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襲撃
119 鬼襲来!2
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杏奈は、月に照らされて直立している。
縛られてはいない。おそらく、金縛りにされている。
涙がボロボロ流れているが、声は出さない。
声を出すなと脅されているのだろう。
杏奈の左に若い女鬼。
グレーの着物にグレーの袴姿。目つきが鋭いが、色白で何となく高貴な気配を漂わせている。祥子に雰囲気が似ているかもしれない。
右の方には男鬼。
黒の着物と袴。細身で、こちらも色白美形。だが、只ならぬ威圧感がある。
そして、杏奈の後ろに、何やら白い怪しい光の壁があるのも不気味である。
「こ、こいつら、前の鬼よりもヤバそうよ……」
恵美が呟いた。
人質で動きを封じられ、不利な状況。さらに、前より強い相手。絶望的かと思われた。
だが、鬼からは意外な言葉が発せられた。
「我らは、何も、其方らに危害を加えようとは思っておらぬ。其方らは、我が仲間カルとタエを殺した。しかし、あれも奴らが掟を破ってヒトを喰ったから。いわば、自業自得。故に、あの二人を殺したことは咎めぬ。
じゃが、神鏡は返してもらいたい。あれは、我らにとって大切なモノ。返してくれれば、この女は解放する。返さぬと言うなら、今すぐ、こいつの腹を裂いて首をへし折る。さらに、我らの仲間が、其方らの館を襲うぞ」
慎也たちに選択肢は無い。
このままでは、杏奈が殺されてしまう。さらに、家が襲われる…。家には舞衣、沙織と子供たち。戦闘力がある者は皆無だ。「館を襲う」というのはアマのハッタリであったのだが、慎也たちは在り得ることと考えた。
「恵美さん。あの鏡は、どうした?」
「なんとなく、こんなことかなと思ってね。持って来てる」
恵美は一歩前へ出て、布袋から鏡を出し、差し出した。
「これね?」
「そうだ。お前一人で、ゆっくり前へ進め!」
女鬼の言葉に従い、恵美がゆっくり進む。
男鬼は、祥子の方を睨む。
祥子は念力で弓矢を取ろうと思っていたのだが、こうガン見されていては動けない。
だが、金縛りにしようとしないのはなぜか? もしかすると、ある程度まで近づかないと、金縛りにできないのかもしれない。祥子は、そんなことを考えていた。
恵美は、中間点まで来た。
「止まれ!」
女鬼の指示に従い、歩みを止める。
おそらく、この位置くらいまで近寄れば、あの鬼は金縛りが使えるのだろう。変な動きをすれば、即、金縛りにされる。
恵美も、まっすぐ女鬼を見ながら、そんな分析をした。
「鏡を下に置いて、戻れ!」
恵美は布袋を敷いて、その上に鏡を、そっと置いた。
さらに、刀と短刀も一緒に置き、ゆっくり立ち上がって、踵を返した。
女鬼に背を見せ、そのまま、ゆっくり戻ってゆく。
恵美が戻って振り返ると、女鬼は鏡を指差した。
…鏡が浮かぶ。念力だ!
浮かんだ鏡が女鬼の方へ、スーっと吸い寄せられ、その手に納まった。
女鬼は鏡の表、裏をじっくり見て確認した。
「よし、本物じゃ。約束通り、女は無事返してやる。それから、刀は其方らにくれてやる。仲間がヒトを喰ってしまった詫びじゃ。受け取れ」
女鬼がそういうと、男鬼が杏奈の目を見て金縛りを解いた。
鏡を手に持ったまま、女鬼は、杏奈の後方の白い光に飛び込んだ。
男鬼も続く。
二人の鬼は消え、すぐに白い光も消えた。
杏奈は、その場にペタッとへたり込んだ。
恵美が真っ先に駆け付ける。続いて環奈も。
環奈は杏奈に抱き着き、二人して坐り込んだまま、一緒に泣き出した。
「怖かったよ~」
「良かった無事で~」
そんな両人を立たせ、慎也は二人一緒に抱き締めた。
杏奈には、怪我も見受けられない。洋服もそのまま。乱暴はされていないようだった。
恵美は杏奈の無事を確認してから鏡を置いた場所へ戻り、置いたまま残された刀と短刀を取った。
持ち上げて見詰める。
「鏡の方が大事だったんだ……」
縛られてはいない。おそらく、金縛りにされている。
涙がボロボロ流れているが、声は出さない。
声を出すなと脅されているのだろう。
杏奈の左に若い女鬼。
グレーの着物にグレーの袴姿。目つきが鋭いが、色白で何となく高貴な気配を漂わせている。祥子に雰囲気が似ているかもしれない。
右の方には男鬼。
黒の着物と袴。細身で、こちらも色白美形。だが、只ならぬ威圧感がある。
そして、杏奈の後ろに、何やら白い怪しい光の壁があるのも不気味である。
「こ、こいつら、前の鬼よりもヤバそうよ……」
恵美が呟いた。
人質で動きを封じられ、不利な状況。さらに、前より強い相手。絶望的かと思われた。
だが、鬼からは意外な言葉が発せられた。
「我らは、何も、其方らに危害を加えようとは思っておらぬ。其方らは、我が仲間カルとタエを殺した。しかし、あれも奴らが掟を破ってヒトを喰ったから。いわば、自業自得。故に、あの二人を殺したことは咎めぬ。
じゃが、神鏡は返してもらいたい。あれは、我らにとって大切なモノ。返してくれれば、この女は解放する。返さぬと言うなら、今すぐ、こいつの腹を裂いて首をへし折る。さらに、我らの仲間が、其方らの館を襲うぞ」
慎也たちに選択肢は無い。
このままでは、杏奈が殺されてしまう。さらに、家が襲われる…。家には舞衣、沙織と子供たち。戦闘力がある者は皆無だ。「館を襲う」というのはアマのハッタリであったのだが、慎也たちは在り得ることと考えた。
「恵美さん。あの鏡は、どうした?」
「なんとなく、こんなことかなと思ってね。持って来てる」
恵美は一歩前へ出て、布袋から鏡を出し、差し出した。
「これね?」
「そうだ。お前一人で、ゆっくり前へ進め!」
女鬼の言葉に従い、恵美がゆっくり進む。
男鬼は、祥子の方を睨む。
祥子は念力で弓矢を取ろうと思っていたのだが、こうガン見されていては動けない。
だが、金縛りにしようとしないのはなぜか? もしかすると、ある程度まで近づかないと、金縛りにできないのかもしれない。祥子は、そんなことを考えていた。
恵美は、中間点まで来た。
「止まれ!」
女鬼の指示に従い、歩みを止める。
おそらく、この位置くらいまで近寄れば、あの鬼は金縛りが使えるのだろう。変な動きをすれば、即、金縛りにされる。
恵美も、まっすぐ女鬼を見ながら、そんな分析をした。
「鏡を下に置いて、戻れ!」
恵美は布袋を敷いて、その上に鏡を、そっと置いた。
さらに、刀と短刀も一緒に置き、ゆっくり立ち上がって、踵を返した。
女鬼に背を見せ、そのまま、ゆっくり戻ってゆく。
恵美が戻って振り返ると、女鬼は鏡を指差した。
…鏡が浮かぶ。念力だ!
浮かんだ鏡が女鬼の方へ、スーっと吸い寄せられ、その手に納まった。
女鬼は鏡の表、裏をじっくり見て確認した。
「よし、本物じゃ。約束通り、女は無事返してやる。それから、刀は其方らにくれてやる。仲間がヒトを喰ってしまった詫びじゃ。受け取れ」
女鬼がそういうと、男鬼が杏奈の目を見て金縛りを解いた。
鏡を手に持ったまま、女鬼は、杏奈の後方の白い光に飛び込んだ。
男鬼も続く。
二人の鬼は消え、すぐに白い光も消えた。
杏奈は、その場にペタッとへたり込んだ。
恵美が真っ先に駆け付ける。続いて環奈も。
環奈は杏奈に抱き着き、二人して坐り込んだまま、一緒に泣き出した。
「怖かったよ~」
「良かった無事で~」
そんな両人を立たせ、慎也は二人一緒に抱き締めた。
杏奈には、怪我も見受けられない。洋服もそのまま。乱暴はされていないようだった。
恵美は杏奈の無事を確認してから鏡を置いた場所へ戻り、置いたまま残された刀と短刀を取った。
持ち上げて見詰める。
「鏡の方が大事だったんだ……」
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