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第八章 ドワーフ自治領

第百八十七話 久々の再会

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 お屋敷の面々も揃ったので、仕事をしないと。
 俺はバルガス公爵領にいってから、南に下ってドワーフ自治領を目指す。
 馬車だと五日間かかるらしいが、うちの馬車だと二日で着く。
 だが他の人も仕事があるので、同行者は限定される。

「妾はいくぞ。道中の街の視察も言い渡されている」
「同じく」

 視察も仕事であるビアンカ殿下とレイアは、同行者確定。

「マチも行くよ」

 そしてマチルダも参加する。どうも勤勉な姿が陛下や閣僚達に好評らしく、同行者の一人にと推薦された。

「うー、行きたくないな」

 そして、実家に帰ることを渋っているドラコとベリル。
 ちなみにフランソワも一緒にいく。
 このメンバーで決定。

「うー、一緒に行きたかった」
「何で妻である私が除け者に!」

 ミケとエステルが駄々をこねていたが、陛下から当分の間は巡回を強化するようにと直々に言われている。
 それとエステル。妻と言っているが、婚約はしているけど結婚はまだでしょうが。

「お屋敷に必要なものは、随時取り揃えておきますね」

 対してリンは、既にお屋敷の仕事をする気満々。
 主人の留守を預かる者の自覚もあるようだ。
 エステルも少しは見習って欲しい。

 とはいえ、バルガス様のところには皆で挨拶に行くことにする。
 新しい門番の人とかを残して、バルガス様のお屋敷にワープする。
 
「サリーお姉ちゃん!」
「ミケちゃん!」

 お屋敷で久々に再会した二人は、抱き合って喜んでいた。

「すみません、バルガス様。大勢で押しかけてしまって」
「いやいや、構わぬよ。何せ聖女様をお迎えするのだから」

 笑顔で出迎えてくれたバルガス様にマリー様。
 確かにマリー様のお腹はふっくらしている。

「マリー様、ご懐妊おめでとうございます」
「ありがとうございます。この年で子どもができるなんて、ちょっと恥ずかしいわね」

 そう言っていたマリー様だが、表情はとても明るい。
 やはり子どもができたのは嬉しいのだろう。
 マリー様は自室に戻り、サリー様と子ども達は一緒に遊ぶということなので、残ったメンバーとバルガス様とで話し合う事に。

「それにしても、貴族主義の連中には困ったものだよ」
「未だに騒いでいる奴らがいますからね」

 今回のタヌキ侯爵の件は陰謀だと、再捜査を要求しているものがいる。
 現行犯の容疑だけで死刑確定なんだから、陰謀もないと思うが。

「王都の西側には貴族主義の領地が多い。もし、貴族主義の連中と人神教国が結託して攻めてきたら、王都は挟み撃ちにあってしまう」
「父上はそれを懸念しておった。この地も、王国防衛の要になるじゃろうと」

 ここも西側の領地に繋がる街道がある。
 何かあったら、バルガス公爵領も戦場になる可能性も否定できない。

「ここから南にあるサザンレイク侯爵は、基本的には中立派だけど貴族主義の連中に対しては王国よりだ。いざというときには、こちらの頼りになると思ってもらってよい」
「確かに、サザンレイク侯爵はタヌキ侯爵に良い感情はありませんでしたね」
「レイア殿を突き飛ばして流血させたのもあったからな。皆相当心配していたよ」

 直接会っているからよくわかるけど、サザンレイク侯爵は出来る人だ。
 何かあったら力になってくれるだろう。

「ともかく、西の貴族の監視を強化する。何も起きない事を祈るばかりだ」
「望みは薄いじゃろうな」

 バルガス様との会談は終わって、次は魔道具屋のおばあさんと話をする。
 どうもミケたちと一緒にいるというので、裏庭に出てみるとミケたちと話をしているおばあさんを見つけた。

「おばあさん、お久しぶりです」
「おやまあ、久しぶりだねえ。それとも伯爵様といった方が良いかね」
「今まで通りで大丈夫ですよ。お元気で良かったです」
「今ではすっかり良くなってね。たまにルキアからも手紙が届くよ。大貴族になったのに、律儀な子だよ」
「ルキアさんにとって、おばあさんは命の恩人なのですから」

 見た目はとても元気そうだ。
 ルキアさんとの交流も続いているという。

「おばあさん、色々な魔道具を頂いてありがとうございます。お陰で非常に役に立ちました」
「そうかい、それは良かったよ。使い方を間違えないと思ったからのう」
「それで一つ質問なんですが、この護りのブローチの使い方がよくわからなくて」
「こいつかい? これは特殊なものでね。正しい心を持った武人にしか使えないんだよ」

 あ、あのブローチは、やっぱり特殊タイプのものだったんだ。

「常時発動型じゃが、ある程度の力量がないと使えぬ。効果は物理魔法両方の耐性があがるものじゃ」
「物凄い性能ですね」
「なので、普通の者では使えぬ。しかしお主等は勲章を得ているというから、全く問題ないじゃろう」
「でも、勲章を貰うほどの力量がないと駄目では、殆どの人は無理ですね」
「しかも、ブローチなので男が身に着けても効果はでぬぞ。ミケに聞いたが、女装したお主なら使えるかもしれんがのう」
「いや、それはそれで嫌なんですけど」

 つまりブローチが似合う武功を上げた女性のみ、効果が出るのか。
 かなり限定されるけど、その代わりのぶっ壊れ性能。
 後で、誰が使えるか試してみよう。
 これでもし俺が使えたら、かなりのショックなんですけど。
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