巻き込まれ召喚娘の大逆転!? ~転移者柚奈は、超絶理不尽な扱いを受けました~

しんいち

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29 魔法

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 こんなことで、3人トボトボ家に帰ってきました。
 生き残っている人が居るのは分かりましたが、状況的には最悪です。
 避難場所には入れてもらえないばかりか、外国人の略奪団までウロウロして居るなんて…。取り締まる警察も機能していないですからね。
 こんな中で、私たち、どうやって生きて行けば良いのでしょう?

 そして、すぐに食事の用意をする必要があります。
 なんてったって、私、頭ズドンと撃ち抜かれて脳味噌ビチャッとぶちまけて一旦死にましたからね。復活を遂げて暫くすると、エネルギー不足で物凄い疲労感が襲ってくるのです。
 それを避けるには食事しなければなりません。

 まだカップ麺もありますが、そんなに続けてではね…。
 ということで、お米を研いで炊飯器の内釜で水加減を調節してから鍋に移し…。あとはヘレーナにお任せ。魔法で加熱してもらいます。
 お米を炊く時は、たしか、「始めチョロチョロ中パッパ。グツグツいったら火を止めて、赤子泣いても蓋取るな」でしたよね。
 最初ゆっくり加熱、少しして一気に。グツグツ音がしてきたから加熱は止めて、蓋をしたまま蒸らすッと…。

 そういえば、床下の収蔵庫に母さんの漬けてた梅干しと御味噌がなかったっけ? あ、どっちも有った。
 じゃあ味噌汁も。具はワカメと葱しかないけどね…。
 後は缶詰。サバの味噌煮。よし、これでオッケー! それなりの御飯ができました。

「いっただきま~す」

 う~ん、久しぶりのお米だ~!!
 炊き加減最高! ヘレーナ、天才!!

 2人にとっては初めての食べ物よね。でも美味しそうに食べてくれてる。よかった…。
 (箸じゃなくて、スプーンとフォークを使ってもらってます)
 あ、梅干しはお口に合わなかったかな? 変な顔してるよ。ハハハ…。

 食事が終わって、チョット疑問に思ってたことがありましたので、2人に訊いてみました。

「お2人とも、こっちの世界に来て、こっちの言葉を普通に話してますよね。それ、私が向こうへ行った時も同じだったんですよね。それじゃあさ、私や亜衣さんは転移によって特殊な力を1つずつ得たけれど、今回ってどうなっているの? やっぱり、それぞれ何か魔法が使えるようになっていたりするのかな?」

「ああ、そう言えば、そうですよね。異世界へ転移すると1つ魔法が使えるようになると聞いています。今回は治癒能力者召喚ということで準備されていましたが、アロマ神官がその条件を無効にしていますので、各自に適した魔法が1つずつ、使えるようになっているのではないでしょうか」

 と、ヘレーナの返答。適性があり、更に欲しいと思っていた魔法が付与されるようです。
 そして、この場合は王女様の能力がモノを言う。…「鑑定」ですよ。

 まずはヘレーナから。
 私が召喚された時は素っ裸で王女様の前に引き出されて間近でマジマジ見詰められて鑑定されましたが、服を着たまま。鑑定には裸になる必要は無いみたいです。あれは清めの為に裸にされただけ。それなら服を着せてからの鑑定でもよかったのにな…。いや、まあ、それはどうでも良いコトです。

「ヘレーナ。あなたは、風刃ふうじん魔法が使えるようになっているわね。護衛者として攻撃魔法が使えるようになったのね」

「風刃魔法って?」

 私の問いには、ヘレーナが答えてくれました。

「ストンヒル侯爵令嬢の得意魔法だけど、森の中の戦闘練習でやられなかった? いきなり肌を切り裂かれるような…」

 えっ、ストンヒル侯爵令嬢? ああ、あの『麗しき戦闘狂』か…。そうか、鎌鼬かまいたちのことだ。なるほど、離れた位置から攻撃可能で、便利な魔法よね。

「次は柚奈ね」

 王女様が私の真ん前に立つ。
 顔…、ち、近い・・・。あの時と同じ。
 緑色の眼、綺麗よね。エメラルドみたいに輝いている…。

「う~ん。知人遠視魔法と言えば良いのかな?互いに知覚している人限定で、その人を遠視できるなんて感じの能力よ」

 へ~、結構便利かも。戻ってくるときに家族のことを考えていたからね。だからなのかな? 家族の様子が見えるような力ってことで…。
 試しに目を閉じて、母さん・父さん・妹のことを念じてみますが…。何も見えてきません。
 これは、やっぱり、もうこの世に居ないから? それとも、使い方が違う?
 じゃあ、さっき会ったお医者さんを念じてみますと…。あ、見えて来た。他の人と何か話してるね。
 ということは、ですね。私の家族は、やっぱりもう、この世にいないということです。諦めるしかない…。惨いですが、これが現実です。

 ところで、王女様って、人の目を見て能力を鑑定してますよね。ということは自分の能力は鑑定できない??
 訊いてみますと、鏡があれば大丈夫だとか。すぐに手鏡を渡しました。
 で、結果は…。

「私は、弱い加熱魔法か・・・」

「えっ? ショボ・・・」

 おっと、思わず口にしてしまいました。
 レア能力持ってる人だから、なんか、もっと凄いのかと思ったのに…。というか、加熱魔法、使えないって言っていたのに、使えるようになってるじゃない!

「ショボって失礼ね。加熱が全然出来ないのがコンプレックスだったのよね」

 王女様は、口を尖らせます。
 なるほど、前から欲しいと思っていた能力なんですね。
 いや、もしかすると、他の大抵の魔法は既に使えたりして…。どうなのかな??

 あ、それから、もう1つ重要なコト。王女様の呼び方です。私たち3人だけの時は、王女様で問題ないですけど、他の人の前でそれは拙いかも…ってことです。

「まあ、そうよね。こっちの世界では、王女なんて地位は意味ないものね。チェリルと名前で呼んでくれて結構よ」

 との王女様直々のお言葉。しかし、まさか呼び捨てには出来ませんよ。私ってば、王女様の奴隷だったわけですし。
 ですので、チェリル様と呼ぶことにしました。イイトコのお嬢様という感じです。・・・間違ってないですよね。
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