29 / 45
『元の世界』へ戻る
29 魔法
しおりを挟む
こんなことで、3人トボトボ家に帰ってきました。
生き残っている人が居るのは分かりましたが、状況的には最悪です。
避難場所には入れてもらえないばかりか、外国人の略奪団までウロウロして居るなんて…。取り締まる警察も機能していないですからね。
こんな中で、私たち、どうやって生きて行けば良いのでしょう?
そして、すぐに食事の用意をする必要があります。
なんてったって、私、頭ズドンと撃ち抜かれて脳味噌ビチャッとぶちまけて一旦死にましたからね。復活を遂げて暫くすると、エネルギー不足で物凄い疲労感が襲ってくるのです。
それを避けるには食事しなければなりません。
まだカップ麺もありますが、そんなに続けてではね…。
ということで、お米を研いで炊飯器の内釜で水加減を調節してから鍋に移し…。あとはヘレーナにお任せ。魔法で加熱してもらいます。
お米を炊く時は、たしか、「始めチョロチョロ中パッパ。グツグツいったら火を止めて、赤子泣いても蓋取るな」でしたよね。
最初ゆっくり加熱、少しして一気に。グツグツ音がしてきたから加熱は止めて、蓋をしたまま蒸らすッと…。
そういえば、床下の収蔵庫に母さんの漬けてた梅干しと御味噌がなかったっけ? あ、どっちも有った。
じゃあ味噌汁も。具はワカメと葱しかないけどね…。
後は缶詰。サバの味噌煮。よし、これでオッケー! それなりの御飯ができました。
「いっただきま~す」
う~ん、久しぶりのお米だ~!!
炊き加減最高! ヘレーナ、天才!!
2人にとっては初めての食べ物よね。でも美味しそうに食べてくれてる。よかった…。
(箸じゃなくて、スプーンとフォークを使ってもらってます)
あ、梅干しはお口に合わなかったかな? 変な顔してるよ。ハハハ…。
食事が終わって、チョット疑問に思ってたことがありましたので、2人に訊いてみました。
「お2人とも、こっちの世界に来て、こっちの言葉を普通に話してますよね。それ、私が向こうへ行った時も同じだったんですよね。それじゃあさ、私や亜衣さんは転移によって特殊な力を1つずつ得たけれど、今回ってどうなっているの? やっぱり、それぞれ何か魔法が使えるようになっていたりするのかな?」
「ああ、そう言えば、そうですよね。異世界へ転移すると1つ魔法が使えるようになると聞いています。今回は治癒能力者召喚ということで準備されていましたが、アロマ神官がその条件を無効にしていますので、各自に適した魔法が1つずつ、使えるようになっているのではないでしょうか」
と、ヘレーナの返答。適性があり、更に欲しいと思っていた魔法が付与されるようです。
そして、この場合は王女様の能力がモノを言う。…「鑑定」ですよ。
まずはヘレーナから。
私が召喚された時は素っ裸で王女様の前に引き出されて間近でマジマジ見詰められて鑑定されましたが、服を着たまま。鑑定には裸になる必要は無いみたいです。あれは清めの為に裸にされただけ。それなら服を着せてからの鑑定でもよかったのにな…。いや、まあ、それはどうでも良いコトです。
「ヘレーナ。あなたは、風刃魔法が使えるようになっているわね。護衛者として攻撃魔法が使えるようになったのね」
「風刃魔法って?」
私の問いには、ヘレーナが答えてくれました。
「ストンヒル侯爵令嬢の得意魔法だけど、森の中の戦闘練習でやられなかった? いきなり肌を切り裂かれるような…」
えっ、ストンヒル侯爵令嬢? ああ、あの『麗しき戦闘狂』か…。そうか、鎌鼬のことだ。なるほど、離れた位置から攻撃可能で、便利な魔法よね。
「次は柚奈ね」
王女様が私の真ん前に立つ。
顔…、ち、近い・・・。あの時と同じ。
緑色の眼、綺麗よね。エメラルドみたいに輝いている…。
「う~ん。知人遠視魔法と言えば良いのかな?互いに知覚している人限定で、その人を遠視できるなんて感じの能力よ」
へ~、結構便利かも。戻ってくるときに家族のことを考えていたからね。だからなのかな? 家族の様子が見えるような力ってことで…。
試しに目を閉じて、母さん・父さん・妹のことを念じてみますが…。何も見えてきません。
これは、やっぱり、もうこの世に居ないから? それとも、使い方が違う?
じゃあ、さっき会ったお医者さんを念じてみますと…。あ、見えて来た。他の人と何か話してるね。
ということは、ですね。私の家族は、やっぱりもう、この世にいないということです。諦めるしかない…。惨いですが、これが現実です。
ところで、王女様って、人の目を見て能力を鑑定してますよね。ということは自分の能力は鑑定できない??
訊いてみますと、鏡があれば大丈夫だとか。すぐに手鏡を渡しました。
で、結果は…。
「私は、弱い加熱魔法か・・・」
「えっ? ショボ・・・」
おっと、思わず口にしてしまいました。
レア能力持ってる人だから、なんか、もっと凄いのかと思ったのに…。というか、加熱魔法、使えないって言っていたのに、使えるようになってるじゃない!
「ショボって失礼ね。加熱が全然出来ないのがコンプレックスだったのよね」
王女様は、口を尖らせます。
なるほど、前から欲しいと思っていた能力なんですね。
いや、もしかすると、他の大抵の魔法は既に使えたりして…。どうなのかな??
あ、それから、もう1つ重要なコト。王女様の呼び方です。私たち3人だけの時は、王女様で問題ないですけど、他の人の前でそれは拙いかも…ってことです。
「まあ、そうよね。こっちの世界では、王女なんて地位は意味ないものね。チェリルと名前で呼んでくれて結構よ」
との王女様直々のお言葉。しかし、まさか呼び捨てには出来ませんよ。私ってば、王女様の奴隷だったわけですし。
ですので、チェリル様と呼ぶことにしました。イイトコのお嬢様という感じです。・・・間違ってないですよね。
生き残っている人が居るのは分かりましたが、状況的には最悪です。
避難場所には入れてもらえないばかりか、外国人の略奪団までウロウロして居るなんて…。取り締まる警察も機能していないですからね。
こんな中で、私たち、どうやって生きて行けば良いのでしょう?
そして、すぐに食事の用意をする必要があります。
なんてったって、私、頭ズドンと撃ち抜かれて脳味噌ビチャッとぶちまけて一旦死にましたからね。復活を遂げて暫くすると、エネルギー不足で物凄い疲労感が襲ってくるのです。
それを避けるには食事しなければなりません。
まだカップ麺もありますが、そんなに続けてではね…。
ということで、お米を研いで炊飯器の内釜で水加減を調節してから鍋に移し…。あとはヘレーナにお任せ。魔法で加熱してもらいます。
お米を炊く時は、たしか、「始めチョロチョロ中パッパ。グツグツいったら火を止めて、赤子泣いても蓋取るな」でしたよね。
最初ゆっくり加熱、少しして一気に。グツグツ音がしてきたから加熱は止めて、蓋をしたまま蒸らすッと…。
そういえば、床下の収蔵庫に母さんの漬けてた梅干しと御味噌がなかったっけ? あ、どっちも有った。
じゃあ味噌汁も。具はワカメと葱しかないけどね…。
後は缶詰。サバの味噌煮。よし、これでオッケー! それなりの御飯ができました。
「いっただきま~す」
う~ん、久しぶりのお米だ~!!
炊き加減最高! ヘレーナ、天才!!
2人にとっては初めての食べ物よね。でも美味しそうに食べてくれてる。よかった…。
(箸じゃなくて、スプーンとフォークを使ってもらってます)
あ、梅干しはお口に合わなかったかな? 変な顔してるよ。ハハハ…。
食事が終わって、チョット疑問に思ってたことがありましたので、2人に訊いてみました。
「お2人とも、こっちの世界に来て、こっちの言葉を普通に話してますよね。それ、私が向こうへ行った時も同じだったんですよね。それじゃあさ、私や亜衣さんは転移によって特殊な力を1つずつ得たけれど、今回ってどうなっているの? やっぱり、それぞれ何か魔法が使えるようになっていたりするのかな?」
「ああ、そう言えば、そうですよね。異世界へ転移すると1つ魔法が使えるようになると聞いています。今回は治癒能力者召喚ということで準備されていましたが、アロマ神官がその条件を無効にしていますので、各自に適した魔法が1つずつ、使えるようになっているのではないでしょうか」
と、ヘレーナの返答。適性があり、更に欲しいと思っていた魔法が付与されるようです。
そして、この場合は王女様の能力がモノを言う。…「鑑定」ですよ。
まずはヘレーナから。
私が召喚された時は素っ裸で王女様の前に引き出されて間近でマジマジ見詰められて鑑定されましたが、服を着たまま。鑑定には裸になる必要は無いみたいです。あれは清めの為に裸にされただけ。それなら服を着せてからの鑑定でもよかったのにな…。いや、まあ、それはどうでも良いコトです。
「ヘレーナ。あなたは、風刃魔法が使えるようになっているわね。護衛者として攻撃魔法が使えるようになったのね」
「風刃魔法って?」
私の問いには、ヘレーナが答えてくれました。
「ストンヒル侯爵令嬢の得意魔法だけど、森の中の戦闘練習でやられなかった? いきなり肌を切り裂かれるような…」
えっ、ストンヒル侯爵令嬢? ああ、あの『麗しき戦闘狂』か…。そうか、鎌鼬のことだ。なるほど、離れた位置から攻撃可能で、便利な魔法よね。
「次は柚奈ね」
王女様が私の真ん前に立つ。
顔…、ち、近い・・・。あの時と同じ。
緑色の眼、綺麗よね。エメラルドみたいに輝いている…。
「う~ん。知人遠視魔法と言えば良いのかな?互いに知覚している人限定で、その人を遠視できるなんて感じの能力よ」
へ~、結構便利かも。戻ってくるときに家族のことを考えていたからね。だからなのかな? 家族の様子が見えるような力ってことで…。
試しに目を閉じて、母さん・父さん・妹のことを念じてみますが…。何も見えてきません。
これは、やっぱり、もうこの世に居ないから? それとも、使い方が違う?
じゃあ、さっき会ったお医者さんを念じてみますと…。あ、見えて来た。他の人と何か話してるね。
ということは、ですね。私の家族は、やっぱりもう、この世にいないということです。諦めるしかない…。惨いですが、これが現実です。
ところで、王女様って、人の目を見て能力を鑑定してますよね。ということは自分の能力は鑑定できない??
訊いてみますと、鏡があれば大丈夫だとか。すぐに手鏡を渡しました。
で、結果は…。
「私は、弱い加熱魔法か・・・」
「えっ? ショボ・・・」
おっと、思わず口にしてしまいました。
レア能力持ってる人だから、なんか、もっと凄いのかと思ったのに…。というか、加熱魔法、使えないって言っていたのに、使えるようになってるじゃない!
「ショボって失礼ね。加熱が全然出来ないのがコンプレックスだったのよね」
王女様は、口を尖らせます。
なるほど、前から欲しいと思っていた能力なんですね。
いや、もしかすると、他の大抵の魔法は既に使えたりして…。どうなのかな??
あ、それから、もう1つ重要なコト。王女様の呼び方です。私たち3人だけの時は、王女様で問題ないですけど、他の人の前でそれは拙いかも…ってことです。
「まあ、そうよね。こっちの世界では、王女なんて地位は意味ないものね。チェリルと名前で呼んでくれて結構よ」
との王女様直々のお言葉。しかし、まさか呼び捨てには出来ませんよ。私ってば、王女様の奴隷だったわけですし。
ですので、チェリル様と呼ぶことにしました。イイトコのお嬢様という感じです。・・・間違ってないですよね。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる