
「この後直ぐに山道からギース伯爵領を目指し、ギース伯爵領に到着次第直ぐに作戦開始となります」
「制圧目標は三箇所、領主邸と人神教会とワース商会になります。ここは本隊のメンバーを分散して配置します」
「領主邸には俺とエステル殿下、従魔にタラちゃんとホワイトにショコラをつけます。ショコラは領主邸制圧したら、直ぐにここブルーノ侯爵家のお屋敷に飛んでもらいます」
「人神教会にはビアンカ殿下とオリガさんとマリリさんに、従魔をフランソワにサファイアとタコヤキか着きます」
「ワース商会には、リンさんとガルフさんとマルクさん。従魔はポチとスラタロウが着きます」
「人神教会とワース商会は無効化が優先です。フランソワとポチの糸での拘束をうまく使って下さい。領主邸と人神教会とワース商会の制圧が完了したら、ビアンカ殿下は陛下に連絡して部隊の派遣を依頼してください」
「ミケとシルと馬は遊撃隊です。街中に魔獣が出た場合は優先して討伐し、その後は人神教国に繋がる森の付近で警戒にあたります」
「獣人部隊は、巡回と街道の警備です。街道は三つあるので、巡回を多めに四部隊に分けます。ワース商会や人神教会の残党がいたら、直ぐに拘束してください。また魔獣が現れたら、街道に逃さない様に対応してください」
「今回は住民を守りながらの難しい戦いになります。後衛部隊が少ない分、怪我には十分注意してください」

 皆真剣に話を聞いてくれた。恐らくこれで大丈夫だろう。
 後はいつもながらだけど、状況に応じて動くしかないな。
 少数精鋭だから、臨機応変に動ける強みがあるし。

「では最後に、リンドウ男爵より一言お願いします」

 ルキアさんがリンドウ男爵って言ったら、またもや誰だって雰囲気になった。
 ミケがスタスタと前に歩いていったら、特に獣人を中心にざわめきが聞こえた。
 まさかミケちゃんが貴族に? って声が聞こえたけど、俺もまさかって思ったよ。

「えっと、悪い人をやっつけて、みんなを助けよう!」
「「「おー!」」」

 ミケらしい言葉だったが、皆の威勢の良い声が上がった。
 一応締まったので、出発となる。
 各々準備を整えて、お屋敷の門の前に集まった。

「皆さんお気をつけて」
「ルキアさん、後は宜しくお願いします」

 ルキアさんに見送られて、俺達はギース伯爵領へ出発した。
 少し歩くと直ぐに山道へ通じる道に出た。
 今の所は普通の道だな。
 段々と傾斜が上がっていく山道を進んでいく。
 その途中で、獣人部隊の隊長から声がかかった。

「あのー、ライズ子爵? サトー様? 何て呼べばいいですか?」
「サトーでいいですよ。ミケも普通に読んで下さい」
「ではサトーさんでいいですか? いやあ、久々にあったら貴族になっていてビックリしました」
「俺もビックリしていますよ。授爵されたのも昨日ですし。でも貴族になっても、結局やることは変わらないですよ」
「エステルやリンのアネゴも変わらずに接してくれます。俺達からしたら、肩肘張らずに済んで助かってます」
「特にエステル殿下は気を張るのが嫌いだからな。今のままでいいと思うよ」

 隊長と談笑しながら山道を進んでいく。
 ミケは普通に獣人部隊の人と話をしている。
 でも獣人部隊の人は、ミケを少しだけ憧れの目で見ている。
 隊長に聞くと、同じ獣人で貴族になったのが励みになっているという。
 そう思うと、ミケが貴族になって良かった面もありそうだ。

 順調に行程は進んでいき、既に山頂を過ぎてギース伯爵領側に入った。

「ビアンカ殿下。この山道は所々崩れていて狭くなっていますが、このくらいなら直ぐに修復できますね」
「妾やスラタロウではなく、普通の土魔法使いなら直ぐに補修ができる。これは公共工事として、ルキアに任せても問題ないじゃろう」

 俺達がやれば直ぐに補修できるが、統治者としてはそれは良くない。
 そんな事を思っていたら、ミケが街の異変に気がついた様だ。

「お兄ちゃん、街から血の匂いがするよ」
「あっしらも感じましたぜ。間違いない」
「思ったより状況は良くないかもしれない。急ぎ向かいながら、各分担に分かれて行動を開始する」

 もしかしたら、街中で何かあったのかもしれない。
 はやる気持ちを抑えて、早足でギース伯爵領の街に進んでいく。
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